セミナー情報

平成21年度「基礎講座&交流会&相談会」報告

2009年度「基礎講座&交流会&相談会」報告

会場の様子分譲マンション管理組合向けセミナー。
基礎講座では、適正に管理組合運営を行うための基礎知識を分かりやすく学びます。また日頃の管理組合運営で発生する問題や悩みを語りあう交流会と、個別の問題を相談する相談会も開催しました。
開催日時:
2009年11月1日(日)・14日(土)・28日(土)

7月12日(日)
  平成20年度マンション総合調査からみるマンションの最近の現状、管理規約を見直すべき項目や見直すときの注意点、そして管理会社との上手な付き合い方をテーマに開催しました。  

講座 平成20年度マンション総合調査からみえてくるもの
講師 長田 康夫(おさだ やすお)

国が行ったマンション調査です。
管理組合運営の参考にしてください


(財)マンション管理センター
講師 長田 康夫(おさだ やすお)


 昭和55年度から始められたマンション総合調査です。
ほぼ5年に一度おこなわれており今回で6回目、前回は平成15年度に実施されました。管理組合と区分所有者へのアンケート結果となっており、マンションの管理状況や意識などが調査されました。 ●世帯主の年齢  「60歳代」が26.4%で最も多く、次いで「50歳代」が24.1%、「40歳代」が22.9%、「70歳以上」が13.0%、前回と比べ高齢化しています。 ●永住意識  「永住するつもりである」が49.9%。「いずれは住みかえるつもりである」が19.4%で、永住意識が高くなる傾向にあります。 ●管理費の滞納状況   3カ月以上滞納している住戸がある管理組合が38.5%。築年数、規模が大きくなるほど滞納住戸のある管理組合の割合が増えています。 ●長期修繕計画の作成状況   前回と比較すると長期修繕計画を作成しているマンションは78.1%から89.0%へ増えています。長期修繕計画の作成はかなり浸透してきています。 ●建替えの必要性   「建替えが必要である」は3%程度ありますが、「建物が相当老朽化または陳腐化しているが、修繕工事または改修工事さえしっかり実施すれば建替えは必要ない」と考える方が24.9%です。 ●専門家の活用状況   専門家を活用している管理組合は43.6%。このうち建築士の活用が一番多く、22.7%です。マンション管理士の活用は13.1%、「活用していないが知っている」が40.2%で認知は進んでいますが、まだまだ不十分です。
このほか、マンション居住の状況、マンション管理と管 理事務委託の状況、建物・設備の維持管理状況につい ての様々な項目について調査報告がなされています。

「平成20年度 マンション総合調査結果」はこちらから
講座 管理規約見直しにおける注意点
講師 宇都宮 忠(うつのみや ただし)

ぜひとも改正していただきたい
項目を紹介します


マンション管理専門相談員
講師 宇都宮 忠(うつのみや ただし)


国土交通省が策定をして公表している標準管理規約は、区分所有法の改正等を踏まえ、平成16年1月に改正しています。平成16年以降、ご自分のマンションの規約の見直しを行っていない管理組合は、この改正標準管理規約(以下、改正規約)を参考に点検していただくことが望ましい。管理規約条項の見直しを図るうえで、ぜひ改正してほしい項目をいくつか紹介します。 ●「総会の会議及び議事」条項の変更   議事の賛否が可否同数の場合は改正規約では否決としています。従前の議長が決するという定めは削除されています。
それから特別多数決議事項で、共用部分などの変更は、「改良を目的とし、かつ、著しく多額の費用を要しないものを除く。」とされていましたが、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。」と金額に関する表記が変更されています。 ●「書面決議」条項の変更  区分所有法の45条が改正されたことに伴い、総会決議以外に、区分所有者全員の承諾があれば、書面又は電磁 的方法による決議をすることができるという条項が追加されています。 ●「議事録の作成・保管」条項の変更  以前の標準管理規約では総会議事録の署名押印者は議長と議長の指名する2名の総会に出席した理事でしたが、改正規約では議長と総会に出席した組合員ということで、理事という表現がはずされています。 ●「管理者=理事長権限」条項の追加   損害保険契約に基づく保険金の受領で、共用部分等に生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求 及び受領について区分所有者を代理するということで、理事長権限が少し広がっています。 ●「合意管轄裁判所」条項   合意管轄裁判所を管理組合の所在地を管轄する裁判所としておきますと、地元の簡易裁判所や地方裁判所に 訴えを起こすことができます。そうしない場合、訴訟相手が別の場所に住んでいると、そこを管轄する裁判所に訴えをおこさないといけません。こうなると非常に面倒です。

 以上の項目は、ぜひ規約の内容を確認していただきた いと思います。
講座 管理会社とのつきあい方
講師 和田 淸人(わだ きよひと)

管理会社と連携しながら
解決できた3つの事例


マンション管理専門相談員
講師 和田 淸人(わだ きよひと)


 わたしが理事長として心がけたことは2つです。1つ目は、区分所有者同士の対立は避けること。2つ目は、管理会社とは発注者と受注者の関係であることを忘れないことです。今日は、2年間の理事長の経験の中で、管理会社と連携しながら解決できた事例を3つご紹介させていただきます。  1つ目は滞納問題です。私が理事長に就任した時点で、滞納が52万円ありました。管理会社との管理委託契約書では、滞納者に対して電話、訪問、郵便の督促を行い、3カ月で免責となっています。そこで、管理会社に対して、マンション管理適正化法74条に規定された、再委託できない基幹事務(=会計、出納、長期修繕計画)はひとえにお金に関することであること、滞納問題の解決もそれに当たることを伝えてアクションをおこしてもらいました。結果的には2年後、52万円あった未収金を2万7000円まで減らしました。  2つ目は違法駐車です。警告の張り紙をしてもどうしても駄目な車がありました。いろいろ調べると区分所有者の息子さんの車でした。そこで区分所有者であるお父さんに入居時に提出した実印付きの管理規約同意書のコピーと一緒に「息子さんの違法駐車をやめさせてほしい」という文書を投函したところ、それから一切、敷地の中でその車を見かけることはなくなりました。  3つ目は、補修工事のトラブルです。4年ぐらい前の地震でマンションの外壁のタイルが崩落しました。前理事会が、管理会社経由でクレームをいれても、施工会社からは「それは天災ですから」と一蹴されました。管理会社がデベロッパーの子会社であるため、フロントマンが親会社にクレームを言いにくい状況も明らかに見えました。そこで、建築士に設計図書と現地を見てもらい、設計図書と現地との相違点について、管理会社経由でデベロッパーおよび施工会社に質問状をファックスしてもらいました。この時、フロントマンはメッセンジャーとして動いてもらいました。その結果、修理費用も全部デベロッパー持ちで、補修工事を完了させることができました。  管理会社はあくまでも受注者です。発注者である区分所有者が「自分たちのマンションをどうしたいのか」という合意形成をすることが重要だと思います。

7月25日(土)   ぜひとも知ってほしい管理組合会計の基礎知識と注意点、および大規模修繕工事の進め方や修繕積立金の設定をテーマに開催しました。  

講座 管理組合会計の基礎知識と注意点
講師 笹岡 憲一(ささおか けんいち)

予算準拠の原則と区分経理、
この2つは絶対に守りましょう


近畿税理士会 税理士
講師 笹岡 憲一(ささおか けんいち)


管理組合会計の基本原則ですが、会計基準がありませんので、公益法人会計の一般原則を適用して会計をしています。それよりも管理組合会計の特有原則の方が重要です。 特有原則には、予算準拠の原則と区分経理があります。予算準拠の原則は、予算の範囲内でいかに維持管理の費用を使っていくかというものです。予備費の科目を設けている組合もありますが、お薦めできません。 予算の範囲内で運営していくことがベストだと思います。区分経理は、管理費会計と修繕積立金の2つを必ずわけるということです。一緒にされているケースもありますが、これは必ず分ける必要があります。 ■こまめにチェックしてください  管理組合会計の注意点としては、チェックのクセづけが大事です。面倒くさい、忙しい、そんな時間はないという話になりますが、できるだけこまめにチェックする必要があります。 1年に1回よりは毎月する方がいいですね。たとえば預金残高の残高証明書をとってチェックする。未収入金表もチェックする。契約書も必ず内容をチェックし、把握しておくことが大切です。

 それから2期比較会計書類を作成していただきたいと思います。前期より自分の管理組合のお金がいくら増えているかなどが分かるようにする。これは非常に重要です。 そして内部けん制制度をしっかりしていただきたいと思います。いまだに通帳と印鑑を同じ方が保管している管理組合もあります。ひどい話になると、管理組合のキャッシュカードをつくっている。 できるだけお互いがチェックできるようにすることが大切です。
講座 大規模修繕工事と長期修繕計画、修繕積立金について
講師 末広 和雄(すえひろ かずお)

成功の決め手は資金計画。
均等積立方式がお薦めです


マンションリフォーム推進協議会近畿支部
講師 末広 和雄(すえひろ かずお)


■大規模修繕工事  大規模修繕工事がなぜ必要か。例えば外壁についてですが、使われているコンクリートが温度の変化を含む乾燥・収縮によってひび割れを起こします。これを放っておきますと、ひび割れから中に水が入り鉄筋が錆びてきます。鉄筋が錆びてくると建物としても弱くなり、放っておくとコンクリートが剥がれて落ちてきます。これを防ぐために定期的に修繕が必要になります。

 建物の保全には維持保全と改良保全があります。現況そのままの状態を維持しようというのが維持保全で、ようというのが改良保全です。
さらに維持保全には、予防保存と事後保全があります。予防保全は、悪くなる前に処置するものです。とくに給排水管や電気系統などの設備関係、生活に関わる部分は事前に直していかないといけない。事後保全は、悪くなったところを直しましょうというものです。

 保全行為の回数を多くすれば長く持ち、少なければ耐用年数が短くなります。保存処置をしなかったら30年、40年。保全行為があれば約60年、最近の建物であれば、コンクリートの性質がよくなっているので、70年、80年は大丈夫かなという状態になっています。
 一般的に、大規模修繕工事の周期は、10年から12年。国交省が出した「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」では12年とうたわれております。

 大規模修繕工事の検討を始めるきっかけは何でしょうか。一つは、長期修繕計画の中で修繕工事をする時期が近づいていれば、そろそろ考えていきましょうということです。もう一つは、至る所で不具合が目立ちはじめ、このまま放っておくと、住民が怪我をするとか、いろんな問題が出てきそうだということになれば、大規模修繕工事を検討しようということになります。

 大規模修繕工事の進め方は、(1)大規模修繕(検討)委員会の設置、(2)建物調査・診断の実施、(3)仕様書(案)の作成、(4)共通仕様書と内訳明細書の作成、(5)概算金額・資金計画の検討、(6)仕様書の確定、(7)見積参加業者の決定、(8)現場説明会開催・現地調査、(9)見積書提出、(10)プレゼンテーション・ヒアリングの実施、(11)施工業の内定、(12)工事説明会開催、といった流れで進められ、続いて工事着手、竣工・引渡しとなります。
 工事そのものは通常、4〜5カ月くらいで終わりますが、検討から含めれば全体では2年くらいかかります。だから12年目に大規模修繕工事を実施するとしたら、10年目くらいからスタートを切らないと、12年目に実際の工事をすることは難しくなります。

 また、大規模修繕工事を実施するにあたって、足場を組むなどの仮設工事が必要ですが、その費用が全体工事費の20%から25%かかることも覚えておいて下さい。最近の30階を超える超高層マンションの場合は、仮設工事にかかる費用は全体工事の40〜50%になることもあります。 ■長期修繕計画   大規模修繕工事はむやみやたらに実施するのではなく、長期修繕計画という計画を立てて、計画に基づいて実施しなければなりません。当然、実施するに当たってはお金が関わってきますので、そのお金をどうするのかという問題、資金計画もたてなければなりません。

 修繕計画には、修繕項目(何を、どのように直すのか)、修繕時期(いつ直すのか)、修繕費用(どの範囲をおおよそいくらで直すのか)を決めます。例えば、修繕項目では、屋上のアスファルト防水の部分を直しましょう。修繕時期では、大規模修繕工事に合わせて12年目、次は24年目に直しましょう。修繕費用は500万円をかけて直しましょう、といった具合に決めていきます。

 また、修繕計画は、1回作成したらそれで終わりということではなく、定期的な見直しが必要です。つねに現状の把握をして、必要があれば、改良も加えて、軌道修正をすることが必要です。

 そういった計画とおおよその費用が出ますと、10年間、20年間、30年間のトータルの修繕費用の累計金額が出てきます。それをもとに資金計画を立てます。成功の決め手は資金計画です。お金がなければ、決めたはずの修繕ができなくなります。  資金計画には、均等積立、段階増額積立、一時金徴収の3つの方法があります。均等積立は毎月一定額を積み立ていくものです。段階増額積立は、初年度は低くして、所得が上がっていくにつれ段階的に、積立金を上げていきましょうという考え方です。一時金徴収は、一定額を積み立てますが、大規模修繕工事を実施するに当たって、お金が足りない。だからその時に、戸数で割って、一戸当たりいくら出してくださいというものです。基本的には均等積立か段階増額積立のどちらかで実施されているケースが多いと思います。国土交通省が出した「長期修繕計画作成ガイドライン」では、均等積立方式が推奨されてます。

 ちなみに大規模修繕工事で使うお金は、1住戸あたり平均80万円前後と言われています。平均ですから、5戸、10戸の小規模のマンションだとそれ以上のお金がかかりますし、400戸、500戸の大規模マンションだと、スケールメリットで下がる傾向があります。修繕積立金の参考例として、255戸の物件のケースでは、修繕積立金の月額は、専有面積1m2当たり161円。75m2で1万2000円となっています。
建物の構造や建物劣化の原因など、予備知識についても分かりやすく説明
建物の構造や建物劣化の原因など、予備知識についても分かりやすく説明
  
支援機構で実施したセミナーのビデオが住まい情報センターで視聴できます
詳しくはこちらから(PDFファイル)

7月25日(土)  

ベイシティ大阪管理組合
理事長 嶋川利昭

「大規模修繕を12年目に実施しましたが、区分所有者に1級建築士の専門家もおられたため、比較的スムーズにできました。
現在、築17年目に入っているため、電気や機械など設備関係の交換時期にきています。今年はインターホン、来年は地デジに取り組む予定です。
悩みは賃貸率が高いため無関心層が多いことでしたが、最近の賃貸率低下とともに改善され、前回の理事会の出席率は100%でした」


ベイシティ大阪管理組合
監事 葛籠洋子

「集会所がないことが最大の悩みです。総会や打合せ会は玄関ホールなどで行っています。
過去に10年間ほど自主管理を行った時期があり、全員で清掃を始めましたが、それをきっかけにコミュニティがまとまり、広報誌の発行を始めました。
この他にも駐車場で焼肉、ゲーム大会、ガレージセールを行ったり、盆踊りや大阪市が推進している「子ども見守り 隊」などを通じて地域とのコミュニティも深めています」


会場の様子 管理組合報告後の会場との意見交換では、理事の選び方や広報の方法(回覧板、全戸配布など)、ユニークな事務局制度、管理組合ホームページなどについての質問や意見交換が行われました。
続いて、規模別に4つのグループに分かれて意見交換を行いました。コミュニティ活動や管理組合会計、ペット問題など、自分たちのマンションが抱えている問題を中心に活発な話し合いがありました。 様々な解決のヒントを得ることができた様子でした。

各グループで話し合われたテーマ

  セミナー・シンポジウム情報トップへ