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「マンション管理フェスタ2007」講演報告

「マンション管理フェスタ2007」講演報告

会場の様子さる9月2日に開催された「マンション管理フェスタ2007」の全体の模様は前号(22号)でご紹介しましたが、誌面の都合で掲載できなかった講演「マンション管理とコミュニティ活動」の内容を後編としてご紹介します。
当日は、マンション学をテーマに研究されている藤本佳子教授がミニ講演を行われた後、大阪市内の3つのマンションの管理組合(エバーグリーン淀川地上館、勝山東ガーデンハイツ、ベイシティ大阪)のコミュニティ活動の事例紹介を行いました。

講演「マンション管理とコミュニティ活動」 マンション管理とコミュニティ活動
トラブルの9割は、居住者の生活マナーの問題  マンションのトラブルは、居住者間の生活マナーを巡る問題が9割を占めており、居住者の相互関係の問題が多いのが特徴です。トラブルの多さはマンションライフの満足感と関係しています。東京の築25年以上のマンションの居住者に対してコミュニティ形成の必要性の調査をしています。「コミュニケーションがうまく取れているか」という質問に対して、4割しか「取れている」と回答していません。では「住民相互の交流は必要か」といえば、7割以上の人が「必要だ」と回答しています。つまり住民相互の交流は必要だけれども、うまく取れていないというのが現状です。 一戸建てとの違いは「共同」ということ  一戸建てとマンションとは一体何が違うかといえば、次の4つが違います。マンションでは、上下左右の家が重なり合って「共同生活」をしています。そして廊下、階段、エレベーター、駐車場などを「共同利用」しています。また、マンションを複数の人で区分けして区分所有法の下で住戸を所有し、複数で「共同所有」をしています。そして、管理組合における合意形成によって「共同管理」しています。だからマンションを購入するというのは、「共同生活」で、「共同利用」で、「共同所有」で、「共同管理」することなのです。
 コミュニティの形成に成功しているマンションでは、生活上のトラブルの発生の割合が減っています。また、大きな紛争が減少しています。これは日本だけでなく、海外での調査でも同じことがいえます。 建物の価値だけではなく、居住価値が重要に!  管理組合の目的に、区分所有者の共同の利益の増進があります。それは建物の価値だけではなく、居住価値が重要になってきています。建物の価値の維持、増進から、居住価値の維持、増進へ。ハードだけではなくハードとソフトと両面揃ってこそ住み心地が良い住環境ができます。そのためには住む人々の継続したコミュニティ活動が必要です。つまり、日々の生活を楽しみながら居住者間のコミュニティの形成を図る。住んで良かった、長く住み続けたい、というような快適な住環境を作る必要がある。住む人々の知恵と活動で居住の価値を高めていく。これこそ住み心地の良い住環境作りということになります。
「共に生きる、助けあう」という気持ちを大切に!
大規模マンションの運営に代議員制度を導入 藤本●これから特徴ある3つのマンションからコミュニティ形成の事例報告をして頂きます。エバーグリーン淀川は1500戸近い大阪でも有数の大規模マンションです。その管理組合をどのように運営されているのですか?
高田●まず何が大事かということを平成13年に1464世帯にアンケートを取ったところ、執行部のマンションマネージメントが大事だと気が付きました。そこで代議員を80名作りまして、毎年の決算や予算運営、工事計画など早くやらなければならないことを代議員総会で決めることに致しました。大規模マンションは、各棟各階から代表が出て、その中で維持をするのがベストだと思います。
藤本●代議員を80名選出し、その中から互選で理事を13人選ばれています。だから大規模だけれども動きが早い。そして特別決議が必要な時は必ず全員総会を開催している。どこまでを代議員総会で、どこからが全員総会でということをきちんと規約で決めています。まず管理体制作りから始められていることが特徴だと思います。 自主管理の体験を、委託管理に生かす 藤本●次に勝山東ガーデンハイツは、管理会社の方から値上げを言われて突如として自主管理へ移行せざるを得なかったようです。また最近は委託管理へ戻っています。その辺りをお聞かせ下さい。
葛籠●実は、昭和56年7月に入居以来、平成4年の定時総会まで修繕積立金は810円でした。それでは大規模修繕ができませんので、平成6年の年度替わりに一時金を平均50万円ずつ徴収させて頂くことにしました。ちょうどその頃、管理会社から値上げの打診があった。修繕積立金の値上げと一時金の徴収をしなければいけないのに、管理費まで値上げはできないと、理事長と管理会社の担当者の間で話しあいがもたれた結果、管理会社から「お宅の委託はけっこうです」と突如断りに来られたのです。だから計画もしていなければ、何がなんだかさっぱり分からなくて。その後、大変苦労しながらも、結果的には、9年間ほど自主管理をして、その間に第1回大規模修繕工事も行いました。そして平成14年12月に、委託管理に戻りました。今は丸投げ状態ではなくて、通帳も印かんも管理組合で管理をしています。様々な契約も管理会社経由ではなくて、個々に直接契約をしております。
藤本●自主管理からまた委託管理へ戻った時には自主管理の経験が生きている様子がわかります。続いて、ユニークな運営体制を持つ、ベイシティ大阪です。 独自に事務局を設置。常駐の女性が活躍! 櫻木●役員構成は理事が2年任期、16名を確保しています。毎年半数ずつ交替することで、ある程度の継続性は保てます。しかし長期計画に基づいて物事を進めたり、腰を据えて取り組む時に、理事長が毎年変わるので、思い切った策が打てなかったり、理事長に負担をかけてしまうのではと躊躇することがありました。そこで10年ほど前から管理組合に事務局という事務所を設置し、事務職員1名を管理組合で雇う形で常駐しています。区分所有者から募り、現在は2代目の主婦の方ががんばっておられまして、今年で6年目を迎えています。事務局の主な役割は、日中勤めでいない理事長や理事の留守番役というのが一つです。日常の事務や書類の整理、継続して行う書類の保管と管理、住民からの苦情や要望、意見の窓口として初期対応にあたります。さらに出入り業者との打ち合わせや調整などもやっております。 あいさつ運動など多彩な活動を実施 会場の様子 藤本●コミュニティ形成に成功した例をご紹介ください。
高田●住民による自主的な防犯パトロール、消防訓練、年末の警戒パトロール、ペット飼育者による清掃パトロールなどをやっております。毎年定期的にやっているのは、挨拶のデモンストレーション。これは小学校、中学校の子供さんに対して、管理組合の理事、代議員の有志が出て30分間挨拶をやっています。また、サークルがいろいろとあり活発に活動されています。それから講習会ですね。講師が来て「人が少ないな」と言わることは一度もなく、皆が積極的に参加しています。
藤本●共用自転車の貸し出し制度も作られていますね。
高田●無料の共用自転車を30台作りました。自転車が古くなったら破棄され、共用自転車を使ってもらっています。良い事をしたと思っています。
会場の様子 藤本●葛籠さんのところでは、大規模修繕の時に「マンション元気村」という修繕ニュースを出されましたが、それはどんな役割を果たしましたか。
葛籠●工事工程などは業者の方が掲示板に貼ってお知らせしてくれるので、その他の情報をお知らせしました。おかげで大規模修繕もスムーズにいったように思います。
藤本●大きな活字とイラストや写真が多用されて、読むのではなくて見るという感じですね。情報公開することで、住民の情報共有に有効に働いているように思えます。
会場の様子 櫻木●私どもではコミュニティ形成のために昨年ホームページを開設しました。理事会の議事、ペットクラブの活動や、子供会の活動などを写真を取り入れながらお知らせなどに使っています。また意見ももらえるシステムになっていますが、活用の状況を1年間見ますとまだ不十分です。
論理的な運営と、ルールを守る品格が必要 藤本●最後に、コミュニティ活動をスムーズにするには何が重要かを一言ずつお願いします。
高田●マンションの運営は、情緒的ではなく論理的に筋道を立てて運営すること。それと楽しく快適な生活をするためには住民はルールを必ず守る、やるべきことは必ず皆で一緒にやるといった品格が必要です。そして一生懸命コミュニティ活動をやられる方々に対して、管理組合は一緒に応援をします。それが大事ではないかと思っています。
葛籠●理事会から発行している広報誌に、「運営は清掃から。管理は挨拶から」という標語を毎回つけています。それが大本じゃないかなと思っております。
櫻木●私2年間理事をやった経験上、住民と理事会、執行部がかけ離れたものになりがちで、一生懸命やっている人と関心のない方がいらっしゃる。ですから執行部としましては、飽きずに繰り返して情報公開していく。これが大事じゃないかなと思ってやっております。
藤本●共に生きる、助け合う、という気持ちでマンションの管理を行うことが大切ではないかと思います。本日は貴重なお話し、ありがとうございました。
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