建替え決議成立後に不参加者から無効の表明があった場合は?/A事件:大阪高等裁判所 平成12年9月28日判決、B事件:神戸地方裁判所 平成11年6月21日判決

A事件:大阪地方裁判所 平成11年3月23日判決 大阪高等裁判所 平成12年9月28日判決
B事件:神戸地方裁判所 平成11年6月21日判決

事案

 A判決の事件では、建築後29年を経過した団地のマンションにおいて、区分所有者の集会で建替え決議が成立しました。
 また、B判決の事件では、阪神・淡路大震災により損傷を受けたマンションにおいて、臨時総会で建替え決議が成立しました。
 そこで、A判決の事件、B判決の事件共に、建替えに参加しない区分所有者ら(以下「Xら」という)が建替え決議に賛成した区分所有者らに対して、本件建替え決議は区分所有法62条所定の建替え決議の要件を欠き無効であるとして、本件建替え決議の無効確認を求めて提訴したのです。
【問題点】
 A判決、B判決共に問題点は多岐に渡りましたが、ここでは、区分所有法62条所定の建替え決議の要件についての問題点、その中でも、訴訟において主に問題とされ裁判所も積極的に判断を下した問題点を取り上げます。
 A判決の事件では、区分所有法62条の実質的要件である「老朽・・その他の事由」が本件において認められるか。「老朽」には、物理的な効用の減退のみならず、敷地の効率的利用、建物の効用増加、社会的・経済的効用の減退が含まれるのか。
 B判決の事件では、区分所有法62条の実質的要件である「過分の費用」が本件において認められるか。「過分の費用」の判断方法の当否という点が主たる争点となりました。

判決の要旨

 まず、A事件の高等裁判所の内容は次のとおりです。
「老朽」の意義については、『「老朽」とは、建築後の年月の経過による建物としての物理的効用の減退を指すと解する。外壁や内壁のクラック、ベランダの塗装剥離、鉄筋の露出、給配水管の腐食の進行等からすれば、築後約30年という年月の経過により、建物として社会通念上要求される一定の性能が損なわれていることは明らかである。老朽により建物としての効用が損なわれることを判断するにあたって、必ずしも(税法上の)物理的耐用年数を基準としなければならない理由はなく、建物の躯体部分だけでなく設備等を含めた全体としてみるべきである』と判示しています。また、「過分の費用」を要するか否かは『建物全体について判断すべきであり、専有部分の維持回復費用を考慮しないとするのは、制度の趣旨に照らして合理的な理由はない』と判示し、さらに、建替え反対者側の「賛成者側の提出した見積書の工事内容、工事単価は、経年マンションの保全工事の実態からはるかに遊離している」との主張に対して、『建物にどの程度の効用を期待するかは、相対的な価値判断の問題であるから、建物の効用の維持、回復にどの程度の補修工事をするか、どの程度の費用を投じるかは物理的な建物の老朽化の程度その他の様々な要素を勘案して判断することになり、この点はまずもって区分所有者が判断すべきことであると解されるから、大多数の区分所有者の判断は、それが不合理といえない限りは、これを尊重せざるを得ない』と判示しています。
 次に、B判決の問題点の判断内容は次のとおりです。
「過分の費用」とは、区分所有建物が物理的な効用の減退により建物の使用目的に応じた社会的経済的効用を果たすために社会通念上必要とされる性能を損ない、その効用を維持、回復するために必要な費用が相当な範囲を超えるに至ったことをいう。単に建物の時価と建物の維持、回復費用の比較によるのではなく、諸般の事情を総合考慮し、区分所有者が建物を維持することが合理的といえるかにつき、多数の区分所有者の主観的な価値判断を尊重して、判断すべきであるとしています。
【判決の意味】
 A判決は、「老朽」の意義を明らかにし、税法上の耐用年数の約半分である30年の経過時点でも「老朽」を認めた点で、今後の同種経年マンションの建替えに大きな影響を及ぼすものと思われます。
 B判決は、被災という緊急事態に際し、建替えと復旧のどちらを選択するのかを考える場合に参考となる判例であり、「過分の費用」の要件の存否につき、多数の区分所有者の意思を尊重した点が注目すべきところといえます。

ひとことコメント
◆ 管理組合の今後の対応 ◆

 これらの判決は、多数のマンションが老朽化し建替え問題に直面すると予想される中、管理組合の皆さんが建替えを検討し、実施するにあたり、円滑に行うための一つの指針を与えてくれるものといえます。マンションの建替え紛争は、訴訟となると準備期間から通算するとかなり長い年月を経ることは否定できません。また、マンションの内部の紛争ということで、近隣関係もからむため、紛争中の当事者の精神的労力はかなりのものとなることが予想されます。従って、管理組合としては、上記のような諸判例を検討して、その実質的要件を十分に検討すると共に、少数反対者にも十分説明・説得を行い、手続面を充実させることが重要でしょう。なお、近年、区分所有法の改正事項として建替えの要件の緩和化が検討されておりますので、この改正の動きにも注目されることをお勧めします。

NO.4 城東区・今福グランドハイツ管理組合

9年の理事長歴が生かされた組合運営

1億円不足の大規模修繕費用も計画的に調達

 地下鉄鶴見緑地線「今福鶴見」駅前にある今福グランドハイツは、今年で築24年・総戸数174戸の分譲マンションです。このマンションで大規模修繕の5か年計画案が出されたのは平成7年。まもなく築20年になり、入居者の高齢化による改修も必要だったことから、とりあえず管理会社に補修計画と費用を見積もってもらったところ約1億3,000万円の概算が出されました。しかし当時積立金は約3,000万円しかなく、目的達成のためには5年間、毎年20%ずつアップすることになりました。これにより、従来は月額90万円だった積立金は、平成7年度108万円、8年度130万円、9年度155万円、10年度190万円、11年度220万円と順調に積み立てられ、平成11年には計画どおり大規模補修が実施されました。
 工事に関しても、共用部分の調査点検とともに、居住者による各住戸内のチェックも徹底した結果、当初1億3,000万円の見積もりだった費用も1億円で済みました。具体的には、外壁や鉄部塗装をはじめ、屋上防水、エレベーター(2基)の機械式からコンピューター制御への変換、ドア取り替え、廊下・天井タイルの新設、チャンバー扉の新規取り替えに加え、共用部分の一部スロープ化などバリアフリー対応など。この管理組合では、どうせ大規模修繕工事をやるなら“資産向上”を目指す工事とする意味合いから「良品工事」と称しています。

事前アンケートや広報で周知徹底、全員参加でスタート

 この成功には、9年間も理事長を務めている浅野典成さんを中心にした12人の理事さんたちの積極的な協力態勢が大いにモノを言っています。たとえば大規模修繕なら居住者全員に「人もマンションもいずれ高齢化する。ならば早く適切な対処をすれば結局は自分自身の資産価値を高める」ことを、まずは居住者の家族構成や年齢層の調査、建物診断で実証。その上で必要額を示し、将来一時金の徴収がむずかしい点なども含めて値上げの必要性を説明して理解を求めるなど細かい対応がなされました。反対者がいれば、納得のいくまで個別に話し合い、全員参加の上での合意とする−こうした精力的な活動が、居住者の信頼感を得て、計画案は一括で了解され、積立金の5年にわたる増額もスムーズに運びました。
 12人(現在は男性9人、女性3人)の理事は各階から1名選出の輪番制で通常は1年任期ですが、大規模修繕工事にあたる年は自主的に留任をしてもらい、理事5人による修繕小委員会を設置するなど臨機応変の措置がとられました。もっともこのマンションでは、浅野さんが長年理事長を務め、管理運営や居住者に精通していることから、理事が全員交代しても何ら支障がないという、うらやましい運営がなされています。

管理方式の変更で委託料を下げ、業務内容の質をアップ

 理事会は、毎月第3日曜日に開催されていますが、平均9割以上の出席率とのこと。この出席率の高さは、何といっても浅野理事長のリーダーシップと管理運営の工夫やノウハウが生かされています。たとえば平成5年には、修繕工事に伴う不具合等で管理会社を変更。これを機に、新たな管理会社には管理人常駐と清掃、管理費の銀行引き落としの確認など業務の一部を委託し、後は自主管理に切り替えるなど、委託料を下げる一方で業務内容の質のアップを狙った措置をとっています。ちなみに管理費や修繕積立金の通帳管理は、印鑑を理事長、通帳は会計が保管するなど責任分担制です。
さらに平成7年、屋上に電話の基地局設置の話があった際、設置賃料の交渉や翌年に予定していた屋上の一部防水工事の費用負担を無料にするなどの努力で、管理費の値上げをせずにすんでいます。

課題や難問を片っ端から解決

 こうした経済策もさることながら、管理組合そのものの運営、組合と居住者との意志疎通、居住者間のコミュニケーションに関しても、このマンションではさまざまな工夫と積極的な活動で、課題や難問を片っ端から解決しています。その一部を紹介しましょう。
《管理組合の円滑な運営》   
 理事は1年任期の輪番制ですが、理事長がすべて把握しているので、引き継ぎもスムーズ。そして、たとえば大規模修繕工事時には理事5名による修繕小委員会を結成し、そのなかの最も活発な人に責任者になってもらいます。また規約では禁止になっているペット飼育に関しても、現実には飼育者がいるので、まずは実態調査をした上で飼育者によるペット委員会を設置。そのなかから、一番世話好きな人を委員長に任命。飼育ルール等を作ってもらって、一代限りを条件に、ペット飼育は暗黙の了解とされています。(現状は犬10匹、猫8匹)
 また、管理費などの2か月以上の未納に対しては、当事者とよく話し合い、念書を取るなどして解決しています。
《組合と居住者との意志疎通》
 このマンションでは、とにかく組合情報はすべての居住者が知っているという状況にするため、お知らせチラシや広報紙を各戸(集合郵便受けではない)に配布します。返答の必要なもので回収が遅くなっていたり、反対意見がある場合は、理事長や担当理事が各戸を訪問し、よく話し合って一つひとつ解決していくという方法がとられています。 たとえば阪神淡路大震災では外壁に少しクラックが入った程度だったものの、細部の点検をした上で補修を実施。それでも不安をもつ居住者にはそれが解消するまで説明をし、納得してもらった後に覚書を作成するなどの対応をしています。組合決議に関しても、反対者には個別によく話を聞き、組合側としても言いたいことをはっきり言って、問題を先送りにしたり、うやむやにしていません。
《居住者間のコミュニケーションの活性化》
 管理組合の理事長や理事が地元自治会の役員を兼務するなど日ごろから交流のある自治会と連携し、中庭で年2回のバーベキューパーティーを催したり、夏祭り等の行事に参加するなど積極的な活動をしています。
 また居住者間の横の連携や協調性を日常的に喚起する手段の一つとして、昨年7月から自転車の整理整頓キャンペーンを実施。各階の自転車所有者の持ち回りで毎月第1日曜日に行われていますが、顔見知りが増えるなどの成果が徐々に上がり、現在も続いています。

ただ今マナーキャンペーン実施中

 自転車は、通勤通学での使用を最優先とし、1住戸につき2台(駐輪料金は1台につき年500円)に制限され、現在220〜230台が駐輪されています。毎年6月と12月に登録の更新を行い不用の自転車はマンションの公用自転車として活用することとし、買い物や遊びのために使用されています。使用料は、1時間まで無料、3時間50円。ちなみにバイクは1台までの制限をしています。
 コミュニケーションの活性化と自転車の整頓をめざしたマナーキャンペーンに端を発して、昨年2月にはマンション生活全般のマナー向上をめざした「Best Only Oneキャンペーン」をスタート。15項目のどれもが当たり前のマナーながら、集団生活となるとなかなか徹底できないこともあり、チラシにして配付したり、掲示するといった地味ながら着実な活動をつづけています。

円滑な組合運営はリーダー次第?

 今回の取材で、管理組合の円滑な運営は結局はリーダー次第なのでは・・・ということを痛感させられました。それほど浅野理事長は管理に関する勉強をよくされており、それを生かした工夫と行動力があります。そして9年にわたって1年任期の理事さん達に理解をしてもらいながら適材適所の活動をしてもらう  というリーダーシップは、ご自身の会社経営のノウハウを生かしておられるからでしょうか。忙しい職務の寸暇に、12月実施のマンション管理士試験へ向けての勉強をしている浅野理事長、「私が続けられるうちに、後継者が育っていただければ」という言葉が印象的でした。
マンション概要 所在地:大阪市城東区今福東1-14-18
交通 地下鉄鶴見緑地線「今福鶴見」駅前 構造 鉄骨鉄筋コンクリート造12階建て
建築年 昭和52年 総戸数 174戸

管理費等を自社名義の定期預金にした管理会社が破産した場合は?/東京高等裁判所 平成12年12月14日判決

東京高等裁判所 平成12年12月14日判決 (上告受理申請中)
金融法務事情1621号33頁〜

事案

  マンション分譲業者Aは、分譲に際し、買主に対して自ら作成した管理規約の承認を求め、さらに子会社であるマンション管理会社Bとの間で管理委託契約を締結させていました。管理規約ではBが管理者となり、各区分所有者は管理費・修繕積立金などをBに支払うとされ、管理委託契約ではBは経理事務・修繕事務・設備保守等を行い、各区分所有者から支払われた管理費から必要な費用や管理報酬を受取ることとされていました。これに基づき各区分所有者は、BがC銀行に開設した「B名義の普通預金口座」に管理費などを支払っていきました。この口座はBが管理している各マンションごとに専用とされ、他のマンションの管理費等やB固有の資金が入金されることはありませんでした。その後、Bは管理費等がある程度多額になると普通預金を「B名義の定期預金」(これも各マンションごと)にし、最終的にC銀行はBに対する貸付金の担保としてこの定期預金に質権を設定していました(預金通帳及び銀行印は一貫してBが保管)。
 ところがBが破産宣告を受けるに至り、C銀行が質権を実行して定期預金をBに対する貸付金の回収に充てたため、この定期預金の帰属を巡ってBの破産管財人、C銀行、マンション管理組合法人の間で裁判となりました。なお、Bは毎年、各マンションごとに、「管理費収支決算書」等を作成して全区分所有者に配布しており、その中には上記定期預金のことが記載されていました。またBは管理組合の理事からB名義の預金の名義変更を求められた場合には、これらの預金は管理組合に帰属する財産であるとの考えのもとに、管理組合の理事名義などに変更し、印鑑も変更していたという実績がありました。

判決の要旨

 判決はまず、預金者の認定について、自らお金を出して自分の預金とする意思で銀行に対して自ら又は使者・代理人を通じて預金契約した者が、特段の事情がない限り当該預金の預金者であると解するのが相当、という最高裁判所の判決を引用しました。
 そして管理者であるBは、法律上、管理業務の執行者であり、とすれば各区分所有者が管理費等の支払義務を負うのは管理組合に対してであり、管理者Bは管理費を受領・保管する権限はあるが管理費等の債権自体は管理組合に帰属するのが相当である、としました。
 左記「事案のあらまし」に述べたような事実関係においては、Bは本件各マンション分譲後一貫して、各マンションの区分所有者団体の「管理者」の職務として、それらの管理費等の金銭を管理してきたものであり、各預金の開設行為も各区分所有者団体の預金として行ったものというべきである。結論として、各マンションの区分所有者団体は、本件定期預金について、自らの出損によって、自己の預金とする意思で、管理者たるBを代理人として銀行との間で預金契約をしたものであり、本件定期預金の預金者であると判断しました。
 さらにC銀行の質権設定契約の有効性については、定期預金の帰属者が管理組合であるにもかかわらずBの預金であるとの前提で質権を設定したことにつき注意義務を尽くしたとは言えないとして無効と判断し、各マンション管理組合に対して預金を払い戻すよう命じました。

ひとことコメント

 上記判決では結論としては管理組合が勝訴しています。しかしながら、この判決で管理組合が勝訴したのは、管理会社Bが区分所有法上の「管理者」と位置付けられており、管理組合の代理人と考えやすかったこと、B管理会社が、受託しているマンションごとに預金口座を開設し、他の資金と一切混同していなかったこと、B会社の認識としても各預金がマンション管理組合のものと考えており、管理組合から要望があれば名義変更などに応じていたこと、銀行もこれらの事情を知り、または知り得るべき立場にあったため質権設定が無効とされたこと、などの事情があったからと考えられます。
 仮にBが自己固有の資金と混同したり、複数のマンションの管理費を同じ預金口座にしていれば(これらの事情は外部からは通常分かりません)、管理組合の請求は認められなかったと考えられます。近時の不況により管理会社の倒産も多くなっている昨今、管理組合とすれば最低でも管理費・修繕積立金等の口座は管理組合名義にすることと、場合によっては預金通帳や銀行印は管理組合保管とするなどの対応を考えるべきでしょう。

NO.3 東成区・森の宮ハイツ管理組合

役員任期を「3期3年の重任」制で活性化

平成3年の臨時総会で新体制に

 「1年任期」が圧倒的に多い管理組合の役員任期を「3期3年の重任」制にした東成区の森の宮ハイツ。昭和53年建築、14階建て・総戸数140戸の同マンションは、JR森の宮駅から東へ徒歩7分ほどにあります。エントランスは中央大通りに面しており、平野川沿いの傾斜地に建つ職住近接型マンションです。
 「3期3年の重任」制になったのは、入居開始12年目の定期総会で「次期以降の管理組合役員の選出方法の明確化について」が課題になったのがきっかけ。この立地条件から共働き家庭が多く、役員のなり手も少ない状況から、1年任期で全員が交代したのでは管理組合としての懸案事項や継続問題がスムーズに解決できないという実情がありました。そこで、平成3年2月の臨時総会で、先の課題に対する理事会案が別掲のように出され、承認されました。

3年任期は13名の3分の1ずつが交代で

 13名の役員は、理事長、副理事長3名、監事2名、理事7名。うち男性が4名という、女性パワーのある構成となっています(平成13年6月現在)。3年任期は、13名の3分の1ずつが交代で入れ替わるという方法を採用。1年任期だと管理組合について少し分かりかけたところで交代となってしまうところが、3年任期となると新役員も継続役員にいろいろ教わりながら理解を深めていくなど、組合活動にもプラスになっています。役員の選出方法は、各階で1名、輪番制にしている。また理事長は任期2〜3年目の人から選出し、副理事長は1〜3年目の各任期年から1名ずつ選出されています。理事会は毎月1回開催。出席率は、この「3年制」になってからグンと上がっています。

マンションのさまざまな問題も確実に解決

 ところでこのマンションは、事務や清掃、設備管理に加え、管理人さんの常駐などを管理会社に委託しています。特に管理人さんは住み込みという形態。勤務時間は朝の9時〜夜6時(正午〜1時はお休み)となっていますが、こうした体制づくりが、管理人さんとのコミュニーションを深め、多少の融通も聞いてもらっています。また、2年前の大規模修繕工事の際に居住者から要望のあった宅配ボックス(大小19個)の設置や、ゴミ出しルールの徹底などマンション生活のさまざまな問題もいち早く取り上げ、確実に解決しています。 また今後の課題としては、居住者の高齢化問題や増加する賃貸居住者とのコミュニケーションへの対応問題があり、どう取り組んでいくか協議を重ねています。
マンション概要
定員 各フロアー1名ずつの13名(1、2階は1フロアーとみなす)
資格 住居単位とし、そこに居住する区分所有者もしくは区分所有者と住居を同一にし、かつ区分所有者の意志を代行しうると認めた者とする。(賃貸借人においては、これを認めない)
任期 任期は1年とし、2期2年重任する。
順番 住居番号の大きい順に上記の資格者が務め、逆戻りはしない。ただし、1号室(1、2階においては101号室)まで戻った時点で再び一番大きい番号の住居に戻る。
途中退去 役員の途中退去による欠損があった場合は、その次の資格者がその残任期を代行し(議決権も代行する)、なおかつ次の期から正式に役員として3期3年任期を務めるものとする。ただし、代行期間が半年以上のときには2期2年とする。

定期総会の招集手続き不備で決議無効の提訴がなされた事例/東京高等裁判所 平成7年12月18日判決

東京高等裁判所 平成7年12月18日判決
(原審:東京地方裁判所 平成6年11月24日判決)

事案

 マンションの管理組合法人であるY氏が、平成元年2月19日開催の定期総会(以下「本件総会」)で「管理組合・規則」の改正に関する決議(以下「本件決議」)をし、「所有戸数及び専有面積に拘わらず、組合員は一票の議決権を有する」旨の改正(以下「本件改正」)をしました。しかし本件総会の招集通知には、「規約・改正の件(保険事項、近隣関連事項、総会条項、議決権条項、理事会条項)」と記載されているに過ぎませんでした。
 そこで当該マンションの区分所有者であるXが、本件総会の招集通知書には、規約の改正等一定の重要事項を決議するサイに必要とされる「議案の要領」(区分所有法35条5項)が記載されているとは認められず、招集手続きに欠陥があるから本件決議は無効であるとして、本件決議の無効確認を求めて提訴したのです。
【問題点】
 本件総会の招集通知書は、区分所有法35条5項に規定する「議案の要領」が記載されているものといえるか。また記載されているといえないとして、本件決議の効力は有効か、無効かが争点になります。

判決の要旨

 裁判所は、本件総会の招集通知は「議案の要領」を欠くと認定し、本件決議は重大な手続違反があり無効であるとして、Xの請求を認める判決を言い渡しました。その内容は次のとおりです。
 議事の充実を図るという区分所有法35条5項の主旨に照らせば、議案の要領は、事前に賛否の検討が可能な程度に議案の具体的内容を明らかにしたものでなければならないが本件総会の招集通知は上記内容の記載があるとはいえない。議案の要領の通知を欠くという招集手続きの瑕疵がある場合の決議の効力について検討するに、議案の要領の不備は、組合員の適切な議決権行使を困難ならしめるものといえ、軽微な瑕疵ということはできない。とりわけ、本件改正は組合員の議決権の内容を大幅に変更し、一部の組合員に大きな不利益を課すので、改正案の具体的内容を周知徹底させる配慮が必要だがこれがなされず、また、事前通知があれば本件決議は可決されなかったことが明らかである。したがって、本件決議には重大な手続違反があり、これを無効とするのが相当である。
【判決の意味】
 一般に、招集手続の規定に反する集会の決議は原則として効力を生じないが、その違反の程度が軽微で集会の決議に影響を与えることがない場合は、招集手続の規定に反しているとの理由で無効を主張し得ないと解されています。この判決は、このような見解をとる事を示すとともに、招集手続の違反内容が重大な場合の具体的な判断、及びその判断方法として組合員の適切な議決権行使の確保を中心に検討することを示した点で意味深いものといえます。

ひとことコメント
「管理組合の今後の対応」

●この判決は、管理組合の皆さんの日常業務である招集通知において、その通知の記載内容次第で集会の決議の効力が無効になるという恐ろしいことが起こり得るということを示しています。確かに、招集通知に具体的改正内容を全く記載していなくても、改正内容につきそれまで説明、討議が繰り返されてきた経緯や決議の効力に影響を与えないことなどを理由に、決議を有効とする判例もあります。(平成9年5月27日 神戸地裁姫路支部)
●しかし管理組合としては、法的安定性の確保、およびリスク回避は重要なことですから、今一度招集通知の内容の見直しを提案いたします。具体的には、この判決が示したように「議案の要領」は「事前に賛否の検討が可能な程度に議案の具体的内容を明らかに」することが必要ですから、例えば規約の改正ならば、その改正内容、主旨を記載しておけばよいでしょう。

フローリング床変更による騒音被害等が不法行為にあたるとされた事例/東京地方裁判所八王子支部 平成8年7月30日判決

東京地方裁判所八王子支部 平成8年7月30日判決
(判例時報1600号118頁)

事案

 非常に閑静な環境にある高級マンションで、2階の一室の区分所有者(被告)が、じゅうたん張りだったリビング・台所・廊下などの床をフローリング(板張り)へ張り替えたところ、真下の1階区分所有者(原告ら2名)が、フローリングにより2階で歩く音や椅子を引く音など生活音すべてが1階に響くようになり、これによって日常生活上の騒音被害・生活妨害等が発生したとして、1.精神的苦痛の慰謝料の請求と2.フローリングの床を元のじゅうたん張りに復旧工事を行うことを求めた事例です。
 2階の区分所有者は、じゅうたん張りは掃除が大変で夏場はうっとうしいとの理由でフローリングに張り替えていますが、(工事費約90万円)、業者に対して防音・遮音措置を特に指示はしていません。また管理組合規約・使用細則上規定されていた専有部分の仕様変更等についての所定の書式(「事前に工事等によって損害受けるおそれのある組合員の承認を受けている」旨の工作物設置等申込書・「専有部分の仕様変更等について他の区分所有者から騒音等の苦情が出た場合は速やかに現状に復することを確約する」旨の覚書)の届け出はしていませんでした。
 また真下にある1階の部屋では、じゅうたん張りの際は静かだったところ、フローリングになってからは、あらゆる生活音が響き、2階住人が寝静まるのを待って就寝し、2階住人が起床し歩き出す音で目が覚めるという生活が続いたと認定されています。また張り替えられたフローリングは防音措置(遮音材)の施されていない1階用床板材を使用し、この床板材を150ミリメートルのコンクリートスラブ上に直張りしていました(じゅうたん張りと比べて4倍以上防音効果が悪化する、と認定されています)。また管理組合理事会は訴訟提起前に両者の言い分を聞き、騒音実験を行い、管理組合総会で決議をして仲裁案を勧告するなどの努力を行っていました。

判決の要旨

 判決では、「マンションのような集合住宅での騒音被害・生活妨害については、加害行為の有用性、妨害予防の簡便性、被害の程度及びその存続期間、その他の双方の主観的及び客観的な諸般の事情に鑑み、平均人の通常の感覚ないし感受性を基準として判断して、一定の限度までの騒音被害・生活妨害はこのような集合住宅における社会生活上止むを得ないものとして受忍すべきである。一方、右の受忍限度を超える騒音被害・生活妨害は、不法行為を構成する」と一般論を述べました。その上で、1.フローリング自体に有用性は一応認められるものの、今すぐフローリングに替える緊急性がなかったこと、2.管理組合規則・仕様細則に違反して事前の届け出を怠っていたこと、3.本件フローリングがじゅうたん張りと比べて遮音効果が4倍以上悪化する1階用床板材が使用されていたこと、4.階下住人の睡眠など現実の生活が阻害されており、現在まで約2年半にわたり継続していることなどから考え、「確かにこの種の騒音等に対する受け止め方は、各人の感覚ないし感受性に大きく左右される...が、平均人の通常の感覚ないし感受性を基準として判断しても、本件フローリング敷設による騒音被害・生活妨害は社会生活上の受忍限度を超え、違法なものとして不法行為を構成する」とされました。そして慰謝料として原告ら両名に書く75万円を支払うように判決を下しました。他方、じゅうたん張りに復旧工事を行うことを求めた点については、「差し止め請求を是認するほどの違法性があるということは困難」として原告らの請求を棄却しました。

ひとことコメント

最近、分譲マンションの専有部分のリフォームに際して床材をフローリングに張り替え、これがもとになってトラブルになっている事例が多く見られます。木質フローリングは掃除が容易であること、ダニ対策などの有用性が認められる一方で、防音・遮音効果の点で他の専有部分に大きな影響を与えるおそれもあります。このため専有部分内とはいえども、木質フローリングに替えることを区分所有者単独の意思で自由に行うことは好ましくなく、「区分所有者の共同の利益」(区分所有法第6条第1項)に関わる問題と考えておく必要があります。中高層共同住宅標準管理規約(単棟型)第17条では「専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取り付け若しくは取り替えを行おうとする時は、あらかじめ、理事長にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならない」とされていますが、フローリングへの張り替えはこれに該当します。本判例でも慰謝料請求は認められましたが、復旧工事請求については認められておらず、事後的な民事訴訟による解決には限界があります。
 したがって事前承認の必要性を周知徹底し、あらかじめこのようなトラブルが発生しないようにしておくことが重要です。
[同種判例]
東京地方裁判所 平成3年11月12日判決(判例時報1421号87頁)
東京地方裁判所 平成6年5月9日判決(判例時報1527号116頁)
いずれも生活騒音被害等は受忍限度内であるとして慰謝料請求は認められていません。

ペット飼育禁止の管理規約の効力/東京地方裁判所 平成6年3月31日判決

東京地方裁判所 平成6年3月31日判決(判例時報1519-101)

事案

 専有部分で犬を飼育している区分所有者に対し、管理組合が管理組合規約の規定に基づき、マンション内での飼育の禁止と訴訟提起についての弁護士費用相当の損害賠償を請求した事例です。
 管理規約に基づいて定められた「共同生活の秩序に関する細則」で「小鳥および魚類以外の動物をしいくすること」が禁じられています。ところが被告側は、ペットを飼育する権利は、憲法13条(幸福追求に対する国民の権利)および29条(財産権)により保障された重要な権利であるとし、現在、ペット飼育の重要性が社会的に認知されつつあり、同時にマンションでのペット飼育を許容する条件が整いつつあると主張しています。したがって本件規定は、ペット飼育による被害が他のマンション居住者に具体的に発生している場合や、被害発生の蓋然性(確立)が存する場合に限り、飼育を禁止する主旨に解されるべきであると主張。つまりそれ以外は犬を飼ってもよいのではないかということです。

判決の要旨

 さまざまな価値観をもっている人たちが集合しているマンションでは、互いに節度を守ることで一定水準の住環境を維持し、共存していかなければなりません。したがってペットの飼育は、あくまで他人に迷惑をかけない限りにおいて自由に行うことができるとしています。区分所有者の中には動物の鳴き声や臭気、体毛などを生理的に嫌悪し、あるいはそれに悩まされる人たちもいます。また飼い主が十分注意しても、動物による病気の伝染など衛生面の心配があるかぎり、ペットの飼育については区分所有法の規定に従い、規約でその調整をはかることは当然できます。
 すなわち、マンションは必ずしも防音、防水面で万全の措置が取られているわけではないし、バルコニーや窓、換気口を通じて臭気が侵入しやすい場合も少なくありません。こうした構造上、マンション内での動物の飼育は、糞尿によるマンションの汚損や臭気、病気の伝染や衛生上の問題、鳴き声による騒音、咬傷事故など建物の維持管理や、他の居住者の生活に有形の影響をもたらす危険があります。また、動物の行動や生態自体が他の居住者に対して不快感を生じさせるなど、無形の影響をも及ぼすおそれがあります。
 さらに、飼い主およびその家族の良識と判断による自主的な管理にゆだねることは限界があり、具体的な実害が発生した場合に限って規制することとしたのでは、不快感などの無形の影響の問題十分対処することはできません。万一、実害発生の場合にはそれが繰り返されることも考えられます。したがって、規約を公平に明確に適応するとなれば、具体的な実害が発生しなくても、小動物以外の動物の飼育を一律に禁ずることにも合理性が認められます。
 このことから、犬の飼育は前記共同の利益に反する行為として禁止することは、区分所有法の許容するところであると判断し、被告に対し、『マンションでの犬の飼育を禁ずる』旨の判決がなされました。

ひとことコメント

●この判決の後にも、管理規約のペットの飼育禁止の規定に基づく飼育の差し止め訴訟の判例がいくつか出ていますが、いずれも本判決同様に一律的なペット飼育禁止の規約を有効として差し止めを認めています。(東京高判/平成6年8月4日/平成8年7月5日)
●前記の東京高裁の判決では既に犬を飼育している区分所有者がいる場合に、規約を改正してペットの飼育を一律的に禁じても有効であり、この場合でもすでに犬を飼育している区分所有者に特別の影響を及ぼすものでなく、承諾は不要としました。
●判例の流れは以上のとおりですが、飼育禁止にはペットの処分という困難な問題もはらんでいますので、十分話し合いのうえ解決することが望ましく、規約改正の場合などは、ケースによっては、厳格な飼育条件を定め、一代限りの飼育を認めることも検討すべきと思われます。

平成23年度「管理組合交流会&相談会」報告

会場での様子

分譲マンションの管理組合はそれぞれに様々な問題を抱えています。他の管理組合と情報交換を行い、互いの知恵や経験、アイデアを持ち寄って管理組合活動のヒントを見つけていただけるよう、管理組合交流会を開催いたしました。当日は34名の参加があり、マンションの規模別に5つのグループに分かれて、活発な意見交換が行われました。

 最後に、各グループから交流内容の発表があり、コメンテーター(弁護士、建築士)から交流会の総括をしていただきました。統括では、「標準管理規約」が昨年改正されたが、これは法律ではなくどのマンションでも適用されるというものではないので、実際に自分のマンションの管理規約がどうなっているか確認する必要があることや、築40年を超えるマンションでも適切に修繕していけば、急に悪くなったりするようなことはなく建物は美しく老いていく、との話がありました。

「模擬総会 ー円滑な総会の進め方ー」報告

開催日時:2011年11月19日(土)

総会の議事進行をステージで再現

 円滑な総会運営はマンション管理に欠かせない重要課題です。新しく役員になられた方などを対象に、管理組合の最高の意思決定の場である総会の模様をステージで再現し、総会をスムーズに行うためのポイントなどを専門家の解説を交えて場面ごとに分かりやすく説明。役員や区分所有者などを熱演した大阪市マンション管理支援機構構成団体メンバーに拍手が送られ、「今回のノウハウを自分たちの総会運営にも役立てたい」と参加者にも好評でした。
   
山之内 桂
(大阪弁護士会)
 川畑 雅一
(大阪府建築士会)
 脇坂 毅
(近畿税理士会)
 

SCENE1 総会への出席について
総会の受付に委任状を持たない賃借人が訪れ、この総会で審議される大規模修繕工事は自分にも大いに関係する問題なので出席したいと申し出る。受付担当理事は委任状がないと出席できないと断るが、当人は納得のいかない様子。続いて、区分所有者の娘さんが代理で受付に来たが、委任状を持っていない。理由を聞くと「去年は委任状がなくても出席できた。家族でもダメなのか」と問われ、取り扱いに困る。

《ポイント解説》山之内 弁護士

 総会は区分所有者のための集会なので、原則として区分所有者以外は参加できませんが、それ以外に賃借人等、区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者も総会の議案に利害関係のある場合には意見を述べることができます。その場合は、規約で予め理事長にその旨を通知しなくてはならないとされていることが多いようです。今回のケースでは、賃借人が大規模修繕の議案について利害関係があるかどうかが問題となります。大規模修繕というだけでは占有者の法的な利害関係は認められませんが、実際上は工事中の共用・専有部分の使用制限や騒音問題などもあるため、理事会の判断で出席を認めてもよいでしょう。
 総会で議決権を行使するために代理人等に委任状の持参を義務づけておくのは重要なことです。今回の娘さんのように、たとえ家族であっても区分所有者以外の人が出席する場合は委任状が必要となります。ただし、委任状がないからダメと決めつけるのも杓子定規なやり方なので、とりあえず出席を許可して、後で委任状を持ってくるようにお願いするなど、柔軟な対応をしてもよいかもしれません。こうした問題は、トラブルを避けるために規約で明確に決めておくことが必要です。
SCENE2 総会の開会・成立
司会者の理事が総会の開催を宣言した後、議事進行を理事長に交代。議長として承認された理事長は書記と署名人の選出を行い、出席者の承認を得る。次いで、議長が「当マンションでは1 戸につき1 議決権としており、本日の出席組合員数は委任状提出によるもの80、代理出席を含めた25 を合わせ105 で、議決権総数120 の半数以上と認めるので本総会は有効に成立していることを宣言します」と総会成立の宣言を行う。

《ポイント解説》山之内 弁護士

 議長の選出について区分所有法では「管理者または集会を召集した区分所有者の一人がなる」とされていますが、規約で別の定めをしてもいいことになっています。今回のケースでは標準管理規約に準拠して、「総会の議長は理事長が務める」としています。議事録については、議長が作成義務を負いますが、便宜上、書記を決めておくのが普通です。議事録の形で総会の経過や結果を残すことは大切なことで、議長および議長が指名する総会に出席した区分所有者2 名が、後日、書記が作成した議事録に目を通し、署名押印します。次に決議の要件ですが、法律では「通常決議では、区分所有者および議決権の過半数で決する」とされており、決議するためには、出席者の過半数ではなく、全区分所有者の過半数および全議決権の過半数の両方を満たさなくてはならないということになります。ただし、実際にはこの要件では議決は難しいため、標準管理規約では、この要件を緩和し、まず「総会の会議は議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなくてはならない(定足数)」とした上で、「出席した区分所有者の議決権の過半数で決する」と定められており、今回のケースを含め、そのようにしている管理組合が多いと思われます。これは管理規約上の問題なので、皆さんのマンションそれぞれの管理規約を確認しておいてください。
SCENE3 議案第1号〜第3号
(事業報告・決算報告・監査報告)

議案審議に移り、副理事長より第1号議案の2010年度事業報告および第2号議案の収支決算報告、監事より第3号議案の監査報告が提案される。続いてこれら3 議案に対して、議長が出席者から一括して質問や意見を受ける。「収支決算報告の貸借対照表において未収金があるが、これは何か。また、決算を見ると未収金の収入があるような書き方になっているが、これでいいのか」との質問には、副理事長が「管理費・水道代等の3ヵ月滞納者が1名いるため、管理組合として戸別訪問を繰り返し口頭による請求を行っている。会計的にはこれまでも同様の処理をしており問題はないはず」と回答。「修繕積立金の収入に計上されている駐車場使用料をもっと管理費会計に組み入れれば、高い管理費を下げられるのでは」との質問に対しては、「そうすると修繕積立金を値上げしなくてはならなくなる。将来の大規模修繕に備えて、今の形にしている」と説明。議長が他に質問がないことを確認し採決に入る。

《ポイント解説》脇坂 税理士

 まず未収金の会計処理についてですが、月々において、又は決算時において、管理費等が入金されるべき時点で収入として認識し、未収金を収支計算書や貸借対照表に表す会計処理を「発生主義」と呼びます。発生主義では債務が確定していれば、支払が済んでいなくても支出として認識する事になります。一方、収入および支出を現実に入金、出金された時点で記帳する会計処理を「現金主義」と呼びます。現金主義では会計年度末に未収金、未払金の処理が不明確になりやすい欠点が出てきますので、未収金台帳等を整理し、会計報告では未収金、未払金がある旨を注記するのも必要かと思います。管理組合の会計処理は、収支予算とその会計年度内に発生した収入、支払い義務が確定した支出を比較することが出来る発生主義の方が、収支状況や財務状況を正確に反映する会計書類の作成、滞納状況の把握に望ましいでしょう。
 2番目の、駐車場使用料を管理費会計に充当する問題については、管理組合の会計業務は目的別に会計区分することが必要であることから、駐車場使用料は独立した区分経理が理想ですが、現実には管理費会計に充当するケースが多いようです。管理費会計に充当すると、駐車場に空きが出て収入が減少すれば、管理費会計の維持管理の支払に支障が生じる場合や、機械式駐車場の場合、多額の維持修繕費について資金不足が生じる事も考えられます。標準管理規約にもあるように、駐車場収入から駐車場の管理費用を差し引いた残額を将来の修理に積み立てる必要があるかと思います。管理組合としては、駐車場使用料をどのように会計処理するか、また、資金不足が生じた場合、どの会計から支出するか等の検討も必要でしょう。
SCENE4 議案第4号〜第6号
(大規模修繕委員会の設置、事業計画案、予算案)
第4 号議案では、まず大規模修繕工事の実施についての基本事項である現状調査、仕様・工法の検討、資金計画、実施時期等の検討を行うため、新たに大規模修繕委員会細則を定め、大規模修繕委員会を設置することを提案。メンバーについては区分所有者の中から関心のある方や建築、金融、法律等に詳しい方を募り、最低、各階に各1 名を目指したいとの提案に対し、出席者から「現状調査をはじめ専門的な知識が必要なので、専門家に入ってもらうのがいいのでは」との意見が述べられる。その後、第5 号〜第6 号議案の事業計画案と予算案の提案があり、採決に移り、挙手多数で理事会提案通り可決する。

《ポイント解説》川畑 一級建築士

 大規模修繕を成功させるには4 つのポイントがあります。第1は、人の輪を広げること。居住者の状況把握は管理組合にしかできません。賃借人がいるか、どんな人材がいるかなどを把握しておくことが必要です。第2は、同じやるなら楽しくやろうという提案です。このチャンスを住民全員を巻きこんだイベントなどに発展させ、楽しく使いやすいマンションへの夢を実現していきましょう。第3 は、あせらないこと。大規模修繕は面倒でもそのステップを一段一段確実に上っていくことが何よりも大切です。「急がば回れ」で、長期的展望を持って取り組みましょう。第4 は、専門家の意見を上手に活用すること。大規模修繕は長期戦なので、管理組合だけでやると役員の交代などで、思わぬトラブルが発生することがあります。それを避けるためには、信頼できるパートナーとして専門家の活用も考えられます。これにはある程度の費用が発生しますが、安心安全の代価として、また労力と時間を軽減する意味でも、多額な修繕費用と比べれば金額的に見合うものではないかと思われます。大阪市にはアドバイザーを派遣する制度もあります。これらの専門家を上手に活用し、マンション全員の汗と努力で大規模修繕をやり遂げていただきたいと思います。
SCENE5 議案第7号(新役員選任、閉会)
議案第7号の新役員の選任に移る。理事を選出した後、一旦休憩を取り、その間を利用して理事の互選により理事長や副理事長、各担当を決め、総会を再開。出席者にその内容の報告があり、新役員を代表して新理事長が挨拶し、総会を終了する。後日、議事録署名人は議事録の内容確認と署名押印をする。

《ポイント解説》山之内 弁護士

 管理組合の役員は区分所有者の団体である管理組合の執行部に当たります。役員の要件については比較的自由に定めることができますが、実際には、部屋番号での持ち回りなど不公平にならないように平等に回ってくるようにする例が多いと思われます。多数の理事が必要な場合は、標準管理規約コメントでは区分所有者10〜15 戸あたり1人の理事という基準を示していますが、適宜の数でもかまいません。理事の中に経験者がいるようにするために任期を2 年にして半数を改選というやり方もよくあります。なお、2011年の標準管理規約の改正で、理事の要件として大きな変化があり、居住者でないと理事になれないという条項が削除されました。改正後の規約では、分譲貸しにしている人や事務所などに使っている人でも理事になれることになったので、注意が必要です。
 議事録の作成に関しては、総会を開催する以上は議事録を作成しなくてはならないとされています。作成義務者は議長、保管者は理事長で、後日、利害関係のある人から閲覧の希望があれば拒否はできません。保管期間は法律では定められていないので自由に決められますが、通常は場所の許す限り永久保存でかまわないと思います。また、署名の要件も省略できないことになっています。議長と総会に出席した区分所有者2人が署名押印しなくてはなりません。この場合、代理で来た人でもかまいませんが、書面で議決権行使した人を署名人に選ぶことはできません。

平成23年度「大規模修繕工事見学会」報告

2011年11月6日開催

●2 度目の大規模修繕工事で、さらに丈夫に快適に

 11 月6 日、大阪市阿倍野区のユーロハイツ文の里管理組合のご協力により、「大規模修繕工事見学会」( 主催: 大阪市マンション管理支援機構) を開催しました。ユーロハイツ文の里はJR 阪和線美章園駅から徒歩3 分の交通至便な地に建つ、築28 年、総戸数23 戸の分譲マンション。完成間近の大規模修繕工事現場には多くの参加者が訪れ、工事の様子を熱心に見学されました。

●努力とパワーで取り組んだ修繕計画

 ユーロハイツ文の里は1983 年竣工の後、2002 年に1 回目の大規模修繕工事をおこない、今回は2 回目の大規模修繕工事になります。工事は、劣化の進んだ躯体の修繕、シーリングの新設、内外壁や鉄部の塗装替などが中心で、これらを補修することで、さらに耐久性を高め、丈夫で外観も美しいマンションに衣替えすることを目的としています。
 現場の見学に先立って、ユーロハイツ文の里管理組合理事長より、今回の修繕工事に当たっては、2 年前の9 月に修繕委員会を立ち上げた後、大阪市の分譲マンションアドバイザー派遣制度を活用して勉強会を実施し、努力とパワーで最終的に現在の設計監理者および施工者と契約を結ぶに至った経緯を説明。それを受けて、設計監理者および施工者から、工事の具体的な内容をはじめ、補修の工法や工事の流れ、品質管理、安全管理などについての詳しい解説がありました。

●興味の尽きない工事現場の見学

 その後、参加者全員が3 班に分かれての見学会に移り、関係者の説明を受けながら、実際に工事中の補修現場の様子を見学しました。中でも、外壁塗装工事や塗膜防水工事での塗布量の確認方法や、カラースプレーを使用した補修箇所のマーキング、外壁塗装工程(下塗り、中塗り、上塗り)ごとの色替えなど、誰にも分かりやすい品質管理のやり方には皆さんも興味津々。見学の先々で、突っ込んだ質問が飛び交っていました。また、傷んだ目地や水回りへの耐久性の高いシーリングの施工や、外壁や天井部分のコンクリートの中性化に対する予防的措置、廊下照明のLED への転換、さらには打診棒によるタイルの浮きの検査方法など興味の尽きない内容に、参加者一同熱心に見入っておられました。
 今回参加された方の中には、それぞれのマンションで近々大規模修繕工事を控えていたり、修繕に対する具体的な知識を得たいとお考えの方も多く、終了後には「実際に役立てられそう」「参加した甲斐があった」「今後の参考にしたい」と好評の声が相次ぎ、とても有意義な見学会となりました。

<見学マンションと工事の概要>

ユーロハイツ文の里(大阪市阿倍野区文の里)
鉄筋コンクリート造
地上7 階
総戸数:23 戸
竣工年:1983 年
工事内容(1)仮設工事
(2)躯体修繕工事
(3)シーリング工事
(4)内外壁等塗装替工事
(5)鉄部等塗装替工事
(6)防水工事
(7)その他改修工事
(8)環境改善工事
工 期2011年8月22日〜12月10日予定

「マンション管理フェスタ2011」報告

防災情報も充実!平松市長もかけつけました。

   9 月4 日、賛助団体や協力団体等の支援を得て、第3 回目の「マンション管理フェスタ」を開催しました。当日は台風通過直後の不安定な天候にもかかわらず、280 名もの方々が参加され、発表会、講演のほか、専門家とのおしゃべりやマンション管理に役立つ情報コーナー、クイズラリーなど盛り沢山のプログラムをお楽しみいただきました。会場には大阪市の平松市長も訪れ、「私もマンションの住民。コミュニティの輪を拡げて『人の都 大阪市』をみんなで実現していきましょう」と挨拶。防災用品の展示にも関心が集まり、ご来場の皆様に改めて防災に対する意識を高めていただく有意義なひとときとなりました。

≪発表≫ フェスタで発表会!

フェスタで発表会! メインステージでは、「ローレルハイツ北天満」の皆様による太鼓演奏と、「エバーグリーン淀川」の皆様による日本舞踊とフラダンスが披露され、色鮮やかな衣装をまとった出演者の見事なばちさばきや優雅な踊りに大きな拍手が寄せられました。

≪講演≫ マンション管理と災害に強いコミュニティ作り
−東日本大震災をふまえて−

今回は、千里金蘭大学の藤本名誉教授が東日本大震災直後に視察された体験を基に、現地の分譲マンションの被災状況や当時の対応、災害に強いコミュニティ作りなどについてご講演。多数の写真をまじえての臨場感あふれるお話に、参加者の皆様は熱心に耳を傾けておられました。

専門家とお話してみませんか?!

大阪市マンション管理支援機構の専門家と自由におしゃべりできるコーナー。この機会を利用して、多くの参加者が専門家の方々とそれぞれいろんな相談やお話をされ、「役に立った」「来てよかった」と好評でした。
●大阪弁護士会
●大阪土地家屋調査士会
●近畿税理士会
●大阪司法書士会
●( 社) 大阪府不動産鑑定士協会
●( 社) 大阪府建築士会

マンションの取り組み紹介

津波想定避難訓練やコミュニティ活動など、マンションのユニークな取り組み事例がパネルでわかりやすく紹介されました。 

防災グッズ展示コーナー

東日本大震災を教訓に、「防災かまどベンチ」や「非常用飲料水生成システム」をはじめ、様々な防災グッズの展示が注目の的に。ここでも、来場者の防災への関心の高さがうかがえました。
●日本赤十字社大阪府支部
●大阪市消防振興協会



映像で見る、管理組合応援コーナー

災害対策、大規模修繕、建替え事例、超高層住宅まど、マンションに関する様々なビデオをご覧いただきました。