セミナー情報

平成16年度「マンションらいふあっぷ基礎講座&相談会」 報告

マンションらいふあっぷ基礎講座&相談会

●大規模修繕から標準管理規約、マンション会計まで理解を深める●

(写真) 快適で安心なマンション生活を送るには、適正にマンションの維持管理を行う必要があります。その維持管理の主人公は、居住者であり、管理組合です。
 今回の基礎講座では、新しく管理組合の役員になられた方などを対象として、適正な維持管理を進めていく上で必要な基礎知識をテーマごとに説明。計3日間にわたり合計9講座を開催し、3日目には、管理組合の最高の意志決定の場である総会の進め方のポイントを「模擬総会形式」で再現し、解説しました。また別途、個別相談会も実施しました。

出演者

■大塚 哲雄 大阪土地家屋調査士会
■八杉 茂樹 (社)大阪府不動産鑑定士協会
■川畑 雅一 (社)大阪府建築士会
■杉原 滋 大阪市住宅供給公社
■大西 崇浩 大阪市住宅局

解説者

伊藤 ■伊藤 寛 
 大阪弁護士会
花田 ■花田 園子 
 近畿税理士会
北田 ■北田 五十一 
 大阪司法書士会

マンションの概要

  • マンション名/「ライフあっぷコーポ」
  • 建築概要/鉄筋コンクリート10階建・総戸数120戸・築14年・エレベーター1基・駐車場40区画・駐輪場(自転車120台・バイク12台)
  • 管理形態/全面委託で、管理会社から管理員1名が常駐
  • 管理規約/平成9年に同年改正の標準管理規約に準拠して改正
  • 議決権/1住戸につき1議決権
  • 管理組合役員/理事10名、監事1名で任期は各1年
  • 管理費等/管理費1住戸月額7,000円、積立金1住戸月額5,000円、駐車料1区画月額10,000円
  • 長期修繕計画/あり
  • 管理組合成立経緯/分譲当初は管理組合がなく、2年後の92年5月に区分所有者有志が管理会社のサポートで設立総会を開催。管理組合が発足した。

【第1場面】受付対応での問題
 (賃借人の扱い、組合員以外の者の出席) (写真)


ポイント1


総会議案の大規模修繕について意見を述べたいという、委任状を持たない賃貸居住者の総会への出席について


解説1 伊藤


 賃貸居住者の総会への出席については、区分所有法と管理規約に書かれています。法律には「区分所有者から承諾を得て、専有部分を借りている人は、その会議について利害関係があれば、集会に出席する権利もあるし、意見を述べる権利がある」となっています。要件としては、「利害関係を有する場合」という点がポイントになります。その議題に関係がなければ、出席できません。
 では大規模修繕の議案について利害関係があるかという問題ですが、基本的には貸し主の家主さんの方に利害関係があります。借り主としては別に大規模修繕の費用負担をすることもありません。実際上は、工事に入るとうるさいという問題も出てきますが、法律的にどこまで利害関係があるかといえば疑問です。
ただ、最終的に「駄目ですよ」と断ってしまうかどうかはまた別の話です。実際にお住まいになっている賃借人の意見を聞くというのも望ましいことです。結論的にいうと、厳密には法律上の利害はなくても、委任状を持たない賃貸居住者も入って頂いて、議論に参加して頂ければいいんじゃないかと思います。


ポイント2


組合員が、大規模修繕について詳しい知り合いの建築士さんを出席させたいという。組合員以外の者の出席について


解説2  伊藤


 法律上にとくに規定はありません。では管理規約でどういうふうに書いてあるかといえば、コーポの規約43条には「組合員のほか、理事会が必要と認めた者は、総会に出席することができる」となっています。そうすると、理事会の判断で決めればいい、ということになります。
 しかし、区分所有者の知り合いの建築士さんには、総会に出席する権利も、意見陳述権も、議決権もありません。総会は、本来第3者の方に入って聞いていただくという性質のものではありませんので、原則はお断りしても問題はないかと思います。理事会側がお願いして、建築士さんに来ていただくというケースはよくあると思いますが、まったく予測しない方に来ていただくというのは難しいのではないかと思います。 【第2場面】開会と議長、書記、議事録署名人選出
 (議長選出、議事録署名人の選出、議決権数) (写真)


ポイント3


総会における議長選任及び議事録署名人の選任について


解説3 伊藤


 議長の選出は、区分所有法41条で「規約に別段の定めのある場合、および別段の決議がある場合を除いて、管理者または集会を招集した区分所有者の一人がなる」と決まっています。そしてコーポの規約の40条の5項には「総会の議長は、理事長が務める」と書いてあります。この場面では円滑に進めるために「よろしいですか」と聞いて、承認という形で進めましたが、「40条第5項に基づき、総会の議長は理事長が務めさせていただきます」と言い切っても構いません。仮に、いまのところで「異議あり」という話しになったとしても、規約上は理事長がやるということになっていますので、異議は却下されることになります。
 議事録については議長が作成義務を負います。法律の42条、規約でも48条で書いてあります。議長さんが議事録を作るということですけれども、便宜上、書記という形でやっていただく方を決めておきます。議事の経過とか結果については正確に残さないと、後を継がれる方にも決議の内容については拘束がありますので、きちんと残しておかないといけません。そういう主旨から議長さんが署名押印するのに加え出席した区分所有者2名が署名押印します。


ポイント4


総会成立に必要な組合員数や議決権数の考え方


解説4 伊藤


 区分所有法上の決議の要件は、「区分所有者および議決権の各過半数で決する」と決まっています。ただし、これについては規約で別に決めることができます。実際上、標準管理規約では47条に「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する」と書いています。実はその前にもひとつ要件を作っています。これは、議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければなりません。ですから、標準管理規約ではまずは総議決権の半数以上が出席した上で、その中で議決権の過半数で可決ということになります。これは管理規約上の問題なので各々の管理規約を確認していただきたいと思います。
次へ→