セミナー情報

平成15年度「マンションらいふあっぷ基礎講座&相談会」 報告

マンションらいふあっぷ基礎講座&相談会
 今回の基礎講座では、新しく管理組合の役員になられた方などを対象として、マンション生活における法律の基礎知識、大規模修繕の進め方、管理組合会計など、適正な維持管理を進めていく上で必要となる基礎的な知識について、専門家がわかりやすく説明しました。計3日間にわたり合計9講座を開催し、3日目には総会の模様を実演し、問題点について専門家が解説する「模擬総会」を開催し参加者からも大変好評をいただきました。
 また1日目の10月26日には個別相談会も開催し、法律・管理・技術の各分野において専門家から具体的なアドバイスが行われました。

出演者

■永野 倫子 大阪司法書士会  
■中岡 博之 大阪土地家屋調査士会
■笠井 靖彦 (社)大阪府不動産鑑定士協会
■川畑 雅一 (社)大阪府建築士会
■海野 敦 住宅金融公庫大阪支店

解説者

久保井 ■久保井 聡明
 大阪弁護士会
石原 ■石原 健次
 近畿税理士会
岡本 ■岡本 森廣
  (社)大阪府建築士会

マンションの概要

  • マンション名/「らいふあっぷコーポ」
  • 建物概要/鉄筋コンクリート10階建・総戸数120戸・築14年
    駐車場40区画、駐輪場(自転車180台・バイク25台)
  • 管理形態/全面委託で管理会社から管理員1名が常駐
  • 管理規約/平成9年に標準管理規約に準拠して改正
  • 管理組合役員/理事10名、監事1名で任期は各1年
  • 議決権/1住戸につき1議決権
  • 長期修繕計画/あり
  • 管理組合の設立経緯/分譲当初は管理組合がなく、2年後の91年5月に区分所有者有志が管理会社のサポートで設立総会を開催、 管理組合が発足した。

【第1場面】受付対応での問題
 (賃借人の扱い、共有者がある場合の扱い) (写真)


ポイント


総会議案の大規模修繕について意見を述べたいという、委任状を持たない賃貸居住者の総会への出席について


解説


 賃貸居住者の総会への出席については、区分所有法と管理規約に書かれています。法律には、「区分所有者から承諾を得て、専有部分を借りている人は、その会議について利害関係があれば、集会に出席して意見を述べることができる」とあり、管理規約でも同趣旨の規定があります。この“利害関係を有するかどうか”によっては総会に出席する権利もあるし、意見を述べる権利もあるということになります。
 大規模修繕が法律上の利害関係があるかというと、いろいろ法律的な見解がありますが、法律上では、典型的には建物の使い方とかペットの規約を新たに定めることは利害関係があるといわれています。しかし大規模修繕について、修繕委員会を作るというだけで賃借人に法律上の利害関係があるとはいえないでしょう。権利としての出席は困難です。しかし、管理規約でも理事会が必要と認めたものは総会に出席することができると書かれてあり、大規模修繕をするにあたり居住者の意見を聞くのはとても大事なことです。ただ、あらかじめ理事長にその旨を通知しておかなければなりません。


ポイント


総議決権行使者として、あらかじめ届け出された母親のかわりに来た、共有者である娘の総会への出席について


解説


 管理規約の44条の2に「住戸1戸につき二以上の組合員が存在する場合の議決権の行使については、あわせて一つの組合員とみなす」とあります。また次の3項で「一つの組合員とみなされる者は、議決権を行使する者1名を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出なければいけない」と書かれています。今回のケースのように“議決権行使の選定者以外の人が来ている”場合は、法律上では娘さんは代理できないという解釈になります。ただ、母親が急用で娘さんが出席した場合でも一切認めないのは現実的ではありません。
 そこで、とりあえず出席してもらい、後日お母さんと娘さんの連名で、この総会については「娘を議決権の行使者にする」という書類を提出してもらうことにします。一般的には、共有の場合、どちらを議決権の行使者にするかは毎年の総会ごとに指定してもらうのが一番望ましいのですが、実際にはそれは大変なので、最初の段階で議決権行使者の届出を出してもらい、その後、交代するという連絡がない以上、当初の指定が有効だと考えて扱えばよいと思います。議決権行使者を指定せずに、一方の人が出席したら、事実上その人に議決権行使を認めたとしてもかまわないし、認めるべきだろうといわれています。 【第2場面】開会と議長、書記、議事録署名人選出
 (議長選出、議事録署名人の選出、議決権数)


ポイント


総会における議長の選任について


解説


 議長については、区分所有法では「規約に別の定めがないかぎり、管理者または集会を招集した区分所有者の一人がなる」と書かれています。これに対し、標準管理規約では「議長は理事長が務める」と規約されています。したがって「規約の定めにより私が議長を務めます」と理事長が言って進めれば足ることです。ただ、現実的には総会を円滑に進める知恵として、そのことを出席者にはかるものだと理解すればいいと思います。そうすれば例え「異議あり」の声があっても、「規約上私がやらせてもらう」ということで、適法な総会として進めていくことができます。 (写真)


ポイント


議事録署名人の選出について


解説


 議事録は規約上は議長が作成し、議長及び総会出席の理事から議長が指名する2名がこれに署名押印しなければならないとなっています。 議事録は、議事進行役の議長に代わり、実際は書記が作成して議長名で出しますが、その経過が正しいかどうかをチェックするために2人の議事録署名人が署名押印します。


ポイント


総会成立に必要な組合員数や議決権数の考え方について


解説


 普通決議の要件について「区分所有者の頭数と議決権の両方の過半数を満たして初めて決議ができる」とする区分所有法は現実的ではないので、標準管理規約では「総会に出席した組合員の議決権の過半数でよい」となっています。しかし、そうすると極端に出席人数が少ない場合でも決議できることになります。さすがにこれは問題だということで、標準管理規約では「議決権総数の半数以上」が出席して、初めて管理組合の総会が成立し(定足数)、その過半数で決議できるとなっています。
 ただ、分譲業者がその分譲マンションで多くの住戸と議決権を持っているなど特殊な事例があった場合、この標準管理規約のような定めをしてしまうと、分譲業者のいいなりになっていくという危険があります。そのあたりはマンションごとに考えていく必要があると思います。
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