セミナー情報

平成26年度「マンション管理の基礎知識」基礎セミナー& 管理組合交流サロン報告  6/28, 7/21, 7/27

開催日時:平成26年6月28日(土)、7月21日(月・祝)、7月27日(日)

6月28日(土) 第1日目−1

講座1 マンションの防災力向上について
マンションの防災力向上について 講師

各マンション管理組合でプランを策定し、防災力の向上を目指しましょう。〈講師〉大阪市都市整備局企画部住宅政策課
担当係長 武平 俊秀(たけひら としひで)


1章 基本編 1.大阪市の被害想定
大阪市の地図情報サイト「マップナビおおさか」には、東南海・南海地震、上町断層帯地震を始め、5つの地震での被害予測、防災関連施設の位置等が確認できます。
また浸水想定区域図もあります。ぜひご確認いただければと思います。
2.大地震への備え
大地震が起きると、自宅内で負傷する/住戸内・エレベーター内に閉じ込められる/ライフラインの停止で生活が困難/災害情報の収集や家族等の安否確認が困難といった状況になります。
また、災害後は、マンション内の負傷者等の救助、飲料水や食糧の確保などが問題になり、マンション全体での共助が不可欠になります。
3.防災計画アクションプランとは
既存マンションの防災力向上のために、大阪市は「防災力向上アクションプラン」の策定を支援する策定マニュアルを作成しました。

2章 対策編 A 災害直後の安全確保
1.住戸内の安全
災害時に一番大事なのは、自分の身の安全を確保すること。阪神淡路大震災の時、死因の約8割が建物被害による窒息・圧死と言われ、この中には家具の転倒によるものも含まれています。管理組合として家具転倒防止対策のマニュアルを作成・配布したり、周知することは重要です。各戸でも、家具や家電等に転倒防止器具をつける。措置が困難なら、それが倒れても下敷きにならない配置を考えます。ガラスには飛散防止フィルムを貼ると良いでしょう。
2.避難経路の確保
マンションの自宅から建物の外に避難するルートを想像してください。廊下やバルコニーには障害物を置かない。バルコニーの避難ハッチや仕切り横にモノを置くのも良くありません。また、枕元には避難に備えて懐中電灯、底の厚い履物、ブザー等があれば安心です。
3.エレベーター閉じ込め対策
地震時管制運転機能付きのエレベーターなら最寄り階で停止します。この機能がない場合は、全ての階のボタンを押して、止まった階ですぐに下ります。万一の時のために、エレベーターの隅に置く閉じ込め対策キャビネットもあります。
4.安否確認
万一の時に玄関に貼る安否確認ステッカーがあると良いでしょう。名簿の作成・更新は、安否確認のために、可能な範囲で取り入れてはと思います。
5.救出救助
バール・ジャッキ・ハンマー・のこぎり・救助用ロープ・布担架等を、管理組合で備蓄しておきましょう。
6.身体へのケア
救急箱の常備、場合によってはAEDを設置しておくのも良いでしょう。

B 災害後の生活維持
平成25年5月、内閣府の防災会議で1週間の備蓄が呼びかけられました。
7.飲料水
1人当たり1日3ℓとして、4人家族だと1週間で2ℓペットボトルで42本。たとえば3日分は家庭で、4日分は管理組合で備蓄するなど、家庭と管理組合での分担も考えましょう。敷地内の受水漕・貯水槽等から水が取り出し可能なら、造水機で飲料水にすることも考えられます(但し動力が必要)。
8.食糧・食事の確保
煮炊き不要の食品の備蓄は、飽きないようバリエーションも必要です。カセットコンロ、かまどベンチなどの炊き出しセットも管理組合で備えれば安心です。
9.し尿処理の対応
簡易トイレを備蓄すると良いでしょう。
10.生活用水の確保
風呂の水を溜めておいたり、貯湯式給湯器の水を取り出すこともできたりします。
11.一時避難場所の確保
災害時に、避難の集合場所や炊き出しなどに使う活動場所を決めておきます。
12.生活場所の確保(高層住戸の生活維持)
高層階にも防災倉庫を設置する、低層階に避難スペースを設けるなどの対策が必要です。

C ライフライン復旧までの生活支援
13.災害時活動場所の確保
情報の収集・発信や備蓄品の配給等、管理組合が主体となって活動する場所が必要です。
14.情報収集・伝達手段の確保
掲示板の用意や情報の収集発信の方法等を、管理組合で検討しましょう。
15.廃棄物の対応
一時保管場所を敷地のどこかに設置できるかどうか考えておきます。
16.日常用品の確保
使い慣れたものや、お気に入りの銘がらのものなども備えておくと良いでしょう。
17.夜間の照明
夜間の作業や安全確保のために照明を確保しておきます。

D 自主防災活動
18.防災訓練
防災訓練を通じて、いざというときの行動・手順を確認するとともに居住者どうしの交流を深めることも大切です。
19.地域連携
東日本大震災では、マンションに近隣の自治会から差し入れがあったなど、地域との連携で注目すべきことがありました。

おわりに 管理組合・家庭での災害の備えを、まず考えてみるのが大切な一歩です。そこからプランを策定して、その後定期的に見直しして、よりよいものにしていただければと思います。

6月28日(土) 第1日目−2

講座2 管理組合のための法律知識
管理組合のための法律知識 講師

マンション管理と日常生活のトラブル解決には管理規約の有効な運用が大切です。〈講師〉大阪弁護士会 弁護士 
細川 良造 (ほそかわ りょうぞう)


《1》区分所有法の基本概念等について 1 区分所有権
専有部分を目的とする所有権で、共用部分は対象外。
2 専有部分と共有部分
《専有部分》…区分所有権の目的である建物の部分
構造上の独立性・利用上の独立性の要件を充足する必要があります。
《共用部分》…専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の付属物法定共用部分と、管理規約上の共用部分があります。
3 専用使用権
建物の共用部分または敷地の一部を特定の区分所有者が、排他的に使用収益する権利をいいます。[例]専用駐車場、専用庭、バルコニー等
4 敷地利用権
専有部分を使用するための建物の敷地に関する権利をいいます。専有部分と一体的に処分されます。
5 区分所有者の義務及びその違反に関する措置
●建物の保存に有害な行為[例]専有部分の耐力壁を撤去等
●区分所有者の共同の利益に反する行為
[例]住居専用使用を店舗とする、他人の迷惑になる騒音・振動等。
管理組合はこれらの違反行為に対して勧告、指導、行為の停止等を請求できます。

《2》マンション管理について 1 管理組合等
[管理組合]区分所有者全員で構成され、マンション管理の主体となる団体
[集会]管理組合の意思決定機関
[管理者]共用部分等の保存、集会の決議などを行う
●管理組合の主な役割……共用部分の保安、保守、清掃等/組合管理部分の修繕/長期修繕計画の作成または変更に関する業務等
●管理組合の意思決定
普通決議……区分所有者及び議決権の各過半数で決する
特別決議……区分所有者及び議決権の各4分の3以上による集会の決議によって決する[例]エレベーター新設、駐車場の増改築工事等。規約によって、定期的な大規模改修は定数を過半数まで減ずることができます
特殊決議……区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数による集会の決議によって決する(建替え決議)
2 管理規約
管理規約はマンション管理の最高自治規範です。国土交通省の公表する標準管理規約の変更に倣って規約を変更するには総会の管理規約変更[特別決議]が必要です。
●標準管理規約の主な改正点(H23年改正)
1.理事または監事は、マンションに「現に居住する組合員のうちから」の「現に居住する」を削除 2.総会における議決権の取り扱いの適正化 3.管理組合の財産の適切な管理等
3 マンション管理適正化法(H13.8.1施行)
1.マンション管理士制度の導入 2.マンション管理業者登録制度 3.マンション適正化指針の制定 4.国・地方公共団体による情報提供などが主なポイントです。

《3》日常生活をめぐる問題について 1 管理費等に関する問題
負担割合は持分に応じて負担するのが原則です。
●増額…負担割合の変更、割合に差を設ける場合、変更後の規約に合理性があるかどうか問われます。
●滞納…管理費の消滅時効は5年。対策として、口座引き落とし、遅延損害金・弁護士費用等を請求できるように規定することが考えられます。さらに、滞納が生じた場合には口頭による督促、内容証明郵便による督促、支払督促、訴訟(少額訴訟、通常訴訟)等の手段があります。
2 ペットに関する問題
●ペット飼育禁止の規約を新たに設ける場合、現在ペットを飼育している人に対して『特別の影響』(区分所有法31条)を与えることになる可能性もあるため、一代限りで認めるなど柔軟に話し合うことも必要です。
●ペット飼育禁止の規約に違反がある場合、管理組合は飼育禁止の勧告、飼育差し止め請求をすることが考えられます。
3 違法駐車に関する問題
違法駐車の停車場所が公道の場合、警察に対処を求めることができます。マンション敷地内なら自力執行禁止の原則があり、強制撤去にはリスクがあります。
●対処法……車の所有者を調べる/所有者に警告書等を送る/車の明け渡しを求めて訴訟をするなど
4 ベランダでの喫煙等に関する問題
[例]ベランダでの喫煙を禁じる管理規約や使用細則はなかったものの、「自己の所有物内でも(略)、行為が第三者に著しい不利益を及ぼす場合には、制限が加えられるのはやむを得ない」として喫煙者側に5万円の損害賠償を認めた事例もあります。(名古屋地裁H24.12.)
5 違法貸しルーム
住戸を簡単な壁で区切るなどして、多人数に貸出している物件。建築基準法に適合しない場合があります。対策として、管理規約や細則に、改修計画の建築基準法等の法令違反を不承認事由と定めておくことが考えられます。

《4》補修・建替え等について 国土交通省は、「マンション建替えの円滑化に関する法律の一部を改正する法律案について」平成26年2月に閣議決定、6月18日に参議院で可決しました。耐震性不足のマンションについては、区分所有者等の5分の4以上の賛成で、マンション及びその敷地の売却を行う旨の決議ができます。また、建替えで新築される場合、一定の条件を満たせば容積率が緩和されます。

7月21日(月・祝) 第2日目−1

講座3 子どもを育むマンションコミュニティ
子どもを育むマンションコミュニティ 講師

貧困や虐待、過干渉にあえぐ子どもたちに、ちょっとした言葉かけで見守ってあげて〈講師〉NPO法人 西淀川子どもセンター
西川 日奈子 (にしかわ ひなこ)


数年前、大阪市内のマンションで育児放棄に遭い、亡くなるという痛ましい出来事がありました。当機構ではこうした事件を受けて、子どもの目線に立って、マンションのコミュニティをもう一度考えようとこの講演を企画しました。
1.子どもたちを取り巻く状況 子どもの願いはシンプルで、そばにいてほしい、自分を信じてほしい。でも、貧困や虐待等を背負っている子どもたちは、しんどい、もやもやイライラするけれど、その気持ちを言葉にできません。さて、実際の子どもたちを取り巻く状況を見てみましょう。
〈虐待〉……通告は増加の一途で、平成24年に6万6807件。この22年間で60倍に増えています。虐待は英語でabuse(アビューズ)、大人側の間違った目的で子どもを使うこと。子どもはその支配された環境にいることで、大人になっても抜けきれないトラウマを作ります。
〈DV、夫や配偶者からの暴力〉……平成25年に4万9533件。子どもの前での暴力・叱責などの面前暴力が深刻です。
〈発達障がい〉……子どもたちの6~7%には何らかの発達障がいがあると生物学的に言われていますが、それを受け止める学校や地域の力量がなくなって来ているように思います。
〈いじめ〉……大津の事件以降、対策や調査もされていますが、子どもの1/3くらいはいじめられたことがあると答えています。
〈小中学校の不登校〉……約12万人。
〈高校中退〉……平成23年度で約5万4000人。
〈居所不明〉……子どもを連れて知り合いの家を点々としている若い親もいます。
〈離婚・再婚〉……子どもにとっては、ハッピーな離婚は原則ありません。そこを引き受けながら、選択してほしいと思います。
〈貧困〉……OECDの基準を用いた子どもの貧困率は、2012年には16.3%と過去最悪。シングルマザーの85%が働いているのに、貧困から出られない状況です。国のGDPの2.6%しか教育支出がないことも反映されています。
〈LGBT(性的少数者)〉……幼少時から自分の性のありように違和感を抱える人が20人に1人くらい存在します。例えば、スカート・ズボンをはかなければならないという苦しみなどで、自死率、自傷行為も多いです。
他にも性被害、非行、万引き、喫煙、窃盗、夜間徘徊、薬物などがあります。こうした問題の一方、勝ち組になりたいと、小さい時に習い事をたくさんさせている親もいます。そして、ものにならなかった時、親に露骨な失望をされて、そこから荒れて行く子どもがいます。

2.内面的な特徴 今、幼稚園の子どもたちに「いや」は悪い言葉と思われていることが多い。優しくしましょう、が先に来て、公園等でもケンカをしないように、ぶつからないように配慮されて、自己主張する機会を奪われています。
まず子どもに、自分がどう感じているかを引き出して、認めてあげることが大事です。わがままとは違う、自分を守る時はいやといっていいよ、と言います。

3.事例などから マンションからの通告は非常に多いそうです。児童虐待ホットラインからの通報があると、すぐに駆けつけるシステムになっていますが、マンションで最初の壁がオートロック。さらに、どの住戸かを特定するのがとても難しい。全戸回って、ここはというお宅に行くと「誰が通報したんや」と怒られたり。でも、そんな風に見られているとショックで泣き出すお母さんが一番多いそうです。子育てに大変な思いをしているのに、というのがあるのかもしれません。
通報件数は年々増え続けているけれども、その約8割は、その地域での経過観察となっています。ですから地域での見守り力がとても大事になっています。

4.防災の要はコミュニケーション 災害の時など、要となるのは地域のコミュニティです。そのため、日頃から少しでもつながっていくのが大事です。マンションではその方法の一つに、掲示板があります。まずは情報を共有する。住民の2~3割がお互いのコミュニケーションを取ろうと前向きになると、どんどん変わって行きます。
今の時代、子どもにとって、親以外のそばにいる人の存在はとても大きいです。まずは、つながるための声かけをしていただきたい。背が高くなったねとか、元気そうだね、学校のプールはどないや?とか。練習などしてみるといいのですが、挨拶だけではない言葉かけを少しずつぜひ続けていただければ。
子どもには安心できる場所、安心できる人が必要です。それがあれば自信がついて、どう生きて行くかも考えられます。
皆さんのマンションでも、ぜひ子どもたちを気にかけて、何かあったら応援できるようなコミュニティを育んでいただければと思います。

7月21日(月・祝) 第2日目−2

講座4 管理組合会計の基礎と税務
管理組合会計の基礎と税務 講師

管理組合の運営に必要な会計と税務の知識を身につけ、健全な運営を〈講師〉近畿税理士会 税理士
久馬 範久 (きゅうま ひろひさ)


マンション管理組合の会計の基礎 1.会計の種類 会計には営利会計と非営利会計があり、マンション管理組合は、利益を求めない非営利会計になります。管理組合が共用部分の維持管理をするのに必要な金銭管理と記録、報告をするのが管理組合会計です。

2.管理組合会計の特徴等 【1】管理組合会計の一般原則
●正規の簿記の原則として、次の3条件を満たす必要がある……1.網羅性(財産の動き及び状態をすべて表す)2.検証性(検証可能な証拠に基づいて記録)3.秩序性(体系的に整然と記録)
●真実性の原則
●明瞭性の原則 科目の分け方の工夫
●継続性の原則 科目の中身にあるものを毎年変えない
【2】予算主義と目的別会計
●予算主義
管理業務は予算に基づいて執行します。支出が予算を上回る時は、管理規約で定めた予備費の流用や臨時総会の決議等によって、予算と支出の整合性を保ちます。
●目的別会計
一般会計(管理費)と特別会計(修繕積立金)は区分して経理します。収益事業を行う時は、収益事業に係る決算書も別に必要です。

3.決算書類 〈1〉収支予算書
管理規約で定められた業務を行うために見積もられた翌会計年度の収入と支出の一覧表
〈2〉収支決算書
会計年度の収入と支出の内容を明らかにする書類
〈3〉賃借対照表
会計年度末における管理組合の資産・負債及び正味財産の残高から財政状態がわかる書類。現金・預金の残高や負債が明らかになる書類です。
〈4〉財産目録
会計年度末におけるすべての資産及び負債の内訳明細として名称、数量、価格を詳細に表示。
〈5〉附属書類
未収金明細書、借入金明細書、月次収支計算書等

4.決算書作成の注意点 預金の残高証明書は、費用がかかりますが原本で確認します。通帳の原本も必ず確認します。
〈1〉現金、預金残高の照合
小口現金は決算末日に一旦預金に入れ、現金を0にして預金残高でチェックします。
〈2〉前払金、未収金、未払金、前受金の計上
管理費や駐車場、駐輪場利用料などが自動引き落としで、月末が土日になって翌月になる時は、未払金又は未収金計上します。
〈3〉収入項目、支出項目の照合
ふだん会計ソフトを使って、決算時だけエクセルに移したりすると、科目を間違えたり、決算用科目が違うこともあるので照合します。
〈4〉計算チェック
決算書・予算書の差額・合計は必ず合っているか、前期繰越収支差額の金額は予算と決算同額になるので差額は0となっているか。
次期繰越収支差額は、貸借対照表の正味財産と同じ金額になります。決算の数字は前期予算の横に並べるなど、決算報告書はわかりやすく作ります。

7月21日(月・祝) 第2日目−2

講座4 マンション管理組合の税務
マンション管理組合の税務 講師

〈講師〉近畿税理士会 税理士 田野 卓也 (たの たくや)


マンション管理組合は、収益事業を営む場合に限り、その収益事業から生じた所得に課税されます。ただ、マンション管理組合法人については、収益事業のあるなしにかかわらず、法人住民税の均等割が課税されるので、注意が必要です。

《収益事業について》 法人税の規定で、課税対象になる収益事業は34種類。そのうちマンション管理組合で、主に対象となるのは以下のものです。
●不動産貸付業…携帯基地局や電柱・CATVの設置収入、自動販売機の収入
●席貸業…会議室等を区分所有者以外に貸して得る賃料
●旅館業…ゲストルームを区分所有者以外に貸して得る賃料
●駐車場業…区分所有者以外から得る収入
●物品貸付料……区分所有者以外に行うカーシェアリング等

《収益活動にかかる税金》 ●国税(法人税)…年800万以下の所得 15%
●法人住民税…法人税割:法人税額×17.3%、均等割:7万円
●事業税及び地方法人特別税…事業税:所得のうち年400万円以下 2.7%、800万以下4.0%
●地方法人特別税…事業税の額×81%
●消費税…収益事業が1000万を超えた場合、翌々年から課税
他にも管理人や理事に報酬を支払った場合、マンション管理組合が源泉徴収義務者となり、報酬から所得税を控除して納税します。

《駐車場収入について》 平成24年に国税局から出された意見です。
[前提条件] マンションの管理規約で、区分所有者以外の駐車場の外部使用が可能。非区分所有者の駐車場使用収益は、マンション管理費又は修繕積立金に充当
[ケース1] 区分所有者かどうかを問わずに広く募集し、申し込み順とする→全ての駐車場使用が収益事業に該当する
[ケース2] 区分所有者の使用希望がない場合のみ募集、申し込みがあれば許可する→外部の使用部分のみが収益事業
[ケース3] 非区分所有者への積極的な募集は行わないが、申し出があり、空きがあれば短期的な貸出しを許可→全部非収益として申告の必要なし

《収益事業のメリットデメリット》 収益事業を行うと、法人税等の支払いが生じるほか、決算書も収益と非収益に分けて作らなければなりません。また税務署と大阪市・大阪府に開始の届け出も必要です。もし収益事業について無申告なら5年間に遡って法人税等を納税したうえに加算税、延滞金も生じます。駐車場収入は、本来非課税の区分所有者分が課税対象にならないよう、管理規約をきちんと整備しておきましょう。

7月27日(日) 第3日目−1

講座5 わかる!大規模修繕の進め方 ~管理組合の心構え~
わかる!大規模修繕の進め方 ~管理組合の心構え~ 講師

建物管理は人間の健康管理と同じ。
マンションをよく知り、情報を共有しましょう。
〈講師〉(公社)大阪府建築士会 
桑原 宏明 (くわはら ひろあき)


マンションの大規模修繕は、建物・設備の経年劣化、設備機器等の保守可能期間、共用部の要求水準の向上などに対応するためです。建物管理は健康管理と同じで、今の状態を知る→毎年の共用点検で定期的な診断
→専門的な診断・劣化診断→定期的な修繕、という流れになります。

1.自分たちのマンションのことを知ろう まずは構造/階数/築年数/総戸数/販売会社/建設会社/建物設備など、マンションの基本を知りましょう。そして、自宅以外の階や屋上など、マンションを一通り見てみます。さらにマンションのカルテ(修繕履歴)を、総会資料で確認も必要です。詳しい資料は管理組合で保管しています。

2.劣化の診断とその対策 A.建物劣化診断
●パートナー(専門家)の選定(後述)
●住民アンケートの実施…バルコニーなど、専用使用部の状況と共用部の改良要望について聞きます。
●既存書類等の確認…管理組合で設計図書、建物図面、意匠図、構造図、設備図/申請確認(副本)、検査済証、消防署提出書類/定期点検書類及び工事修繕履歴の資料を用意します。
●建物劣化診断…外壁仕上げ材/躯体/鉄部/設備などの診断の他、必要な住戸には立ち入り調査もします。
●調査結果報告会…マンションの健康状態(劣化状況)を周知するため、できるだけ多くの住民にご参加いただきます。
B.長期修繕計画の見直し
分譲段階では、修繕積立金が少なく見積もられている場合もあります。修繕工事の実施時に、一時金の徴収や借り入れを行ったマンションの割合は、約2割に達します(平成20年度マンション総合調査)。
不足する場合、積立金の改定や一時金の借り入れが必要になります。
C.大規模修繕計画立案
●工事内容の立案
基本的な修繕工事…躯体補修/タイル補修/外壁塗装/鉄部・その他塗装/防水改善・改良工事…安心・安全性の向上[バリアフリー、防犯カメラ]/快適性の向上
[窓、玄関扉の取り替え]/共用部の改善
[駐車場・駐輪場その他]
優先順位を検討します。一般的には危険性を伴う劣化や機能が損なわれているもの、改善に足場が必要なものを優先します。
●管理規約の確認
専用使用の共用部では、規約違反のトラブルが多くみられます。管理規約の確認と必要に応じ細則の作成も生じます。国が作成している標準管理規約と比較してみることも有効です。
●概算予算の確認
専門家が既存の図面から予算を作成します。資金計画や規約の見直し、個人負担の費用等、事前のアナウンスは大事なので、総会・工事計画説明会を実施、皆さんで情報共有しましょう。
●施工会社選定
[募集方法]公募方式/指名方式
理解を得るためには公募が望ましいです。
[選定方法]入札方式/見積合わせ方式
工事金額だけでなく工事の体制や会社の考え方も聞く後者がおすすめです。
[選定の流れ]書類等で5社程度にして現場説明会、見積、面談等を経て1社に絞ります。契約会社・金額の承認には、必ず総会での承認が必要です。
[工事説明会]内容・スケジュール・現場体制や、住民の協力が必要なこと等を説明します。
[組合・住民の準備]駐車・駐輪車両の移動、バルコニー・専用庭の片付け、住民アンケート(住戸内作業日程及び個人負担工事)、近隣へのあいさつ等をします。
D.大規模修繕工事
[工事監理]工事期間中は、管理組合に代わってコンサルタントが監理を行います。
[定例会議]月に1~2回実施。工事の進捗、安全対策などを管理組合、施工会社、コンサルタントの3者で確認します。
[竣工検査]施工者検査、監理者検査、管理組合検査を行います。
[工事完了後]工事報告書、竣工図書、各工事の保証書、精算対象工事の結果報告書、アフター体制の書類が引き渡されます。

3.建物を守るチーム作り 大規模修繕工事は準備から実施まで2~3年かかります。理事会が1年任期の場合、この時期だけ複数年度体制にする、直前理事が関わる等の工夫や、大規模修繕委員会(専門委員会)の設立も検討します。管理規約に専門委員会設立項目がない場合は、規約改正や細則を設けることも必要です。

4.パートナー選び コンサルタントは、大規模修繕工事のための準備から工事監理まで、管理組合と一緒に取り組む設計事務所です。インターネットや行政の広報から情報収集し、管理組合向けのセミナー、専門家派遣、相談会を利用し、専門家を探します。近隣で修繕工事を経験した管理組合に相談しても良いかもしれません。見積を依頼する専門家は複数とし、会社の体制、実務経験(会社概要/実務実績/保険)についてもヒアリングを行い比較検討し、選定しましょう。

5.定期的なケア(メンテナンス) 大規模修繕工事終了後、長期修繕計画を修正します。各工事の保証期間は必ず確認し、不足分は保証期間に対応することで結果的に次回の修繕費用を安く抑えられます。

6.さいごに 管理組合は、良いパートナーを探して、賢い発注者になる。そのために、公的機関を上手に利用していただければと思います。