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平成15年度シンポジウム                「マンションの円滑な維持管理・再生をめざして」

マンションの円滑な維持管理・再生をめざして
8月24日開催の2003年度シンポジウムは「マンションの円滑な維持管理・再生をめざして」がテーマ。大阪市住宅局からの挨拶の後、大規模修繕・マンション建替えを経験された2管理組合からの事例報告があり、続いてコーディネーターに住宅金融公庫大阪支店の海野公共業務課長、パネラーに国土交通省より元木課長補佐をおむかえし、事例報告者や専門家らを交えてのパネルディスカッションが行われました。その要約をご紹介します。
事例報告1:葛籠洋子
 私達のマンションは、昭和56年に入居開始し現在築22年になります。平成6年に第1回大規模修繕を実施するため、平成3年4月に大規模修繕実行委員会をつくり、管理会社とゼネコンと設計監理の専門家の3社に建物調査診断の見積りをとり、最も安い業者へ発注しました。診断の結果、至急に補修が必要ということで同じ年度に、建物調査診断を行った業者に一部改修工事を発注しましたが、満足な出来ではありませんでした。委員会の反省会で、工事見積り上での現地調査もれ、工期の遅れ、工事の手抜きなどがあげられ、我々素人が工事監理をするのは困難だとわかりました。そこで大規模修繕の必要性を勉強するために、全員参加の学習会を開催し、工事見学会に参加し、居住者の理解と協力を得るためには広報紙が一番大切であると感じました。そこで広報紙「マンション元気村」を作成しました。  広報紙の効果もあり、平成4年にもう一度建物調査診断を行いました。その調査方法は、最初に設計監理者が調査診断の目的や手順などの説明をした後、全戸にアンケート調査を行い、管理組合の立ち会いで専門家が調査診断を行いました。それで傷み具合や適切な補修時期と補修概算額を写真付きの書類で提出していただきました。
 診断の結果をもとに補修時期や費用が提示され、修繕積立金が1住戸平均50万円不足することが判明しました。そこで各階毎に説明会やアンケートを実施し、皆さんの理解を得て、一時金を2回に分けて納入してもらいました。
 工事中は施工業者と設計管理者と委員会で2週間に1度打合せを実施し、施工業者から2週間分の工事作業のビデオを見ながらの説明や、次の2週間の予定が報告されるなど3者での質疑応答型で進めていきました。  多くの工事見学会に行った結果、既存の補修だけでなく、改善する事例も知り、玄関にスロープや転倒防止柵を付けたり、道路から1階ホールまで点字ブロック設置、手すりにも点字シールをつけるなど、多くの改修を行って、今はそれらが有効に使われています。
事例報告2:池上和夫
 建替え前の団地は、昭和42年建築で住戸数64、府公社が建てる一般的な小規模団地でした。バブルの最盛期に建替えや増改築が話題になりました。そんな中、等価交換方式で追加資金なしで建替えできるという話を聞き、平成2年4月、区分所有者の有志で建替え検討委員会を設置することになりました。私達は素人なのでコンサルタントを要請することにし、費用が発生するため、管理組合の正式機関として建替え準備委員会を平成3年3月に発足しました。
 コンサルタントとして、設計事務所R社を選びましたが、バブルが崩壊し、約2年間、建替え準備委員会の活動を一時凍結しました。平成5年9月、準備委員会を再開し、コンペを行いデベロッパーA社を仮決定しました。私達委員会は専門的な知識がないため、デベロッパーと二人三脚で進める事にしました。
 まず、A社によりアンケート、基本構想説明会、個別相談会が実施されました。区分所有者のほぼ全員が総論賛成となった平成6年10月、A社及び販売を受け持つB社と基本協定書を締結しました。準備委員会も実行委員会に変わりました。A社と住民間で何度もキャッチボールを繰り返し、コンサルR社のアドバイスもあり、皆さんの納得できる案が出来ました。
 平成7年6月、希望住戸の申込みが行われ、60軒中53軒が新マンションを希望し、7軒の転出者がありました。
 平成7年8月、区分所有者とデベロッパーとの間で「建替え事業推進に関する基本合意書」の締結が完了し、合意形成が成立しました。引越し、管理組合解散、土地売買契約、新マンション購入契約と続き、平成8年3月、工事着手し、平成9年3月に竣工しました。経済状況の変化など様々な問題がありましたが、コンサルタントやデベロッパーと信頼関係を築くことができ、建替えを成功させることができました。
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