管理組合だより

NO.4 城東区・今福グランドハイツ管理組合

9年の理事長歴が生かされた組合運営

1億円不足の大規模修繕費用も計画的に調達

 地下鉄鶴見緑地線「今福鶴見」駅前にある今福グランドハイツは、今年で築24年・総戸数174戸の分譲マンションです。このマンションで大規模修繕の5か年計画案が出されたのは平成7年。まもなく築20年になり、入居者の高齢化による改修も必要だったことから、とりあえず管理会社に補修計画と費用を見積もってもらったところ約1億3,000万円の概算が出されました。しかし当時積立金は約3,000万円しかなく、目的達成のためには5年間、毎年20%ずつアップすることになりました。これにより、従来は月額90万円だった積立金は、平成7年度108万円、8年度130万円、9年度155万円、10年度190万円、11年度220万円と順調に積み立てられ、平成11年には計画どおり大規模補修が実施されました。
 工事に関しても、共用部分の調査点検とともに、居住者による各住戸内のチェックも徹底した結果、当初1億3,000万円の見積もりだった費用も1億円で済みました。具体的には、外壁や鉄部塗装をはじめ、屋上防水、エレベーター(2基)の機械式からコンピューター制御への変換、ドア取り替え、廊下・天井タイルの新設、チャンバー扉の新規取り替えに加え、共用部分の一部スロープ化などバリアフリー対応など。この管理組合では、どうせ大規模修繕工事をやるなら“資産向上”を目指す工事とする意味合いから「良品工事」と称しています。

事前アンケートや広報で周知徹底、全員参加でスタート

 この成功には、9年間も理事長を務めている浅野典成さんを中心にした12人の理事さんたちの積極的な協力態勢が大いにモノを言っています。たとえば大規模修繕なら居住者全員に「人もマンションもいずれ高齢化する。ならば早く適切な対処をすれば結局は自分自身の資産価値を高める」ことを、まずは居住者の家族構成や年齢層の調査、建物診断で実証。その上で必要額を示し、将来一時金の徴収がむずかしい点なども含めて値上げの必要性を説明して理解を求めるなど細かい対応がなされました。反対者がいれば、納得のいくまで個別に話し合い、全員参加の上での合意とする−こうした精力的な活動が、居住者の信頼感を得て、計画案は一括で了解され、積立金の5年にわたる増額もスムーズに運びました。
 12人(現在は男性9人、女性3人)の理事は各階から1名選出の輪番制で通常は1年任期ですが、大規模修繕工事にあたる年は自主的に留任をしてもらい、理事5人による修繕小委員会を設置するなど臨機応変の措置がとられました。もっともこのマンションでは、浅野さんが長年理事長を務め、管理運営や居住者に精通していることから、理事が全員交代しても何ら支障がないという、うらやましい運営がなされています。

管理方式の変更で委託料を下げ、業務内容の質をアップ

 理事会は、毎月第3日曜日に開催されていますが、平均9割以上の出席率とのこと。この出席率の高さは、何といっても浅野理事長のリーダーシップと管理運営の工夫やノウハウが生かされています。たとえば平成5年には、修繕工事に伴う不具合等で管理会社を変更。これを機に、新たな管理会社には管理人常駐と清掃、管理費の銀行引き落としの確認など業務の一部を委託し、後は自主管理に切り替えるなど、委託料を下げる一方で業務内容の質のアップを狙った措置をとっています。ちなみに管理費や修繕積立金の通帳管理は、印鑑を理事長、通帳は会計が保管するなど責任分担制です。
さらに平成7年、屋上に電話の基地局設置の話があった際、設置賃料の交渉や翌年に予定していた屋上の一部防水工事の費用負担を無料にするなどの努力で、管理費の値上げをせずにすんでいます。

課題や難問を片っ端から解決

 こうした経済策もさることながら、管理組合そのものの運営、組合と居住者との意志疎通、居住者間のコミュニケーションに関しても、このマンションではさまざまな工夫と積極的な活動で、課題や難問を片っ端から解決しています。その一部を紹介しましょう。
《管理組合の円滑な運営》   
 理事は1年任期の輪番制ですが、理事長がすべて把握しているので、引き継ぎもスムーズ。そして、たとえば大規模修繕工事時には理事5名による修繕小委員会を結成し、そのなかの最も活発な人に責任者になってもらいます。また規約では禁止になっているペット飼育に関しても、現実には飼育者がいるので、まずは実態調査をした上で飼育者によるペット委員会を設置。そのなかから、一番世話好きな人を委員長に任命。飼育ルール等を作ってもらって、一代限りを条件に、ペット飼育は暗黙の了解とされています。(現状は犬10匹、猫8匹)
 また、管理費などの2か月以上の未納に対しては、当事者とよく話し合い、念書を取るなどして解決しています。
《組合と居住者との意志疎通》
 このマンションでは、とにかく組合情報はすべての居住者が知っているという状況にするため、お知らせチラシや広報紙を各戸(集合郵便受けではない)に配布します。返答の必要なもので回収が遅くなっていたり、反対意見がある場合は、理事長や担当理事が各戸を訪問し、よく話し合って一つひとつ解決していくという方法がとられています。 たとえば阪神淡路大震災では外壁に少しクラックが入った程度だったものの、細部の点検をした上で補修を実施。それでも不安をもつ居住者にはそれが解消するまで説明をし、納得してもらった後に覚書を作成するなどの対応をしています。組合決議に関しても、反対者には個別によく話を聞き、組合側としても言いたいことをはっきり言って、問題を先送りにしたり、うやむやにしていません。
《居住者間のコミュニケーションの活性化》
 管理組合の理事長や理事が地元自治会の役員を兼務するなど日ごろから交流のある自治会と連携し、中庭で年2回のバーベキューパーティーを催したり、夏祭り等の行事に参加するなど積極的な活動をしています。
 また居住者間の横の連携や協調性を日常的に喚起する手段の一つとして、昨年7月から自転車の整理整頓キャンペーンを実施。各階の自転車所有者の持ち回りで毎月第1日曜日に行われていますが、顔見知りが増えるなどの成果が徐々に上がり、現在も続いています。

ただ今マナーキャンペーン実施中

 自転車は、通勤通学での使用を最優先とし、1住戸につき2台(駐輪料金は1台につき年500円)に制限され、現在220〜230台が駐輪されています。毎年6月と12月に登録の更新を行い不用の自転車はマンションの公用自転車として活用することとし、買い物や遊びのために使用されています。使用料は、1時間まで無料、3時間50円。ちなみにバイクは1台までの制限をしています。
 コミュニケーションの活性化と自転車の整頓をめざしたマナーキャンペーンに端を発して、昨年2月にはマンション生活全般のマナー向上をめざした「Best Only Oneキャンペーン」をスタート。15項目のどれもが当たり前のマナーながら、集団生活となるとなかなか徹底できないこともあり、チラシにして配付したり、掲示するといった地味ながら着実な活動をつづけています。

円滑な組合運営はリーダー次第?

 今回の取材で、管理組合の円滑な運営は結局はリーダー次第なのでは・・・ということを痛感させられました。それほど浅野理事長は管理に関する勉強をよくされており、それを生かした工夫と行動力があります。そして9年にわたって1年任期の理事さん達に理解をしてもらいながら適材適所の活動をしてもらう  というリーダーシップは、ご自身の会社経営のノウハウを生かしておられるからでしょうか。忙しい職務の寸暇に、12月実施のマンション管理士試験へ向けての勉強をしている浅野理事長、「私が続けられるうちに、後継者が育っていただければ」という言葉が印象的でした。
マンション概要 所在地:大阪市城東区今福東1-14-18
交通 地下鉄鶴見緑地線「今福鶴見」駅前 構造 鉄骨鉄筋コンクリート造12階建て
建築年 昭和52年 総戸数 174戸