セミナー情報

平成14年度「マンションらいふあっぷ基礎講座&相談会」 報告


 今回の「らいふあっぷ基礎講座」では、新しく管理組合の役員になられる方などを対象として、マンションの維持管理に関する基礎的な内容を学ぶ講座を、計3日間連続して開催いたしました。いずれの日も定員を上回る参加者があり、非常に熱心に参加いただき、盛況のうちにすべての講座(合計9講座)が終了いたしました。
特に3日目の「講座6 模擬総会」では、一つのマンションを設定して、その管理組合における総会の模様をステージで実演することにより、総会運営、進行の仕方などを専門家の解説を交えてわかりやすく説明。参加者からも大変好評をいただきました。
 また、1日目の2月23日には個別相談会も開催し、法律・管理などの各相談において専門家から具体的なアドバイスが行われました。

主な出演者
■沖 健補 大阪司法書士会
■中岡 博之 大阪土地家屋調査士会
■笠井 靖彦 (社)大阪府不動産鑑定士協会
■川畑 雅一 (社)大阪府建築士会
解説者
■久保井 聡明 大阪弁護士会
■植田 卓 近畿税理士会
マンションの概要
・マンション名/「らいふあっぷコーポ」
・建物概要/鉄筋コンクリート10階建・総戸数120戸・築18年。駐車場、駐輪場
・管理形態/全面委託で管理会社から管理員1名が出向
・管理規約/平成9年に標準管理規約に準拠して改正
・管理組合役員/理事10名、監事1名で任期は各1年
・議決権/1住戸につき1議決権
・管理組合の設立経緯/分譲当初は管理組合がなく、2年後の 87年5月に区分所有者有志が管理会社のサポートで設立総会を開催、管理組合が発足した。

【第1場面】受付対応での問題(賃借人の扱い、委任状)

 理事が総会の受付をしている。
 委任状を持たない賃借人が「今日の議案にあるペット飼育細則の設置については、私にも関係があるので参加したい」と登場する。受付担当理事は「委任状がないと出席はできない」と断るが賃借人は納得できない様子。続いて、区分所有者の娘が代理で受付に来たが、委任状を持っていない。委任状の提出を求めると「家族でも委任状がいるんですか?」と聞かれ、理事たちは取り扱いに困る。
解 説
 法律では区分所有者が総会に出席することができるのは当然ですが、それ以外に賃借人等、区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、総会の議案に利害関係がある場合には意見を述べることができます。また利害関係がなくても、賃借人に積極的に参加してもらうのは望ましいので、出席してもらう方向で運営することが良いでしょう。ただし、これらの場合は規約であらかじめ理事長にその旨を通知しなければならないとされていることが多いです。
 次に委任状の扱いですが、提出の義務付けは後々のトラブルを避けるためです。例えば、ある問題について「娘に一任した覚えはない」と父親からといわれた場合、それが有効票か無効票かが分からなくなるという事態を防ぐ意味で委任状を出してもらうわけです。
 総会は、区分所有者の権利や義務、また管理費の使途を決める非常に重要なものです。したがってその議決権を行使するために代理人等に委任状の持参を義務付けるのは重要なことで本来は、家族であっても区分所有者以外の人が出席する場合は、委任状が必要です。しかし、今回のように委任状がないから一律に「帰ってください」という対応をしてよいかは難しい問題があります。例えば「今日は出席してください。ただし後で委任状を持ってきてください」と対応するのが妥当だと思います。また委任状を出したが、本人が出席する場合は、本人の出席を優先しますので委任状が無効になります。

【第2場面】開会と議長、書記、議事録署名人選出(議長等の選出、総会の成立)

 司会者の開会宣言により、総会が始まる。理事長のあいさつに続いて議長の選出を行う。議長に承認された理事長に議事進行を交代。
 議長がまず、書記と議事録署名人の選出を行い、候補者を指名して出席者の承認を得る。次に議長が、「当マンションでは1戸につき議決権を1とし、議決総数は120です。本日の出席者議決権数は、委任状によるものが55と本日出席者の35を合わせて90であり、規約第45条に基づき、議決権総数の半数以上出席と認めますので、本総会が有効に成立していることを宣言します」と出席状況の報告と総会設立の宣言を行う。
解 説
 議事録署名者の2名に関しては、規約の48条2項に「議長及び議長の指名する2名の総会に出席した理事がこれに署名押印しなければならない」ということになっています。
次に総会の成立については、「議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない」とあり、これが定足数と言われるものです。議長が「総会が有効に成立している」と宣言したのは、このことを指しています。
 普通決議の要件については、区分所有法では、規約などで別に定めがない限り、「区分所有者及び議決権の各過半数で決する」となっています。つまり、出席した区分所有者の過半数ではなく、全区分所有者の過半数及び全ての議決権の過半数の両方を満たしている場合に議決は成立することになります。
 しかし、実際上この条件で議決を成立するのは厳しいため、標準管理規約では、1.議決権総数の半数以上を有する組合員が出席し(定足数)、2.出席した区分所有者の議決権の過半数で議決できるように定められており、そうしている管理組合が多いようです。
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