セミナー情報

マンションの円滑な維持管理・再生をめざして


岡本:私達が建築士会で相談を受けていますと、長期修繕をやることになったが、何から手をつけていいのかわからないというのが現状です。長期修繕計画がない所もたくさんあります。管理会社による長期修繕の見積りが安いのか高いのか相談に来られます。長期修繕になると200戸以上の場合は、億を超える場合もあります。しかし、管理会社が建物調査をしっかりとやっていない場合もあります。
 それと、理事は2、3年、短い所では1年くらいで交替されます。そうすると長期修繕や維持・メンテナンスに関する記録が伝達されません。長期修繕をやられた結果も蓄積されていないため、再度長期修繕をやる時にもう一度建物調査をしなければならない。管理組合が、先ほど八杉さんが言われた自己責任を果たしていないというのが現状です。
生駒:この4月から6月のマンション管理の相談事例を全般的に見るといくつかの点にまとめられると思います。まず1つは、やはり役員の方々以外は自分達のマンションに関心が低いという実態です。2つ目に管理組合の内部で、理事者と区分所有者との信頼関係ができていないケースがいくつかあります。3つ目に理事会でのことが各区分所有者になかなか伝わっていないということがあります。4つ目に修繕計画などは専門家の知識を必要としていることです。 これらから、私なりのマンション管理のポイントとしては、1.区分所有者が自らのマンションを良くしていこうという意識を持つこと。2.組合活動を情報公開し、常に区分所有者に伝わるよう努力し、日頃からの良好なコミュニティをつくること。3.組合として管理会社を良きアドバイザーとしてうまく活用すること。4.技術的な分野で、第3者的な立場として建築士など専門家を上手に活用すること等があげられます。これらは、建替えを推進していく場合も共通のポイントではないかなと感じております。
元木:築年数の古いマンションがたくさん増えると何が問題かということですが、まずマンションという所有形態が1戸建てと決定的に違い、自分の所有物を自分で自由に処分できないという事です。共有物を処分する時は共有者全員の合意が必要です。修繕や建替えも民法では全員同意でないとできません。マンションという新しい居住形態ができた時に民法だけでは対応できないため、昭和37年に区分所有法ができ、昭和58年に大規模修繕や建替え決議について全員同意の部分が改正されました。 ここでようやく修繕や建替えというものを意識しはじめたということです。
 それから大量のマンションストックの適切な管理について、国としてマンション管理適正化指針を出したり、マンション管理士という資格を作ったり、あるいは管理会社の登録というような内容で、マンションの管理適正化法が平成12年に成立しました。さらに管理の先にあるものは、やはり建替えです。できるだけスムーズに建替えができるように法律を整備したのが、マンション建替えの円滑化法です。この円滑化法を活用すると、区分所有法に基づき5分の4の賛成で建替え決議をされたマンションでは、マンション建替え組合として都道府県知事認可をしてもらって法人格を得ることができます。それによっていろんな契約がスムーズに結べたり、意志決定ルールが明確になって建替えの事業が進みやすい。それともう一つの要点は、権利変換計画。これは、いわゆる現行のマンションの土地と建物の価値を新しく建設されるマンションの土地持ち分と建物持ち分に変換をするものです。今まで、老朽化等により建替えられたマンションは、ほとんど容積率が余っていますが、今後は、容積率に余裕がなく事業費を自分で持ち出さなければいけないマンションが増えてくるわけです。こういう状況を踏まえ建替えを円滑に進めるために円滑化法ができたわけで、建替え時には、共同施設整備費などに国と地方合わせて3分の2の補助金を受けられる補助制度もあります。また修繕・建替えを判断するマニュアル、建替えの合意形成を円滑にするマニュアルも作っております。大阪市はもっと積極的にいろんな事をやられていますが、全国レベルでも地域レベルでもこういうマンション関係の団体が集まった協議会というのもあり、これらがうまくかみ合って機能していけば、将来的には自己負担を伴いながらも自律的な建替えというものの枠組みができるんではないかと期待をしています。

海野:つづきまして、事例報告をいただいた葛籠さん、池上さんに実際に事業を進めて行く中で困ったこと、またその解決策などをお話しいただければと思います。 
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