セミナー情報

平成28年度「マンション管理の基礎知識」基礎セミナー&交流サロン報告 7/3(日)、7/17(日)、7/24(日)

開催日時:平成28年7月3日(日)、7月17日(日)、7月24日(日)

平成28年7月3日(日)第1日目−1

講座1 分譲マンションにおける 高齢者問題と相続について
分譲マンションにおける 高齢者問題と相続について 講師

避けられない高齢化や 少子化、建物の劣化等...

不動産価値は「管理」が 明暗を分ける





〈講師〉大阪司法書士会 沖 健補 (おき けんすけ)


マンションについての近年の諸問題について司法書士として見聞したことをお話したいと思います。

1 地方の問題だけではなくなった都市部における空き家問題
「空家等対策の推進に関する特別措置法」が昨年度施行されました。例えば築63年の日本最古のマンションが東京都の四谷にありますが、建替えるまで23年かかりました。全国で築年数40年以上の建替えはわずか200棟程度であり、このように今後建替え工事に至るまでにはさまざまな問題を抱えています。
①空き家の増加の原因
高度経済成長期に地方から都市への人口集中によって建築ラッシュがあり、その結果、今日の空き家の増加問題を招いています。都市部では需要より供給が多く、依然として新築の分譲、高層マンションが建ち、古いものも増えていきます。一方、地方では高齢の親が亡くなると空き家となるような状況となっています。
②マンションにおける空き家
老朽化に伴う空き家は増加傾向にあり、今後行政が整理していくのが600万戸、10年後には1000万戸になるといわれています。大阪府は全国3位の空き家率で、行政指導が入る可能性があります。不動産業者は富裕層の相続税対策で新築のオーナーズマンション購入やサブリース型のアパート経営を盛んに勧めています。しかし、管理会社の倒産などで、問題となるケースも出てきています。
③外国人による投資マネー
賃貸や民泊、シェアハウスを目的に、ここ数年、外国人が空き家や中古不動産物件を購入しています。自国に住み、管理は日本の仲介業者などにまかせているので、管理費や固定資産税等の滞納があり、行政から通知や督促をしても郵便物が届かないケースも増えています。日本に居住していない外国人なら連絡先はきちんと把握しておく必要があります。また、近い将来、外国人所有者が増えると、総会の議事録が英語や中国語で記載され、通訳が必要になることも考えられます。

2 建物の老朽化と所有者の高齢化
マンション建物の老朽化と住民の高齢化は深刻です。高齢化が進み、単身世帯が増えて空き家率が30%を超えるとスラム化の始まりといえます。「空家等対策の推進に関する特別措置法」の対象となる空き家は、「特定空家」として行政が指定して整理の対象となります。しかし、諸課題もあり予算もかかるため進んでいないのが現状です。
①建替え不能の老朽化マンションの実態
容積率1.5倍にしても建替えられるマンションは平成26年国土交通省調査によってもわずかです。「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」(2014年12月改正)により、耐震性能不足が認定されたマンションは、区分所有者数等の4/5以上の決議があれば一括売却が可能になりましたが、解体費用等が買い取り価格に含まれるため期待する価格での売却は困難です。開発業者は更地を望むので老朽化マンションには手を出そうとしません。
②高齢化や相続における対応
司法書士である私の所にも不動産業者からの中古物件の問い合わせがあります。高齢化や相続などによる中古物件を探しており、情報を欲しがっています。高齢者は資産の多くを不動産で持っているため、法定相続や遺産分割協議による相続などの問題が出てきます。管理組合側も介護老人や管理費滞納、固定資産税の未払いなどで家族や後見人と協議する場合が出てくるので、事前に管理規約の見直しや対策を講じておく必要があるでしょう。

3 これからのマンション運営における管理組合という存在
すべてが合議で決まるのがマンション運営です。区分所有者の変更、大規模修繕や修繕費の不足等の問題、決議に参加しない空き家所有者、オーナー所有者、1住宅1票という不平等の議決権、議決権の見直し…さまざまな問題が浮上してきます。また、コミュニケーション不足が招く共同体の崩壊があります。老朽化したマンションの建替えは「ほぼ不可能」といっていいでしょう。そこで管理組合はどう機能するかが問われます。
①相続による所有者の変更
相続による所有権移転は名義変更の感覚で依頼されますが、相続登記には被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍謄本(原戸籍、除籍)が必要となります(本籍地へ請求)。被相続人が再婚、離婚を繰り返す場合や、養子縁組等がある場合もあり簡単には「所有権移転」できません。法定相続は簡単ですが、遺産分割協議になると調整に時間がかかります。相続で所有者が変わった場合は変更届の必要があると伝えておくようにします。また、管理組合が相続や売買による所有権移転登記の調査の必要性がある場合は、法務局で調べることができます。
②投資目的のマンションと管理
投資目的や会社の事務所など多種多様な用途に使われているタワーマンションなどの場合には、管理会社主導で管理組合が機能していないことも多いです。合意形成が困難な住民構成に加えて、マンション修繕費不足の問題もあります。修繕費を取り上げてみると、築30年前後のマンションは比較的修繕積立金の不足は目立ちませんが、築10年前後のマンションは、販売に際し管理費、修繕積立金をかなり低く設定しているようです。そのため、将来大規模修繕の費用不足に備え早めに手を打つことが大切です。
③増えるマンションの紛争
大阪弁護士会館(北区西天満)に民間総合調停センターがありますが、管理組合の紛争が増えています。管理組合は素人集団なので管理会社との紛争も少なくありません。また、住宅型なのに住居以外に店舗や事務所に使用されているケースで住民間の合意がなくトラブルが発生しています。
最近増えているのが賃貸より3倍近い収益があげられる民泊の問題です。特に大阪市内で民泊が増えていくことは確実です。トラブルがあれば早めに民間総合調停センター等を活用されることをお勧めします。

【最後に】
マンションは「管理」が命です。管理が行き届いている物件はたとえ長期間を経ても資産価値は落ちていません。管理組合はその点に留意して運営をしていってほしいものです。

平成28年7月3日(日)第1日目−2

講座2 民泊やシェアハウス等について
民泊やシェアハウス等について 講師

民泊・シェアハウスの 光と影を見極め 規制緩和に対するルール 作りが急がれる。







〈講師〉 大阪弁護士会辻岡 信也 (つじおか しんや)


1 民泊・シェアハウスとは
民泊は住宅(全部または一部)を活用して宿泊サービスを提供するものです(民泊サービス)。シェアハウスは主として個々の賃借人が賃貸人との間で賃貸借契約を締結して共同で使用する住宅を指します。国策としての宿泊施設不足対策(訪日外国人旅行者対応)や空き家の有効活用、不動産市場の活性化、文化や日常生活感の体験などのプラス面がある一方で、騒音やごみ問題などの近隣との摩擦やセキュリティの弱体化、治安の悪化、管理費のフリーライドなどのマイナス面も多くあります。
ともに法令上や法律上の定義はなく、経営が中国人、日本人、その他で1/3ずつ占め、そのほとんどが違法状態にあり、特に外国資本の多くが違法を認識しつつ制裁を恐れていないのが現状です。民泊仲介サイトで利用客の獲得が容易なことで稼働率が高く儲かるためますます拍車がかかっています(大手Airbnbで3万4千件・都市部に集中・大阪中央区がトップで2,900件登録)。中国人を対象にしたサイト「自在家」のようなサイトも複数あります。

2 民泊に関する法令
民泊は簡易宿所(客室を多人数で共用する宿泊施設)としての営業となります。 旅館業法や国家戦略特別区域法第13条第1項に適合する民泊は少なく、ほとんどが違法ですが、政府が後押しして規制緩和が進み、今後の民泊新法制定もあわせて、適法化のハードルが下ると予想されます。
●旅館業法…個人が自宅や空き家の一部を利用して行う場合(民泊サービス)であっても「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」に当たる場合には旅館業法上の許可が必要。知人や友人を宿泊させる場合は許可不要。罰則6か月以下の懲役又は3万円以下の罰金(旅館業法第10条)
●国家戦略特別区域法第13条第1項…外国人観光客の受け入れを目的として制定。東京都大田区と大阪府(2件)では条例施行。大阪市も条例を制定し施行を準備中。
●民泊新法…現在立法作業中で、宿泊施設としてではなく住居として貸し出す仕組み。旅館業法とは前提が異なる。事業者には登録が義務付けられるがインターネットによる届け出が可能の予定。

3 賃貸人の自衛
■民泊・シェアハウスの法律関係
●民泊…賃借人が利用者を宿泊客として利用させれば旅館業法違反。これを潜脱するため、賃貸借契約により利用させることもあるが、この場合は無断転貸(民法612条)として契約解除事由となる。
●シェアハウス…原則として寄宿舎にあたる。面積が100㎡までなら用途変更にあたっての建築確認申請は不要だが法適合性は必要。一般のマンションの1区画10名もの賃借人が居住する例もあるが建築基準法上、法適合性としては疑問が残る。少なくとも無断転貸や目的外利用として契約解除事由となりうる。
■契約解除
●無断転貸…賃貸借契約で特に許可したり個別に許可したりしない限り、民法612条により解除事由となる。一般的な賃貸借契約書では無断転貸の場合無催告解除が認められている。
●目的外利用…賃貸借契約で用法を定めた場合、目的外利用が用法違反として解除事由となる。

4 管理組合の自衛
■マンション標準管理規約の現状
専有部分の用途

第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
(シェアハウス等には使用してはならない)

国土交通省と国家戦略特区ワーキンググループの有識者で解釈の見解が分かれています。マンション管理組合が民泊を禁じたいなら、管理規約の改正により明示的に民泊を禁止することが安全につながります。
■マンション管理規約による
民泊・シェアハウスの明示的禁止
マンション管理規約の変更手続きにあたっては、管理組合の集会の特別決議(組合員総数および議決権総数の各3/4以上の議決)を経る必要があります(区分所有法第31条)。根回し不十分の状態で決議にかけるべきではないと思います。条項の文例については、国土交通省のHPから「民泊サービス」のあり方に関する検討会(平成28年2月29日)第6回資料1「管理組合法人ブリリアマーレ有明Tower&Gardenご提出資料」で、禁止規約改正実例が紹介されているので参考にしてください。
■訴訟手続きによる民泊・シェアハウス
営業の差し止め
◇禁止事由…区分所有法57条第1項違反と管理規約規定の用法違反がある。
◇証拠収集…宿泊者の証言、映像、写真
(プライバシーや肖像権侵害に要注意)
並びに民泊仲介者サイトの登録情報
(Airbnb、自在家、住百家等)
なお、近年大手のサイトではサイト側に苦情を申し入れる仕組みを設け始めた。
◇難点
●民泊を営業する所有者が不明の場合
訴状や申立書の送達が困難だが適切な住所調査を経れば相手の受取を確認しない簡易な送達は可能。住所等は必ず管理組合に届けさせる仕組みを形骸化しないようにする。個人情報保護には要注意。
●民泊営業する所有者が海外在住の場合
海外への送達は国家間の条約に基づき大使館等を通じて行われる。相当金額の送達費用のほか、翻訳費用など付随する費用が発生し、期間も数か月を要す。
●管理規約での外国人所有者の排斥
海外在住の外国人所有者には送達が困難。外国人の所有権比率が3/4を超えれば、管理組合内の公用語が変わる恐れも。外国籍であることを理由には排斥不可。

【まとめ】
●民泊・シェアハウスとしての利用には光と影がある。●今後、民泊・シェアハウスに関する規制は緩和される方向で間違いない。●管理組合としては、民泊・シェアハウスとしての利用を拒絶するのか受け入れるのか、早急に話し合わなければならない。●受け入れるなら、ルール作りが必要である。

平成28年7月17日(日)第2日目−1

講座3 改正後のマンション 標準管理規約について
改正後のマンション 標準管理規約について 講師

大切な個人の財産、 共有財産のため、 管理の基礎・管理規約 改正を考える。





〈講師〉 (公財)マンション 管理センター 大阪支部長 長田 康夫 (おさだ やすお)


全国のマンションストック戸数(平成27年末現在)は約623万戸、築30年以上が約162万戸という現状があります。
当センターは国から「マンション管理適正化推進センター」の指定を受け、相談業務として、昨年度も8,222件の相談を受け、なかでも区分所有法・管理規約が20.6%と例年同様高くなっています。本年3月にマンション標準管理規約が改正されたことも踏まえ、基礎知識をお話します。

1 マンション住まいの基本的な考え方
■マンションでの考え方・話し合い方
マンションは一つの建物に共有でない複数の所有権(区分所有権)が存在する状態で、専有部分と共用部分を持つことになります。そのため建物を共同で管理するための最低限のルールとして昭和37年に「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」が制定されました。持分だけの処分や共有物の分割請求の不可など、民法上の共有とは異なっています。
マンションの管理組合においては、全員の合意形成で決めた手続き上のルールである管理規約が大切です。管理規約は法律に即して定めたなら、最高自治規範として当該マンション内では法律と同等の効力を有します。
■管理についての実務や指針
区分所有法では、管理をするのは一般にいう管理組合で、集会を開き、規約を定め、管理者を置くことができます。管理を実務面で手助けするのは管理のプロである管理会社で、委託契約を結びます。管理の助言や指導を専門家に頼むこともよい方法です。また、区分所有法以外に、国として法律や指針が用意されています。
●マンション管理適正化法・指針、マンション管理標準指針、マンション総合調査結果報告書など

2 マンション管理規約の基本的事項
①管理規約に定められる事項…管理または使用に関する区分所有者相互間の事項。
②管理規約の効力…中古で購入した区分所有者はもちろんですが賃借人は住まい方のルールとして規約を守らなければならない。
③管理規約の改正…区分所有者総数および議決権総数の各3/4以上の特別決議で可能。強行規定で遵守。
④管理規約の衡平性…改正する場合は組合員相互間の利害の衡平性が図られた規約とし、その事実が始まった時点から今までの経緯等を総合的に考慮する。

3 管理規約の改正の時期
①法律・標準管理規約が改正されたとき
②管理規約の内容が守れなくなったとき
③管理規約の内容があやふやで組合内で解釈が異なる意見が出たとき
④マンションの将来における適正な管理のために問題を未然に防ぐとき

4 マンション標準管理規約の改正の背景・ポイント
改正の経緯および背景については「高齢化等を背景とした管理組合の担い手不足、管理費滞納等による管理不全、暴力団排除の必要性、災害時における意思決定ルールの明確化など、様々な課題が指摘されており、これら課題に対応した新たなルールの整備が求められている」(国土交通省)
■管理の適正化に関する指針の改正については、コミュニティ形成の積極的な取り組みを新たに明記しています。
●コミュニティ形成は日常的なトラブルの防止や防災減災、防犯などの観点から重要。
●管理組合においても建物の区分所有等に関する法律に則り、良好なコミュニティの形成に積極的に取り組むことが望ましい。
●自治会および町内会等は各居住者が各自の判断で加入するものであることに留意すること、など。
■改正の主要項目については主に3つ。
①選択肢を広げるもの
●外部の専門家の活用・議決権割合
②適正な管理のための規定の明確化
●コミュニティ条項等の再整理・管理費等の滞納に対してとりうる各種措置
③社会情勢を踏まえた改正
●暴力団等の排除規定・災害時の管理組合の意思決定・管理状況などの情報開示

5 マンション標準管理規約改正事項の概要およびコメント
管理組合は財産を管理する団体として認識する必要があります。
1)外部の専門家の活用…選択肢として外部の専門家の就任も可とし、利益相反取引の防止、監事の権限の明確化等の所要の規定を措置。直接管理組合の運営に携わることも想定し、基本的パターンとして①理事・監事外部専門家型又は理事長外部専門家型、②外部管理者理事会監督型、③外部管理者総会監督型の3つを提示。
2)駐車場の使用について…駐車場が全戸分存在しない場合における入れ替え制などの公平な選定方法、空きが生じている駐車場の外部貸しに係る税務上の注意喚起等の解説を追加。
3)専有部分等の修繕等…原則的には理事会の承認等を得て実施可能。承認必要工事の確定、工事後の区分所有者の責任と負担、承認不要工事の届け出義務について言及(第17条専有部分の修繕等)。ただし、緊急を要する場合などにはその限りではない。
4)暴力団等の排除規定…暴力団の構成員に部屋を貸さない。役員になれないとする条項を整備。
5)災害等の場合の管理組合の意思決定…緊急時は理事会で決定することとした。
6)緊急時の理事等の立入り…緊急避難措置として理事長が専有部分に立ち入ることができるとした。
7)コミュニティ条項等の再整理…防災・防犯、美化・清掃などの活動は可能であることを明確にして各業務を再整理。
8)議決権割合…新築物件における選択肢として議決権について住戸の価値割合に連動した設定も考えられる旨を追加。
9)理事会の代理出席…あらかじめ代理者を定めておく等を追加し、議決有効性を巡るトラブルを防止。
10)管理費等の滞納に対する措置…滞納者への段階的なフローチャートを提示。
11)マンションの管理状況などの情報開示…情報を開示する場合の条項を整備。

平成28年7月17日(日)第2日目−2

講座4 管理組合会計の基礎と 駐車場等の外部貸しについて
管理組合会計の基礎と 駐車場等の外部貸しについて 講師

維持管理を適切に 実施するためには 管理組合の明瞭な 会計処理が重要です。





〈講師〉 近畿税理士会 今村 亮彦 (いまむら あきひこ)


1 管理組合の会計とその特徴
会計の種類は営利会計と非営利会計とがあり、非営利会計は家計と官庁会計、非営利法人会計に分けられます。管理組合は営利を目的としないため非営利会計となります。
一般原則は企業会計の基礎知識と同じで、複式簿記による記載が望ましく、書類は会計帳簿に基づいて真実な内容を表示したものとします。
①正規の簿記の原則…網羅性・検証性・秩序性の3条件を満たす。
②真実性の原則…会計帳簿に基づき収支および財務状況に関し真実である。
③明瞭性の原則…区分所有者などの利害関係者に状況などを明瞭に表示する。
④継続性の原則…継続した適用を心がけ、みだりにこれを変更しない。
以上の一般原則のほかに、基本的な重要事項として予算主義と目的別会計があります。
①予算主義…収入および支出は総会で決議された収支予算書に従って行う。特に支出については予算内にとどめ、予算を上回る場合は管理規約で定めた予備費の流用や臨時総会の決議などによって整合性を保つようにする。
②目的別会計…一般会計(管理費会計)と特別会計(修繕積立金会計)を区分して行う。混同すると適正な管理に支障を生じるため区分経理が不可欠である。

2 決算書類について
決算書類については、収支予算書、収支計算書、貸借対照表、財産目録、附属書類(未収金明細書・借入金明細書・月次収支計算書)があります。勘定科目については、資産、負債、資本、収益、費用の5つのグループに分けられます。資産と費用は借方を基本とし、負債、資本、収益は貸方を基本とします。
●資産…所有する財産で、現金、預金、預け金、未収入金など。
●負債…将来支払う義務のある借金で、前受金、未払金、借入金、預り金など。
●資本…正味財産。元手。繰越金、余剰金など。
●収益…原則収益を出すことが目的ではないため収入とする。管理費、修繕積立金、駐車場使用料、雑収入など。
●費用…運営上での必要経費(支出科目)。管理業務費、設備管理費、清掃業務費、水道光熱費、損害保険料、一般的な修繕費など。
決算書類の作成の流れは、取引の仕訳を起こし、総勘定元帳の該当勘定への転記、決算整理仕訳を行い、決算書類を作成します。特に、取引の仕訳と総勘定元帳の該当勘定への転記が正しく行われないと決算書類が誤ったものになるので点検は必須です。
内容のチェックについては、現金と預金残高を照合し、総勘定元帳の勘定残高と照合し、予算と実績の比較、前年度予算との比較をします。

3 管理組合を取り巻く課税問題
1)課税される可能性のある税金
●法人税・地方法人税・事業税…収益事業を行った場合に利益が課税対象になる。
●消費税および地方消費税…収益事業を行った場合に収入金額が年1000万円を超えると翌々年に納税義務が発生する。
●給料等の源泉所得税…理事や管理人に給与を支払う場合に所得税を天引きして納税する(源泉徴収票を作成)。
●固定資産税…管理組合で購入した備品等が高額である場合などに課税される。
2)収益事業を営むとは?
管理組合は営利目的の団体ではないため、基本的には法人税、消費税等の国税および事業税等の地方税を納める必要はありません。法人税法上、管理組合は「人格のない社団等」に、管理組合法人は「みなし公益法人等」に該当し、収益事業に該当する事業を営んでおり、課税所得が発生する場合には、法人税、事業税を納税する義務を生じます。そして「収益事業に該当する事業を営む」とは、不動産貸付業、駐車場業、旅館業など一定の事業を継続して、事業場を設けて行っている場合をいいます。
3)駐車場の外部貸しについて
マンションに設置された駐車場の利用料金は管理費や修繕積立金の収入源として見込まれているため、利用者が減少した場合、空き駐車場を区分所有者以外の者へ貸し出す動きが出てきています。その場合には、法人税の問題が発生してきます。
マンション管理組合が、常設された附属施設で駐車場業を行えば、収益事業に該当し、その収益事業から生じた所得に対して法人税が課されることになります。また、使用料収入はその管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てることとされており、その使途が限定されています(標準管理規約第29条)。
<法人税の課税モデルケース>
①ケース1…利用希望者を外部にも広く募集し、外部利用者と区分所有者とで利用料金、契約期間などに優劣が無い。
→ 一般的な月極駐車場と変わらないので駐車場利用料の全てが収益事業に該当する。
②ケース2…利用希望者を外部に広く募集するが、区分所有者に優先権があり区分所有者からの利用希望があれば外部利用者に退去頂く等の差を設けている。
→ 外部利用部分のみが収益事業に該当する。
③ケース3…利用希望者を外部には募集せず区分所有者に限定しているが、空き駐車場を工事車両などの駐車用に短期間貸し出す場合。
→ 短期間の外部利用は非収益事業に付随する行為とみなし、全て非収益事業に該当する。
(参考資料:国税庁のホームページ)
近年管理組合が申告漏れを指摘されていることもあるので、不安があれば一度、税理士に相談されることをお勧めします。

平成28年7月24日(日)第3日目−1

講座5 大規模修繕の 進め方について
大規模修繕の 進め方について 講師

管理組合にとってのベスト・パートナーとは? この見極めこそが工事成功の70%のカギを握る





〈講師〉 (公社)大阪府建築士会 橋本 頼幸 (はしもと よりたか)


1 大規模修繕工事の目的はマンションの資産価値の維持
マンションの大規模工事とは、ご存知の通り、およそ10年〜12年の周期で建物全体の修繕を行う工事のことです。また、数年に一度ずつのスパンで、主に劣化損傷した部分の補修をする、中規模小規模の工事も行われています。これらの修繕工事は、安全安心な生活環境の保持のみならず、マンションの耐用年数を上げ、資産価値を維持していくために行われています。
劣化し始めた箇所の修繕を行う中小規模の工事に対し、大規模修繕工事は、もともとの機能回復にとどまらず、時代にマッチした新機能の付加をも視野に入れています。社会の変化に伴い一般的なマンションの水準も年々上がっていきますので、経年化したマンションも初期性能を上回る性能に改良することで、資産価値の低下を防ごうというわけです。

2 マンションのライフサイクルを念頭に置いて計画を立てる
10年後、20年後、さらに30年後も、マンションの資産価値を下げずに、クオリティを維持しようとする大規模修繕工事ですが、成功させるポイントが三つあります。一つめは「マンションのライフサイクルを見据えて、長期的な修繕計画を立てること」です。では、マンションのライフサイクルって何でしょうか?
マンションの耐久性は新築時がピークで、そこから徐々に劣化がはじまります。劣化部分を補修し、損傷部分を修繕し、また改良を加えて性能をアップし…こうして繰り返し手入れをしながら、やがては終末を迎え、解体・撤去・建直しへと向かっていきます。これが、マンションのライフサイクルです。ですから、大中小規模の修繕工事は、長い目でマンションのこれからを考えることでもあります。

3 どこを工事するのか?誰が診断し誰が決定するのか?
ここで大規模修繕工事の流れを追いながらお話ししましょう。先ず、①大規模修繕工事の進め方を定める。ここで工事のパートナーを決めます。たとえば、設計事務所などのコンサルタント、管理会社、施工業者や塗装・防水などのメーカー等、工事のプロフェッショナルたちです。組合員全員の大切な資産の一大工事を、プロの立場から、ともに考え、力になってくれる大切なパートナーを選びます。
どこと組むかによっては工事の見積もりが大幅に違うこともあります。工事が終わってから、不必要な工事がされていたり、必要な工事がされていなかったり、また工事中の監理が甘くて、工事が雑で手抜きがあってやり直さなければならなかったり…こうした事態に至らないためにも、パートナーの決定には慎重の上にも慎重を期したいものです。
次にそのパートナーがプロの立場から②建物の劣化診断を行う。その結果を、③建物劣化診断として組合員に広報する。組合員が正しい情報を伝えられた上で事前合意することは、その後の工事の進行や予算決議をスムーズに運ぶ上で重要です。
次に④修繕範囲と予算の決定。⑤修繕範囲設計。⑥工事業者選定。劣化診断が出たら、どこをどう工事するのかを、予算と照らし合わせながら決めていきます。誰が決めていくのでしょう?管理会社ではありません。コンサルタントでもメーカーでもなく、発注者である管理組合(組合員)自身です。ここがとても大切なポイントです。
劣化診断の本来の目的は、劣化の程度を判定し、先に延ばすことが可能な工事は延ばし、必要な工事をどの程度の内容で行うかを診断することです。差し当たって必要のない工事、過剰な工事をする必要はないということです。先に延ばせるものは延ばすことで、長い目で見ると大きな経費削減にも繋がっていきます。たとえば、「屋上防水の保証がもう切れますよ」等の話はよく聞かれますが、10年で屋上から水が漏れることはまずありません。
一方で、本当は必要な工事をしないで放置しておいたがために、劣化が著しく進行し、補修する時に多額の費用が発生してしまったケースもあります。ですから、信頼できるプロのパートナーと組むということは本当に大切です。かと言って、設計を専門家任せにするのではなく、わからないことはプロと一緒に考える姿勢を持っていきましょう。
次に二つめのポイントは、予算の設定についてです。大規模修繕工事の予算の組み立ては、「いま必要な工事」+「いましておく方が有利な工事」+「管理組合(組合員)が求める工事(=資産価値向上のための、例えばバリアフリー化、設備機器の更新など)」を合わせて考えていきます。そして予算は、「今回の大規模修繕工事に必要なコスト」+「次回以降に必要な工事のコスト」さらには不足するコストを並行して考えます。
工事業者の選定についても、あくまで決定するのは管理組合(組合員)です。コンサルタントや管理会社が施工業者を決めてしまったり、名前や金額だけで安易に選択するすることも要注意です。 工事の内容・予算・施工業者が決定したら、あとは、⑦工事契約→⑧修繕工事→⑨完成へと進めていきます。工事中のチェック(監理)は非常に重要です。ここでも、専門知識と経験豊かなプロの目を持つベスト・パートナーと組んでいるととても心強いと思います。

4 工事直後から次回以降の準備がスタートしている
さて、大規模修繕工事が完了し、ホッとするのも束の間です。工事終了後に引き渡される書類(工事報告書、打ち合わせ記録、防水・塗装などの保証書、亀裂補修やタイル浮き補修の一覧と図面、アフター体制)等は大切に保管してください。そしてこれが大規模修繕工事三つめのポイントになりますが、今回の大規模修繕工事の内容を基に、これからの長期修繕計画を、今一度しっかりと見直すことは必須です。
それでは皆さん、より理想的なマンションの終活を創造されることを期待しています。

平成28年7月24日(日)第3日目−2

管理組合交流サロン
管理組合交流サロン 講師

最終日には、今回の基礎セミナーに参加された管理組合の 皆さんによる「管理組合交流サロン」を開催いたしました。


この交流サロンは、様々なマンションの管理組合どうし が、自由に交流し、今後も自主的に情報交換を送っていただ け る よ う な き っ か け 作 り の 場 と し て 企 画 し 、大 好 評 の 中 、回 を重ねています。
今回は、1チーム8~9名、計5つのグループに分かれて、 「大規模修繕工事や管理費のこと」「管理規約の見直しと改正について」「管理会社との関係」「大規模設備の管理方法」 「管理組合の高齢化対策(理事長の選出問題)」...等々、皆さ んが直面しているテーマについて、活発な意見が交わされました。

日頃マンション管理の現場でお力を尽くされている皆さ んですので、お互いの状況を直ぐに理解し合うことができ、 い ま 関 わ っ て い る 問 題 や 、頭 を 抱 え て い る 課 題 に つ い て 、親 身のアドバイスや情報交換が行われ、会場は大いに盛り上が りました。
交流会の一時間はあっという間に過ぎ、名残惜しさが残る 雰囲気の中、そこここに再会の約束を交わす人たちの姿も見 られ、最後には、メモ用紙にお互いの連絡先を交換し合いまし た。参加された皆さんは、今後は自由に連絡を取り合い、引き 続き有益な情報交換を続けていってくださることと思います。