セミナー情報

「模擬総会 -円滑な総会の進め方-」報告

開催日時:2011年11月19日(土)

総会の議事進行をステージで再現

 円滑な総会運営はマンション管理に欠かせない重要課題です。新しく役員になられた方などを対象に、管理組合の最高の意思決定の場である総会の模様をステージで再現し、総会をスムーズに行うためのポイントなどを専門家の解説を交えて場面ごとに分かりやすく説明。役員や区分所有者などを熱演した大阪市マンション管理支援機構構成団体メンバーに拍手が送られ、「今回のノウハウを自分たちの総会運営にも役立てたい」と参加者にも好評でした。
山之内 桂
(大阪弁護士会)
川畑 雅一
(大阪府建築士会)
脇坂 毅
(近畿税理士会)

SCENE1 総会への出席について
総会の受付に委任状を持たない賃借人が訪れ、この総会で審議される大規模修繕工事は自分にも大いに関係する問題なので出席したいと申し出る。受付担当理事は委任状がないと出席できないと断るが、当人は納得のいかない様子。続いて、区分所有者の娘さんが代理で受付に来たが、委任状を持っていない。理由を聞くと「去年は委任状がなくても出席できた。家族でもダメなのか」と問われ、取り扱いに困る。

《ポイント解説》山之内 弁護士

 総会は区分所有者のための集会なので、原則として区分所有者以外は参加できませんが、それ以外に賃借人等、区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者も総会の議案に利害関係のある場合には意見を述べることができます。その場合は、規約で予め理事長にその旨を通知しなくてはならないとされていることが多いようです。今回のケースでは、賃借人が大規模修繕の議案について利害関係があるかどうかが問題となります。大規模修繕というだけでは占有者の法的な利害関係は認められませんが、実際上は工事中の共用・専有部分の使用制限や騒音問題などもあるため、理事会の判断で出席を認めてもよいでしょう。
 総会で議決権を行使するために代理人等に委任状の持参を義務づけておくのは重要なことです。今回の娘さんのように、たとえ家族であっても区分所有者以外の人が出席する場合は委任状が必要となります。ただし、委任状がないからダメと決めつけるのも杓子定規なやり方なので、とりあえず出席を許可して、後で委任状を持ってくるようにお願いするなど、柔軟な対応をしてもよいかもしれません。こうした問題は、トラブルを避けるために規約で明確に決めておくことが必要です。
SCENE2 総会の開会・成立
司会者の理事が総会の開催を宣言した後、議事進行を理事長に交代。議長として承認された理事長は書記と署名人の選出を行い、出席者の承認を得る。次いで、議長が「当マンションでは1 戸につき1 議決権としており、本日の出席組合員数は委任状提出によるもの80、代理出席を含めた25 を合わせ105 で、議決権総数120 の半数以上と認めるので本総会は有効に成立していることを宣言します」と総会成立の宣言を行う。

《ポイント解説》山之内 弁護士

 議長の選出について区分所有法では「管理者または集会を召集した区分所有者の一人がなる」とされていますが、規約で別の定めをしてもいいことになっています。今回のケースでは標準管理規約に準拠して、「総会の議長は理事長が務める」としています。議事録については、議長が作成義務を負いますが、便宜上、書記を決めておくのが普通です。議事録の形で総会の経過や結果を残すことは大切なことで、議長および議長が指名する総会に出席した区分所有者2 名が、後日、書記が作成した議事録に目を通し、署名押印します。次に決議の要件ですが、法律では「通常決議では、区分所有者および議決権の過半数で決する」とされており、決議するためには、出席者の過半数ではなく、全区分所有者の過半数および全議決権の過半数の両方を満たさなくてはならないということになります。ただし、実際にはこの要件では議決は難しいため、標準管理規約では、この要件を緩和し、まず「総会の会議は議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなくてはならない(定足数)」とした上で、「出席した区分所有者の議決権の過半数で決する」と定められており、今回のケースを含め、そのようにしている管理組合が多いと思われます。これは管理規約上の問題なので、皆さんのマンションそれぞれの管理規約を確認しておいてください。
SCENE3 議案第1号〜第3号
(事業報告・決算報告・監査報告)

議案審議に移り、副理事長より第1号議案の2010年度事業報告および第2号議案の収支決算報告、監事より第3号議案の監査報告が提案される。続いてこれら3 議案に対して、議長が出席者から一括して質問や意見を受ける。「収支決算報告の貸借対照表において未収金があるが、これは何か。また、決算を見ると未収金の収入があるような書き方になっているが、これでいいのか」との質問には、副理事長が「管理費・水道代等の3ヵ月滞納者が1名いるため、管理組合として戸別訪問を繰り返し口頭による請求を行っている。会計的にはこれまでも同様の処理をしており問題はないはず」と回答。「修繕積立金の収入に計上されている駐車場使用料をもっと管理費会計に組み入れれば、高い管理費を下げられるのでは」との質問に対しては、「そうすると修繕積立金を値上げしなくてはならなくなる。将来の大規模修繕に備えて、今の形にしている」と説明。議長が他に質問がないことを確認し採決に入る。

《ポイント解説》脇坂 税理士

 まず未収金の会計処理についてですが、月々において、又は決算時において、管理費等が入金されるべき時点で収入として認識し、未収金を収支計算書や貸借対照表に表す会計処理を「発生主義」と呼びます。発生主義では債務が確定していれば、支払が済んでいなくても支出として認識する事になります。一方、収入および支出を現実に入金、出金された時点で記帳する会計処理を「現金主義」と呼びます。現金主義では会計年度末に未収金、未払金の処理が不明確になりやすい欠点が出てきますので、未収金台帳等を整理し、会計報告では未収金、未払金がある旨を注記するのも必要かと思います。管理組合の会計処理は、収支予算とその会計年度内に発生した収入、支払い義務が確定した支出を比較することが出来る発生主義の方が、収支状況や財務状況を正確に反映する会計書類の作成、滞納状況の把握に望ましいでしょう。
 2番目の、駐車場使用料を管理費会計に充当する問題については、管理組合の会計業務は目的別に会計区分することが必要であることから、駐車場使用料は独立した区分経理が理想ですが、現実には管理費会計に充当するケースが多いようです。管理費会計に充当すると、駐車場に空きが出て収入が減少すれば、管理費会計の維持管理の支払に支障が生じる場合や、機械式駐車場の場合、多額の維持修繕費について資金不足が生じる事も考えられます。標準管理規約にもあるように、駐車場収入から駐車場の管理費用を差し引いた残額を将来の修理に積み立てる必要があるかと思います。管理組合としては、駐車場使用料をどのように会計処理するか、また、資金不足が生じた場合、どの会計から支出するか等の検討も必要でしょう。
SCENE4 議案第4号〜第6号
(大規模修繕委員会の設置、事業計画案、予算案)
第4 号議案では、まず大規模修繕工事の実施についての基本事項である現状調査、仕様・工法の検討、資金計画、実施時期等の検討を行うため、新たに大規模修繕委員会細則を定め、大規模修繕委員会を設置することを提案。メンバーについては区分所有者の中から関心のある方や建築、金融、法律等に詳しい方を募り、最低、各階に各1 名を目指したいとの提案に対し、出席者から「現状調査をはじめ専門的な知識が必要なので、専門家に入ってもらうのがいいのでは」との意見が述べられる。その後、第5 号〜第6 号議案の事業計画案と予算案の提案があり、採決に移り、挙手多数で理事会提案通り可決する。

《ポイント解説》川畑 一級建築士

 大規模修繕を成功させるには4 つのポイントがあります。第1は、人の輪を広げること。居住者の状況把握は管理組合にしかできません。賃借人がいるか、どんな人材がいるかなどを把握しておくことが必要です。第2は、同じやるなら楽しくやろうという提案です。このチャンスを住民全員を巻きこんだイベントなどに発展させ、楽しく使いやすいマンションへの夢を実現していきましょう。第3 は、あせらないこと。大規模修繕は面倒でもそのステップを一段一段確実に上っていくことが何よりも大切です。「急がば回れ」で、長期的展望を持って取り組みましょう。第4 は、専門家の意見を上手に活用すること。大規模修繕は長期戦なので、管理組合だけでやると役員の交代などで、思わぬトラブルが発生することがあります。それを避けるためには、信頼できるパートナーとして専門家の活用も考えられます。これにはある程度の費用が発生しますが、安心安全の代価として、また労力と時間を軽減する意味でも、多額な修繕費用と比べれば金額的に見合うものではないかと思われます。大阪市にはアドバイザーを派遣する制度もあります。これらの専門家を上手に活用し、マンション全員の汗と努力で大規模修繕をやり遂げていただきたいと思います。
SCENE5 議案第7号(新役員選任、閉会)
議案第7号の新役員の選任に移る。理事を選出した後、一旦休憩を取り、その間を利用して理事の互選により理事長や副理事長、各担当を決め、総会を再開。出席者にその内容の報告があり、新役員を代表して新理事長が挨拶し、総会を終了する。後日、議事録署名人は議事録の内容確認と署名押印をする。

《ポイント解説》山之内 弁護士

 管理組合の役員は区分所有者の団体である管理組合の執行部に当たります。役員の要件については比較的自由に定めることができますが、実際には、部屋番号での持ち回りなど不公平にならないように平等に回ってくるようにする例が多いと思われます。多数の理事が必要な場合は、標準管理規約コメントでは区分所有者10〜15 戸あたり1人の理事という基準を示していますが、適宜の数でもかまいません。理事の中に経験者がいるようにするために任期を2 年にして半数を改選というやり方もよくあります。なお、2011年の標準管理規約の改正で、理事の要件として大きな変化があり、居住者でないと理事になれないという条項が削除されました。改正後の規約では、分譲貸しにしている人や事務所などに使っている人でも理事になれることになったので、注意が必要です。
 議事録の作成に関しては、総会を開催する以上は議事録を作成しなくてはならないとされています。作成義務者は議長、保管者は理事長で、後日、利害関係のある人から閲覧の希望があれば拒否はできません。保管期間は法律では定められていないので自由に決められますが、通常は場所の許す限り永久保存でかまわないと思います。また、署名の要件も省略できないことになっています。議長と総会に出席した区分所有者2人が署名押印しなくてはなりません。この場合、代理で来た人でもかまいませんが、書面で議決権行使した人を署名人に選ぶことはできません。