セミナー情報

平成13年度「第4回セミナー&相談会」報告

 住まい情報センターで開催した第4回セミナー&相談会は、市内マンションの管理組合役員の皆さんをはじめ、多くの方々の参加をいただきました。連続してセミナーに参加する管理組合役員も見られ、マンション管理に関する知識を求める切実さを改めて感じさせました。今回のテーマは「老朽化を迎えるマンションの法律問題」。中でもマンションの建替えに関する問題はむずかしいといわれ、講演に聞き入る皆さんは真剣そのものでした。また、個別相談会では、法律、管理一般、技術面に関する相談があり、弁護士や一級建築士などから具体的なアドバイスが行われました。  マンションを建替えるに当たっては、いろんな問題が出てきます。「復旧および建替え」について区分所有法では条文が4つしかありません。したがって、その文言は抽象的に書かれており、その解釈が分かれ、裁判になっているケースがあります。
 まず、区分所有法では、老朽、損傷などをしたマンションを復旧するために、「過分の費用を要する」時は、4/5以上の賛成で建替え決議ができることになっているわけですが、この過分の費用がどのくらいなのかが、法律では書かれていません。現実に過分の費用になっているかどうかをめぐって建替え決議が有効か無効かが争われている裁判がいくつかあります。
 次に大部分の区分所有者が建替えに賛成し、一部の反対者がある場合、最終的に売り渡し請求を行って、すべてを賛成者の所有にすることになります。しかし、売り渡し額は時価ということになっているわけですが、折り合いがつかなければ、その金額を裁判所に決めてもらわなければならないということになります。裁判になれば、非常に長い時間と費用がかかります。また裁判例は多くなく、一定の基準や算定方式というものはできていません。
 このほか、建築基準法上の問題や賃貸借契約をしていて、賃借人が立ち退きに反対するケース、オーバーローンによって二重三重の抵当権がついている場合の抵当権の処理など、法的に解決しなければならない多くの問題があります。
 現在、区分所有法の改正が議論されていますが、まだどのように改正されるかについては定かではありません。一番重要なことは、区分所有者全員で老朽化や建替えといった問題について議論し、先を見据えて調査するなど認識を深めて進めていくということだと思います。  マンションの再生は、日常の簡単な修理から長期修繕計画によって行われるような大規模な修繕、あるいはリフォームとかリニューアルというものがあります。マンションには専有部分のほかに共用部分があって、修繕から建替えまであらゆることに合意形成が必要です。そして所有に関する権利義務と利用に関する権利義務の二つがぶつかり合う存在です。
 区分所有法はその権利を調整し、その指針として用意されているのが管理規約です。マンションは阪神淡路大震災でそのハードの強さを実証しましたが、その半面、管理規約や、合意形成などのソフト面は弱かったと思います。
 マンションを再生するに当たって、管理組合が円滑に運営されていることが大切です。また、組合員に区分所有法を親しんでもらい、区分所有の仕組みをよく理解してもらうことも大事です。ヨーロッパのマンションでは、週に1回は集会を開いて、マンション管理にまつわるさまざまな問題を話し合っています。年1回だけの総会だけでは、あまりにも少な過ぎます。組合員が管理組合の活動に積極的にかかわることが基本です。
 韓国では、増築を伴う修繕であるリ・モデリングが注目されています。マンションの増築について区分所有法は、ほとんど予測していません。マンションの効用を増すために増築するという場合は、所有権の根幹にかかわる問題なので、限りなく全員合意に近い形が必要だと思います。規約を整備しておかなければ、増築に賛成しなかった人は費用負担しなくていいのか、あるいは増築しないでもいいのか、こんな問題が起きてしまいます。
 建替えがむずかしいから増築を考える   といっても、増築も決してやさしいことではありません。とにかく人と人との関わりも、建物に対しても、いたわり合いながらリニューアルをして長持ちさせることが大切です。