11月9日(日) 第1日目−1
講座1
マンションの耐震化に関する課題と取り組み
命を守るために必要な耐震化、耐震診断から
改修までの進め方を把握することが大切です。一般社団法人 マンション管理業協会
技術センター長 山田 宏至 (やまだ ひろゆき)
生活基本計画
国は今、住生活基本法に基づいた住生活基本計画を打ち出しています。
ポイントは
●ソフト面の充実により、住生活を充実させる
●住宅ストックの管理、再生対策の推進です。そして耐震性を有する住宅ストック 比率を平成32年までに95%という目標を掲げています。また、各マンション・管理組合が適切な維持修繕をして、長く使うことを求めています。
耐震化の必要性 耐震基準とは、一定の強さの地震が起きても倒壊または損壊しない建築物が建 築されるように、建築基準法が定めている基準のことをいいます。
現行の耐震基準(新耐震)では「震度5強程度の地震が起きた際にはほとんど損 傷しない、震度6強~7程度のとき、倒壊・崩壊しない」ことを目標としていますが、旧耐震基準(1981年以前)では、震度6強~7程度に対する規定はありません。
大きな地震が起きるごとに耐震基準は改正されてきましたが、1995年の阪神淡 路大震災のあと、耐震改修促進法が制定され、さらに2013年11月には、改正耐震 改修促進法が施行されます(後述)。
地震によるマンションの被害を分析すると、阪神淡路大震災では大破の棟数83 のうち新耐震基準が10、旧耐震が42、旧々耐震では31で、割合では新耐震が0.3%、旧耐震が2.3%、旧々耐震では8.5%、旧々耐震は新耐震の約28倍と、ダメージが大きいことが明確になりました。 また、阪神淡路大震災での死亡された方の原因は、家屋・家具類の倒壊による圧 迫死と思われるものが全体の約88%、あとは焼死その他です。耐震化は、直接的に は災害直後の死亡者を減少させ、建築物の被害も減少させることができます。そし て副次的には、財政負担を抑制します。
耐震化の現状 耐震化の進捗状況は平成20年で約79%、平成27年は9割を国の目標としています。大阪市が平成23年度に行った震災対策についての世論調査では、
●昭和56年6/1以降に建築(耐震性がある) 32.5%
●耐震診断も耐震改修もしていない 26.1%
●わからない 33%
となっています。
耐震改修を行っていない理由としては
●費用がかかるから 39.6%
●マンションや長屋で住民全員の調整ができない 12.3%
●改修工事の効果がわからない 11.6%
耐震改修費用が高いので、合意形成も難しいということです。補助事業もありま すが、知っている方はわずか4%。さらに地震は来ないという楽観的な認識もあり ます。大阪市ではアドバイザー派遣や助成制度もあるので、ご相談いただければ と思います。
耐震化の進め方 まず耐震診断ですが、それには管理組合の合意が必要です。そのあと耐震診断、その結果で耐震化を検討します。改修計画を立て業者を選定、改修となります。
耐震診断には簡易・第一次・第二次があり、一般的には第二次診断が多く行われています。助成金を希望するなら二次診断が必要です。まず現地調査をし、耐震診断を行い耐震性能が出ます。耐震性能はIs(アイエス)値で表しますが、Is値≧0.6→震度6強以上の大地震に対して、建物が倒壊や崩壊する危険性が低いことになります。0.6が、耐震改修をするかどうかの境になります。
◎民間マンションの耐震診断・耐震改修補助制度(大阪市)
●耐震診断費用の2/3以内、1棟200万円まで
●耐震改修設計費用の2/3以内、1棟400万円まで
●耐震改修工事費用の1/2以内、1棟1000万円まで
いずれか低い方ですが、棟数制限などもあるので詳しくは⇒
大阪市都市整備局 耐震・密集市街地整備受付窓口 電話 06-6882-7053
◎住宅金融支援機構の融資上限額引き上げ(平成25年11月から)
マンション管理組合がマンション共用部分の耐震改修工事に、1戸当たりの融資上限額を150万円→500万円に引き上げられました。条件など詳しくは⇒
住宅金融支援機構 近畿支店 まちづくり推進グループ 電話 06-6281-9266
改正耐震改修促進法 (平成25年11月25日施行)
●全てのマンションに耐震診断及び必要に応じた耐震改修の努力義務が創設されました。さらに以下のものには耐震診断が義務づけられます。
→緊急輸送道路などの避難路沿道のマンション
→下層に不特定多数のものが利用する建築物及び避難弱者が利用する建築物のうち大規模なもので、上層がマンションとなる複合用途建物の一部
●改修工事により建築面積がオーバーする場合、容積率や建ぺい率が緩和されます。また耐震改修を行うときの決議要件が、3/4→1/2になりました(要認定)。
当協会は、これからも耐震化の促進を支援していきます。どうもありがとうございました。
ポイントは
●ソフト面の充実により、住生活を充実させる
●住宅ストックの管理、再生対策の推進です。そして耐震性を有する住宅ストック 比率を平成32年までに95%という目標を掲げています。また、各マンション・管理組合が適切な維持修繕をして、長く使うことを求めています。
耐震化の必要性 耐震基準とは、一定の強さの地震が起きても倒壊または損壊しない建築物が建 築されるように、建築基準法が定めている基準のことをいいます。
現行の耐震基準(新耐震)では「震度5強程度の地震が起きた際にはほとんど損 傷しない、震度6強~7程度のとき、倒壊・崩壊しない」ことを目標としていますが、旧耐震基準(1981年以前)では、震度6強~7程度に対する規定はありません。
大きな地震が起きるごとに耐震基準は改正されてきましたが、1995年の阪神淡 路大震災のあと、耐震改修促進法が制定され、さらに2013年11月には、改正耐震 改修促進法が施行されます(後述)。
地震によるマンションの被害を分析すると、阪神淡路大震災では大破の棟数83 のうち新耐震基準が10、旧耐震が42、旧々耐震では31で、割合では新耐震が0.3%、旧耐震が2.3%、旧々耐震では8.5%、旧々耐震は新耐震の約28倍と、ダメージが大きいことが明確になりました。 また、阪神淡路大震災での死亡された方の原因は、家屋・家具類の倒壊による圧 迫死と思われるものが全体の約88%、あとは焼死その他です。耐震化は、直接的に は災害直後の死亡者を減少させ、建築物の被害も減少させることができます。そし て副次的には、財政負担を抑制します。
耐震化の現状 耐震化の進捗状況は平成20年で約79%、平成27年は9割を国の目標としています。大阪市が平成23年度に行った震災対策についての世論調査では、
●昭和56年6/1以降に建築(耐震性がある) 32.5%
●耐震診断も耐震改修もしていない 26.1%
●わからない 33%
となっています。
耐震改修を行っていない理由としては
●費用がかかるから 39.6%
●マンションや長屋で住民全員の調整ができない 12.3%
●改修工事の効果がわからない 11.6%
耐震改修費用が高いので、合意形成も難しいということです。補助事業もありま すが、知っている方はわずか4%。さらに地震は来ないという楽観的な認識もあり ます。大阪市ではアドバイザー派遣や助成制度もあるので、ご相談いただければ と思います。
耐震化の進め方 まず耐震診断ですが、それには管理組合の合意が必要です。そのあと耐震診断、その結果で耐震化を検討します。改修計画を立て業者を選定、改修となります。
耐震診断には簡易・第一次・第二次があり、一般的には第二次診断が多く行われています。助成金を希望するなら二次診断が必要です。まず現地調査をし、耐震診断を行い耐震性能が出ます。耐震性能はIs(アイエス)値で表しますが、Is値≧0.6→震度6強以上の大地震に対して、建物が倒壊や崩壊する危険性が低いことになります。0.6が、耐震改修をするかどうかの境になります。
◎民間マンションの耐震診断・耐震改修補助制度(大阪市)
●耐震診断費用の2/3以内、1棟200万円まで
●耐震改修設計費用の2/3以内、1棟400万円まで
●耐震改修工事費用の1/2以内、1棟1000万円まで
いずれか低い方ですが、棟数制限などもあるので詳しくは⇒
大阪市都市整備局 耐震・密集市街地整備受付窓口 電話 06-6882-7053
◎住宅金融支援機構の融資上限額引き上げ(平成25年11月から)
マンション管理組合がマンション共用部分の耐震改修工事に、1戸当たりの融資上限額を150万円→500万円に引き上げられました。条件など詳しくは⇒
住宅金融支援機構 近畿支店 まちづくり推進グループ 電話 06-6281-9266
改正耐震改修促進法 (平成25年11月25日施行)
●全てのマンションに耐震診断及び必要に応じた耐震改修の努力義務が創設されました。さらに以下のものには耐震診断が義務づけられます。
→緊急輸送道路などの避難路沿道のマンション
→下層に不特定多数のものが利用する建築物及び避難弱者が利用する建築物のうち大規模なもので、上層がマンションとなる複合用途建物の一部
●改修工事により建築面積がオーバーする場合、容積率や建ぺい率が緩和されます。また耐震改修を行うときの決議要件が、3/4→1/2になりました(要認定)。
当協会は、これからも耐震化の促進を支援していきます。どうもありがとうございました。
11月9日(日) 第1日目−2
講座2
マンション管理の相談事例
マンションに関する法律や事例を知り、より適切なマンション管理を。住まい情報センター マンション管理相談員
桐石 正史 (きりいし まさし)
私が2年間相談員をしてきたなかで、代表的な相談についてお話しします。
[相談1]管理組合と管理会社
設備の故障や大規模修繕工事まで、管理会社が主導的に進めてしまう。 管理組合の主役は区分所有者で、管理会社は専門知識をアドバイスして理事長以下の役員の仕事を補佐する立場です。管理会社が工事など主導的に進める場合は注意して、相見積もりを取るなり、コンサルに相談しましょう。輪番制の理事長でも、自分が金を出して発注している位の覚悟でやって欲しいものです。
総ての責任は管理組合側に生じます。
[相談2]議決権
管理規約に「区分所有者及び議決権の過半数の賛成で決議する(普通決議)」とあるが、議決権とは? 議決権は区分所有法で制定されたもの。ビルの1フロア所有者と、20平米程度の所有者が同じ1票では不公平なので、所有面積比率を議決権の比率にするものです。標準管理規約には両方あるため総会では賛成者の過半数、さらに賛成者の所有面積を全部足し、全専有面積の1/2超で普通決議は通過します。両者で結果が違うことはほとんどない上、総会中の複雑な計算も大変です。なので管理規約を改正して議決権を省くのもありです。 [相談3]脱法(シェア)ハウス
脱法ハウスとは? また部屋を塾や倉庫にすると問題があるか。 貸主はシェアハウスの方が通常貸しより儲かる。ただこういう部屋は夜中に騒ぐなど、迷惑をかけることが多い。シェアハウスの定義はなく、建築基準法に則していれば、即違法との決め付けはできず、今年10月ある管理組合のシェアハウス禁止の訴えが却下された例もあります。これらを阻止するには、管理規約に禁止条項を入れる必要があります。 その場合、塾や倉庫なども締め出すのか、自分が貸主になる場合も考えてどうするかなど、管理組合で議論が必要です。 [相談4]役員のなり手不足
役員のなり手を増やす方法はないか。また総会出席者が少ないが対策は? 高齢化に加え、総会に参加資格のない賃借人が増えています。5年前の国交省の調査では、総会会場への出席率は平均25%。委任状を揃えてなんとか成立はしますが、総会で決めるべき重要なことが2割位の人だけで決まるのは問題です。出席者や役員のなり手を増やすのに、区分所有者がご主人なら、奥さんでもOK、また管理規約の変更が必要ですが、子供や親族も2親等程度までに広げるなど国交省も考え方に柔軟性をもたせ、区分所有者が了解すれば賃借人もOKとするのもありとの方針が出ています。 [相談5]駐車場の外部貸し
駐車場の空きが増える一方、近隣からは貸してほしいとの要望があるが? 管理組合は自主運営組織で税金対象外ですが、外部貸しは国税局に営業とみなされます。区分所有者の優先・管理規約で外部貸しを認める変更をする・収益は修繕積立金に充当する・得た収入は確定申告をするなどのクリアが必要です。申告すると、たとえば自動販売機の場所代等、他の収入もチェックされるので注意が必要です。ただ安定収入が入るので、管理組合に取ってはプラスもあります。 [相談6]暴力団関係者の排除
平成23年10月に「暴力団排除条例」が全都道府県で成立したが、管理組合でも何か対処すべきか。 昨今、入居時に暴力団の入居はダメという条項が入れられるようになりました。実際の相談事例ですが、理事長が暴力団員と発覚し、調べると管理組合のお金が数千万使い込まれており訴訟した。返還命令が出たものの当人が雲隠れし、お金は戻っていない事例がありました。管理規約を改正し、入居時に暴力団員でないとの「誓約書」を提出させる条項を入れるなど、効果のある対策等を、早々に検討に入るのがいいと思います。問題は以前から入居している者が、後に他で暴力団と発覚した場合に排除できるかどうか、議論が分かれているところです。 [相談7]管理規約の改正
管理規約の改正を上手に実施するにはどうすればいい? これまでお話したことや、国交省の標準管理規約の改定に合わせて管理規約の改正の必要が出てきます。
管理規約の改正には特別決議(全区分所有者の3/4の賛成)が必要ですが、これはかなりハードルが高い。例えば委任状の提出をしない・出席するつもりが急用ができた方なども、結果的には反対したと同じことになり、そういう方が多いと否決になってしまいます。なので、根回しに時間をかける必要があります。説明会で趣旨を説明して少なくとも「なるほど…」と分からせる。最後、委任状または議決権行使書を必ず出すように促し、浸透した頃に総会または臨時総会を開きます。総会で否決されてまた同じ議案は出せないので、一発勝負の覚悟が必要です。 [相談8]大規模修繕と建替え
築40年超のマンションで排水管が傷み部屋に水が漏れた。排水管の更新を提案したが、一部の区分所有者から「応急措置だけで工事はせず、建替えの検討」の要望が出たが? 要は今後そのマンションに何時まで住み続けるのか?それを決めることによってこれからの修繕計画も効率的に計画できるようになります。鉄筋コンクリートの寿命は60~70年といわれていますが、管理の仕方で10年程度は延ばせます。修繕して永く住むのか、建替えを早くするのか。いずれにしても末期になっての合意形成と建替え手法の決定には非常に時間がかかります。
これは一マンションの問題ではなく、600万戸を超える全国のマンションにおける今後の国家的課題です。国でもいくつかの対策の検討に入ったが、基本的には個人財産ですので、個々の区分所有者が今後考えていくべき大問題です。
[相談1]管理組合と管理会社
設備の故障や大規模修繕工事まで、管理会社が主導的に進めてしまう。 管理組合の主役は区分所有者で、管理会社は専門知識をアドバイスして理事長以下の役員の仕事を補佐する立場です。管理会社が工事など主導的に進める場合は注意して、相見積もりを取るなり、コンサルに相談しましょう。輪番制の理事長でも、自分が金を出して発注している位の覚悟でやって欲しいものです。
総ての責任は管理組合側に生じます。
[相談2]議決権
管理規約に「区分所有者及び議決権の過半数の賛成で決議する(普通決議)」とあるが、議決権とは? 議決権は区分所有法で制定されたもの。ビルの1フロア所有者と、20平米程度の所有者が同じ1票では不公平なので、所有面積比率を議決権の比率にするものです。標準管理規約には両方あるため総会では賛成者の過半数、さらに賛成者の所有面積を全部足し、全専有面積の1/2超で普通決議は通過します。両者で結果が違うことはほとんどない上、総会中の複雑な計算も大変です。なので管理規約を改正して議決権を省くのもありです。 [相談3]脱法(シェア)ハウス
脱法ハウスとは? また部屋を塾や倉庫にすると問題があるか。 貸主はシェアハウスの方が通常貸しより儲かる。ただこういう部屋は夜中に騒ぐなど、迷惑をかけることが多い。シェアハウスの定義はなく、建築基準法に則していれば、即違法との決め付けはできず、今年10月ある管理組合のシェアハウス禁止の訴えが却下された例もあります。これらを阻止するには、管理規約に禁止条項を入れる必要があります。 その場合、塾や倉庫なども締め出すのか、自分が貸主になる場合も考えてどうするかなど、管理組合で議論が必要です。 [相談4]役員のなり手不足
役員のなり手を増やす方法はないか。また総会出席者が少ないが対策は? 高齢化に加え、総会に参加資格のない賃借人が増えています。5年前の国交省の調査では、総会会場への出席率は平均25%。委任状を揃えてなんとか成立はしますが、総会で決めるべき重要なことが2割位の人だけで決まるのは問題です。出席者や役員のなり手を増やすのに、区分所有者がご主人なら、奥さんでもOK、また管理規約の変更が必要ですが、子供や親族も2親等程度までに広げるなど国交省も考え方に柔軟性をもたせ、区分所有者が了解すれば賃借人もOKとするのもありとの方針が出ています。 [相談5]駐車場の外部貸し
駐車場の空きが増える一方、近隣からは貸してほしいとの要望があるが? 管理組合は自主運営組織で税金対象外ですが、外部貸しは国税局に営業とみなされます。区分所有者の優先・管理規約で外部貸しを認める変更をする・収益は修繕積立金に充当する・得た収入は確定申告をするなどのクリアが必要です。申告すると、たとえば自動販売機の場所代等、他の収入もチェックされるので注意が必要です。ただ安定収入が入るので、管理組合に取ってはプラスもあります。 [相談6]暴力団関係者の排除
平成23年10月に「暴力団排除条例」が全都道府県で成立したが、管理組合でも何か対処すべきか。 昨今、入居時に暴力団の入居はダメという条項が入れられるようになりました。実際の相談事例ですが、理事長が暴力団員と発覚し、調べると管理組合のお金が数千万使い込まれており訴訟した。返還命令が出たものの当人が雲隠れし、お金は戻っていない事例がありました。管理規約を改正し、入居時に暴力団員でないとの「誓約書」を提出させる条項を入れるなど、効果のある対策等を、早々に検討に入るのがいいと思います。問題は以前から入居している者が、後に他で暴力団と発覚した場合に排除できるかどうか、議論が分かれているところです。 [相談7]管理規約の改正
管理規約の改正を上手に実施するにはどうすればいい? これまでお話したことや、国交省の標準管理規約の改定に合わせて管理規約の改正の必要が出てきます。
管理規約の改正には特別決議(全区分所有者の3/4の賛成)が必要ですが、これはかなりハードルが高い。例えば委任状の提出をしない・出席するつもりが急用ができた方なども、結果的には反対したと同じことになり、そういう方が多いと否決になってしまいます。なので、根回しに時間をかける必要があります。説明会で趣旨を説明して少なくとも「なるほど…」と分からせる。最後、委任状または議決権行使書を必ず出すように促し、浸透した頃に総会または臨時総会を開きます。総会で否決されてまた同じ議案は出せないので、一発勝負の覚悟が必要です。 [相談8]大規模修繕と建替え
築40年超のマンションで排水管が傷み部屋に水が漏れた。排水管の更新を提案したが、一部の区分所有者から「応急措置だけで工事はせず、建替えの検討」の要望が出たが? 要は今後そのマンションに何時まで住み続けるのか?それを決めることによってこれからの修繕計画も効率的に計画できるようになります。鉄筋コンクリートの寿命は60~70年といわれていますが、管理の仕方で10年程度は延ばせます。修繕して永く住むのか、建替えを早くするのか。いずれにしても末期になっての合意形成と建替え手法の決定には非常に時間がかかります。
これは一マンションの問題ではなく、600万戸を超える全国のマンションにおける今後の国家的課題です。国でもいくつかの対策の検討に入ったが、基本的には個人財産ですので、個々の区分所有者が今後考えていくべき大問題です。
11月16日(土) 第2日目−1
講座3
大規模修繕工事のかし保険~安心して工事を進めるために~
予期せぬ瑕疵や倒産に備えるために、
工事会社の瑕疵保険加入条件化が有効です。一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会
五十嵐 彰 (いがらし あきら)
瑕疵保険制度は、3年前にできた制度です。瑕疵担保責任は10年前からありますが、履行するにはいろんなハードルがあります。一番のポイントは、これが国の定めたものであるということです。
マンションライフが抱える課題
マンションの抱える課題としては、入居者世帯の高齢化、マンションの賃貸化、空室化、建物の老朽化、理事会・組合の管理不全化などが挙げられます。そうした中の、将来への課題の一つとして、適切な大規模修繕・改修があります。
大規模修繕には予期せぬ事故がついて回るし、100%きれいにはならないと思ってください。そして事故にあったとき、工事会社とトラブルになる。この時に瑕疵保険があれば解決への道筋がつくのです。 瑕疵保険とは? まず平成12年に品格法が施行、これには3つの柱がありました。
1.新築住宅の瑕疵担保責任の特例(10年間の瑕疵担保責任)
2.住宅性能表示制度
3.住宅紛争処理機関の設置
平成17年、構造計算書偽装問題が発覚。法律では裁かれたものの、工事会社が倒産。これを受けて、たとえ会社が倒産しても、あとに残された建物の管理組合が困らないようにできたのが、平成21年10月に全面施行された履確法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保に関する法律)です。柱は次の3つです。
1.資力確保措置(会社は供託か保険いずれかを選択)
2.保険の引き受け主体の整備
3.住宅紛争処理体制の整備
そして平成22年、大規模修繕工事瑕疵担保責任保険 認可取得。瑕疵保険とは、国土交通省が認可した管理組合保護のための保証制度です。
◎瑕疵保険とは
瑕疵があった場合、申告により工事費等が支払われます。工事会社が万一倒産や機能不全に陥った場合には、管理組合に直接お支払いします。証券発行時、付保証明(保険付き保証証明)を管理組合にお渡ししているので、それを見て問い合わせていただければと思います。瑕疵保険は、保険契約者がいなくなっても保険の権利が活かせる特別な制度です。
◎瑕疵保険のメリット
●予期せぬ瑕疵・倒産トラブルへの備え
●書類審査・現場検査で品質確保
第三者チェックがあり、管理組合にとって安心。未然に事故が防げることもあります。
●工事会社の選定条件にして品質確保
工事を発注する時に、工事会社に保険加入をリクエストするのがおすすめです。
●トラブル時の道義的責任をカバー
大規模修繕後の施工ミスが発覚した時、当時の理事会や修繕委員会が責任を問われるなどのトラブルを防げます。
●マンション総合保険のみでは瑕疵事故はカバーできない
●事故対策は長期修繕計画では想定外
管理組合の瑕疵保険利用への意識が益々高まっています。ぜひ、見積もり合わせや入札の時に、瑕疵保険加入を条件化するなど、工事会社選定にも利用いただければと思います。 他の保険との違いは? マンションの管理組合では、一般的にマンション総合保険に入っています。ただこれは、修繕工事のミスは対応しないため、これを補填できるのが瑕疵保険です。
今までの保険では補えなかった施行ミスによる瑕疵に対応できる。
たとえば工事完了後にタイルが剥落した、といった施工ミスで発生した損害には、瑕疵保険が対応します。 施工瑕疵の事故 [ケース1]
強風により近隣住宅の瓦が飛来し、外壁を直撃。外壁タイルが破損。
→自然災害の事故のため、マンション総合保険で補償
[ケース2]
屋上防水の工事をしたところに、むくりが出てきた
→下地補修の際、水が残っていた。施工ミスによるもので、水が浸入する危険性があるため、瑕疵保険で対応できます。
※損害保険は、損害が発生してから払われるが、瑕疵保険は、本来持っている基本性能がないと考えられる場合も賄われます。
《大規模修繕瑕疵保険》
まとめ 保険対象となる部分(付保範囲)
1.構造耐力上主要な部分
2.雨水の浸入を防止する部分
3.給排水管路
4.給排水設備
5.電気設備
6.ガス設備
7.防錆工事を行った手すり等の鉄部
8.外壁タイル(剥落特約、オプション)
※7.8.は単独での加入は不可
※基本は5年、屋上防水等は10年
政令都市では、月に30件は工事会社が倒産または事業をやめています。また実際に瑕疵事故も、一定の割合で発生しています。一番は、管理組合が、自分たちで建物を守るという意識が大切です。その一つとして、大規模修繕工事発注の際に、瑕疵保険についても考えていただければと思います。
大規模修繕には予期せぬ事故がついて回るし、100%きれいにはならないと思ってください。そして事故にあったとき、工事会社とトラブルになる。この時に瑕疵保険があれば解決への道筋がつくのです。 瑕疵保険とは? まず平成12年に品格法が施行、これには3つの柱がありました。
1.新築住宅の瑕疵担保責任の特例(10年間の瑕疵担保責任)
2.住宅性能表示制度
3.住宅紛争処理機関の設置
平成17年、構造計算書偽装問題が発覚。法律では裁かれたものの、工事会社が倒産。これを受けて、たとえ会社が倒産しても、あとに残された建物の管理組合が困らないようにできたのが、平成21年10月に全面施行された履確法(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保に関する法律)です。柱は次の3つです。
1.資力確保措置(会社は供託か保険いずれかを選択)
2.保険の引き受け主体の整備
3.住宅紛争処理体制の整備
そして平成22年、大規模修繕工事瑕疵担保責任保険 認可取得。瑕疵保険とは、国土交通省が認可した管理組合保護のための保証制度です。
◎瑕疵保険とは
瑕疵があった場合、申告により工事費等が支払われます。工事会社が万一倒産や機能不全に陥った場合には、管理組合に直接お支払いします。証券発行時、付保証明(保険付き保証証明)を管理組合にお渡ししているので、それを見て問い合わせていただければと思います。瑕疵保険は、保険契約者がいなくなっても保険の権利が活かせる特別な制度です。
◎瑕疵保険のメリット
●予期せぬ瑕疵・倒産トラブルへの備え
●書類審査・現場検査で品質確保
第三者チェックがあり、管理組合にとって安心。未然に事故が防げることもあります。
●工事会社の選定条件にして品質確保
工事を発注する時に、工事会社に保険加入をリクエストするのがおすすめです。
●トラブル時の道義的責任をカバー
大規模修繕後の施工ミスが発覚した時、当時の理事会や修繕委員会が責任を問われるなどのトラブルを防げます。
●マンション総合保険のみでは瑕疵事故はカバーできない
●事故対策は長期修繕計画では想定外
管理組合の瑕疵保険利用への意識が益々高まっています。ぜひ、見積もり合わせや入札の時に、瑕疵保険加入を条件化するなど、工事会社選定にも利用いただければと思います。 他の保険との違いは? マンションの管理組合では、一般的にマンション総合保険に入っています。ただこれは、修繕工事のミスは対応しないため、これを補填できるのが瑕疵保険です。
今までの保険では補えなかった施行ミスによる瑕疵に対応できる。
たとえば工事完了後にタイルが剥落した、といった施工ミスで発生した損害には、瑕疵保険が対応します。 施工瑕疵の事故 [ケース1]
強風により近隣住宅の瓦が飛来し、外壁を直撃。外壁タイルが破損。
→自然災害の事故のため、マンション総合保険で補償
[ケース2]
屋上防水の工事をしたところに、むくりが出てきた
→下地補修の際、水が残っていた。施工ミスによるもので、水が浸入する危険性があるため、瑕疵保険で対応できます。
※損害保険は、損害が発生してから払われるが、瑕疵保険は、本来持っている基本性能がないと考えられる場合も賄われます。
《大規模修繕瑕疵保険》
まとめ 保険対象となる部分(付保範囲)
1.構造耐力上主要な部分
2.雨水の浸入を防止する部分
3.給排水管路
4.給排水設備
5.電気設備
6.ガス設備
7.防錆工事を行った手すり等の鉄部
8.外壁タイル(剥落特約、オプション)
※7.8.は単独での加入は不可
※基本は5年、屋上防水等は10年
政令都市では、月に30件は工事会社が倒産または事業をやめています。また実際に瑕疵事故も、一定の割合で発生しています。一番は、管理組合が、自分たちで建物を守るという意識が大切です。その一つとして、大規模修繕工事発注の際に、瑕疵保険についても考えていただければと思います。
11月16日(土) 第2日目−2
講座4
スムーズな総会の運営方法
自分たちの共有部分を守るという意識を持ち、
事前準備や話し合いでスムーズな総会を。公益財団法人 マンション管理センター
長田 康夫 (おさだ やすお)
現在、全国でマンションには約1450万人が住んでいて、いろいろな問題があります。平成24年度の相談は、7700件ありました。
マンション管理の主体は管理組合であり、管理規約はいわばマンションの憲法。みんなで集まって決めた方針・規約は守らないといけません。またマンションで起こったことは全員の問題と認識することが必要です。役員・理事に対して、多くは役員報酬は出していませんが、役員になった方は、自分たちの共有部分を守るという気持ちで活動していただきたいと思います。
管理組合総会について 【管理組合とはどんな組織か】
区分所有法では「区分所有者は全員で、建物並びにその敷地および附属施設の管理を行うための団体を構成し」とあり、マンション管理適正化法では、管理組合を「マンションの管理を行う区分所有法第3条等に規定する団体等」となっています。管理組合では総会を開催して、何ごとも決めて行く。総会は管理組合の最高の意思決定機関です。
【管理組合は必ず入会しなければならないか】
区分所有者は、区分所有関係に入ることで管理組合の構成員となる、したがって管理組合入会拒否の選択肢はありません。区分所有者ではない賃借人は組合員ではありません。
【総会は管理会社が招集するのか】
区分所有法第34条第1項に「集会は、管理者が招集する。」、区分所有法第34条第2項に、「管理者は、少なくとも毎年1回は集会を招集しなければならない。」とあります。つまり管理者である理事長は毎年1回、総会を開催する必要があります。
【組合員は総会を招集できるか】
原則として区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有する者は、管理者に対し総会の招集を請求できます。この請求を理事長がイヤだと言った場合、請求権が移るので、そこで初めて、その総会を請求された5分の1の方が総会を招集することができます。 通常総会開催日までの準備 【スケジュール・手続き】
●開催日の決定と開催場所の確保
●理事会で今年度の活動方針の確認
●スケジュールを作る
開催日から発送、印刷、監査、議案決定を遡ってスケジュールを作ります。
●次年度の役員候補探しある程度の根回しは必要です。
●招集通知
管理規約に2週間とあれば2週間を守って招集(発送日からでなく中2週間)。文書で日時、場所、議題を記載します。規約改正なら規約の新旧と、理由も書きます。出席届・委任状・議決権行使書の3点セットを添付して通知します。
【こんな場合は】
●書類未提出→棄権になる
●白紙委任状→有効。捺印がなくても自署ならOK、ゴム印の名前や印刷は問題あり。原則はもらってください。
●出席届、委任状、議決権行使書を全部出す方→本人の意思確認が必要。わからなければ、棄権扱いとするのが無難でしょう。
●欠席で意見は言えないか→区分所有法第39条2項では、議決権は書面で、または代理人によって行使できるとあります。委任状は代理人を証するもの、書面は議決権行使書です。議決権行使書をつける場合は、読めばわかる内容で作ります。
通常総会開催当日の業務 【総会への出席】
標準管理規約では次の場合には組合員以外の出席も認められています。
●組合員から代理権を与えられた者
標準管理規約第46条第4項・第5項
●理事会が必要と認めた者
管理会社職員・管理員
●利害関係を有する者
占有者(賃借人)※意見は述べられるが決議には参加できない
総会の成立は、標準管理規約では、議決権総数の半数以上を有する組合員の出席が必要となります。書面や代理人による議決権の行使者も出席と見なします。
【総会の議長】
標準管理規約では、議長は理事長が務める、としています。議長は、1.議事を整理する、2.議場の秩序を維持する 権限を持っています。
【総会の議事】
議長を含む出席組合員の議決権の過半数で決議し、過半数の賛成を得られなかった場合(同数含む)は否決となります。また区分所有法第37条1項にある通り、緊急動議は認めないのが原則です。
議案は十分な説明がなされることが大切で、揉めないためには、事前にアンケートや説明会を実施し、多くが反対意見なら、提出議案の修正を考えます。
また、管理費5000円値上げを3500円にする修正決議は有効だが、1500円減額と反対方向は認められません。
【採決の方法】
あとで議事録を見てわかるように、数は数える。拍手だけではNGです。また、義務違反者に対する措置や滞納訴訟の対象となった組合員の議決権行使を制限することはできません。
閉会後の業務 【議事録の作成】
通常は議事録を作成し保管します。議事録は回覧する程度でいいと思います(細則による)。
マンション管理の主体は管理組合であり、管理規約はいわばマンションの憲法。みんなで集まって決めた方針・規約は守らないといけません。またマンションで起こったことは全員の問題と認識することが必要です。役員・理事に対して、多くは役員報酬は出していませんが、役員になった方は、自分たちの共有部分を守るという気持ちで活動していただきたいと思います。
管理組合総会について 【管理組合とはどんな組織か】
区分所有法では「区分所有者は全員で、建物並びにその敷地および附属施設の管理を行うための団体を構成し」とあり、マンション管理適正化法では、管理組合を「マンションの管理を行う区分所有法第3条等に規定する団体等」となっています。管理組合では総会を開催して、何ごとも決めて行く。総会は管理組合の最高の意思決定機関です。
【管理組合は必ず入会しなければならないか】
区分所有者は、区分所有関係に入ることで管理組合の構成員となる、したがって管理組合入会拒否の選択肢はありません。区分所有者ではない賃借人は組合員ではありません。
【総会は管理会社が招集するのか】
区分所有法第34条第1項に「集会は、管理者が招集する。」、区分所有法第34条第2項に、「管理者は、少なくとも毎年1回は集会を招集しなければならない。」とあります。つまり管理者である理事長は毎年1回、総会を開催する必要があります。
【組合員は総会を招集できるか】
原則として区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有する者は、管理者に対し総会の招集を請求できます。この請求を理事長がイヤだと言った場合、請求権が移るので、そこで初めて、その総会を請求された5分の1の方が総会を招集することができます。 通常総会開催日までの準備 【スケジュール・手続き】
●開催日の決定と開催場所の確保
●理事会で今年度の活動方針の確認
●スケジュールを作る
開催日から発送、印刷、監査、議案決定を遡ってスケジュールを作ります。
●次年度の役員候補探しある程度の根回しは必要です。
●招集通知
管理規約に2週間とあれば2週間を守って招集(発送日からでなく中2週間)。文書で日時、場所、議題を記載します。規約改正なら規約の新旧と、理由も書きます。出席届・委任状・議決権行使書の3点セットを添付して通知します。
【こんな場合は】
●書類未提出→棄権になる
●白紙委任状→有効。捺印がなくても自署ならOK、ゴム印の名前や印刷は問題あり。原則はもらってください。
●出席届、委任状、議決権行使書を全部出す方→本人の意思確認が必要。わからなければ、棄権扱いとするのが無難でしょう。
●欠席で意見は言えないか→区分所有法第39条2項では、議決権は書面で、または代理人によって行使できるとあります。委任状は代理人を証するもの、書面は議決権行使書です。議決権行使書をつける場合は、読めばわかる内容で作ります。
通常総会開催当日の業務 【総会への出席】
標準管理規約では次の場合には組合員以外の出席も認められています。
●組合員から代理権を与えられた者
標準管理規約第46条第4項・第5項
●理事会が必要と認めた者
管理会社職員・管理員
●利害関係を有する者
占有者(賃借人)※意見は述べられるが決議には参加できない
総会の成立は、標準管理規約では、議決権総数の半数以上を有する組合員の出席が必要となります。書面や代理人による議決権の行使者も出席と見なします。
【総会の議長】
標準管理規約では、議長は理事長が務める、としています。議長は、1.議事を整理する、2.議場の秩序を維持する 権限を持っています。
【総会の議事】
議長を含む出席組合員の議決権の過半数で決議し、過半数の賛成を得られなかった場合(同数含む)は否決となります。また区分所有法第37条1項にある通り、緊急動議は認めないのが原則です。
議案は十分な説明がなされることが大切で、揉めないためには、事前にアンケートや説明会を実施し、多くが反対意見なら、提出議案の修正を考えます。
また、管理費5000円値上げを3500円にする修正決議は有効だが、1500円減額と反対方向は認められません。
【採決の方法】
あとで議事録を見てわかるように、数は数える。拍手だけではNGです。また、義務違反者に対する措置や滞納訴訟の対象となった組合員の議決権行使を制限することはできません。
閉会後の業務 【議事録の作成】
通常は議事録を作成し保管します。議事録は回覧する程度でいいと思います(細則による)。