セミナー情報

平成15年度「第8回マンション管理セミナー&管理組合   交流会」報告

第8回マンション管理セミナー&管理組合交流会報告
マンション管理組合の円滑な運営には、情報交換がとても大切です。今回は、セミナーに続いて、支援機構として2回目の管理組合交流会が開催されました。
セミナーの様子 セミナーでは、大阪弁護士会の金本弁護士に、住まい情報センターにも相談が多く寄せられている管理費等の滞納問題の対応策について、そして住宅金融公庫大阪支店まちづくり融資課の矢野課長に、皆さんの大切な資産であるマンションの維持管理に向けた公庫の支援について講演していただきました。

管理費等滞納への対策について
管理費には「先取特権」が与えられている
 「管理費」には、大別して毎月集金される「共益費」「組合費」「大規模修繕積立金」と一時金として集金される「大規模修繕負担金」の2つあり、マンションの管理に要する費用を総称して、「管理費等」と呼ばれています。
 では、建物の区分所有に関する法律(以下、区分所有法)の7条において「管理費等」はどういう扱いを受けているか。[1] 共用部分、建物の敷地もしくは共用部分以外の建物の附属施設につき、他の区分所有者に対して有する債権、[2] 規約もしくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権、[3] 管理者または管理組合法人がその職務または業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権、これらの債権については「先取特権」という特別の権利が発生します。これは質権や抵当権等の担保物権と同じで、一定の債権を実現するために債務者の財産を強制的に売買してお金に換えたりして満足することができます。そういう意味では、債権者である管理組合側を保護しています。
 従って、管理費等を滞納したまま部屋を売って出ていった区分所有者がおられる場合、滞納した債務が、上記の[1][2][3]に該当すれば、新しい区分所有者から徴収できます。
滞納を防ぐ予防策、初期段階の対応策
「滞納を防ぐ予防策」がとても大事です。滞納が発生してから、対応するよりも、まず滞納自体を発生させないことです。最初に「徴収方法」を工夫します。滞納にはいろいろ理由があります。区分所有者が支払いを忘れていたり、一部だけ選り分けて支払うことができないように、規約上、自動振替による支払いを明記しておいて回収していきます。
 次に「遅延損害金の定め」をしておきます。規約上、何の定めがなくても年5%の遅延損害金は、当然に回収できますが、このパーセンテージを高めに設定しておけば、遅れないように頑張らせる効果があります。
滞納発生時の初期段階での対応策
 滞納が発生した場合の初期段階での対応には、まず「氏名公表」が考えられます。事実として滞納があるならプライバシィ侵害にあたらないとみられていますが、「私はこの部分に債務は発生しないと考える。だから支払わないんだ」という方には、逆にプライバシィの侵害で、組合側が訴えられるというリスクもあります。氏名公表は、感情的対立を招く恐れがあるので、各種督促が功を奏さない場合や、所在不明者や連絡不能者の関係者に対する告知を目的とする場合に限定すべきです。
 「水道・電気等の供給を停止」はどうでしょうか。各戸より子メーターで集金している場合、滞納者に対し水道・電気等の供給を停止するケースもあるとよく聞きますが、実際にこれを行うと権利濫用として損害賠償を請求されかねません。水道や電気は生きていく上で不可欠なライフラインであり、これを止めるのは、報復的措置としてやりすぎじゃないかという意味になります。
 おすすめしたいのは、「滞納への対応マニュアルの作成・告知」です。管理費等を自治会費程度に安易に捉えて、滞納してしまう方も時々おられますが、住民の方の意識を高揚させ、また、滞納が焦げ付くことがないようにする効果があります。 トラブルが発生した場合の解決策
 いろいろな予防策や初期段階での対応をやってきても、不幸にして「トラブルが発生した場合の解決策」としては、まず「滞納理由を把握」します。できるだけ早期に滞納者に連絡を取り、滞納理由を確認します。金員不足(お金がない)、失念(忘れている)というケースが多いと思われますが、理由があって払わない人は、焦げ付くことが予測される場合が多く、早期に弁護士等に相談されるのが良いでしょう。
 それから、滞納理由を聞いた時に、「口頭による請求」を普通やります。それでも応じないとき、「文書による督促」を行います。通常は、[1] ポストへの投函で、[2] 配達証明付郵便、[3] 配達証明付内容証明郵便、といった段階を踏むことになると思われます。もし滞納理由が、自分に支払い義務がないという場合は、いきなり[3]にいった方がいいでしょう。
 上記の[1]〜[3]の措置をとった結果、相手方が折れてきて、話をしようという段階になった時には、「合意書」「念書」という形で文書化しておく必要があります。金銭の支払いに関する合意ですので、公正証書にして「執行受諾文言」を設けておけば、約束を反故にされた場合でも確定判決がなくても強制執行を行うことができます。
 「訴訟手続等」は最終手段です。実は、確定判決を得なくとも、先取特権に基づいて、当該区分所有権自体及び建物に備え付けた動産に対して、強制執行を行うことができるし、すでに競売が開始している場合も、競落人に対し、特定承継人として責任を追及できます。それなのに、なぜ訴訟をやらないといけないのかといえば、訴訟を提起し勝訴判決が確定すれば、先取特権の保護が及ばない水道光熱費等についても強制執行できますし、また、給与債権の差し押さえもできます。その他、訴訟の場を利用した和解を期待できますし、判決をもらうことによって法律関係を明確にできます。また、滞納者に対する毅然とした態度を示すことなどの効果があります。
マンション維持・管理適正化に向けた公庫の支援について
 マンションの年数が経つに従って当然必要になる修繕をどうしていくか、修繕積立金をどのように運用していくかが、大きな問題になろうかと思います。
 マンション管理適正化に向けた取り組みとして、「マンション情報登録制度」を用意しています。これは皆様方のマンションの管理規約や長期修繕計画が公庫が定める基準に適合していることを事前に第三者機関に登録します。それから「マンションすまい・る債」で、皆さまの修繕積立金の確保と安全確実な運用を図っていただければと考えております。
また、修繕積立金が積み上がらない時は、積立金の範囲内で工事をしたり、修繕を先送りするではなくて、必要な時期に必要な工事を行うことにより、マンションの資産価値を劣化させないために、「マンション共用部分リフォームローン」を用意しています。
昨年6月に私どもの根拠法が一部改正されて、公庫は平成18年度末(19年3月31日)までに独立行政法人という公的な機関に生まれ変わります。今の住宅金融公庫が皆様方に約束していることは、その独立行政法人に引き継がれることになっております。ご安心して公庫のご活用をお考えください。
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