セミナー情報

マンションらいふあっぷ基礎講座


建物の維持管理に関連して、大規模修繕のポイントや共用部分の修繕への支援制度などをテーマとした講座を開催しました。
 阪神・淡路大震災から8年が過ぎてあのすさまじい惨状の記憶が薄れていますが、もし大地震がきた場合、昭和56年頃より以前に建てられたマンションには、耐震安全性に多少の問題があるとされています。長期修繕は、こうした問題に対しても、修繕や改修、改良の組み合わせで単独で補強する時よりも効率的に性能を上げることができます。また、建物のグレードアップで資産価値を高めることも可能となります。
 修繕を実施するためには事前調査が必要となりますが、手順として、まずヒアリングによる予備調査を行います。居住者全員に修繕工事の必要性を理解してもらうようにPRすることが必要で、居住者の了解を得た上で予備調査を行います。調査を実施する際、しっかりとしたパートナーを選び、必ず立会いましょう。目視をはじめ、様々な診断を行って、疑わしいものは再度二次診断という詳しい調査を実施することが必要です。
 そうした調査者の選定に際しては、調査箇所を的確に把握することができ、調査のための工法・コスト等について熟知している業者であり、かつ総会等で皆さんにきちんと説明ができるような技術者を公平・公正に客観的に選ぶことが重要です。
 さて長期修繕計画には、「修繕項目を明確化」「実施時期の明確化」「費用の明確化」の3つの重要なポイントがあります。このことによって集合住宅としての機能の強化と、快適で安全な生活の確保ができるわけです。そして場合によっては資産価値の向上にもつながることになります。また、長期修繕計画の3大効果としては、1つ目は建物の性能を居住者が認知することができ、2つ目は、修繕積立金の変更の際に、なぜ変更が必要かを明確に示すことができます。3つ目は、住民の理解、コンセンサスが得やすくなります。 
 長期修繕には、ペンキの塗り替えなら7年とか、防水工事なら10年から15年、外壁なら15年から20年といった目安があります。しかし、これは個々に差があります。例えば大阪湾に近いところと海から遠いところでは、同じ塗装でも耐久年数に違いがあります。
 いろいろな条件を考慮した長期修繕計画はすぐにできるものではありません。修繕を実施する時には、すぐに皆の合意が得られるように、常にあらゆる機会を捉えて、マンションの性能の改善、補修の必要性をPRし、きっちりとした長期修繕計画を作定しておくことが重要です。
 公庫が準備しているマンションの維持・管理、長期修繕への支援制度について説明します。
■維持管理基準の適用
 マンションを新築するときに、公庫では公庫融資利用のマンションについての維持管理基準(管理規約で定めるべき内容、長期修繕計画の基準が決められている)を定めて適用し、マンション事業者に守っていただいています。
■公庫マンション維持管理ガイドブック
 入居者への引渡し、管理組合による管理開始時に、「公庫マンション維持管理ガイドブック」を管理組合へ配布するよう事業者に依頼しています。
■公庫マンション情報登録制度
 マンションの維持管理内容が、公庫が定めている維持管理要件に適合していることを公庫の指定した機関にあらかじめ登録しておく制度です。
■マンションすまい・る債
 公庫が発行する、1口50万円の債券を管理組合が年1回、10年間にわたって購入していただき、利息を付けて公庫が買い戻す制度です。
・初回のみの積立てでも利用できること、中途解約でも元本割れ がないこと、定期預金以上の利回りがあることなど修繕積立金 のペイオフ対策として注目が集まりつつあります。
・公庫廃止の政府決定がされていますが、公庫が皆さんに対して 責任を果たさなければならないマンションすまい・る債などについ ては、公庫のあとにできる独立行政法人が、その責任遂行を引 継ぐことも政府決定されています。その意味でもマンションすまい・ る債は安心できるものとなっています。
■マンションリフォームローン
 分譲マンションの共用部分をリフォームする工事について利用でき、無担保コースでは、(財)マンション管理センターを連帯保証人にすることで、対象工事費の80%または、1戸当たり150万円を限度にお貸しします。
ミニ講座2 ガス配管の維持保全について
埋設管は20年、露出配管は30年を目処に計画修繕を
講師 佐々木 善文(ささき よしふみ)
大阪ガス設備技術部導管企画チーム次長

 ガス配管も古くなると腐食漏れを起こすため、給水管や配水管と同様に、計画修繕が必要です。
 ガス配管の資産区分は、敷地境界線から道路側の配管はガス事業者、敷地の内側については、住戸内は各区分所有者、共用部分は管理組合全体の資産です。敷地内のガス管は、ガス事業法に基づいて3年に1回定期点検を行っています。埋設管の材料としては、昭和50年までアスファルトジュート巻鋼管が標準でしたが、現在は、先の阪神・淡路大震災で被害を受けなかったポリエチレン管が一般的に使われています。埋設管は20年、露出配管は30年を目処に計画修繕に組み込んで下さい。
 ガス配管改善工事の手順としては、まず現場を調査し、改善工事の提案と見積書を提出し、工事契約完了後、工事を行います。
 改修の際、埋設部はポリエチレン管に取替え、旧型のガス栓は新しいヒューズ型のガス栓に取替えることをポイントとしていただければと思います。
 ※(注)講座1〜5&ミニ講座1〜3の講師の役職、部署等は講演時のものです。
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