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規約敷地・規約共用部分と法人化

規約敷地・規約共用部分と法人化 大阪土地家屋調査士会
−管理組合が不動産を取得するときに−
1 2つの方法
 最近、管理組合が、不動産を取得する事例が増えてきています。例えば、駐車場が足らないから、近くの空き地を購入する。集会所を新たに新築する。競売に掛けられた専有部分を競落する。等々です。そんな時、法人でない管理組合が、不動産を取得しても、管理組合名義で登記をすることは、できません。そのため、法人化し、管理組合法人として、不動産を取得する。逆に言うと、不動産の登記をする必要が生じたのを機会に、法人化するケースが増えています。
 ところで、もう一つ、法人化しないまま、取得した土地・建物を、管理組合が管理する不動産であること、区分所有者全員の共有であることを登記に反映する方法があります。それは、規約敷地・規約共用部分にすることです。
2 規約敷地と規約共用部分
 区分所有法において「建物の敷地」とは、原則的に、建物の専有部分と一体化して分離処分ができない土地をいいます(この定義は、建築基準法とは全く異なります)。建物が所在する土地は、当然に「(法定)敷地」ですが、そうでない(隣接していない、又は、隣接しても建物がのっていない)土地も、規約により「敷地」にすることができます。これが、「規約敷地」です。ただ、これを登記に反映する場合、敷地権の登記は、専有部分の登記簿全てに行う必要がありますので、専有部分の数の多いマンションでは、現実的ではないかも知れません。
 規約共用部分に関していうと、共用部分には、法定共用部分と規約共用部分とがあります。法定共用部分は、数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の共用に供される建物の部分であり、法律上当然に、区分所有者の共有です。一方、マンションの専有部分であっても、又は、マンションとは別棟の建物であっても、規約によって共用部分にすることができます。ただし、その旨の登記をしなければ、規約共用部分であることを第三者に対抗することができません。
3 法人化との比較
 法人になる為には、法人登記をすることが成立要件です。しかも、一旦、法人になると、登記事項に変更が生じる都度、登記する義務が発生します。毎年理事を改選している管理組合では、毎年登記する必要が生じます。もし、同じ人が理事長に留任しても、登記はしなければなりません。したがって、次年度以降も、確実に負担(費用)が発生することになります。また、法人名義の不動産は、理事長が勝手に処分(売ったり、担保に入れる)することも、(法的に許されないのは当然ですが)手続的にはあり得ないことではありません。
 しかし、規約敷地・規約共用部分は、専有部分と分離して処分することができない訳ですから、その様な心配はありません。一方、将来、切り離して処分する必要が生じると、法人名義にしてある場合には、簡単に処分できますが、規約敷地・規約共用部分にしていると、規約を変更し、かつ、敷地・共用部分でなくなったことを登記をする必要があります。
 以上から言える事は、取得する不動産が建物であって、将来にわたって使用・管理し続けることが予想され、未だ法人化していない管理組合の場合には、規約共用部分とする方がメリットが大きいのではないかと言うことです。
4 登記されていない規約共用部分
 ここまでは、管理組合が成立した後に、取得した不動産の登記についてどうするか書いてきました。現行の区分所有法では、新築分譲時には、分譲会社単独で作成する公正証書による規約により、規約敷地・規約共用部分としての登記することができるからです。
 しかし、昭和58年以前は、規約共用部分の登記をする為には、分譲後に区分所有者全員一致の決議をし、さらに全員の印鑑証明書が必要であった為に、昭和58年以前のマンションでは、管理人が居住する管理人室など、法定共用部分とは言えない区分建物が、登記すらされずに残っていることがあります。
 今では、特別決議(4分の1以下の反対・不参加があっても構わない)による総会決議をし、議長と2名の議事録署名者のみの印鑑証明書があれば、規約共用部分たる旨の登記はできる様になっています。ある日突然、第三者の物になっていた。などと言うことがないように、登記することを検討してみては如何でしょうか?
以上

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