NO.19 阿倍野区・あべのグラントゥール管理組合

快適性と安全性を徹底追及。
今後はコミュニケーションづくりに注力!

天王寺駅・阿倍野駅が徒歩圏内にある、あべのグラントゥールは、地上40階建てのタワーマンションです。管理組合の理事の方々に、快適性の維持、安全面の強化、コミュニケーションづくりの取り組みなどについて伺いました。

● マンションに、コンシェルジェ!?

 あべのグラントゥールを訪れると、40階の高さはもちろん、共用スペースの充実ぶりにも驚かされます。1階ロビーはホテル並の豪華さ。さらに付属施設として、一番利用の多いゲストルームをはじめ、会議室、キッズルーム、スタディルーム、AVルームなどがあり、付属設備には宅配ロッカーも完備しています。また、マンションでは珍しく、コンシェルジェと呼ばれる女性がいます。彼女は共用施設の利用受付、タクシーの手配、コピー、ファックスなど様々なサービスを行っています。「中には、無駄づかいだ、と言われる人もいましたが、今ではほとんどの人が満足しています。それに彼女は、住居人の顔を覚えていますから、犯罪抑止効果もあります」と理事長の三橋さんは説明します。
 

● 防犯カメラ増設で、安全面をさらに強化!

 タワーマンションで気になるのが安全面です。1階に防災センターを設置し、24時間365日監視員が常駐し、モニター監視、緊急連絡の対応などに当たります。さらに夜間午後10時から翌朝7時まではガードマンが棟内を巡回します。「入居時には防犯カメラが15、16台ほど設置されていましたが、丹念に見ると映っていない箇所がたくさんある。そこで防犯カメラを29台に増やしました。おかげで乱雑だったゴミ収集スペースが見違えるようにキレイになるなど、予想外の効果もありました」と理事の岩本さんは笑う。

● コミュニケーションづくりが今後の課題

 管理会社の選定には8〜9社からプレゼンテーションを受けた上で決めるなど、設立当初から自主的な運営と公平性を期してきた管理組合の今後の課題は、コミュニケーションづくりです。現在、エレベーターホールに掲示板を設けていますが、今後さらに広報活動に力を入れるため、広報担当理事とホームページ作成委員会の設置などを計画しています。また、今年1月には町会も発足。「管理組合の理事会に町会役員も出席しています。仕事は違っても目的は一緒。協力しあいながら運営していくつもりです」と話す町会役員の永崎さんは、今後実施する町会でのイベントを計画中です。

マンション概要 所在地:大阪市阿倍野区阿倍野筋1-7-20
建築年 2004年
(築年数2.5年)
構造・規模 RC造・40階建
棟数・戸数 1棟・401戸 戸当り専有面積 62.18〜134.68m2/戸
駐車場台数 247台 駐輪場台数 602台
付属施設 集会室、管理員室など 付属設備 オートロック、監視カメラ、
インターネットなど
役員体制
役員任期 2年 役員数 12人
選出方法 輪番制・立候補制・その他 理事会 1回/月
総会 1回/年 各種委員会の設置 有(ペットクラブ)

NO.18 北区・グレーシィ天神橋管理組合

意識改革とルール遵守を促すため、
広報活動を徹底。住みやすさもアップ!

地下鉄天神橋筋六丁目駅から北へ徒歩5分のところにあるグレーシィ天神橋。 マンション内の共用スペースにはごみ一つなく、エレベーター内には落書きもありません。 実はここに至るまで地道な努力の積み重ねがありました。

● 毎月、広報紙を全戸に配布して啓蒙

 グレーシィ天神橋管理組合では、毎月発行する広報紙を掲示板に張り出すと同時に、縮小版を各戸に配布します。最新版(2007年1月号)は、「18年度の目標」のほか、「昨年度の理事会・委員会等の実績」「注意事項」などの項目が並んでいます。また、ゴミ分別、組合活動、理事会などのスケジュールなどが一目でわかるカレンダーもあります。心がけているのは、「組合活動の年間目標と情報開示をわかりやすく知らせること」と上條理事長は話しています。

● ホテル住まいとは違いますよ!

 同管理組合には、広報活動に力を入れる理由があります。「もともと等価交換のマンションで地権者所有の部屋が多く、その部屋を賃貸に出されているため、賃貸戸数比率が高いこともあり、マンション管理への関心が薄いという問題を抱えていました」。その結果、ペット飼育、騒音、ゴミ捨て、喫煙、共用部分に私物を置くなど、様々なルール違反が見過ごされてきました。
 そこで2年前に手がけたのが、住民の意識改革であり、ルールの徹底化でした。まず、管理規約を要約化し、住民として最低限度守るべきことをまとめた『居住者心得(新・旧所有者、賃貸者)』を作成し、全戸に配布。「管理規約を読んでいる人はほとんどいません。でも6枚くらいなら、読めるでしょう」。表紙の2番目には「マンション生活はホテルと違い、管理・運営は組合員が主体で行います」と書かれています。「ホテル住まい感覚の人が多かったということです」と平松監事。この『居住者心得』は、毎年全戸に配布される。「とにかく自分たちで管理・運営するという気持ちを持ってもらいたい」さらに、新たに入居する人は、ルールを守ることができる人だけにするため、不動産仲介業者に『新規購入又は賃借のご案内』(『居住者心得』より入居希望者に守ってほしいルールを抜粋)を渡すなど、ルールの徹底化を図っています。

● ルールを作って、迅速かつ柔軟に対応

 こうした努力の成果は?「いやあ、随分と住みやすくなりました。廊下にもゴミ一つ落ちていないでしょ」(上條理事長)。マンション内を案内されると、どこにもゴミはありません。さらに、壁も年1回の洗浄清掃を実施して以来、見違えるようにきれいになりました(写真参照)。「法律で縛るよりも、居住者の意識改革を促すルールを作る方が迅速かつ柔軟に対応できます。新しい問題が発生すれば、その点を補足すればいいのです。また、マニュアル化を図ることで、誰でもできるようにすることが大切。これからも地道な戦いを続けていきますよ」と決意を新たにされていました。

マンション概要 所在地:大阪市北区天神橋7-12-14
建築年 平成2年
(築年数17年)
構造・規模 RC・SRC造・14階建
(一部7階建)
棟数・戸数 1棟・80戸
(その他、施設部16戸)
戸当り専有面積 35〜100m2/戸
(平均60m2)
駐車場台数 32台 駐輪場台数 100台
付属施設 集会室、管理員室 付属設備 オートロック、監視カメラ
賃貸戸数 44戸(50〜60%)
役員体制
役員任期 2年 役員数 12人
選出方法 輪番制・立候補制 理事会 1回/月
総会 2回/年 各種委員会の設置 有(専門委員会)

NO.17 阿倍野区・あべのシャルム管理組合

様々な問題に迅速に対処。
細則を作成して徹底を図る。

地下鉄あべの駅から徒歩2分、JR・地下鉄天王寺駅からも徒歩10分という交通至便な立地にあるあべのシャルムの管理組合では、マンション内で起こる様々な問題に迅速に対処。一時駐車使用、入居者リスト、防犯カメラに関する細則を作成するほどの徹底ぶりには、驚かされるばかりです。

● 2つの管理会社に委託。さらに細分化の可能性も

 あべのシャルム管理組合の特徴の一つが、入居段階から事務と設備を分けて2社に委託管理をしている点です。石本理事長によれば「分譲者の推薦によるものでしたが、こういう例は少ないはず。私が気にしていたのは、2社になっていることで余分な経費がかかっているのではないかと感じられたことでした」。そこで、1社にする案も検討され、さまざまな形で情報収集したそうです。
  「管理組合費は、管理組合の理事長名義の口座にいったん入金され、そこから管理会社に払われるのが理想的です。ところがこのお金の流れを受け入れてくれる管理会社は、大手ですらありませんでした。だから結果的に現在は、当初のままに落ち着いています。むしろ、将来的には、設備の管理会社をさらに分けて個々に契約する方が、元請けを通さないから意思の疎通も図られ、経費的にも安くなる効果が見込まれるので、考えていきたいと思っています」。

● 一時駐車場使用細則

 次に同管理組合が、様々な問題に迅速かつ積極的に取り組んでいる具体的な事例を紹介しましょう。どのマンションも、来客の一時駐車に頭を悩ましておられます。幸い、あべのシャルムには、一時駐車用のスペースを確保できています。「以前は口頭申込みで利用していましたが、無断使用する人が出てきて問題が発生したため、一時駐車使用細則を決めました」(石本理事長)。細則には、対象車両、申込者の資格、申込書の提出・受付・選定、承認証の交付・取扱、一時駐車の方法、禁止事項、損害賠償及び原状回復などについて細かく規定されています。「おかげでトラブルはなくなりました。承認書はフロントガラス内に、外から分かるように掲示してもらいます。日祝日や正月など、管理人さんがいないときは、役員がやっていますよ」と笑う。

● 入居者リスト取扱い細則

 さらに入居者リストの細則を作ろうと石本理事長が考えたきっかけは2つありました。一つは、一人住まいの入居者の方が死亡され、身内の連絡先を探すのに右往左往したこと、そして昨年4月に個人情報保護法が成立したからです。リストの種類は、平時の連絡用と、事故・事件の発生など緊急時の連絡用の2種類。緊急用リストには、あべのシャルム以外に居住する縁故者の氏名・住所・連絡先も記入。指定の2重封筒に入れて、押印し、開封できないようにして、施錠できる収納保管。いざというときは、管理組合役員など2人以上の立ち合いで開封し、閲覧するように定められています。

● 防犯カメラ取扱い細則

 次の防犯カメラの場合、入居時に防犯カメラは1階エントランスに3台あっただけでした。「3台は少ない。それに周辺のマンションで車上荒らしが頻発していましたので、これでは駄目だ」と決意した石本理事長は、さらに20台を設置。プライバシー等の問題もあるため、収録画面の取扱などに付いての細則を決めました。「カメラを設置することで、防犯はもちろんマナー向上にも結びつきました。これには、管理組合役員一同、苦笑しています」。

● 同じエリアの理事長同士で情報交換

 ところで、同じ地域に建つ分譲マンションおよび商業ビルの管理組合の理事長で組織する「金塚再開発地区理事長会」がありますが、石本理事長も会員の一人として、年に4回、集まって情報交換を行っています。「建った年代も規模もそれぞれ違うため、いろいろと参考になります。例えば、うちは大規模修繕はまだですが、すでに済ませたマンションもあります。具体的な情報を聞くことができるのはありがたいですね」。他の地域にもおすすめしたい方法です。

マンション概要 所在地:大阪市阿倍野区旭町
建築年 平成11年(築年数7年) 構造・規模 SRC造・14階建
棟数・戸数 1棟・146戸
(その他、4戸)
戸当り専有面積 70.34〜96.44m2/戸
駐車場台数 94台 駐輪場台数 308台
付属施設 集会室、管理員室、プレイロット 付属設備 オートロック、監視カメラ、
インターネット、宅配ロッカー
役員体制
役員任期 2年(再任可) 役員数 10人
選出方法 立候補制
(来期より順番制も並立)
理事会 1回/月
総会 1回/年
(臨時総会1回/年 程度)
各種委員会の設置

NO.16 天王寺区・ルモン・夕陽丘学園坂管理組合

防犯モデルマンションに認定。
住民の安全と資産価値向上を図る。

地下鉄谷町線・四天王寺前夕陽ヶ丘駅近くの文教地区にあるルモン・夕陽丘学園坂は、平成17年8月に大阪府防犯協会連合会に、防犯モデルマンションの申請を行い、認定されました。防犯に取り組むマンションが多い中、防犯モデルマンションへの関心も高まっています。管理組合・池田副理事長に申請方法や審査のポイントなどについて伺いました。

● 防犯に強いマンション作りを臨時総会で合意

(写真) 「ここは竣工時から比較的多くの防犯カメラが設置されていましたが、防犯面について防犯設備士の方に相談したのがきっかけで、防犯カメラの死角や侵入手口となり得る箇所の存在など、防犯上のいくつかの問題が出てきました。そこで理事会で検討を重ね、防犯に強いマンション作りを進めていく上で採用したのが、防犯モデルマンション基準でした」と語るルモン・夕陽丘学園坂管理組合の池田副理事長。
(写真) 臨時総会で居住者全員の理解を得たうえで、管理会社の協力も得て、防犯強化マンションづくりに着手した。防犯カメラの効率的な配置、エレベーター内モニターの設置、照明回路の改善、忍び返しやセンサーライトの設置、デジタルレコーダーの増設などを段階的に実施。かかった総費用は100万円程度。そして昨年8月に申請して1カ月の短期間で防犯モデルマンションに認定されるほど基準を大きく上回るほどの防犯対策に成功した。

● まず申請すること。指摘後に工事をしても大丈夫!

(写真) 防犯モデルマンソションに関しては、「存在を聞いた事があるが、申請方法がわからない」という人が多いのが現状である。「私から提案としては、審査基準を全部揃えて申請するのもいいが、そうではなくて、中途半端でもいいから申請を上げることです。1級建築士と防犯設備士の2名の審査員が現地に来られて、ここはこうしてください、と指摘されます。それを聞いてから工事を発注する方がスムーズで効率が良いですよ」。

(写真) そして池田副理事長は、「大切なのは、既存のマンションを防犯モデルマンションにしていく過程の中で、防犯意識を高めていくこと。いくら設備が整っても、住民の防犯意識が低くては、効果は半減しますからね」と締めくくる。
(写真)
審査基準
(1)外部から侵入しにくい構造
(2)共用部分の見通しを確保した構造
(3)エレベーター内に防犯カメラ、非常通報装置
(4)駐車場等の明るさ確保などの防犯設備
(5)ピッキング等困難な鍵と補助錠の設置
※詳細は(社)大阪府防犯協会連合会のHP(http://www.daibouren.or.jp/)を参照
認定までの流れ
申請までの流れ
(写真)
申請後の流れ
(写真)
マンション概要 所在地:大阪市天王寺区生玉寺町
建築年 平成15年(築年数2年) 構造・規模 SRC造・15階建
棟数・戸数 1棟・56戸 戸当り専有面積 77〜101m2/戸
駐車場台数 36台 駐輪場台数 112台
付属施設 集会室、管理員室 付属設備 オートロック、監視カメラ、
インターネット、宅配ボックス
役員体制
役員任期 2年 役員数 7人
選出方法 輪番制・立候補制併用 理事会 1回/月
総会 2回/年
(臨時総会1回/年 程度)
各種委員会の設置
(アンケート委員会、
エントランス改善委員会、
植栽委員会、編集委員会、
防犯委員会)

NO.15 北区・扇町コーポ管理組合

違反自転車ゼロのピロティ。
美観維持に積極的に取り組む。

JR天満橋駅から南へ徒歩5分の市街地にある扇町コーポを訪れて、誰しも驚くのが、広いピロティに1台の自転車も見あ たらないことです。すっきりと気持ちが良いものですね。実はこれ、管理組合の理事の方々の努力の結晶ともいうべきもの。 成功談の中に他のマンションでも採用できる知恵とノウハウがぎっしりと詰まっています。

● 郵便受けの改修で痛感した管理組合運営の透明性確保の重要性

(写真) マンションの資産価値を下げないためには、美観の維持も大きな要素です。扇町コーポ管理組合がこの美観維持に積極的に取り組んだのが3〜4年前のこと。当時のメンバーが理事長の鳥山大樹さんと理事の方たちでした。手がけたのは、郵便受け、自転車、エレベーターの3つ。まず郵便受けの場合、割れたプレートやピンクチラシ防止用の貼紙などが景観を悪化。さらに郵便物の盗難があったこともあり、郵便受けの交換改修工事を実施。壁面から出ていたタイプから壁面と同じ面になるようにし、盗難防止と宅配便にも対応できるタイプに変えました。「しかし総会にかけずに進めて問題になりました。結局、臨時総会で事後承諾をいただきましたが、進め方の順序と透明性の確保の重要性を痛感しました」と鳥山さん。

● 駐輪機をスライド式に変え、有料制を導入

(写真) 次に手がけたのが駐輪問題でした。「きれいなピロティに無差別に自転車が置かれている。これは何とかしたいと思って自転車のプロジェクトチームを作りました」。ちょうど2段式の駐輪機が老朽化してきたのと、子どもや高齢者には使いにくかったので、この際、駐輪設備を変えようと、今の軽くて操作性の良いスライド式を採用。台数は、160台から144台に減りましたが、全体の戸数が81戸なので、1戸あたり2台弱の自転車が登録可能です。さらに鳥山さんたちは、この自転車を有料制にしました。料金は、年間で自転車が1200円〜3000円、バイク(400cc未満)で1万5000円〜3万円。この有料制の導入は、台数制限を図るのに効果があり、同時に、修繕積立金にも貢献しているそうです。

● ポスターや警告札を作り、マナー向上に取り組む

(写真) 同時に取り組んだのがマナー面です。登録自転車には認定シールを貼り、駐輪場以外には置かないルールを徹底。「扇町コーポ・駐輪マナー向上GUIDE」を作って各戸に配布した他、プロのデザイナーである鳥山さん自身が作成したポスターを駐輪場に貼り出しました。さらにユニークなのが、警告札を作成。違反自転車にくくり付けて注意を促しました。警告札の内容は、「シールを貼っていない自転車は撤去します」「あなたは違反駐車をしています」「無断駐輪です。1週間後に撤去処分します」……etc。「最初が肝心なので、スタートさせた日から1回で勝負しようと、朝からピロティに張りついて、違反自転車があればすぐに駐輪場に入れました。そのおかげで、ピロティから自転車の姿が見事に消えました」。

● 住民参加の公開プレゼンテーションを実施

(写真) そして3つ目はエレベーターでした。「エレベーターは快適環境の入口であり、社交場だと位置づけて、プロジェクトを発足させ、他のマンションのエレベーターを見に行ったり、業者の方に来てもらい、見積もりをとりました」。各社の提案内容が違い、見積額も40万円〜240万円の大きな開きがありました。そこで透明性を図るために、居住者の方にも集まってもらい、公開プレゼンテーションを実施。「堅牢性」「値段」「メンテ」などに分けて採点。こうした住民参加のもとに、傷の付かないセラミックタイル仕様の内装に決定。さらに防犯のためにエレベーター内にカメラを設置しました。
  「理事の方が友達の不動産業者の方に、改良した3つの中で資産価値維持に貢献しているのは何か?と聞いたそうです。すると“自転車の整理だ”との返事。きちんと管理されているマンションだと高く評価されるそうです。その意味では、みんなでアイデアを出し合い、実行したことが報われた気がして嬉しかったですね」。
マンション概要 所在地:大阪市北区与力町
建築年 昭和62年(築年数18年) 構造・規模 SRC造15階建
棟数・戸数 1棟・81戸(その他、0戸) 戸当り専有面積 67.62〜88.46平方m/戸
駐車場台数 34台 駐輪場台数 144台
付属施設 集会室、管理員室 付属設備 監視カメラ
役員体制
役員任期 2年 役員数 14人
選出方法 輪番制 理事会 1回/月
総会 1回/年 各種委員会の設置 無(大きな案件時に設置)

NO.14 西区・グランドメゾン長堀管理組合

安全快適な環境づくりと同時に
活動状況をわかりやすく伝える

地下鉄西長堀駅から徒歩3分の場所にあるグランドメゾン長堀は、都心にありながらも比較的静かな環境に恵まれています。4棟・389戸で築27年。管理組合は大規模修繕を2回終えた後も、修繕関係、インターネット関係、経費削減などにもきめ細かく対応。つねに安全で快適な環境づくりに積極的に取り組んでいます。

● 見やすくわかりやすい広報誌をめざす

(写真) グランドメゾン長堀管理組合の日頃の活動状況は、広報誌をみればよくわかります。発行部数は470部。不定期ですが年に3〜4回、全戸と別居の区分所有者にも配付しています。頁数は4〜10頁まで様々。その広報誌を拝見すると、文章も簡潔で文字も大きく、イラストもはいっていて、読みやすくなっています。とくに特徴的なのが、表紙に目次まで入っている点です。「配っても、文章が長くなるとほとんど読んでもらえませんので、せめて項目だけでも見ていただけたらと、昨年から目次をつけました」と中島一行理事長は、その狙いを語ります。

● インターネット環境もわかりやすく紹介

 マンション全体のインターネット設備整備の状況も、広報誌の目次を探せばすぐに見つかります。それによれば、現在、マンション管理人室にあるMDF室まで光ケーブルを入線していて、2社のネット接続業者から選ぶことができることが図解入りで詳しく紹介されています。また、地上波デジタル放送対策についても紹介しています。「テレビやインターネットの状況を皆さんに理解してもらえる文章を作るのは難しいものです。一昨年12月に地上波デジタルが開始になったときに、設備をやり直しました。その頃から広報していますが、いまだに、チャンネルはどうなっているの?といった質問を受けます。繰り返して広報することが大切だと思っています。」と中島理事長。さらにインターネットに関しては、将来、各住戸と管理組合とをオンライン化することを検討中だとか。「選挙も電子投票が導入される時代ですから、管理組合の広報も、そのつどインターネットで配信できればと考えています」。

● 8台のエレベーターを入れ替える

(写真) 2000年8月〜2001年6月に行った大規模修繕以来、修繕関係で最も大きな事業は、昨年行ったエレベーター8台の入れ替えです。「普通は30年〜35年で入れ替えるのが普通です。まだ機能的には使えましたが、住民からデザインや福祉仕様への要望などがありましたので、昨年の総会ではかって決議し、10月から3カ月間かけて8台全部入れ替えました」。主な改良点は、地震感知機、地震時管制運転機能、耐震補強工事など地震に強い設備にしたこと、事故が起こる前に察知できる遠隔監視システムを導入したこと、防犯窓を取り付けたこと、かご内に2方向手摺、車いす専用操作盤、車いす専用乗場ボタンなどを設置して福祉仕様にしたことなどが挙げられます。さらにモーター容量が小さくなり、電気代も軽減できました。そして注目すべきは、メーカーとの直接契約により、内容をより充実させながらメンテナンス費用を年間かなり削減することができたことです。

● 各業者との直接契約により経費節減

(写真) 先ほどのエレベーターに限らず、管理組合では一昨年から管理会社一括発注の見直しにかかりました。「業者さんを全部呼んで、配水管の清掃、揚水ポンプの点検、植栽関係など項目ごとにそれぞれ交渉をして、管理組合と業者とが直接契約しました。これで一昨年は年間数百万の減契約を実現。臨時総会で管理費の減額を行いました。一つひとつ交渉しながら値決めをしていくのは大変な作業ですが、一度契約すれば、あとは何かの条件変更がない限り、同条件・同金額でいけますから、そんなに面倒なことはありません」。
 今後の大きな取り組みとしては、次回の大規模修繕があります。「その頃に通常の塗装替えのほかに排水管、その他の設備、とくに通信とか電気回りを含めてやりますので、通常の大規模改修よりも倍の予算が必要ではないかと思っています」と予測。そのため、総会で長期修繕委員会のメンバーを募集して、具体的な検討に入る予定です。「そういう意味で、来年度は、次回の大規模修繕のスタートにしたいと考えています」。
マンション概要 所在地:大阪市西区北堀江
建築年 昭和53年(築年数27年) 構造・規模 SRC造14階建(一部11階)
棟数・戸数 4棟・389戸(その他、店舗7戸) 戸当り専有面積 48.00〜154.00平方m/戸
駐車場台数 102台 駐輪場台数 700台(内単車45台)
付属施設 集会室、管理員控室、
管理事務室、防災センター
付属設備 監視カメラ
役員体制
役員任期 1年(1年を限度に再任可) 役員数 12人
選出方法 任意・勧誘で総会で承認 理事会 2回/月
総会 1回/年
(臨時総会1 回/年 程度)
各種委員会の設置 有(長期修繕委員会)

NO.13 港区・ベイシティ大阪管理組合

子どもの遊び場確保やペット問題に
知恵を出しあい、安全で快適な環境を!

地下鉄朝潮橋駅から徒歩約10分、三十間堀川沿いに建つベイシティ大阪は、1992年から1994年にかけて建てられたデザイナーズマンションのはしりであり、モダンな外観がひときわ目を引きます。また公開空地をたっぷり採り入れ、自然環境にも配慮されています。築後10年経った段階で、防犯や景観などさまざまな問題に取り組むと同時に、公開空地である故の悩みにも直面されています。熱心な理事さんの多いベイシティ大阪管理組合の積極的な活動ぶりをご紹介しましょう。

●管理組合の積極的な取り組みの必要性を実感

(写真)「当時のデザイナーズマンションのはしりでした。普通の構築物と違って、あちこちに出っ張りがありますが、それが逆に維持費が高くつくことになっています」と笑うベイシティ大阪管理組合の稲津理事長。新しい間は、きれいで問題も起きないが、ちょうど10年ぐらいたった頃から、防犯や景観の問題など、管理組合が積極的にいろいろ乗り出していかないと、いろいろな意味でマンションの資産価値を維持できないと感じてきたそうです。

●住民の立場で活動する「事務局」を設置

具体的な取り組みを紹介する前に、同組合ならではのユニークな制度を一つ紹介しておきましょう。それが1999年から設置した事務局制度です。現在は2代目の澤井さんが担当しています。澤井さん自身、ベイシティ大阪に居住する住む主婦であり、月・水・金の3日間、管理組合事務所に常駐しています。
「私は留守番係だと言っていますが、主に、住民の苦情を聞いたり、業者さんと話し合いをしたり、資料の整理などをやっています」と澤井さん。事務局を設置の理由は、理事は1、2年で変わるため、過去からの継続事項が分からないことが多いこと、ほとんどの理事が仕事のため、日中にマンションにいないが、工事関係の業者は日中に出入りすること。そこで事務局を通して段取りをしてもらおうというわけです。「管理員さんは管理会社の立場ですが、澤井さんは住民の一人ですので、住民の立場で話をきいてもらえるのも大きなポイントです」と稲津理事長が説明を加えます。

●順調に進む大規模修繕計画

阪神・淡路大震災の影響もあり、これまで少しずつ修理をしていたが、やはり大規模修繕が必要と考えて計画を進めているのが大規模修繕計画です。管理組合では、まず住民アンケートを行い、2005年初旬にアンケートの集計を終え、うまくいけば秋口ぐらいに工事に着手していきたいそうです。外壁の塗り直しや屋上やベランダの防水などになると思われるが、最終的には、アンケート結果で修繕内容を詰めていく予定です。
「住まい情報センターで教えていただいたように、まず理事会で担当を決め、民間の設計事務所をコンペて選定しました。その後に、大規模修繕委員会のメンバーを募集。メンバーが決まった後は、そちらにバトンタッチしました。メンバーは10名。自薦・他薦です。建築関係のプロの方も2名入っています。次は、施工会社を選定する段階です」と順調に進んでいる様子です。

●カラーモニター&録画機能付きの防犯カメラを設置

「実は、大規模修繕は、お金とスタッフがあればそれほど心配していませんが、心配なのは、むしろソフト面です」と稲津理事長。まず、安全面ですが、同マンションは、オートロックシステムです。しかし必ずしも万全とはいえません。そこで防犯カメラの利用です。実は入居時から防犯カメラがついていましたが、モノクロで録画機能もなかったため、管理組合では、大阪市の補助を受けて、カラーモニターで録画機能付きの防犯カメラを、駐車場、各入口、エレベーターなど、全30か所に設置しました。管理事務所兼24時間体制の警備事務所で、つねにモニターで監視できるようにしています。さらに中高生が夜にマンション周辺を徘徊することが多いので、休日の前の日などは人員を増員して、夜間の警備を強化しています。

●頭を悩ます子どもの遊び場のルールづくり

(写真)いま稲津理事長が一番、思案している事案は、子どもたちの遊び場をいかに共存させていくかということ。「子どもが遊べないような、子どもの笑い声が聞こえないようなマンションには、決してしたくありませんからね」。
同マンションには、かなり広いスペースの公開空地が、敷地内に数カ所にあります。公開空地なので、もちろん周辺住民が利用することも可能です。それだけにルール作りで難しい面があるようです。例えば、小中学生たちは、これほど広いスペースだと、キャッチボールをしたくなります。でも、幼児には、敷地内でのボール投げは危険です。これをどう調整するかが難しいのです。
(写真)「うちのマンションには、管理組合の他に、全住民が参加している独立組織のベイシティ町会があります。また地区には連合の子供会があります。そこで、子供会、町会、管理組合が一緒になって、せっかくの広い空地をどういうふうに子どもに提供しようかということを話し合うつもりです」(稲津理事長)。地域の人たちと一緒に、公開空地の利用の仕方を探ろうとされております。

●ペット問題は、限定付きで認めることを決議

もう一つはペット問題です。高齢者のいる家庭は、どうしてもペットを飼われるケースが多く、ペットをもっている人と、もっていない人の間の意見調整が難しいようです。同マンションでは、もともとペット飼育は禁止でしたが、規則があっても、陰で隠れて飼う人が増えてきたという実態がありました。
「それなら、ある程度、許容規則を作ろう。そのかわり、その規則は守ってくださいね」というふうにペット問題に対する考え方を方向転換しました。そして2003年6月の総会で限定付きで認めることに決ました。まずペットクラブを組織し、ペットを飼いたい人は、ペットクラブに申請し、承認されたうえで、さらに理事会で承認されて初めて飼えるようにしています。
「抱ける大きさで、約10kgまで。犬、猫関係なく頭数は1匹までです。10年前ですと無理だったでしょうけど、最近のペットブームもあって抵抗感が薄れてきました。最初は抵抗感の少ない小型犬で1匹までとしましたが、将来、もっとマナーがよくなり、みんなの理解が得られれば、2匹になるかも知れないし、大型犬でもOKになるかも知れません」(澤井さん)。
ルールは他にもあります。外出するときは必ずリードと黄色いスカーフを付けること。フンの後始末ができる袋をもつことなどです。
「飼い主はペットクラブにペットの写真付きで申請していただいていますが、それを全部ホームページに掲載するつもりです。ペット仲間のコミュニティを作ることもできますし、掲載することで、ルール違反もできないのではないか考えています」(稲津理事長)。

●ホームページでコミュニケーションの充実を!

稲津理事長の言うように、いま同マンションでは、広報担当理事を中心にホームページを立ち上げる準備段階です。「マンションに光回線を導入し、すでに3分の1の世帯が契約をしています。ADSLを含めれば半分以上はパソコンを使っておられます。理事の中でも、何でホームページがいるのか、という話しも出ましたが、コミュニケーションの充実を図かっていく意味でも必要だということで、今期中、2005年3月までに完成させたいと思っています」。
いちおう管理組合のホームページですが、規約の改正や大規模修繕などの情報の他に、町会情報やペットクラブの情報もいれるなどして、全体が網羅する計画です。「マンション全体のホームページにしていくつもり。さらに、地域の商店街とも連携して、地域コミュニケーションがとれればと思っています」と抱負を語られます。
「うちのマンションは、住まい情報センターを活用する回数が多くて、セミナーにはほとんど出ています。大規模修繕、防犯カメラ、ホームページの他、管理費滞納、管理規約改正など、すべてここで情報を仕入れて活用させてもらっています」。稲津理事長の話からも、とても熱心な理事の多い管理組合であることがよくわかりました。
マンション概要 所在地:大阪市港区池島
建築年 1992年(イースト、ウエスト)
1994年(センター)
(築年数10、12年)
構造・規模 SRC造・8,15,21階建
棟数・戸数 3棟・435戸 駐車場台数 315台
駐輪場台数 1100台 付属施設 集会室、管理員室
付属設備 オートロック
監視カメラ
役員体制
役員任期 2年 役員数 16人
選出方法 輪番制・立候補制 理事会 2回/月
管理組合・町会交流会 1回/月 総会 1回/年
各種委員会の設置 有(修繕委員会)

NO.11 西区・日商岩井阿波座マンション管理組合

より安全で快適な環境をめざし
積極果敢に諸問題の快適に挑む!

 地下鉄阿波座駅から徒歩5分の便利な立地にある日商岩井阿波座マンションは、築26年。管理組合は、老朽化対策として長期修繕積立金を準備すると同時に、経費削減にも努力して、管理費等の値上や臨時徴収なしで行っているほか、より安全で快適なマンションライフのために改修工事などにも積極的に取り組んでいます。

● 受水槽を撤去して集会室を誕生させる

(写真)ここ数年間、管理組合では、より安全で快適なマンションライフのために、積極的に改修工事に取り組んできました。例えば、防犯上の観点から、玄関部分とエレベーター内に、防犯カメラを設置した他、安全面を配慮して、玄関のアプローチ部分を全面スロープにしました。それも高齢者にも優しいように、100分の1のゆるい勾配となっています。「基準的には8分の1の勾配でいいのですが、実際は高齢者にはきついし、車イスだとなかなか上がれません」と理事長の藤田三郎さんは説明する。同時に、スロープの材料に耐摩擦性と浸水性に優れたインターロッキングを使用しています。「最近、転倒事故がすごく多いでしょ。それだけにスロープの床の材質には、気を遣いました」。
(写真)さらに13年7月には、受水槽を撤去して、増圧直結給水方式に切り替えました。受水槽は定期的な清掃が必要であり、維持管理費が当然のようにかかります。受水槽の撤去により、この維持管理費が節約できた他、増圧給水設備を他の場所に設置にすることで、受水槽を撤去した約20坪の受水槽室を集会室として改修しました。管理組合では、この集会室の使用細則を定め、近隣へも有料で開放しています。利用内容としては、葬儀・臨時宿泊・料理教室などですが、管理会社のサービスで、包丁磨き教室を実施したこともあるとか。「集会室ができたことで、住民同士のコミュニケーションが図れるようになりました。これからも大いに活用したいですね」。

● 必要金額と積立金残高をシミュレーション

これまで紹介したように、築26年のマンションを快適に暮らし続けるには修繕が欠かせません。その原資となる修繕積立金ですが、管理組合では従来から不足が生じないように体制を整えてきました。「ほら見てくださいよ」と藤田理事長から見せたもらった資料には、2001年度から2018年度までの(修繕)必要金額と(修繕)積立金残高が、棒グラフと折れ線グラフで示されています。「このシミュレーションは、私が作ったものですが、これを見れば、積立金残高が必要金額をつねに上回っています。今後、アクシデントが起きない限り、修繕費の値上げや臨時金を徴収することなく、現在の修繕計画を進められるというわけです」。
修繕積立金の確保と同時に、管理組合ではデフレの時代に合わせて、無駄なものを省き、経費削減にも努めてきました。費用の中でもとくに大きなものが管理会社への支払いですが、平成12年に管理会社を変更したことで、年間200万円の削減になったといいます。

● 修繕履歴もすべてファイリング

 また、多くの管理組合にとって大変なのが資料の整理です。もともと資料を保存する場所がなかった管理組合では、これではいけないと、管理人室の奥にあった物置を改修。裸電気を蛍光灯に変え、資料を保存するためのロッカーを置きました。ここに、管理規約はもちろん、先ほど紹介したチラシや、修繕履歴等もすべて保管されています。
 そして今進めようとしているのが、マンションの竣工図面の電子化です。20数年も経つと、さすがに変色して図面が劣化してきます。また、修繕のたびに業者に図面を貸し出すと、破れたり、行方不明になって返ってこなかったするから大変。「CD等に電子化すると、劣化しないだけでなく、スペースも取らずに整理やすく、活用もしやすいはずです。今後も、電子化した方がいいものは、電子化していきたいと考えています」。
 この他にも、管理組合が、現在取り組んでいる問題は、自転車の不正駐輪、ペット禁止の違反、組合役員の引き受けの拒否、管理費滞納など、数多くあります。「例えばペットの問題でも、マンションでのペット飼育が、なぜいけないのかをきちんと理解していただきたいのです。ウイルスやダニなどの衛生上の問題、糞尿による臭気の問題、あるいはペットの毛による排水管づまりなど、さまざまな問題が生じますし、それが原因でマンションの価値を下げることにもなります。今後も、チラシやステッカーを使って、住民の方々に根気よく啓蒙していくつもりです」と藤田理事長は、積極的に取り組んでおられます。
グラフ
マンション概要 所在地:大阪市西区
建築年 昭和53年(1978年) 構造・規模 SRC造、地上14階建
棟数・戸数 1棟・79戸 戸当たり専有面積 46.66~102.00平方メートル/戸
駐車場台数 13台 駐輪場台数 93台
付属施設 集会室・管理員室 付属設備 監視カメラ・インターネット
役員体制
役員任期 1年(重任可) 役員数 7人
選出方法 輪番制・立候補制・抽選・推薦等 理事会 1回/3ヶ月
総会 1回/年

不在組合員に対して一定の金銭的負担を求めることが認められた事例/最高裁判所第3小法廷 平成22年1月26日判決

最高裁判所第3小法廷
平成22年1月26日判決
平成20年(受)第666号
平成20年(受)第54号、第55号
平成19年(受)第1717号

●事件の概要
 本件は、マンションの管理組合Xが、マンションの区分所有者であるが部屋を賃貸するなどして居住していないYらに対し、月額2500円の「住民活動協力金」の支払いを求めた事案です。
 Xは、管理組合運営の負担が居住組合員に集中していることが不公平であるとして、総会で不在組合員に対して協力金を支払わせる規約改正を決議しました。しかし、不在組合員のうちYら5人が規約は不公正であるとして支払いを拒んだため訴訟になりました。
 計3件の訴訟が提起されましたが、第1,2審判決では判断が分かれ、第2審大阪高等裁判所では、1件について「月1000円の限度で有効」、2件について「協力金を求める規約改正は無効」と判断しました。
●問題点
 区分所有法は、規約変更の際には、一部の所有者に特別の影響を及ぼす場合にはその所有者の承諾が必要であるとしていますが(区分所有法31条1項後段)、今回の金銭負担が「特別の影響」に当たるかどうかが争点でした。
●判決内容
判決は、まず、「不在組合員は、Xの選挙規程上、その役員になることができず、役員になる義務を免れているだけでなく、実際にも、Xの活動について日常的な労務の提供をするなどの貢献をしない一方で、居住組合員だけが、Xの役員に就任し、各種団体の活動に参加するなどの貢献をして、不在組合員を含む組合員全員のために本件マンションの保守管理に努め、良好な住環境の維持を図っており、不在組合員は、その利益のみを享受している状況にあったということができる。」として不公平状態にあったことを認定し、不在組合員に対して「規約変更により一定の金銭的負担を求め(て)」「不公平を是正しようとした」ことに必要性と合理性があることを認めました。
 そして、上記必要性と合理性と比較されるべき不在組合員の不利益については、支払いを求められる月額2500円という金額は管理費と修繕積立金の合計額である月額1万7500円の約15%に過ぎないとし、また、180戸の不在組合員のうち反対して支払いを拒んでいるのは12戸を所有する5名の組合員に過ぎないことも考慮すれば、本件規約変更は、「不在組合員において受任すべき限度を超えるとまではいうことができ(ない)」との利益考量を示し、結論として、区分所有法31条1項後段の「特別の影響を及ぼすべきとき」に該当しないと判示しました。
【判決の意味】
 本判決は、上記のとおり、不在組合員に対して一定の金銭的負担を求めることを是認しましたが、どこまで一般的に敷衍できるかは慎重に検討する必要があります。
 すなわち、本事案では、本件マンションの規模が大きいこと、総戸数868戸のうち180戸が組合員不在状態となっていたこと、不在組合員に課した負担額が比較的少額であったこと、不在組合員のほとんどが争わなかったことなどの事情があり、判決はそれらを総合的に判断して結論を出したものであって、今後、不在組合員に対して金銭的負担を求める規約変更がすべて有効と判断されるとは限らないことに注意が必要です。
◆ 管理組合の今後の対応 ◆

 築年数の古いマンションでは、所有者の高齢化と不在組合員の比率の上昇が進み、役員のなり手不足が深刻な問題となっています。
 本判決は、役員のなり手不足に困っている管理組合にとっては朗報と言えるかも知れません。今後、同様の課金制度を実施する管理組合が増えてくることも予想されます。
 ただし、「判決の意味」の欄で述べたように、本判決は不在組合員に対して金銭的負担を求める規約変更を一般的に有効だと判断したものではありませんので、規約変更を行うに際しては、管理組合で十分に話し合って、できるだけ多くの組合員(不在組合員も含めて)の理解が得られるような制度とするべきでしょう。

NO.10 都島区・ロイヤルアーク都島管理組合

マンション内インターネットの活用で
交流の輪が楽しく広がる

マンション内でインターネット設備を導入しているマンションが徐々に増えてきているなかで、ロイヤルアーク都島管理組合は、その便利さや楽しさを活かして利用しています。パソコンを使えない人には活用できるための教室を開くなど、フォロー態勢もバッチリ。いったいどんな運営をしているのか、大変興味をもって伺いました。

● “おしゃべり広場”の活性化へパソコン教室開催

(写真) 今回、取材に応じていただいたのは、インターネット活用者の中心ともいえる黒川静博さん。コンピュータ関係のお仕事をされていることもあって、インターネット設備はマンション選びのポイントの1つでした。(当マンションには、分譲時からマンション内に光ファイバーが配線され、独自のホームページがありました)
 各戸に専用の端末機(LAN型インターネットターミナル)を設置。それをテレビにつなぐだけで、入居者の誰もが簡単にホームページを見られるシステムになっているのですが、専用の端末機やパソコン操作ができないと交信ができず、楽しさも半減。実際、画面は見ることができるけれど、書き込みができないという人が多いことも、後のアンケートで分かりました。
 「入居(平成14年6月)して、すぐにホームページで知り合った4世帯のメンバーが中心になって、おしゃべり広場をもっと盛り上げていこう、みんなで見られるようにしよう」と、黒川さんたちは早速、その年の10月にパソコン教室を開催。ホームページの制作・運営会社とその協力会社のバックアップで12台のパソコンがコミュニティホール(集会室)に持ち込まれ、2日間で合計30人、夫婦で参加した人もいました。

● “井戸端会議”に約20人が参加

 “ぶらっとナビ”という名のホームページ(下記参照)では、おしゃべり広場からの口コミやお買得情報、管理組合からのお知らせなどさまざまな情報が見られますが、何といっても楽しいのが、井戸端会議のできるおしゃべり広場。例えば「クリスマスパーティー開きます!」「いかくん(黒川さんのペンネーム)に教えてもらったサイトでオムツのモニター当たりました」「タイガース優勝パレードで撮影したMyベストショット、ぷらっとナビにお送りください」等など、今では161戸のうち20人くらいが参加しているようです。(今までに書き込みをしてくれた人は55名)
(写真) 日ごろは会社勤めで近所同士で会う機会が少ない人も、帰宅して息抜きにパソコンを開いたら誰かが話しかけてきているといった具合。これがきっかけになり、昨年(平成15年)夏に開催した入居一周年記念パーティーには約50人ほどが、またクリスマスパーティーには約60人が参加されました。気の合った人同士でお花見やタコ焼きパーティーなども行われ、交流の輪がどんどん広がってきています。

● 月額1000円の利用料以上のメリットが・・・

 ここでは、通常の管理組合と管理会社に、ホームページの運営会社が加わり、日常の管理運営を行っています。ホームページ運営会社は、管理組合と業務委託契約を結び、ホームページの制作や更新、問合わせへの対応などWEBサイトの運営やサービスを行っています。したがって、インターネットを使用しない人も月額1000円の利用料が必要。けれど管理会社や管理組合からのお知らせが速報され、管理規約もすぐに画面で見られ、また電話料金がグンと割安になるIP電話への接続ができるなど多くのメリットも。しかし何よりの魅力は、老若男女を問わず、マンション内の交流の輪が、無理なく、楽しく広がっていることでしょう。 (図)
マンション概要 所在地:大阪市都島区中通3丁目
建築年 平成14年 構造・規模 SRC造・地下1階地上15階建
棟数・戸数 1棟・161戸 戸当たり専有面積 69.34〜93.79平方メートル/戸
駐車場台数 129台 駐輪場台数 バイク35台、自転車339台
付属施設 集会室・管理事務所 付属設備 オートロック・監視カメラ・インターネット
役員体制
役員任期 1年 役員数 10人
選出方法 輪番制 理事会 1回/月
総会 1回/年

駐車場等専用使用権を消滅させ、又はこれを有償化する総会決議の有効性について/A 最高裁判所平成10年11月20日判決、B 東京高等裁判所平成13年1月30日判決

A 最高裁判所平成10年11月20日判決(判例時報1663号102頁)
B 東京高等裁判所平成13年1月30日判決(判例時報1810号61頁)

●事件の概要
 Yは、住居及び店舗併用型マンションを建築分譲したが、自らも店舗部分に区分所有権を取得し、 敷地である駐車場(以下「本件駐車場」という)、塔屋外壁、 屋上及び非常階段踊り場等に無償の専用使用権の設定を受け、 これらを使用してきた。本件は、マンション管理組合Xが、規約を変更した上、Yの専用使用権につき、 一部を消滅させ残部を有償化する決議(以下「消滅決議」及び「有償化決議」という)をしたとして、 Yに対し、消滅部分の使用差止め(1)と有償化部分の使用料支払(2)等を求めた事案。
差戻し前の控訴審判決(東京高等裁判所平成8年2月20日判決)
消滅決議について、 当該専用使用権を消滅させる必要性は同権利を必要としているYの利益を上回るものではないから Yの承諾なく消滅させることはできないとし、 有償化決議についても、Yは当該専用使用権に関し管理費等相応の経済的負担をしており、 その上に使用料を徴収することはYの専用使用権に「特別の影響」を与えるので、 Yの承諾がない決議は無効であるとして、Xの請求を棄却。
●問題点
(1)ある専用使用権につき、当該専用使用権者の承諾なく、これを消滅させたり、 無償だったものを有償にすることができるのか。
(2)どのような場合、「一部の区分所有者の権利(専用使用権)に特別の影響を及ぼすべきとき」 (建物区分所有法31条1項後段)とされ 「その承諾を要する」のか。
●判決内容
判決A:直接に規約を設定・変更等する場合だけでなく、 規約の定めに基づき総会決議をもって専用使用権を消滅させたり、これを有償化する場合も、 当該専用使用権者が受ける不利益が受忍限度を超える場合は建物区分所有法31条1項後段が類推適用される。
消滅決議について、(a) Yが分譲当初からマンション店舗部分でサウナ等営業をしており、 来客等のため各駐車場の専用使用権を取得し、 (b) 残部の駐車場だけでは営業活動の継続に支障を生ずる可能性があり、 (c) 他の区分所有者らは駐車場・駐輪場がないことを前提としてマンションを購入した等の事情 (以下「本件分譲経緯」といいます)を考慮すると、 Yが一部駐車場の専用使用権を喪失することで受ける不利益は受忍限度を超え、 「特別の影響」を及ぼすから同決議は無効であるとした。
有償化決議について、専用使用権の有償化は、 (ア)一般的に当該権利者に不利益を及ぼすが、 (イ)有償化する必要性・合理性が認められ、且つ (ウ)設定された使用料が社会通念上相当な額であれば、その者は有償化を受忍すべきであり、 「特別の影響」を及ぼすものではない。設定された使用料が社会通念上相当でなくとも、 その範囲内の一定額をもって社会通念上相当な額と認められるときは、 (エ)特段の事情がない限り、その限度で「特別の影響」を及ぼすものではないから決議は有効である。 原審判決は、(ア)だけで、(イ)ないし(エ)を検討することなく、 「Yの承諾がないから決議は無効」としたとして、(2)に関する部分を破棄し差戻した。
判決B:差戻しを受け、 (ア)につき前記「差戻し前控訴審判決」中「特別の影響」を与えるとした理由部分を挙げ、 (イ)につきYが長年(昭和48年〜) 共有部分を無償使用し他の区分所有者との関係で公正を欠いているから有償化する必要性・ 合理性が認められるとした。しかし、 (ウ)につき本件分譲経緯として、他の区分所有者らにおいて、 Yが営業に必要な駐車場等設備を自己負担で設置し、 その敷地・床部分を無償使用することを承知の上マンションを購入している点を付加し、 現にYが無償で設備を使用してきたことも考慮し、 通常の賃貸借賃料相場を基準に使用料を課するのは過大な要求であるとして、 事実上営業断念という事態を招来しているから有償化決議による使用料は社会通念上相当な額とは認め難いとした。 また、これら各設備はYの営業上必要で、管理をYが行っており、 他方、Yの専用使用による他の区分所有者らのマンション利用への支障がないという事情も考慮し、 各施設につき、社会通念上相当な額と認められる額を認定し、 この限度で有償化決議は有効(Yの承諾は不要)とした。
【判決の意味】
分譲時、特定の者が無償又は低額の専用使用を取得したが、 長年経過するうちに駐車場不足等の事情が発生して、廃止や条件変更が問題になることがあります。 このような場合、少なくとも一定範囲で有償化又は増額できることを、これら判決は示唆しています。 その方法につき、判決Aは、最高裁判所平成10年10月30日判決を引用し、 直接規約を設定・変更等しなくとも、 規約の定めに基づいて総会を開催し4分の3以上の多数決議をもって専用使用権を変更等することが可能であるとしました。 但し、権利を変更等される者の不利益が受忍限度を超える場合は承諾なしにはできません (建物区分所有法31条1項後段類推適用)。 次に、一方的に変更等できる基準である受忍限度につき、判決Aは、 (ア)当該権利者の不利益と、 (イ)廃止・変更する必要性・合理性とを比較衡量し、 (ウ)社会通念上相当な使用料であれば、変更等を受忍すべきであるとしました。 具体的には、その分譲経緯、専用使用目的(営業活動等)の継続に支障を来たす可能性、 他の区分所有者らが当該専用使用を前提にしていたか(駐車・駐輪場の不存在等を甘受し、 代わりに分譲価格を低額にした等)を確認します。 更に、判決Aは、決議による使用料が社会通念上相当でなくとも、 (エ)特段の事情がなければ、社会通念上相当と認められる限度で決議が有効になるとしています。 差戻審である判決Bは、長年の無償使用があれば有償化の必要性・合理性は認められるとしながらも、 社会通念上の相当額について、近隣相場賃料ではなく諸般事情を踏まえかなり低額を認定しました (ex.駐車場につき避難通路になっていて他への賃貸が困難といった点も考慮して、 相場の約5分の1程度の額を認めています)。
◆ 管理組合の今後の対応 ◆

本件事例と同様の分譲経緯がある場合、 4分の3以上の多数による総会決議で無償(又は低額) の専用使用料をある程度アップさせることは可能ですが、 これを廃止したり、相場賃料まで引上げることは困難です。このような場合、 本件事例のように強硬手段に出る(消滅や近隣相場額への変更を決議する)よりも、 まずは「周辺相場は月額○○○円だが、 そこまでの使用料設定は考えていないので・・・」と円満交渉を持ち掛けるべきでしょう。 これに対し、当該専用使用権者を優遇すべき特段の経緯もないのに、 長年不合理な特典(無償、使用料低額等)が与えられてきたという場合、 まず強い態度で廃止や条件変更を申し入れてみて、相手方が納得しないときには、 消滅決議や近隣相場による有償化・ 増額決議をしたうえ本件事例のような訴訟を提起していくのが合理的な対応策となります。

NO.8 旭区・淀川パークハウス管理組合

1,000戸近くのマンモス団地も
活発な広報活動でグッドコミュニケーション

この3月で創立30周年を迎える淀川パークハウス(村本祥孝理事長)は、淀川沿いに広がる7棟・980戸のマンモス団地。昭和48年の竣工当時は民間で日本一の規模でした。2,500人近い人たちの生活となると運営もさぞ大変ではないかと思われますが、ここではうまく行われているようです。その秘けつはというと、どうやら情報の共有化、つまり広報活動のすばらしさにあるようです。

● 月刊広報誌、新年特集号で173号に

 広報活動の“要"となっているのが、B5サイズ10〜12ページの月刊広報誌『よどがわ』。今年1月の新年特集号で173号の発行となりました。昭和51年10月のスタート時には自治会としての発行で、ガリ版刷りでしたが、今は、写真やイラストをふんだんに使った立派な小冊子スタイルになっています。
 昭和60年の管理組合発足後、自治会と連携を強める中で、広報誌も“記録性とニュース性”を重視し、管理組合と連合自治会の連携をバックアップすることが編1集方針に加わりました。昭和63年8月には誌面も一新、名前も『よどがわ』となったのです。今では月初めに管理組合の理事会があり、すぐ後に連合自治会も開催されます。翌月には、それらの会議内容や活動状況が写真やイラストを交えて分かりやすく誌面に紹介されるので、居住者は常に管理組合や自治会の動きが把握できるようになっています。
 今年は創立30周年に当たるので、春のコンサートを皮切りに、夏、秋と記念事業を予定、居住者相互や周辺地域との一層の交流がはかられることでしょう。

● めざすは全員参加の誌面づくり

 広報誌『よどがわ』には、さまざまな工夫があります。
 まず、メイン記事となる管理組合ニュースや連合自治会からのお知らせが、平易な文章で端的にまとめられている こと。顔を覚えてもらうため、理事長や会長、グループ活動の代表者、管理事務所のスタッフらは写真で大きく載せています。グループは、女性会や子供会、七寿会など7グループあり、会長はもちろん、メンバーにも記事を書いてもらいます。消防訓練や救命講習会といった組合活動ばかりでなく、防犯やインターネット関連、夏祭りやふれあいサロンの紹介など、全員参加の誌面づくりをめざしています。

● 情報収集のコツは広報誌専用の原稿用紙から

 広報誌『よどがわ』には、さまざまな工夫があります。
 まず、メイン記事となる管理組合ニュースや連合自治会からのお知らせが、平易な文章で端的にまとめられている こと。顔を覚えてもらうため、理事長や会長、グループ活動の代表者、管理事務所のスタッフらは写真で大きく載せています。グループは、女性会や子供会、七寿会など7グループあり、会長はもちろん、メンバーにも記事を書いてもらいます。消防訓練や救命講習会といった組合活動ばかりでなく、防犯やインターネット関連、夏祭りやふれあいサロンの紹介など、全員参加の誌面づくりをめざしています。

● 編集は趣味に走らず、写真は季節感を重視

 『よどがわ』の発行部数は1,200部で、一般住宅980戸と商業棟の店舗はもちろん、行政や隣接地で付き合いのある人たちにも配布されています。
 最後に、広報誌の発行を成功させるポイントを聞くと、「編集は趣味に走らないこと。できるだけ写真を載せることですね。個人でいやがられたらグループ写真でお願いします。名前も掲載した方がいいのですが、必ず了解を取ります。写真はできるだけ季節感を出し、人物は撮りだめしておくと、誌面に空白ができたときに役立ちます」と、経験に基づいたアドバイスをいろいろいただきました。また『よどがわ』は、写真好きな居住者のお一人、植松 訓さんの作品集から選ばれた季節感のあるカットで表紙が飾られており、思わず読んでみたくなるような体裁になっています。
マンション概要 所在地:大阪市旭区太子橋3丁目
建築年 昭和48年 構造・規模 SRC造・11階建
棟数・戸数 7棟・980戸 駐車場台数 460台
駐輪場台数 1,000台 付属施設 集会室・管理事務所
役員体制
役員任期 1年 役員数 22人
選出方法 輪番制・立候補制

管理費等の消滅時効の期間について/最高裁判所第2小法廷 平成16年4月23日判決

最高裁判所第2小法廷 平成16年4月23日判決(金融・商事判例1196号13頁)
平成14年(受)第248号管理費等請求事件

●事件の概要
 本件は、マンションの管理組合Xが、本件マンションの区分所有者であるYに対し、本件建物の前の区分所有者が延滞していた8年前からの管理費及び特別修繕費の支払を求めた事案です。
 Yは、管理費等の請求債権は民法169条の定期給付債権に当たるので、本件管理費等のうち弁済期から5年を経過した分は時効消滅しているなどと主張して、管理組合Xからの請求を争いました。
 第1審判決は、管理費等の額が毎会計年度ごとに総会の決議で決定されることを理由として、管理費等は定期給付債権に当たらないと判断し、また、区分所有者側の権利濫用の主張も排斥して、Xの請求を全部認めました。
 第2審の高裁判決は、第1審の判決理由に加え、管理費等の支払いに短期の消滅時効にかからせる必要性は乏しく、かつ、適当でもない、むしろ、不当な結果を招くおそれがあるとして、第1審判決を支持し、Yの控訴を棄却しています。
●問題点
マンションの管理費及び修繕積立金の請求債権の時効消滅は何年か。民法169条(定期給付債権の短期消滅時効)の適用の有無。
●判決内容
 判決では、修繕積立金を含めたマンションの管理費等については、民法169条所定の定期給付債権に該当するため、弁済期から5年経過した部分につき、消滅時効が完成していることから、その部分の請求について、請求を棄却しました。
 すなわち、判決では、「本件の管理費等の債権は、前記のとおり、管理規約の規定に基づいて、区分所有者に対して発生するものであり、その具体的な額は総会の決議によって確定し、月ごとに所定の方法で支払われるものである。このような本件の管理費等の債権は、基本権たる定期金債権から派生する支分権として、民法169条所定の債権に当たるものというべきである。その具体的な額が共用部分等の管理に要する費用の増減に伴い、総会の決議により増減することがあるとしても、そのことは、上記の結論を左右するものではない。」としました。その上で、Xの請求は、本件管理費等のうち、時効完成分を除いた金額等の限度で認められると結論付けました。
 なお、本判決には、修繕積立金につき、短期消滅時効にかからないような適切な方策が立法措置を含めて十分に検討されるべきとの補足意見も付されています。
【判決の意味】
 これまで、マンション管理組合の管理費等の消滅時効の期間については、民法169条の適用の有無により、5年時効説と10年時効説が対立してきました。そのため、実務では、何年で時効になるか明言することができず、その対応において混乱が生じていました。しかし、今回の判決によれば、一般的な管理組合の管理費等については、本件と同様に判断してよいと考えられますので、今後は5年時効説が定着するものと考えられます。
◆ 管理組合の今後の対応 ◆

 今後の立法についてはともかくとして、今回の判決により、管理費等の消滅時効は5年であるということがはっきりしましたので、管理組合としては、これを前提に対応しなければなりません。そのため、管理組合では、これまで以上に消滅時効に配慮し、滞納管理費等の早期回収を心がけることが大切となります。普段から滞納が発生した場合の対応策を準備しておき、迅速に処理できる態勢を整えておく必要があるでしょう。
 特に滞納期間が4年を過ぎると、訴訟提起等の法的手続きを採るかどうかを決断する必要がでてきますし、その場合、管理規約によって総会あるいは理事会の承認を要することになりますので、十分な注意が必要となってきます。

NO.7 生野区・勝山東ガーデンハイツ管理組合

委託管理から突然、自主管理に
価値ある経験を経てまた委託管理へ

今回は、委託管理から自主管理、そしてまた委託管理へ移行しようとしている生野区の勝山東ガーデンハイツを訪問。その経緯などをお話しいただき、自主管理のむずかしさ、問題点、さらに成果などもお聞きしました。

● 大幅な管理費アップが自主管理への引き金に

 勝山東ガーデンハイツが自主管理を始めたのは、平成6年4月。きっかけは、昭和56年竣工当初から業務を委託していた管理会社が突然、委託費の大幅値上げを提示してきたことからです。
 委託契約は、1年更新で行っており、値上げは平成元年に1回実施し、その後は管理会社からの打診はあったものの、結果的には組合が現状維持をお願いし、据え置きとなっていましたが、平成6年2月に管理会社から1住戸の月額管理費平均8,100円に対し一律5,000円の大幅値上げが提示されました。
 管理組合としては前年度に大規模修繕工事に伴う一時金(1戸平均50万円)を徴収していることから管理費値上げ案を所有者に提示しにくい状況があり、管理会社に対して大幅値上げをしなければならない明確な回答を求めました。
 しかし結果的には管理会社からは回答がないなかで、契約更新は行われず、管理について何も分からないまま自主管理に突入したというのが実態です。

● 参考になった管理組合団体からのアドバイス

 自主管理に突入した年度は、大規模修繕工事が8月から実施という難問が目前にせまっていました。維持管理業務の手順が分からないなかで、当時の理事会(男性3名、女性4名で構成)は、自主管理については56戸の居住者が役員を一巡する期間は頑張ってみようと言うことに決定。まさに荒海の波が押し寄せるなかでの「自主管理丸」の船出でした。
 ただ幸いなことに、居住者の進言で、平成2年に管理組合団体に加入していたことで、その管理組合団体からのアドバイスを受け、自主管理への足がかりがつかめました。
 大規模修繕工事については、平成3年度に修繕委員会を発足し、設計・工事監理は前年度の準備時点から専門家団体へ委託する総会決議になっており、問題なく実施されました。

● 自主管理の運営に大きな役割を果たした広報紙

 自主管理を開始して半年間は、週1回の当番制で居住者全員が清掃を行い、その後、居住者の紹介で清掃業者に委託(週2回ごみ収集日)。
 設備点検は専門家団体へ相談し、業者を紹介してもらったり、植木剪定はシルバー人材センターへ委託したりと、いろいろな経験を重ね、今日まで何とか自主管理が続けられてきたのです。そうしたなかで、マンション管理は多岐にわたり繁忙であり、自主管理となると役員に過剰な負担がかかり過ぎ、また役柄でも不公平感が生じるなどさまざまな問題が出てきます。しかも、居住者も建物と共に高齢化し、自主管理するだけのエネルギーのある役員を確保することが難しくなってきた  こうした経緯から再び委託管理へと移行することになったのです。
 管理業者の選定については、自主管理の経験や大規模修繕工事のとき専門家団体で指導してもらった知識をヒントにして、単に見積額の高い安いでなく、マンションの実情、居住者の意向に合うことをポイントに置いています。
 ところでこの管理組合では自主管理期間中に理事会内容やお知らせを中心とした広報紙「ふぁみりぃしんぶん」を、発行。平成5年当初は手書きだったものが、66号を迎える今日では、プロ顔負けのカラー広報紙に発展しています。また、大規模修繕工事期間中には、修繕委員会発行の広報紙「マンション元気村」も発行。建物も居住者も元気で暮らそうというわけで、公募によるこのネーミングに決まったそうですが、両紙とも、情報の公開、共有面で、自主管理の運営に大きな役割を果たしてきました。
 その大規模修繕工事の共用部分リフォームで、マンションの高齢化を先取りしたスロープ改修が、(財)日本住宅リフォームセンター主催のリフォームコンクールで見事、尚明賞(しょうあきらしょう)を受賞。この修繕の提唱者は広報紙の提唱者でもある居住者の一人で、交通事故で故人になられましたが、この方の先見性は高齢化の勝山東ガーデンハイツで、今、大いに役立っています。そして、この秋に自主管理から委託管理に移行すべく臨時総会開催を準備中ですが、その経験は、居住者各自にマンション管理の大切さを実感させ、いくつもの大きな成果を生み出したのです。
マンション概要 所在地:大阪市生野区巽北4-13-23
建築年 昭和56年(1981年) 構造・規模 56戸(住居53戸、店舗3戸)
棟数・戸数 7棟・980戸 戸当たり面積 平均約61平方メートル/戸
駐車場台数 19台 駐輪場台数 自転車102台(高齢者14、子供9、大人79)バイク8台
付属施設 管理員室 賃貸戸数 住居2戸、店舗1戸
役員体制
役員任期 1年(ただし再任は妨げない) 役員数 7人
選出方法 各階推薦 理事会開催回数 2回/月
総会開催回数 1回/年

バルコニーに区分所有者が設置したパラボラアンテナの撤去請求が認められた事例/東京地方裁判所 平成3年12月26日判決

東京地方裁判所 平成3年12月26日判決

事案

 本件マンションは昭和57年1月に建設された鉄筋コンクリート造3階建て(25室)であったところ、区分所有者の1人である被告は、昭和63年6月、費用62,000円を支出して自室の南側に付属するバルコニー(規約上、共用部分とされ各区分所有者に専用使用が許されている)の壁に直径約47センチの衛星放送受信用のパラボラアンテナ1基を取り付けた。その方法は、アンテナの支持部をバルコニーのコンクリート壁にその両面から挟み付けるようにして取り付け、これをボルトで締め付けて固定させるというものであり、壁に穴を開けるようなことはしていない。本件管理組合は、平成元年2月の総会で、管理組合が衛星放送受信用の共同パラボラアンテナの設置をした場合には、既に個人でアンテナを設置している者は自己の費用でこれを撤去する旨の決議を行い、続いて同年11月の総会で、1 共同アンテナ工事に平成2年2月に着工すること、 2工事費用については全25戸が均等に負担することを決議した。そして、平成2年2月25日、本件マンション屋上に共同アンテナが完成し、これ以降、各居住者は共同アンテナで衛星放送を受信することができるようになった。しかしながら、被告は共同アンテナよりも個別アンテナの方が画質が鮮明であるなどとして、個別アンテナの撤去、共同アンテナ設置費用分担金の支払のいずれも拒否したため、管理者がこれを求めて提訴した。
【問題点】
(1)個別アンテナの設置は規約上の専用使用の方法(バルコニーとしての通常の用法)の範囲内か
(2)既に個別アンテナが設置された後に撤去を求める総会決議の効力

判決の要旨

 判決は問題点(1)について、被告が個別アンテナを設置した昭和63年6月時点においては、1.本件マンションには共同アンテナが設置されておらず、2.被告の取り付けたアンテナは特にマンションの美観を害するものとも思われず、取付方法も壁に穴を開けるものではないこと、3.本件マンションではエアコン室外機はバルコニーに設置してよいとされていることなどから、「バルコニーの通常の用法」の範囲内であると判断したが、「バルコニーとしての通常の用法」であるか否かの判断は固定的なものではなく、その後の本件マンションのもつ条件の変化等によっても変わり得るものであるところ、1.平成2年2月25日以降は共同アンテナで衛星放送の受信可能となったこと、2.そもそも本件マンションのバルコニーは共用部分であって、被告はただ専用使用を許されているに過ぎないことなどから、同日以降は「バルコニーとしての通常の用法」とは言えなくなったと判断し、被告に個別アンテナの撤去と共同アンテナ分担金の支払を命じた。また、判決は問題点(2)について、仮に被告の主張するとおり個別アンテナ設置が「バルコニーの通常の用法」に含まれると仮定したとしても、総会における個別アンテナ撤去決議は、1.バルコニーが共用部分であること、2.共同アンテナで既に受信可能となっていること、3 .被告が個別アンテナ設置に要した費用も62,000円と多額でないこと、4.共同アンテナ設置から既に2年近くが経過していることなどの事情を考慮すれば、個別アンテナ撤去を求める総会決議は不当・不合理なものとは言えない、と判断した。
【判決の意味】
 近時、区分所有者がバルコニーなどに物置等を設置し、管理組合の撤去要求に従わないといったトラブルが多く見られます。これは、各区分所有者からすれば、「各室に隣接するバルコニーをどのように使おうと自由だ」という感覚をどうしても持ってしまいがちであることから来るトラブルと思われます。この点、マンションのバルコニーは果たして専有部分であるのか、共用部分であるのか学説上対立がありますが、バルコニーの多くは取り外し可能な仕切り板で遮断されているに過ぎず、火災などの緊急の際の避難通路とされ、通常は共用部分と考えられます。そうすると、各区分所有者は、共用部分の専用使用権としてバルコニーを利用することとなり、1.避難路としての利用を妨げたり、2.建物の美観を損なうような使用方法は行い得ないこととなります。本件判決の事例では、バルコニーにパラボラアンテナを設置したというものであり、設置方法・設置時期・アンテナの大きさなどから、規約で定められた「バルコニーの通常の用法」の範囲内か否か、かなり微妙な事案ですが、後に共同アンテナの設置がなされたことや、バルコニーの共用部分性を考慮して被告に撤去を命じており、参考になる事例です。

 

ひとことコメント
「管理組合の対応」

 1. 規約で共用部分の範囲を明確にしておくこと、2 .同じく共用部分の専用使用の方法を明確にしておくことがまず大切なことですが、3. バルコニーなど共用部分とされるところに物置などを設置する区分所有者がいることが分かった場合には、できるだけ早く対応しその撤去を求めていくことが重要です。というのも、マンションによっては一定期間放置してしまったために、多くの区分所有者が同様の物置などを設置してしまう事態に発展しているところもあり、そうなってしまえば現状に戻すことが困難となり、結果的に避難通路の確保がされないなど深刻な問題に発展しかねないからです。どうしても撤去勧告などに従わない区分所有者がいるときは、本件判例のように総会決議・提訴なども考慮すべきと思われます。

NO.6 此花区・メゾン春日出管理組合

閉鎖的だった管理組合運営を
"情報公開"で18年目に大刷新!!

 此花区春日出の住宅街にあるメゾン春日出では、現在、管理運営の大刷新が行われています。きっかけは、大組織の職場のなかで、機関紙など広報の大切さを身をもって経験された金高昭彦さんが昨年5月、理事長に就任されたことからでした。その活動について詳しくお伺いしました。

● 抽選で三役決定など理事会運営も形式的だった

 昭和58年に建設されたメゾン春日出は、室内に柱や梁の出っ張りがなく、スペースが有効に使える壁式構造。しかも低層で2棟建て(計91戸)、公団住宅と同様、住戸を左右に振り分けた階段室タイプなので各々の独立性が高く、全室採光という恵まれたプランぞろいで、建設当時から評判のマンションでした。反面、お知らせや報告などの掲示や配布物は1か所でなく、各階段ブロックごとに必要という手間もあります。まもなく専用の大型掲示板が設置されますが、こうした改善策が実施されるまでには、組合活動ともどもかなりの紆余曲折がありました。  同年春から入居が始まったこのマンションの管理運営は、当初から決まっていた管理会社に全面委託していました。理事会の運営については役員を、形式的に各階段ブロックから順番に選出し、13人体制で1年交代という形で進められてきました。理事長、副理事長、会計の三役は、10人の中から抽選で決定するというスタイルで、入居者間やマンション自体に特に問題が生じるということもありませんでした。
 しかし、平成10年4月に大規模修繕工事を実施したあたりから、管理会社の運営方法や金銭面での見直しが始まりました。その先べんをつけたのが、ちょうどその年から理事に就任した金高さんでした。38年もの長きにわたって大きな組織に所属していた金高さんは、マンションもひとつの組織、入居者の一人ひとりがもう少し自分たちの住むマンションのことを知り、管理費や修繕積立金をもっと有効に使うべきだという考えから、報告書・預金通帳の点検や入居者への広報の必要性を痛感したのです。そこで金高さんは昨年5月、ついに理事長に立候補、総会の総意で選任されました。

● 管理会社の入れ替えなど大ナタも

 ただ、18年間も“全面委託”という形で管理会社に任せきりになっていた体制を、入居者主体の組織にするには簡単ではありませんでした。それが徐々に理事さんたちの協力もあり、ついに今年2月に新しい管理会社と契約し、協同でマンション内のコミュニケーションがとれる体制を作りつつあります。具体的には、理事会役員の増員や三役の抽選制の廃止を行い、また、今後情報紙(機関紙)の定期発行、拡声器の設置、消防設備・備品の充実、駐車場・自転車置場の整備やアプローチにアーチ式の門の設置を予定しています。
 集会室(管理員室共)も機能的に大改造されました。広く明るくなった部屋を、理事会の集会だけでなく、子供たちの読書する場、またお年寄りの憩いの場として開放する計画もあります。
 メゾン春日出では、金高さんの地道な努力により、18年の歳月を超え、今、やっと“マンション管理の大切さ”が理事さんや入居者のみなさんにも理解され出しているのです。
マンション概要 所在地:大阪市此花区春日出中1丁目
1番館 2番館
建築年 昭和58年4月(1983年)
構造・規模 鉄筋コンクリート造
5階建、一部4階建 5階建、一部3・4階建
戸数 44戸 47戸
駐車場台数 8台 12台
駐輪場台数 バイク9台、自転車110台 バイク12台、自転車120台
付属施設  集会室・管理人室
役員体制
役員任期 1年(ただし再任は妨げない) 役員数 13名(うち3名は留任理事)
選出方法 各階段ブロックから順番により推選、三役は従来までは抽選 理事会開催回数 理事会は毎月1回で12回/年。
総会開催回数 総会は1回/年。ただし必要があれば臨時総会を開催する。

管理費の未納者を公表する立て看板の設置/東京地方裁判所 平成11年12月24日判決

東京地方裁判所平成11年12月24日判決(判例時報1712-159)

事案

 別荘地の設備管理のために設置された町会(法的には団地管理組合にあたる)の会長が、管理費の長期滞納者に対し、「管理費長期滞納者一覧表」としてその地区番、氏名、管理費と未納開始月及び滞納期間を立看板を設置して公表したところ、同会長に対し、同人から立看板により名誉を毀損されたとして立看板の撤去と損害賠償を請求した事例。

判決の要旨

 立看板の設置に至る経緯(管理費滞納者に対しては毎月請求書が送付され滞納額等が通知されていたこと、総会において出席者から長期滞納者に対する非難がなされ滞納者に対しては氏名発表も含め徹底追及するとの緊急動議が出され、その取扱を役員会に一任することが可決されたこと、役員会は会則の規定の適用により3年以上の滞納者につき会員サービス停止を決定し、該当者に対しサービスの停止と滞納者の氏名公表ならびに支払意思があれば公表は中止することを通知したが、管理費の納入入や支払の意思ある旨の連絡はなかったこと等)、その文言、記載内容(単に管理費の滞納の事実及びその滞納期間等を摘示したもので、その内容は虚偽でないこと)、設置状況、設置の動機、目的(管理費を支払っている会員との公平を図るべく、サービス停止を関係者に知らせ、ゴミステーションの利用等町会の提供するサービスの利用をさせないようにするため、立看板の大半をゴミステーション付近に設置したものであり、公表という措置そのものがもつ制裁的効果はあるとしても、ことさら不当な目的を持って設置したものといえない)、設置する際に採られた手続(前記のとおり、また、町会は管理費を一部でも支払えば氏名を削除するという対応をとっていた)などに照らし、同会長の立看板の設置行為は、管理費未納会員に対する措置としてやや穏当を欠くきらいがないではないが、別荘地の管理のために必要な管理費の支払いを長期間怠る滞納者に対し管理費の支払いを促す正当な管理行為としての範囲を著しく逸脱したとはいえないとして、同会長の行為は不法行為を構成しないとして、請求を棄却した。

 

ひとことコメント

 長期管理費滞納者に対する制裁として、氏名を公表したいという相談がよくあります。
 本件は、管理費滞納者の一覧表を立看板にして掲示したという事案ですが、判決は、本件についてのかなり特別な事情を考慮して、不法行為にあたらないとしました。
 しかし、氏名公表を無条件に認めているものではなく、「管理費未納会員に対する措置としてやや穏当を欠くきらいがないではない」としており、公表内容、方法、事前手続いかんによっては、また、専ら制裁のみを目的とする場合などには不法行為と認められる場合もあり得ると思います。(公表の内容が事実に反しないというだけで免責されるものではありません)

NO.5 阿倍野区・アルス帝塚山管理組合

居住者の希望を生かし、町並みに
しっくりと調和したマンションに変身

 今回訪問したアルス帝塚山の前身は、昭和42年に入居が始まった大阪市住宅供給公社の分譲マンションで、以前は68戸の住戸すべてが55平方メートルの4DKでした。それが、平成9年の建替えで住戸数は90戸に増え、住戸面積も約60~100平方メートと広くなり、居住者の希望を十分に取り入れた16タイプものバリエーションのあるマンションに変身したのです。その経緯や工夫ぶりをお伺いしました。

1.建替えのきっかけ

 1989年(平成元年)に理事長から「今年は、大規模修繕と建替えについて検討しよう」と提案があり、当時8人だった役員は、とりあえず建替えに「賛成」か「反対」か「その他」といった簡単なアンケートを実施。その結果、6〜7割が賛成だった。当時、役員の一人だった山口久美子さんは、学生時代やコーポラティブハウス建設に携わった時の経験を生かし、2回目のアンケートでは建替えを検討するのにどういう進め方をしたらよいかを聞くことにした。具体的には、自分たちで考えるか、ゼネコンに依頼するか、第三者のコーディネーターに相談するかの選択に対し、コーディネーターを支持する回答が大勢を占めた。
 そこで、近隣のコンサルタント事務所にアドバイスをもらいながら、まず今の生活で居住者が何に困っており、新しい住居に何を求めているかをアンケートにより、各々のライフスタイルを聞き出した。その結果、80代の一人暮らしの方から20代の世帯まであったが、ボリュームゾーンは当初からの入居者である40〜50歳代であることが分かった。
 実際の運営は、当初「建替え懇談会」として発足。男性ばかり5〜6人の理事長経験者などで構成されていた。その後、委員長以外は全員女性の10人体制の「建替え研究会」を組織し、事業の進捗に合わせ「建替え準備会」、「建替え委員会」と変更し、建替え委員会は月1回以上開催した。建替えに関しては、当初から5人程度の反対者があったが、そのつど建替え委員やコンサルタントが個別に話をし、理解を求めて事業を進めて行った。こうした活発な活動ができたのは、メンバーの大半が専業主婦で時間調整もしやすかったことと、何よりもより良い快適な住空間を求めていたことが考えられる。

2.建替え決定後の取り組み

 事業手法は、当初何人かの役員の間で話し合っていた東京の建替え事例を参考にして等価交換方式を採用し、増床部分は分譲価格で購入することとした。業者選定については、アンケート結果をベースにラフプランを作成し、居住者と共に事業を進めてもらう建替え事業者をコンペ方式により選定することになり、建設会社50社程度に案内を出した。しかし当時は建替えの事例も少なく、採算性の問題や建替えに対する個別対応の困難さからか、結果的に2社の応募となった。A社は全住戸同じ広さで同タイプのプラン、B社からは広さもさまざまで16タイプのプランをもつものが提示された。間取りのタイプが同じであれば「他の住居との比較による住民間のクレームが出なくてよい」ということで賛成者もいたが、全体としては、後者を選択することとなった。
 部屋決めについては、まず各戸の評価を数字で表し、基本資料とした。従前の「南面3室」へのこだわりが強かったが、新しいプランでは、住戸配置が“コの字型”になるため、東向きや西向きの住戸ができるので、各々の住戸メリットを示しながら事前に部屋の位置の希望を聞き、協議を進めた。 こうした努力が実を結び、同一の部屋に複数希望があったところも、実際には各々が調整して第2希望の範囲でうまく収まった。
 個々の間取りの要望や設備内容については、業者が設置した設計相談会で相談を受け、できる限り希望を聞いて対応した。内装については、時間の関係もあり、3タイプのメニューから選ぶ方式を取った。「設備面等で付けておいた方がよいかどうか迷った時は、付けておいた方がよいと思う」という意見は、建替え後の生活体験からの貴重なアドバイスだ。
 こうした経緯を経て、最終的に一般分譲したのは20戸。バブル以降の分譲となったが、当初に大半が売れ、数戸が半年から1年で完売した。

3.共用部分のプランニング

 建替えの場合は、共用部分のプランニングも全員で考えなければならない。そこで、建替え前に困っていたことや新しいプランへの希望を出し合った中で、下記のことを決定した。
駐車場の増設
事前のアンケートにより必要台数を調べ、それにプラスして分譲戸数分(20戸)の台数を確保した。
駐輪場を新設
従来は階段下に各自で駐輪していたが、自転車台数の増加により、1階は平置き、地階に機械2段式を設置した。
集会所を広くする
総会も開催できる広さとし、貸し教室や葬儀もできるようにした。
トランクルームを新設
地階に確保し、希望者に使用料を取り、貸し出すこととした。
片廊下式とスキップフロア式を併用
共用廊下や屋外階段については、片廊下式だけではなく、プライバシーを確保するスキップフロア式も案として示され、結果、その両案を取り入れるプランとした。しかし、スキップフロアの住戸は、エレベーター停止階の上下階への移動は階段となり、今後、高齢化に伴う問題が心配される。

4.仮住居への移転問題、近隣対策

 建替えで大変気になる仮住居への移転については、建替え委員会でマンション近くの不動産店で聞くなどして空家情報を提供したが、大半は自分で転居先を捜されたとか。また転居の便宜として、委員会メンバーが引っ越し業者と値引き交渉をしたり、教育面では子供の転校問題について区役所や学校と協議するなど、精力的な活動がなされた。
 解体工事を95年10月から着手したが、近隣対策については、それ以前に、建替え委員会メンバーが近所を訪問し、建替えに対する理解を求めてまわった。また町会や近くにある神社などにも、老朽マンションの建替えを「まちづくり」の一環として、また町内の問題として理解をしてもらい、協力してもらうように働きかけた。その際、近隣から出された駐車場やごみ置場の仕様や位置の変更などについては、要望どおりに実施している。仮住まい期間は95年8月〜97年2月の約1年半。仮住まい費用は各自負担とした。建替え事業中は「建替え委員会ニュース」を平均月1回発行し、行政手続きや工事の進行状況、今後のスケジュールなどについてお知らせし、情報の共有化に努めた。

5.建替えの成果とその後の生活

 当時は、業者も初めてのマンション建替え事業であり、事業途中に、ペット飼育問題やその他予期せぬ諸問題もあり、暗礁に乗りあげることもあった。また居住者側でも、中には、役員が情報を独占し、いい場所の住戸を押さえるのではないかとか、いい条件で入れるのではないかといった憶測をする向きもあったようだが、委員会への参加をオープンにし、情報についてもすべて公開するなど、ガラス張りの運営をする中で、そのような憶測がなされない状況を作り出したという。「情報公開は何よりも大切ですね」と、山口さんと一緒にこの事業に携わってきた津田香子さんの言葉には重みがあった。
 そして、この一大事業を何とかやり遂げることができたのは、結果的には、居住者の誰もが「この町、この場所に住み続けたい」という強い思いがあったからだと言う。さらに業者関係者から、その後に起きた阪神淡路大震災の被災マンション建替えに今回のノウハウが大変参考になったと、うれしい報告もあった。
 建替え後の生活では、まず管理面での変更があった。従前は、当初委託管理だったのを自主管理に切り替えて運営してきたが、役員に大きな負担となっていたので、建替え後は、全面委託管理とした。管理員は常駐で9:30〜16:30の勤務で、日曜、月曜日は休み。管理費は7,900円〜13,500円で、修繕積立金は、管理費とほぼ同額となっている。
経験からのアドバイス
●情報はすべてオープンにし、ガラス張りにする。
●決まった事はニュースで知らせ、記録として残す。
●近隣には早めに説明し、誠意をもって対処する。
●事業の賛否にも影響する事態となったペット飼育の問題には、規約第15条で禁止する案に対し「飼い主の会」を中心に約2か月間協議し、「一代限りの飼育とする」という現在の規約内容としてまとめることとなったが、建替え事業には、こうした問題もついてまわることを心得ておくとよい。
マンション概要 所在地:大阪市阿倍野区帝塚山1-14-26
建替え前 建替え後
マンション名 帝塚山コーポ アルス帝塚山
建築年 昭和42年(1967年) 平成9年(1997年)
構造・規模 RC造・4階建・2棟 RC造・5階建
戸数 68戸 90戸
1戸当たり面積 4DK 55平方メートル 3LDK〜4LDK 56.2平方メートル〜98.28平方メートル
駐車場台数 17台 機械式54台
駐輪場台数 - 自転車105台、バイク9台
付属施設 集会所 集会所・管理員室
付属設備 - オートロック、監視カメラ、CATV