地震の備えは大丈夫か!

 マンション管理支援機構の一員として様々な講演等で耐震診断・補強について如何に「最愛の人」や思い出、生活の場や財産等を自分たちで守るために重要であるか、口酸っぱく申し上げてきたが、若干であるが効果が見えてきてホッとした感がある。しかしながらこの効果は建築構造計算書偽造という由々しき社会問題が茶の間のバラエテイ番組や新聞等或いは通常は動かない政府・国会がすばやく動きセンシェーナルに報道された影響に他ならないことを考えると思いは複雑である。
 「言い訳」をする訳ではないが問題の建築士は建築士会員ではなく、他の社団法人の組織・会にも入っておらず地元の専門家集団の人々も知らず、当然交流もなかったと聞く。
 専門家集団の我々は常々社会の求めに応じることが出来るように様々な自然災害(風水害・地震)対策やバリアフリー等の技術的研鑽や交流を継続している信念を持った誠実な建築士であるが、今回のような一部の心無い行為者によって社会的評価が低下し残念でならない。今後は今までに増して市民社会に貢献し地道に活動を継続していきたいと奮起する次第である。
 さて、11年前の阪神淡路大震災で約6400名の死者の犠牲者の80%は家具や建物の倒壊による圧死が占め、箪笥や家具或いはTV・冷蔵庫等を丈夫な壁・柱に転倒しないよう緊結する要は自己責任で行うことが肝要であるが殆ど出来ていない。一方マンションの耐震診断・補強を早急にしないのは「自分だけは大丈夫」という正常化の偏見の心理で備えに大きなブレーキを掛けている。加えて耐震診断を実施すると必要な耐震強度がないという評価がマンションの経済的価値をダウンさせるという意見や老齢化した方・経済的困窮にある方から諦めた意見になり耐震診断・補強が出来ない環境となっている。
 現状の日本で耐震性が不十分な住宅は1150万戸、耐震改修促進法が施行され様々な補助・支援が政策的に実施され10年たつが改修実績は10000戸に過ぎないとされる。
 行政の取り組みが一番進んでいるとされる静岡県でさえ木造住宅600000戸の無料診断を進めているが実績は約7%であることからも、如何に人事のように考えているか分かる。
 それではどうすれば効果的に耐震診断・補強が出来るかであるが、色々な機会を捉えて啓蒙に行政共に行動すること以外に①強制法の制定 ②手厚い補助・支援・援助等施策の実施、③補強建物の経済的価値評価のランク化と公示(危険建物の勧告と公表)④補強技術の開発とコストの適正化標準の作成・公表が考えられ、実際に具現化しているものもあるが効果が疑問なものも少なくない。これらはリニューアル(計画的長期修繕)やバリアフリーと併せて行えば決してコストは高くならず効果的に実施が可能である。我々専門家も進んで説明会や診断等に協力する制度を確立しているので是非、呼んで頂きたいと期待している。皆様に誠実に応える建築士として!

(社)大阪府建築士会
http://www.aba-osakafu.or.jp/
 副会長 岡本森廣
1級建築士・建築構造士・APECエンジニア