セミナー情報

平成30年度「マンション管理の基礎知識」基礎講座報告

開催日時:平成30年10月21日(日)、11月4日(日)、11月25日(日)

10月21日(日)第1日目−1

講座1 成年後見制度の活用方法
成年後見制度の活用方法 講師

成年後見制度を正しく理解して、上手に活用しましょう。〈講師〉
 大阪司法書士会
 岡川 敦也(おかがわ あつや)


■成年後見制度とは
 成年後見制度は「精神上の障がい」により判断能力が不十分な方について、後見人等が支援を行う制度で、「身体的障がい」は対象外となります。現在の制度利用者でもっとも多いのは、「認知症」の方になっています。
 制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があり、「法定後見制度」は「判断能力低下の程度」によって、さらに「後見」「保佐」「補助」の3類型に区分され支援内容が異なります。利用するには、本人が住んでいる地域を管轄している家庭裁判所へ申立てることが必要で、申立人になれるのは本人・配偶者・四親等内の親族とされていますが、申立人がなく緊急性を伴う場合は、市長等が対処するケースもあります。申立て後、裁判所が後見人を選任します。

■後見人の職務
 職務には預貯金管理をはじめ各種契約の手続き、費用の支払い、役所の手続き等を行う「財産管理」と、身の回りの生活環境を整える役割(介護サービスの手配や医療サービスの締結等が含まれる)の「身上監護」があります。後見人は「財産管理」と「身上監護」の代理人であり、直接的な看護や介護は職務に含まれません。後見人は個人的に責任を引き受ける義務がないので連帯保証人にはなれなれません。また、その職務が本人の死亡によって終了するため相続の手続や葬儀等死後のことは原則として職務としません。
 一方で、「任意後見」は比較的自由に委任内容を決定することできます。(詳細は後述)

■マンション住民が認知症になった場合
 マンション住民が認知症になると、「管理費用の支払い」や「管理組合総会の議決権の行使」、さらには「介護施設に入所して空き家になった場合の管理や売却手続き」を誰がするかという問題が起きます。家族で対応が困難になった場合は、法律で決められた代理人である「後見人」が行います。また、財産(マンションの一室も含む)の管理・処分に関しては、たとえ家族であっても手続は出来ず、法定代理人として「後見人」が行います。その「後見人」は、専門職の「司法書士」が3割、「弁護士」が2割、「社会福祉士」が1割程度を占めており、「後見人」候補の「子」「兄弟姉妹」「配偶者」「親」等がいない場合は、おおむねこれら専門職から裁判所が選任しています。

■よくある誤解
 「後見制度は本人の“権利が制限”される」「成年後見が開始すると“財産が凍結”される」「財産管理の方針は家族に相談すべき?」「重度の認知症(寝たきり)の人しか使えない制度」といった誤った話を聞くことがあります。こうした批判や苦情の中には、本人や後見人と利害が対立している親族からの申出も少なくありません。単独で有効な契約をできなくなる場合もありますが、そもそも重度の認知症の場合には、後見制度を利用しなくても契約等は無効になります。後見制度は本人の財産権を守るため法律的に定めたもので、不適切な管理等を未然に防ぐ「成年後見監督人」や「後見制度支援信託」という制度もあり、専門職である弁護士や司法書士などが裁判所から選任されてサポートや指示を行う場合もあります。

■任意後見制度とは
 将来の判断能力が衰えた場合に備えて、裁判所ではなくご自身が選任して契約締結するのが「任意後見制度」です。その場合、将来の後見人と公正証書で契約を結ぶことが手続きとして必要で、実際に判断能力が衰えたときに、任意後見監督人が裁判所から選任されることで契約の効力が発生します。一般的に「見守り契約」「財産管理等委任契約」「死後事務委任契約」等と組み合わせて契約ができ、法律に定められた支援以外の内容や、報酬などの細かい取り決めも契約に含むことができます。

■後見人の重要なポイント
 後見人は、被後見人(本人)の支援者であることが前提で、本人のためにのみ本人の財産を使うのが原則です。被後見人は「個人」として尊重され権利が保護されるので、夫婦や親子間でも本人の財産を本人以外の者のために使うことは認められません。ただし、被後見人に扶養義務がある場合や任意後見契約の範囲内であれば、例外的に認められます。
 後見人は善管注意義務を負い、注意義務を怠った場合は状況に応じて損害賠償請求や契約解除の対象になりえます。

■事例紹介
(事例1)自宅でひとり暮らしを続けた認知症の方
 身の回りの世話をしてくれる知人がお金を盗っていると親告を受けた親族が、見守りを始めたがご本人が認知症であることがわかり、相談を受けました。
 ご本人の症状が進行したので、他に所有していたマンションの総会等での議決権行使を後見人が行っています。

(事例2)ひとり暮らしを続けた身寄りのない認知症の方
 大量のごみが自宅マンションに散乱し、近隣とのトラブルも惹き起こし共同生活が困難と思われたが、ご本人が引っ越しを頑なに拒否していたので、地域包括支援センタ-から相談を受けました。後見人が管理費支払い等の財産管理を行っていましたが、ご本人が亡くなり自宅マンションが空室になってしまい、預かった財産をお返しする過程で、相続を終了させました。

(事例3)将来の備えとして制度を利用した方
 高齢の母親と障がいのある娘さんだけで暮らすことの将来への不安から、相談を受けました。総合的支援の観点から、娘さんは「保佐」を申立て、母親とは将来に備えて「任意後見」契約を締結しました。

■成年後見制度を利用する際の注意点
・法定後見制度(既に判断能力が低下した方や認知症の方の制度) 家庭裁判所で申立ての手続が必要。
申立書の作成は、司法書士や弁護士へ相談。
申立書の作成は専門職以外でも可能ですが、司法書士や弁護士以外の者が申立書作成を業として行うと犯罪になる可能性があるので注意が必要となります。
・任意後見制度(将来の認知症に備える制度)
契約書(公正証書)の作成が必要。
特に資格制限はありませんが、成年後見制度に関する十分な知識を有する司法書士や弁護士など専門家に相談することが望ましいと思われます。

10月21日(日)第1日目−2

講座2 マンショントラブルの解決方法
マンショントラブルの解決方法 講師

判例からトラブルの解決方法を考えます。〈講師〉
 大阪弁護士会
 郷原さや香(ごうはらさやか)


■ 設問1
 理事会の代理出席は可能でしょうか。
□ 回答1
 「標準管理規約」に理事会の代理出席を認める条項はありません。理事会はマンションの業務執行の具体的意思決定機関であり、組合員のために誠実に職務を執行する義務を負う理事は、自ら理事会に出席して議論に参加し、議決権を行使することが求められます。代理出席は原則許されません。
(参考)最高裁平成2年11月26日判決
 「理事が事故で理事会に出席できないときは、その配偶者、又は一親等の親族に限り、代理出席できる。」とした管理規約の有効性は、「当該会議体の設置趣旨や委任された事務内容から、その代理が法人の理事に対する委任の本旨に背馳しないかどうかによる。」としたうえで、マンション管理組合では理事会への出席の要否や議決権行使の方法を自治的規範の管理規約に委ねており、管理規約が限定的に代理出席を認めていることから有効としました。

■ 設問2
 理事は「現に居住する組合員」としていますが、「限定」を外せますでしょうか。
□ 回答2
 「現に居住する組合員」としていた標準管理規約も、平成23年の改正で居住要件が削除され、平成28年の改正で外部専門家を選任することも可能になりました。

■ 設問3
 総会で理事を選任し、理事会の互選で理事長を選任しているが、理事長解任の規定はありません。理事長Aが理事会で管理会社変更を提案し、他の全理事が反対するなか、臨時総会を強硬に開催しました。理事会は理事長解任を決議したが、Aがその無効を訴えました。
□ 回答3
 「理事長は区分所有法で定める「管理者」(規約38条)で、選任・解任は総会決議が必要(区分所有法25条)であり、役員の選任・解任も総会決議が必要なことから、総会決議のない解任は無効」とするAの主張に最高裁が判決を下しました。
最高裁平成29年12月18日判決
 本規約(標準管理規約と同じ)では、理事の選任及び解任については総会の決議が必要とする一方、理事長は理事が就く役職の一つとしたうえ、総会で選任された理事に対し原則として互選で理事長の職に就く者を定めることを委ねることから、理事の過半数の一致で理事長の職を解き、別の理事を理事長に定めることも総会で選任した理事に委ねると解するのが、本規約を定めた区分所有者の合理的意思に合致すると解任を認めました。

■ 設問4
 滞納管理費の徴収で管理会社は裁判まで対応するのでしょうか。
□ 回答4
 管理会社が行う業務内容は、管理委託契約書に記載されています。督促業務は、管理費の滞納状況の報告や電話・訪問もしくは督促状送付まで(標準管理委託契約10条、弁護士法72条)。債権回収は時効に注意して管理組合が行わなければなりません。

■ 設問5
 管理費や光熱費、駐車場使用料を滞納していた区分所有者が自室を売却しました。管理規約によって全滞納額を新しい区分所有者に請求できますでしょうか。
□ 回答5
 滞納のうち、管理費は買い主に対して請求できる(区分所有法8条)が、光熱費は原則請求できませんでした。駐車場使用料は、請求できるとする判例が増えています。
(参考)名古屋高裁平成25年2月22日判決
 区分所有法3条前段および30条1項の趣旨・目的から、建物又はその敷地若しくは附属施設の管理、又は使用に関する区分所有者相互間の事項に限って管理規約で定めることができ、それ以外の事項を定めても効力を有しません。
(参考)大阪高裁平成20年4月16日判決
 上記、名古屋高裁の判決と同じ考えを示しつつ、水道・光熱費について戸別契約できないシステムのため、管理組合が一括して立替払をせざるを得ず、「本件マンションにおける水道料金等に係る立替払とそれから生じた債権の請求は、各専有部分に設置された設備を維持、使用するためのライフラインの確保に必要不可欠な行為で、特段の事情がある」と請求を認めました。

■ 設問6
 国外在留外国人の区分所有者が管理費と修繕積立金を滞納しています。賃借人に支払ってもらったり、海外在住の区分所有者に請求できるでしょうか。
□ 回答6
 賃借人は、管理費や修繕積立金の支払義務を負いませんが、管理費・修繕積立金は一般先取特権(区分所有法7条)のため賃料を差し押さえて回収できます。
 海外居住者に対して日本で提訴できます(民訴法3条の3)が、訴状に母国語の翻訳文を添付して、滞納者の住所(海外)宛に訴状を送達する必要があります。また、条約等の取り決めにより送達までに数カ月以上かかり、困難を伴います。

■ 設問7
 管理費を滞納していた方が病死しました。相続人が2人居ることがわかり、そのうちの1人に滞納管理費を請求しましたが支払いを拒否されました。
□ 回答7
 死亡前の債務は、相続債務として相続によって各共同相続人は相続分に応じて承継します。相続開始後の滞納分も、相続開始により不動産は全相続人の共有状態になり(民法898条)、各共有者は各自が全額の支払義務を負うので、滞納者が亡くなった後に発生した管理費等は相続人の1人に対して全額請求できます。多重債務状態等で相続放棄され相続人が居ない場合は、裁判所に相続財産管理人の選任申立てをするより、競売等の買主に請求する(区分所有法8条)方が管理組合には金銭的に考えて得策になります。何より孤立死を防ぐためのコミュニティ形成が重要です。

■ 設問8
 地震で①エントランスのガラス②給水管が大破した。修復には、どのような手続きが必要か。
□ 回答8
①平成28年の標準管理規約改正で、理事長は保存行為ができる(規約21条6項)とされ、補修費用は管理費が充当できます(規約58条6項)。
②保存行為を超える狭義の管理行為は、災害により総会の開催が困難な場合の応急的な修繕工事は理事会の決議で行え(規約54条1項10号)、費用は修繕積立金の取り崩しや借入れとします(規約54条2項)。
 災害時は理事会の開催も危ぶまれますので、理事長の単独判断でも可能とする等を規定する工夫も必要です。

他に、「台風で飛ばされた屋上設置の共同受信アンテナによる物損事故の賠償」「ペット飼育を一律禁止とする規約の有効性」等が紹介されました。
※文中( )内は以下の略。
 区分所有法 建物の区分所有等に関する法律
 民訴法 民事訴訟法
 規約 標準管理規約

11月4日(日)第2日目−1

講座1 管理規約の活用方法
管理規約の活用方法 講師

マンション管理規約は、マンション内の法律のようなものです。
多数の事例を通して理解を深め、スムーズなマンション管理の運営に努めましょう。
〈講師〉
大阪弁護士会
辻岡 信也(つじおか しんや)


■マンション管理規約とは
 マンション管理規約は、マンション内の法律のような効力を持ち、区分所有者は「規約及び総会の決議を誠実に遵守する義務」(標準管理規約3条)を負います。効力の根拠は、「購入時の原始規約に全員が同意」し「途中でマンションを購入した人も管理規約に同意して購入」しており、「全員が管理規約の内容を理解している」はずで、「区分所有者がみんなで決めたもの」だとの前提になります。
 マンションの「管理」に関することは自由に定めることができますが、町内会費の徴収のように「管理」に関係のないこと、日本国憲法や強行法規に反すること、さらには不当な差別や公序良俗違反に係わるものは、定めることができません。

■マンション管理規約を守らないと・・・・・
 標準管理規約では義務違反者に対する措置(標準管理規約66条)や、理事長の勧告及び指示等(標準管理規約67条)を出す権利を規定しています。また、共同の利益に反する行為をした場合の区分所有法上の措置は「行為の停止請求(57条)」「使用禁止請求(58条)」「区分所有権の競売請求(59条)」「占有者に対する引渡請求(60条)」と効力を強めています。
 マンション管理には日々新しい問題が発生しており、管理規約もそれに対応して改正していく必要があります。

■管理規約を変更するには
 管理規約の変更が困難な理由の一つに、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議(区分所有法31条1項)があります。委任状でもよいが、後々問題になることが多く、日頃から総会への興味を喚起し、議案決定前には説明会を開くのが望ましいです。
 区分所有者が行方不明であっても、招集通知を発送しなければ総会招集手続に瑕疵があるとされ、決議が無効になる可能性があります。管理組合に届け出られている住所宛に発送すれば、返送されたとしても招集通知を為したことになります。
 また、議案については、組合員が予め十分な検討をした上で総会に臨むことができるよう、招集通知に要領を記載しなければならない(区分所有法35条5項)と規定があり、手続違反で総会決議が無効にならぬよう、具体的な記述が必要です。

■よくある事例
〈事例〉特定の区分所有者にのみ長期間合理的な理由なく低額に定められていた管理費等を増額する規約改正ができるか。
〈回答〉可能です(東京地裁平成23年6月30日判決)。
 マンションの管理費及び修繕積立金の額に係る原始規約の定めを増額変更する管理組合総会の決議は、約27年間も「低額」なまま放置されていた管理費等の不均衡を是正したものであって、その内容をみても社会通念上相当な額であると認められること等から、本件総会決議は、区分所有法30条3項に定める区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めたものにほかなりません。

〈事例〉インターネット料金を一律に区分所有者全員で負担したい。
〈回答〉可能です(広島地裁平成24年11月14日判決)。
 インターネットサービスの利用の有無を考慮することなく一律にマンションの区分所有者にインターネット利用料金の支払を負担すべき旨規定している管理規約は、区分所有法30条3項の趣旨に照らしても、区分所有者間の利害の衡平が図られていないゆえに無効であるとまでいえません。

〈事例〉理事に報酬を出して、なり手を確保したい。
〈回答〉可能です。
 無報酬が原則(民法648条1項)なので、管理規約で定めることが必要ですが、報酬の有無で理事の責任(善管注意義務や報告義務等)の大きさは変わりません。

〈事例〉理事を引き受けない非居住区分所有者に負担金を課したい。
〈回答〉可能です(最高裁平成22年1月26日判決)。
 管理規約に定めることで、合理的な範囲内で協力金を負担させることは可能です。

〈事例〉管理費滞納者を理事にしたくない。
〈回答〉可能です。
 合理的な制限であれば、管理規約に定めて禁じることが可能です。

〈事例〉外国人を理事にしたくない。
〈回答〉難しいです。
 日本語での会話や読み書きができず、理事会運営に支障が生じるような場合には、規約で定めることが可能ですが、支障がない場合は、規約で定めたとしても無効になる可能性があります。

〈事例〉管理費を支払わない住人の部屋の給湯を止めたい。
〈回答〉難しいです(東京地裁平成2年1月30日判決)。
 給水・給湯は居住者の日常生活に不可欠のサービスであって、居住者の生活に重大な支障が生じることから、給湯停止措置を軽々に行うべきではなく、他に手段がない場合に限定されます。

〈事例〉自治会への加入を強制できるか。
〈回答〉できません(最高裁平成17年4月26日判決)。
 自治会や町内会は強制加入団体ではなく、退会の自由があるため、自治会への加入を管理規約で強制することはできません。

〈事例〉放置してきた事務所利用を止めさせたい。
〈回答〉認められますが、許されない場合もあります(東京高裁平成23年11月24日判決)
 管理組合が住居専用規定を含めた管理規約の周知を図るとともに、それに反する使用方法がなされている場合には、住居専用規定に沿った使用方法となるよう努めた結果、規定に沿った形に変化してきていることが認められるとして、同規定の規範性は欠如しているとはいえません。

〈事例〉管理規約で禁止していない行為を停止させることができるか。
〈回答〉程度のひどい場合は可能です(東京地裁平成4年1月30日判決など)。
 住民の共同の利益違反に当たると判断された場合は、管理規約で明示的に禁止されていなくとも停止を求めることができます。託児所や民泊としての利用差止を認めた裁判例も同様の判断によります。

 他にも「騒音問題」「町内会への協賛金の支出」「管理費によるシャトルバスの運行委託」「理事の利益相反行為」「ペット飼育禁止」「駐車場の外部貸し」等の身近な問題についての解説がありました。

11月4日(日)第2日目−2

講座2 模擬総会
模擬総会 講師

専門家が定期総会を実演し、各シーンごとに円滑な総会運営に向けたポイントや注意点などについて解説いただきました。登場人物
理事長、副理事長、組合員A、組合員B、組合員と同居の家族、賃借人

マンションの設定
[マンション名]天神橋筋六丁目まんかんマンション
[建築概要]鉄筋コンクリート造10階建・総戸数120戸・築18年・エレベーター2基・ 駐車場80区画・駐輪場(自転車180台・バイク30台)
[管理形態]全面委託(管理会社から管理人1名)
[管理規約]原始管理規約を平成28年に同年改正の標準管理規約に準拠改正
[決 議 件]1住戸につき1議決権
[管理組合役員]理事10名(各階1名推薦制/任期1年)、監事1名(任期1年)
[管理費等]管理費1住戸月額7000円、積立金1住戸月額5000円、駐車場1区画月額10000円

解  説
大阪弁護士会 辻岡 信也(つじおか しんや)
近畿税理士会 鈴木 義教(すずき よしのり)
(公社)大阪府建築士会 桑原 宏明(くわはら ひろあき)


■ 1.総会の出席者について
 委任状を持たない賃借人や組合員の同居の家族が、総会への参加を求めてきた。
【解 説】
 総会に参加できるのは、管理組合の組合員たる区分所有者だけであり、代理人を参加させる場合には委任状が必要になる。標準管理規約に代理人は、組合員の配偶者または一親等の親族、その住戸に同居する親族や他の組合員と定めがあり、組合員の同居の家族が代理出席するには委任状が必要となる。委任状を持っていないからと追い返すことは現実的対応と言えず、代理人の委任は書面がなくとも意志だけで成立することを考慮して参加を認め、後で必ず委任状の提出を受けるなどの対応も考えられる。一方、賃借人は原則として参加できないが総会の議案に利害関係がある場合、意見を述べることはできる。この場合でも議決権はなく、あらかじめ理事長に通知し前日までに理事長の承諾をもらっておくこと。

■ 2.総会の開会・成立宣言
 総会の議長として承認された理事長が、書記と議事録署名人2名を選任し出席者の承認を得た。次いで、議長が出席組合員数と議決権数から総会が成立していることを宣言した。
【解 説】
 総会議事録は、区分所有法で作成義務が定められており、議事録署名人の議事録確認と署名押印が必要なので2名の選出を守ること。また、総会議事録は管理会社に任せず、管理組合で作成することが望ましい。
 総会の成立要件では、標準管理規約には議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならないとあり、区分所有法にはその要件はないものの、普通決議の要件が厳しくなっている。標準管理規約では「出席組合員の議決権の過半数で決する」が、区分所有法では「この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する」とあり、決議には全区分所有者の過半数および全議決権の過半数の両方を満たさなければならない。普通決議の要件を標準管理規約、もしくは区分所有法のどちらに従うかで結論が変わりうるので、ご自身のマンションにはどんな定めがあるのか、あるいは定めがなければ区分所有法に従わなければならないことを覚えておく必要がある。

■ 3.第1号〜第3号議案(平成29年度事業報告・決算報告・監査報告)
※鈴木税理士
【解 説】
ポイントを3つに分けて解説。
[1] 工事費の未払金や、管理費等の未収金の会計処理の問題と決算監査時の注意点について
 会計原則(発生主義)から工事費用は、その取引が完了していれば完了した期の経費とし、未払であれば未払金として処理をする。管理費や修繕積立金の未収金に対しては、台帳で毎月管理するだけでなく、回収するための通知や連絡の手順を予め決めて滞納額の増大・長期化を防ぐことが重要。滞納期間が長期化した場合は、流動資産の部ではなく、固定資産の部に移して貸借対照表を真実なものにする必要がある。また、監査では経理規程に定められている帳票類がそろっているか、支払実績と予算の対比や前期との比較で異常な数字がないかなどを全体的にチェックし、経理規程に定められたことが当たり前にされているかを確認する。監事からの質問が総会の予行演習にもなるので、理事は監査も有効に活用して欲しい。
[2] お金の掛かる機械式駐車場の保守と修繕積立金や、長期修繕計画との関連について
 修繕積立金は工事時期になって慌てないために、月々の積立金額や累計金額を定期的に確認することが必要で、総会時などに状況を組合員全員で共有することは重要。
 また、交通の利便性から利用者の減少が目立っている機械式駐車場では、多くの管理組合で駐車場代を管理費会計で処理しているが、修繕積立金にも振り分けておかないと後々問題になるケースが多く、標準管理規約を参考に対応して欲しい。
[3] 自治会との協賛事業の運営(特に費用負担)で注意すべき点について
 自治会の行事とマンションの管理は全く関係がないので、管理費や修繕積立金と自治会費は別々に管理しないといけない。自治会のイベントなどに管理費から協賛金が支払えるのは、マンション全体の利益に値すると判断される場合のみである。コミュニティ活動は相隣トラブルや高齢化問題への対応として重要だが、その費用負担はマンション全体の利益に値するかどうかで判断すること。

■ 4.第4号〜第6号議案(規約改定・専門委員会設置細則提案・平成30年度事業計画・予算案)
 召集通知に記載されていない「ペット問題」に関する規約改正を執行部が提案した。
 現行規約は、一般使用細則で観賞魚や小鳥以外の犬や猫の飼育を禁止しているが、その細則が守られずさまざまな問題が生じており、実態調査アンケートの結果を踏まえ、ペット飼育を認めることとし、そのルールを新たに細則で定めることや、理事会の諮問機関として「規約改正委員会」、「ペットマナ-委員会」、将来の大規模修繕に備え「修繕委員会」の設置を提案している。
【解 説】
3つのポイントについて解説。
[1] 事前告知していない規約改正の取り扱いと、採決で可否同数になった場合の取り扱いについて
 区分所有法では、招集通知には議題の内容を具体的に告知する必要があり、総会では予め告知した事項のみ決議できるとされている。事前告知は、参加者が決議のため事前準備をするためと、委任状や議決権行使書面を出す人が、委任状などで決議するか、自ら出席すべきかを判断するためにも必要である。区分所有者全員が総会に参加していれば動議の審議も可能だが、それは難しく、次回の総会の決議事項とするのが正しい選択である。ペットの問題は区分所有者にとって大きな権利のため、細則ではなく規約の変更が必要になる。ちなみに、決議が可否同数の場合の取扱いも管理規約で決めることができ、現在の標準管理規約では出席者の過半数で決めるとあるため否決となるが、平成16年の改正前の標準管理規約では、議長は総会で議決権を行使せず、可否同数の場合にのみ票を投じて審議を決するとある。
[2] 大規模修繕工事の進め方の注意点について
 管理組合の理事は1〜2年で交代することが多いが、マンション生活の問題は長期間継続して不満が大きくなっていく傾向にあるため、課題の情報が引き継がれにくい。修繕委員会のような専門チームが、数年にわたって継続的に理事会を補佐できればよい。また、最近は災害も増えており、管理費で賄える工事を予備費として決めておくなど、事前にいろんなケースを想定しておくことが重要。
[3] 予算案策定の注意点について
 予算準拠の原則から予算は極めて重要で、特に5年、10年と中長期にわたる修繕積立の予算は、積立金を使う事業年度もあれば、貯めるだけの事業年度もあるので、中長期的な全体計画を作成して当年度の位置付けを把握し、予算を組むことが重要。管理費会計は、前年度実績に基づいて今年度の変化を加味して予算を組むことが多いが、今年は10月の消費増税を織り込んで予算を策定することが賢明である。また、今回の模擬総会では1〜2カ月前の決算を決議している。毎年、期首から総会決議までの支出を暫定予算として予算審議する中で予め承認を得るか、暫定期間については一定の範囲内で理事会に一任する、という決議をとることも考えておくのがよい。
※桑原建築士

■ 5.第7号議案(平成30年度管理組合役員選任、閉会)
 新役員を選出するとともに、互選で役割を決し、結果を全組合員に速やかに報告することが承認された。総会議事録を作成し、議事録署名人が署名押印のうえ保管し、決定内容を広報誌などで総会欠席者にも迅速に周知することとし、決定事項に住民みんなが協力していくことを確認して閉会した。
【解 説】
 管理組合の理事や監事になれる人は、管理規約で決めることができる。標準管理規約では組合員から総会で選任すると定めてあり、原則として区分所有者が選任されることになる。
 ただし、管理規約で外部専門家を理事に選任したり、理事の欠格事項を定めることができ、反社会的組織の構成員、管理費滞納者など合理的な制限を設けることができる。役員に選任されながら活動に参加できない場合、家族や配偶者の代理出席を黙認している管理組合もあるが、本来は許されない。ただし、管理規約に定めれば可能とする裁判例もある。
 総会議事録は、区分所有法で作成しなくてはならないとされており、書面の場合は議長および集会に出席した区分所有者2名の署名押印が必要とある。議事録を作成する目的は、欠席者に決定事項を報告すること、問題が起こった時に証拠にすることなので、記載内容は訴訟等に役立つものにすることが重要で、議案の賛成票、反対票、委任状など有効な決議が行われたことを証明する「数字」を記載しておくとよい。なお、議事録は作成しないと罰則(20万以下の過料)もある。

11月25日(日)第3日目−1

講座1 長期修繕計画の見直しについて
長期修繕計画の見直しについて 講師

マンションを適切に維持管理するためには、各マンションに応じた長期修繕計画を作成し、定期的に見直すことが重要です。〈講師〉
(公社)大阪府建築士会
津村 泰夫(つむら やすお)


■数字で見る長期修繕計画(出典:平成25年度マンション総合調査結果(国土交通省))
 平成25年度は89.0%のマンションが長期修繕計画を作成しており、1戸当たりの月額修繕積立金(駐車場使用料等からの充当額を含む)も平均11,800円に増加しました。修繕積立金の額の算出根拠を長期修繕計画としているマンションも平成25年度は約8割に達し、計画期間25年以上の長期修繕計画としているマンションも増加していました。
 意識調査では、管理費の額で「妥当である」が84.4%、「徴収しすぎである」が10.3%ありましたが、修繕積立金の額は「妥当である」が77.6%、「積立しすぎである」が5.9%、「不足している」は16.0%でした。購入時の長期修繕計画の確認状況では「よく確認した」、「大まかに確認した」が42.4%で、「ほとんど確認していない」は28.9%、「確認していない」も18.6%ありました。

■「長期修繕計画作成ガイドライン」の目的と利用方法
 長期修繕計画の見直しを行う場合に目安になるのが「長期修繕計画作成ガイドライン」で、その目的は、マンションにおける適切な内容の長期修繕計画の作成及び、これに基づいた修繕積立金の額の設定を促し、計画修繕工事の適時適切かつ円滑な実施を図ることにあります。新築マンションは、分譲事業者が本ガイドラインを参考に長期修繕計画(案)と修繕積立金の額を設定しており、購入予定者は提示された長期修繕計画(案)を本ガイドラインを参考にチェックができます。
 既存マンションでは、管理組合が長期修繕計画の見直しや、修繕積立金の額の設定に関する業務を専門家に委託する際に参考にできます。

■長期修繕計画の基本的な考え方と概念
 マンションの快適な居住環境を確保し資産価値を維持するには、適時適切な修繕工事を行う必要があり、必要に応じて改修工事を行うことが望まれます。そのため長期修繕計画を作成し、これに基づいた修繕積立金の額を設定することが不可欠になります。なお、「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」(国土交通省)では、「改修は、約12年ごとの大規模修繕を目安に、回数を重ねるごとに改良の割合を大きくした改修工事とすることが重要」とされています。
 長期修繕計画は、作成時点の推定修繕工事の内容、時期、概算の費用等であって、技術革新や物価変動、2019年秋の消費税増税等の不確定要素も考慮して、5年程度ごとの見直しが前提になります。そのため、管理規約で長期修繕計画の作成や変更を定めることが必要で、見直しに際しては必要に応じて専門委員会を設置する等、検討を行うための体制整備が重要です。

■長期修繕計画の構成と作成方法
 長期修繕計画の基本構成は①建物・設備の概要等、②調査・診断の概要、③長期修繕計画の作成・修繕積立金の額の設定の考え方、④長期修繕計画の内容、⑤修繕積立金の額の設定からなります。作成では「長期修繕計画作成ガイドライン」の「標準様式」を参考としますが、マンションごとに形態、形状、仕様等や立地条件が異なるので、必要に応じて内容を追加します。計画期間の設定では、新築マンションは30年以上、既存マンションは25年以上とします。推定工事項目は、新築マンションは設計図書等に基づいて設定し、既存マンションは現状の長期修繕計画を踏まえ、保管している設計図書、現状の調査・診断の結果等に基づいて設定しますが、必要に応じて建物及び設備の性能向上に関する項目も追加することが望ましいです。

■推定修繕工事費の算定と収支計画
 数量計算は、新築マンションでは設計図書等を参考とし、既存マンションでは現状の長期修繕計画を踏まえ、保管している設計図書、現状の調査・診断の結果等を参考に「建築数量積算基準」等に準拠して算出します。
 単価計算は、修繕工事特有の施工条件等を考慮して部位ごとに仕様を選択し、新築マンションでは、設計図書等を参考とし、既存マンションでは、過去の計画修繕工事の実績やその調査データ、刊行物や専門工事業者の見積価格等を参考として設定します。
 それぞれ算出した「数量」に、設定した「単価」を乗じて推定修繕工事費を算定します。
 収支計画では、計画期間に見込まれる推定修繕工事費累計が、修繕積立金累計を上回らないよう注意し、機械式駐車場の維持管理費用が多額になると想定されるのであれば、管理費会計および修繕積立金会計とは区分して、駐車場使用料会計を設けることが望ましいと思われます。


■修繕積立金の積立方法とチェック
 長期修繕計画作成時点で、計画期間に積立てる修繕積立金の額を「均等」にする積立方式が基本ですが、5年程度ごとの計画の見直しに併せてその額も修正する必要があります。計画期間に積立てる修繕積立金の額を「段階的に増額」する積立方式の場合は、計画の見直しで、当初に推定した増額の額がさらに増加するので、特に注意が必要です。月当たり戸当たりの修繕積立金の額は、推定修繕工事費の累計額を計画期間(月数)で割り、各住戸の負担額割合を乗じて算定しますが、新築マンションで購入時に修繕積立基金を負担する場合は、算出された修繕積立金の額から修繕積立基金を一定期間(月数)で割った額を減額します。
 大規模修繕工事の予定年度に推定修繕工事費の累計額が修繕積立金の累計額を上回ると、その年度内に一時金負担や借入等の対応が必要です。災害や不測の事故が生じた時も、同様の対応が必要になります。
 購入予定者は分譲事業者から提示された長期修繕計画(案)や設定した修繕積立金の額を、また、見直し時に管理組合が専門家に依頼して見直した長期修繕計画や設定した修繕積立金の額は、「標準様式」を参考にしてチェックできます。

11月25日(日)第3日目−2

パネルディスカッション 大規模修繕工事の進め方
大規模修繕工事の進め方 講師

〈パネリスト〉
(公社)大阪府建築士会
橋本 賴幸氏(はしもと よりたか)
〈パネリスト〉
近畿税理士会
田野 卓也氏(たの たくや)

〈パネリスト〉
(独)住宅金融支援機構
牧山 賢治氏(まきやま けんじ)


実務経験豊富な3氏に、事例を挙げながら座談会形式で討論いただきました。
そもそもなぜ大規模修繕工事を行うのか、理解を深める良い機会になったのではないでしょうか。

◆大規模修繕工事の目的について
(橋) マスコミで不適切なコンサルタントの問題が取り上げられ、大規模修繕工事に世間の関心が集まるようになりました。「良いコンサルタントを紹介して欲しい」とよく相談されますが、良いコンサルタントや、良い大規模修繕工事とは、何なのでしょう。
 マンションには、さまざまな職業の方や年代の方がお住まいです。居住者みんなが真摯に向き合って関われば、大きな間違いは起こりません。
(牧) 大規模修繕工事は、いわばマンションの再生事業であって、管理組合の皆さまがマンションを住みやすい状態にしていくための大切な活動かと思います。私はそれを融資面からサポートさせていただいており、修繕積立金では資金が不足する場合等に当機構の「マンション共用部分リフォーム融資」をご利用いただいています。また、「マンションすまい・る債」の発行を通じて、修繕積立金の計画的な積立てのサポートもさせていただいています。
 大規模修繕工事のときだけでなく災害時にも無理なく有益な修繕工事が行えるよう、日頃から修繕積立金に関心を向けていただければ理想的です。
(田) 先日、顧問の仕事ではなく、私自身のマンションの大規模修繕工事を経験しました。
 工事の結果は、失敗だったと感じています。この場で、反省も踏まえてお話していきたいと思います。
(牧) 価値観の異なる人同士が、共同生活をしているのがマンションです。設備の改修をして資産価値を上げたいと考える人、修繕工事にはあまりお金をかけたくないと考える人等、さまざまいらっしゃいます。そのような中で、大規模修繕工事の目的を共有しておくことは重要です。
(田) 私のマンションでは、コンサルタントからの提案を精査せずに全面的に受け入れたので、工事費用の見積りが積立金総額を超えてしまい、積立金総額と均衡がとれるまで修繕項目を削る作業だけをしました。結果として、必要な工事だったのかどうかかも分かりません。
(橋) 大規模修繕工事は、「10年経ったので、工事をしないといけない」という風潮に流され、気づけば終わっていたという話を聞きます。管理会社もコンサルタントも、放置していて事故が発生すると大変なので、時期が来れば提案をします。しかし、工事費を負担するのは居住者の皆さんですから、工事の目的等をはっきり意識していただくためにも「今、大規模修繕工事が必要なのですか」とお伺いするようにしています。
 建築基準法を守って、建物を保全することは当然のことです。しかし、全てのマンションが10年おき、20年おきに、同じタイミングで壁やタイルが剥がれるわけではありません。
(牧) 必要な時期に、必要な工事を行うということですね。
(橋) 早めに対処するための日々の管理やメンテナンスが重要です。
 それは、会社の経営でも同じではないでしょうか。
(田) 確かに、企業において10年後に大規模修繕工事が必要な事態が生じたら大変です。
 私自身の経験を振り返れば、日々の保守・管理をしっかりと行って小規模修繕工事で済んでいたら、マンションをさらに魅力的にすることにお金が使えたのではないかと思うことがあります。時期が来たからではなく、本当に「今、大規模修繕工事が必要なのか」を考えることは、大事です。理事には、非常に負担のかかることですが。
(橋) 結果的に大規模修繕工事になることもありますが、本当にやらなくてはいけない工事を明確にして、追加で不具合を調整できれば理想的です。

◆コンサルタントについて
(牧) 万全を期すには、準備期間に何をすればいいのでしょうか。
 費用が高額なうえ、大規模修繕工事を初めて経験される人も多いはずです。
 不適切な工事発注の実態も取りざたされ、慎重に準備をすることは大切です。
(橋) 第三者として管理組合目線で意見具申する役割のコンサルタントと設計・監理の契約をする方法が主流ですが、一つの方法に過ぎません。
 大規模修繕工事の工程は、大きく「調査・診断」、「設計」、「工事」に分けられます。
 病院で治療を受けるときに、まず検査を受けて結果の診断を聞き、手術や投薬等の治療方針を決めるのと同じです。昔はお医者さんの言われるとおりにお任せしていましたが、今はお医者さんから治療内容の説明を受けて、手術か投薬治療か等の治療の方針は患者自身が決める時代です。
 建物の修繕工事でも、いい塗料を使うと長持ちするけど高価になる等の提案はしますが、押し付けはしません。コンサルタントは、管理組合がしっかりと判断できる情報を提供するだけです。
(田) 私のマンションでは、管理会社の推薦したコンサルタントを入札で選びました。理由は見積もり金額が安く、工事実績の件数も多かったからです。修繕委員会も組織し、コンサルタントと検討しながら工事見積もりを作成しましたが、理事会はまったくかかわりませんでした。修繕委員会に任せっきりにせず、セカンドオピニオンも受けていれば、もっと効率的な工事になったのではないかと思っています。
(橋) セカンドオピニオンは発注者の権利です。ただ、居住者とコンサルタントの間の意思疎通や情報開示が十分に行われていれば、新たな費用がかかるセカンドオピニオンを受けなくても粛々と進んでいきます。
(牧) 融資の側面では、借入の際に総会議事録をご提出いただくことになっており、管理組合によっては詳細に内容が記載されています。中には、管理会社を責め立てているものも見られます。
(橋) 密室会議同然に工事内容が決められた、管理会社が一方的に準備を進めた等で、総会で内容を知らされた組合員は不信感を露にします。原因は、情報開示が不十分だからです。
(田) 私のマンションの工事業者の選定でも、入札1回目に一番安い工事費用を提示した業者が選ばれず、マンション新築時の施工業者が同じ最安値で2回目の入札で選定されました。結果として修繕積立金が底をつき、管理費も修繕積立金も各々2倍に引き上げるとする議案が、不思議なことに反対意見もなく総会で決議されてしまいました。
(橋) 新築を購入するときに修繕積立金を一時金として支払っていますので、第1回目の大規模修繕工事では資金に余裕があります。第2回目以降の大規模修繕工事で資金に余裕がなくなり、修繕積立金の額を引き上げざるを得なくなるということがあります。
 必要な時期に必要な修繕を行うことが重要で、コンサルタントと契約したときは、建物劣化診断調査の結果報告会から、理事会にも居住者にもわかりやすく広報ができるよう協力してもらってください。協力的でなく面倒くさがるようなら、要注意かと思います。
(田) 広報は、コンサルタントと管理会社のどちらの仕事なのでしょう。
(橋) どちらか片方だけでなく両者が協力すべきです。管理委託契約の内容にもよりますが、コンサルタントは技術的な部分の説明をしますが、配布や手続きには管理会社の協力が必要になります。また、理事長が承認した広報を管理組合が行うのですから、管理会社に協力する責務は生じると思います。

◆工事業者の選定について
(橋) 選定に際して注意が必要なのは、見積もりの中身です。「調査・診断」のあと、コンサルタントと話し合って「設計」を行い、工事業者選定のため相見積をします。本来であれば、どこの工事業者に依頼しても同じ見積りが得られるはずです。調理の技術に差があったとしても、レシピどおりに調理すれば同じ料理が出てくるのと同じ理屈です。
 ところが責任施工方式だと、使う材料によって見積もり金額に差が出て比較ができなくなります。そのため、しっかりと「設計」をすることが大事です。同じ材料を使うのに見積もり金額に差が生まれる理由を、工事業者に詳しく説明してもらいましょう。
 管理組合が工事業者の提案を聞いて、意見を集約して判断します。そうすれば、後々問題になることも少なくなり、工事業者の選定理由を管理組合がしっかり説明できます。「工事費用は高くついたけれど、居住者みんなにとって良かったね」となれば、問題になることはありません。
(牧) 言い換えれば、信頼関係の有無によるということですね。
 建物や施設の点検を日々行って状態を把握している管理会社が、その情報を基に適切な提案をしてくれるのであれば、他にコンサルタントを頼む必要はなくなります。これも一つの信頼関係です。
(橋) 信頼できる相手かどうかは、常に情報開示をしているか、説明がわかりやすく親身であるかで判断してもいいでしょう。このことは管理会社だけでなく、理事会にもあてはまります。管理組合も、工事業者も、管理会社も、コンサルタントも立場は違いますが、「良い修繕工事をする」という目的は同じはずで、そのために議論の過程やそれぞれの考えを包み隠さないことが重要だと考えます。
(田) 私は水漏れ事故で管理会社ともめたこともあり、管理会社に対して良い印象を持っていません。新聞や雑誌等で、管理業界の手数料割合に関する記事も読みました。そうした情報を知ると、全くの素人が高額の工事を発注することに慎重にならざるを得ません。それにもまして、管理会社は管理組合のお財布の中身を知っているのです。
(橋) 私も立場上、管理組合の修繕積立金の総額を知った上で設計することがあります。
 私は、次回の工事に備えてある程度残しておくことを提案していますが、上限いっぱいの金額で見積もりをする業者もあります。

◆収益事業と税金
(橋) 多くなってきた駐車場の空きスペ-スを有効に活用する方法として、サブリース会社から営業を受けることもあります。管理組合の収益になることはいいことだと思うのですが、税金関係はどうなるのでしょう。
(田) 個人的には、外部貸しをしてお金を稼がないといけないと思っていますが、税金の関係からすると3つのパターンに分かれます。①たまたま空いているところを貸した場合。貸す意志を表明することなく、たまたま工事業者等に貸した場合は課税されません。
 ②外部貸しはするが、優先権は居住者にある場合。外部貸しの分だけを収益の対象として税金の申告を行います。③居住者の優先権がない状態で外部貸しをする場合。居住者が借りている分も含めすべてが税金の対象です。場合によっては、課税されることで、駐車場利用料収入が今までより減ってしまう可能性もあります。ただ、修繕工事費が高額になりがちな機械式駐車場の場合等、維持管理のための費用を確保するために、居住者を優先として空き駐車場を積極的に外部貸しすることをお勧めします。
(橋) 一人で思い悩む必要がないのが、マンションのいいところです。管理組合のメンバーも含めて、いろんな人に相談し、どんな答えを導き出したいか、みんなで一緒に考えていきましょう。もちろん、セカンドオピニオンの件も含めて、分からないことは専門家が集まる「大阪市マンション管理支援機構」等をご利用ください。「大阪市マンション管理支援機構」もコンサルタントも税理士も建築家も工事業者も、居住者のみなさんのお手伝いをすることが一番の仕事です。答えは一つではありません。さまざまな考えと柔軟性を持って合意形成を行い、大規模修繕工事を成功させましょう。