「マンションらいふあっぷ基礎講座&相談会」報告

らいふあっぷ基礎講座&相談会
円滑な管理組合運営と適切な維持管理による快適なマンションライフをめざし 会場の様子 マンションライフにおいて発生する様々なトラブルを未然に防ぐためのノウハウを身につけることはとても大切です。建築や法律の専門家がそれぞれの立場から分かりやすく説明しました。

ご案内
10月25日・11月9日・16日開催「らいふあっぷ基礎講座&相談会」のビデオ視聴をしていただけます。
<場所> 大阪市立住まい情報センター4階 住情報プラザ内
<お問い合わせ>TEL:06-4801-8232
*詳しくはこちらをご覧ください。
  [ セミナービデオ視聴のご案内] ※Adobe Readerが必要です。

11月9日
管理組合が抱える様々な問題とコミュニティ、管理会社との関わり方のポイント、不動産価値を下げない共用部分の維持管理などをテーマに開催しました。 管理会社との上手な関わり方について

●委託契約内容の確認
 管理会社との管理委託契約内容についてどこに注意したらいいか、管理会社に委託したら、まず契約書と仕様書をよく読んでいただきたい。何を委託しているのか、細かいことは仕様書に書いています。契約書、仕様書の内容で不明な点や疑問な点があれば、管理会社にどんどん質問して確認をしてください。基本的に、仕様書に書いていないことを管理会社はしません。管理会社と委託契約を結んだら、管理会社が何でもしてくれると思ったら大間違いです。これをまず頭に置いていただく必要があると思います。具体的にどこまでやってくれるかをきちっと聞いて、お互いの認識を一致させる必要があります。そうでないと、やってくれる「はず」で終わります。
●管理業者の業務遂行実態の確認
 実際に仕事が始まったら、これ、どうしてやっていないんだろうなど疑問に思うことがあるかもしれません。そのような時は、まず契約書、仕様書を読んで、そこに書いてあるのかどうかを確認していただきたい。書いてなかったらどうするかということですが、別途お金を出してやってもらうのか、管理会社と交渉して無料でやってもらうのか、そういう対応が必要になってきます。
●大切な重要事項説明
 委託契約期間が終わる直前になりますと、管理会社の方から「次の契約もぜひお願いしたいので、重要事項についてお話させていただきたい」という話がくると思います。重要事項の説明については、法律上11項目は必ず説明をしなくてはいけないことになっています。もし従前と同一の条件であれば、管理会社は管理組合の理事長に説明した後、そのコピーを全戸に配布することになっています。ところが従前と違い管理組合にとって不利益な条件の場合、管理会社は、理事長だけに説明しても駄目で、説明会を開催して区分所有者全員に説明することになっています。
●トラブルが発生した場合は
 万が一、管理会社とトラブルが発生した場合には、管理組合として管理会社にまず善処を求めます。それでも駄目であれば管理会社の所属する団体である、(社)高層住宅管理業協会に相談することもできます。

マンションのコミュニティについて

●管理組合が抱える問題 いま管理組合がどんな問題を抱えているのか。昨年実 施したアンケート調査では、やはり役員のなり手不足という のが一番です。以下、無関心者の増加、ルールを守らない 居住者の増加、管理費等滞納者の増加、積立金不足と続 いています。これらの問題に共通するのは、自分はマンショ ンコミュニティの一員であるという帰属意識の希薄さです。 ●マンションのコミュニティとは
 マンションのコミュニティとは、同じマンションという「地域」を主体としたコミュニティであり、同時にマンションを維持管理運営していくんだという共通の目的をもっているわけです。でも、だからといって興味や価値観は必ずしも一緒じゃない。そこをどう調整していくかが重要だと思います。
●コミュニティの現状
 地域コミュニティから孤立する人がマンションにも2割くらいはいます。とくに一人暮らしの男性や、高齢になってから入居された人は孤立する確率が高いため、管理組合として、さりげなく見守ることも今後は必要になるんじゃないかなと思います。安心して暮らせるコミュニティはすべての基本ですから。
 地域コミュニティが希薄化していると言われますが、なぜ希薄化したか。それはやはり深い関係を望まない人が増えているからです。でも実は日常的には深いつきあいを望まないが、困ったときは助け合いたいという人の数は非常に多いんです。この辺にマンションでコミュニティを考えるキーポイントがあるんじゃないかなと思います。
●コミュニティを育てる仕掛けを
 声かけが得意な人は、近隣にお年寄りがいたら、声をかけてあげてはどうでしょうか。多少のおせっかいも時には必要です。また、年1回くらいは、同じ階の人が集まって話し合いにより役員を決めたり、回覧板を回すなど身近な人が顔を合わせる仕組みを作っていくことも有効だと思います。
●楽しい管理組合活動を
 管理組合活動が、責任が重く、楽しくなく、何かと責められるのでは、人材が集まってきません。やはり楽しそうにやっているところには人材が集まってきますので、前向きに楽しいことに取り組んでもらえればと思います。そのためには、専門家を積極的に利用して理事さんの負担を軽くすることも必要ですし、管理員さん、清掃員さんなどマンションの管理に関わるみんなが気持ちよくマンションのために働いてくれるような環境整備を進めることも必要です。
●大規模修繕工事もみんなで楽しむ
 マンションのコミュニティづくりには、自分たちの住まいはドアの中だけでなく、敷地も含めた全体だという意識を持って、これらを快適に美しくすることにみんなで取り組むことが有効だと思います。また、大規模修繕工事は管理組合にとって一大イベントですから、できるだけ前向きに取り組んで、コミュニティづくりに役立てるということも考えられます。
 マンションのコミュニティは、昔のようにお互いが濃密に行き来するようなコミュニティに戻ろうということではなくて、個人の生活に踏み込まないけど、いざとなったら助け合えるようなコミュニティをめざし、自分たちの住まいを心地よくしていきましょう、という気持ちを共有することから始めたらうまくいくのではないかと思います。

共用部分の不動産価値を保つために

●不動産の価格に関する専門家
 不動産鑑定士は、不動産の価格に関する専門家のことで、経済価値を適正に判断するのが仕事です。皆様がお住まいのマンションですが、鑑定評価はどういうふうにしていくかといいますと、「積算価格、比準価格及び収益価格を関連づけて決定するものとする」とされております。我々の専門用語なのでわかりにくいと思いますが、不動産鑑定士がよりどころとする基準です。鑑定評価と共用部分の維持管理の関係についてお話したいと思います。
●鑑定評価の基準でも維持管理をチェック
 不動産鑑定基準には建物の維持管理の状態、そのほか、長期修繕計画の有無及び長期修繕計画がある場合は、それがいいものか、悪いものか、また修繕積立金の額は適切なのかが、評価に必要な要因として記載されています。また、一戸一戸を評価しますので、区分所有者が管理費を滞納しているかどうかも見ます。もちろんこれらの他にも、施工がいいかどうか、築年数、階数、間取り、位置関係、といった要素もあります。しかし、たくさんの要因の中で、維持管理の状態、それから長期修繕計画があるかないか、管理費が滞納されていないかどうか、ということも我々不動産鑑定士は見て、貨幣額をもって評価を行っています。
●共用部分の維持管理が評価額に影響します
 つまり、大事だと言われている共用部分の維持管理ですが、評価する者にとっては、評価額に関わってくるということです。だからこそ、ぞんざいにするのではなく、共用部分の適切な維持管理をしなければならないということをお分かりいただきたいと思います。
●外部要因に左右されるが、ベストを尽くす
 ただし、現実の不動産市場においては、経済情勢、競合不動産価格、周辺状況など、さまざまな外部要因によってマンションの価値が左右されることが多いです。そのため、「きちんと維持管理して、お金をかけてきたのだから価値が維持されている」とは必ずしも言い切れません。しかし、その時代、その状況、その時、つねに物件に対してベストを尽くしておけば、ほかと比較するのではなく、あくまでも皆さんがお住まいのマンションというものについては、ベストな評価がもらえるのではないかと思っております。

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4. 建築・設備上の問題点

管理員住宅の活用方法について ~建築・設備編~
賃貸や売却して住居として使用する場合

 住居として使用する場合、「管理」用途と完全に切り離し、区画として独立させる必要があります。
 管理事務所と扉で繋がっている場合は、コンクリートブロック積み等で完全に塞ぎ、防火区画を構築する必要があります。
 電気、ガス、水道等の引き込みが共用部分扱いになっているケースは、共用部分と切りはなし、個別検針が可能なように改修する必要があります。共用部分と区別できない場合は管理上、子メーターを設け、管理組合が全て検針と集金業務を行う必要が生じます。
 各種警報副受信機やエレベータの通話装置が設置されている場合はシステムに影響が出ない方法で撤去または移設が必要になります。

集会所などに使用する場合

 集会所(会議室)に利用する場合は共用部分として使用するため、上記の制約が生じず適宜活用が可能です。

改修工事の際の注意

 住居や集会所等の用途にかかわらず、内装を改修する際、構造躯体の柱や梁、構造壁をけずったり撤去することは原則的に出来ません。またコンクリートの非構造壁でもけずったり撤去する場合は慎重に取扱い、建築士の構造チェックを受けましょう。
 内装仕上げについては、建物規模等により、建築基準法上や消防法上の内装制限の適用を受けている場合があります。その場合は、壁・天井を不燃材等で仕上げたり、またカーテンやカーペットは(※)難燃材料とする必要があります。


(※)難燃材料とは、通常の火災による火熱の加熱開始後5分間、不燃性能を有する材料として国土交通大臣が定めたものまたは認定を受けたもののこと。

用途変更の際の注意

 店舗や倉庫・駐車場など、マンション(共同住宅)とは別の用途に使用する場合、建築基準法上の用途変更確認申請が必要です(広さによっては緩和があります)。また、消防設備の取り扱いが変わる可能性もあるため、所轄の消防署に事前協議を行う等の配慮が必要です。具体的には専門家に相談しましょう。


一級建築士 今井俊夫

3. 税金上の問題点

法人税の納税義務者ですが、収益事業についてのみ課税されます

 マンションの管理組合は税法上「内国法人」である「人格のない社団」として法人税の納税義務者となります。ただし、人格のない社団についてはすべての事業に課税されるのではなく、収益事業についてのみ課税されることになります。また、管理組合が法人であった場合にも、公益法人等として法人税の納税義務者となり、収益事業についてのみ課税されます。収益事業とは33種類の決められた事業で継続して事業場を設けて営まれるものをいい、たとえば、共益費や組合費を集めて必要な事業を行うことは単に共通の費用を組合員が分担して負担することにすぎないため、非収益事業となり、法人税は課税されません。

1.管理員住宅を売却する場合

 管理員住宅を売却する準備として所有権の保存登記がされますが、区分所有者全員の共有とした場合には、その売却については、管理組合又は管理組合法人が申告納付するのではなく、各区分所有者がその持分に応じて土地・建物の譲渡所得の計算を行い、所得税の確定申告納付の要不要を判断することになります。また、管理組合法人の所有として売却した場合には、管理組合法人が各区分所有者から土地・建物の寄付を受けて売却したのと同じであり、売却代金と同額が課税所得となり法人税が課税されると考えられます。

2.管理員住宅を賃貸する場合

 管理員住宅を区分所有者以外の者に貸し付けて賃貸料収入を得る場合には、上述した収益事業となり、管理組合又は管理組合法人で法人税の申告納付が必要となります。この場合には、収益事業に係る収支、資産及び負債と収益事業以外の事業に係る収支、資産及び負債とを区分して経理し、収益事業に係る所得金額を計算しなければなりません。
 また、消費税について、居住用として貸し付けた場合には非課税ですが、事業用として貸し付けた場合には課税取引となりますので、課税売上げの合計が一事業年度で1千万円を超える規模になる場合は、申告納税義務が生じます。

3.他の用途へ変更し区分所有者で使用する場合

 上記以外に、トランクルーム、来客用ゲストルーム、第2集会室として区分所有者に賃貸し使用料を取る場合は、非収益事業であり、課税の対象となりません。
 収益事業として課税の対象となり、法人税が課税される場合には、地方税(都道府県民税及び市町村民税)の法人税割も課税され、収益事業を行うことで均等割の納税義務も発生します。いずれにしても、課税関係はケースバイケースであり、実際に実行するにあたっては、税理士か所轄税務署に相談することをお勧めします。


税理士 前川武政

2. 登記上の問題

管理員住宅の廃止と転用
ご質問の管理員住宅は規約による共用部分として登記されています

1.
その建物には、建物表題登記があり、建物表示登記として所在地番・家屋番号・種類・構造・床面積、規約設定により共用部分である旨の登記がなされていますが管理員住宅は規約による共有部分のため所有者の表示がありません。
2.
 通常、マンション分譲業者が専有部分を分譲していく場合その敷地の所有権を割合的に各専有部分に貼付けていきます。
 敷地権というのは専有部分と一体化している敷地利用権で登記があるものです。 
 土地については建物と一体化している敷地利用権があるということを公示するために敷地権たる旨の登記がなされています。
 敷地の表示は敷地権の目的たる土地の表示、区分した建物の表示、敷地権の表示として、所在地番、地目、地積、敷地権の種類、敷地権の割合が登記されています。
管理人室を売却する場合には

(1) 共用部分の廃止の規約変更をしなければなりません。規約変更は総会の特別決議により議決権の4分の3の賛成が必要です。
(2) 登記の添付書類として上記総会決議書(規約廃止証明書)を添付します。
1. 区分建物表示(表題部) 変更登記により共用部分の廃止
2. 所有権保存登記 所有者名義
3. 区分建物表示変更登記 管理員住宅から居宅に種類変更
4. 区分建物表示変更登記 敷地権の設定
以上1. 2. 3. 4登記手続きがいります。 
 もともと管理員住宅は共用利用でしたので所有権保存登記で所有者をだれにするかきめなければなりません。
 (イ)区分建物全員名義に?
 (ロ)理事長名義に?
 (ハ)管理組合で管理組合法人設立 登記し法人名義に?
 (イ)にした場合区分建物所有者の担保権者より追加担保設定登記を求めてきます。各区分建物所有者が担保権者との間で書類のやりとり等で相当な時間や手間、追加担保設定費用が必要となります。

売却する場合は権利証のほかに次の書類がいります

 (イ)の場合は全員の印鑑証明書と担保権者の抹消承諾書
 (ロ)の場合は理事長の印鑑証明書
 (ハ)の場合は法人の印鑑証明書
 総会の議事録 等
 いずれにしても区分所有者や担保権者の理解と協力がなければ不可能です。特に(イ)の場合は日数がかかりますし、一人でも協力が得られなければ売却はできません。また売買、賃貸するにしても税金等にも配慮する必要があります


司法書士 沖 健補

1. 法律上の問題

問題点1 ―売却する場合

名義人を誰にするかが問題です

 第三者(組合員を含む)に対して共用部分である管理員住宅を売却しようとすると、まずは管理規約のうち共用部分についての記載を変更することが必要になります。
 また、共用部分が変更になると、各区分所有者の敷地権の割合も変わるため、区分所有者全員について登記の変更手続が必要になります。また、実際に第三者に売却するに先立ち、当該売却部分(もと共用部分)について保存登記をすることも必要になってきます。
そして、これらの手続に先だって決めておかなければならないこととして、当該部分の名義人を誰にするか(売却の当事者を誰にするか)という点があります。
 この点、管理組合が管理組合法人になっていれば、同法人が名義人(所有者)として売買の当事者になり、売却代金の受領及び管理を行うことになるでしょうが、管理組合法人ではない場合には、問題はそう単純ではありません。その場合、共用部分は、区分所有法上、区分所有者全員の共有に属するものとされていることから、原則として、当該部分は組合員全員の共有名義にすべきことになると思われます。しかし、区分所有者全員の共有名義とした場合、共有物である以上、現実の売却手続においては、区分所有者全員の実印による押印、全員分の印鑑登録証明書などが必要になり、その手続があまりに煩雑になるという問題があります。他に、区分所有法上のいわゆる管理所有として、共用部分としたまま、当該部分を理事長など特定の者の名義にすることも可能ですが、その場合は、区分所有法上、処分行為にあたる売却をすることはできません。また、そもそも、共用部分のまま第三者に売却することができるのかという問題もあります。

問題点2 ―賃貸する場合

やはり、賃貸人を誰にするかが問題になります

 共用部分を賃貸する場合も、売却の場合について上記したのと同じように、賃貸契約の名義人すなわち賃貸人を誰にするかが問題になります。
 管理組合が管理組合法人になっている場合、同法人が名義人になれば問題ありません。この場合、賃料収入は当然、管理組合法人に帰属することになります。
 一方、管理組合が管理組合法人になっていない場合には、管理組合は法的には権利能力なき社団と扱われますので、賃貸人名義を管理組合としても賃料収入が管理組合に帰属することにはならず、法的には、全区分所有者に総有的に帰属していると考えるか、場合によっては、理事長個人に帰属すると考えられることになります。このような場合でも、管理組合として適切に賃貸収入の管理をしていれば、上記した管理組合法人の場合と特段の違いは生じないとも思われますが、やはり管理組合法人という法人格をもった主体が契約の当事者となる場合に比して、権利関係が不明確である点は否定できません。
 また、区分所有法にいうところの管理者による「管理所有」として、管理者(理事長)などが当該共用部分の「管理」の一環として賃貸することも可能でしょう。この場合、理事長等が「管理所有」することになるとはいえ、当該共用部分の所有権は依然として管理組合に帰属しますので、賃料収入は管理組合に帰属すると考えることになります。
 なお、区分所有建物の賃貸も建物の賃貸借ですから、借地借家法の適用を受けることになりますが、借地借家法は賃借人の保護に手厚い法律であり、定期建物賃貸借契約とするなど特段の定めをしておかなければ、賃貸借契約締結後は、賃借人に債務不履行がある場合など、もはや限定的な場合しか解除できなくなりますので(そのため、なかなか返してもらえない)、その点も十分に留意すべきでしょう。

問題点3 ―共用部分のまま その他の方法で活用する場合

最も簡便な方法ですが、留意点もあります

 以上の売買や賃貸借とは別に、共用部分としたまま、これを有効利用するという方法も考えられます。つまり、それまで管理員の住宅として使用してきた共用部分を別の用途として使用するという方法です。トランクルーム、来客用ゲストルーム、第二集会室などとして区分所有者全員のために使用するのであれば、共用部分であることに変更はありませんから、上記のような登記手続は必要ありませんし、名義人を誰にするかで悩む必要もありません。また、そこから何らかの収入が得られた場合には(売買や賃貸の場合に比して収益の額は小さいでしょうが)、その収入は共用部分からの収入として当然、管理組合に帰属することになります。
 したがって、共用部分としてその他の方法で活用するのが、最も簡便です。もっとも、この場合でも、管理規約で個々の共用部分の用途までが記載されている場合には、管理規約の変更手続が必要になってくることに留意する必要はあります。


弁護士 原 正和

マンションの定期報告制度について

建築物を安全に保つためには適切な維持管理が重要です。定期報告制度は、建築基準法第12条で定められている制度であり、特殊建築物等(※1)の所有者・管理者(※2)は、建築物や建築設備、昇降機などが適切に維持管理されているかを定期に有資格者に調査・検査させ、その結果を特定行政庁に報告することが義務付けられています。(概略については下記の表をご参照ください。)特殊建築物等定期調査については3年に1度(建築設備、昇降機などは1年に1度)の報告が義務付けられており、共同住宅については平成30年度が次回の報告年度となっています。平成20年4月1日に定期報告制度が改正され、定期調査項目、調査方法、判定基準が国土交通省告示に明記されるなど内容が厳格化され、報告内容も詳細化されています。定期報告を通じて日常の安全性をチェックし、未然に災害を防止するよう維持管理につなげてください。

名称対象となる条件頻度点検者点検設備等
特殊建築物等定期調査
(共同住宅の場合)
地上3階以上で1000m2を超えるもの又は、地上5階以上で500m2を超えるもの1回/3年1級、2級建築士、
特殊建築物等調査資格者
敷地、構造、
防火、避難など
建築設備定期検査(※3)非常用EVを設置するもの1回/1年1級、2級建築士、
建築設備検査資格者
換気設備、
排煙設備、
非常用照明装置
昇降機定期検査報告昇降機の有る建物1回/1年1級、2級建築士、
昇降機検査資格者
調速器試験、
非常止め試験、
油圧試験など
※1
特殊建築物とは、劇場・百貨店・マーケット・旅館・ホテル・病院・共同住宅・寄宿舎など不特定多数の人々が利用する建築物のこと。
※2
分譲マンションの場合、管理組合(代表者)が報告者となります。
※3
建築設備定期検査は非常用エレベーターが設置されている共同住宅で、住戸以外の共用部分に設置されている設備が対象となります。

不要になった管理員住宅の活用(1)(2)(3)(4)

Q
 管理員の勤務形態を住み込みから通勤に切り替えたために、管理員住宅が空きになりました。これの活用を検討しています。  総戸数57戸、築30年の分譲マンション。管理員住宅(約60m2)は共用部分として登記されています。これの活用方法のひとつとして、住宅として売却や賃貸をする場合には、どのような手続きが必要でしょうか?  また、その他の活用法はどのようなことが考えられますか? 集会室などは既にあります。
A
「メリットが期待できますが、
 法的・技術的な問題点もあります」

 空きスペースを有効活用することにより、管理組合やマンション住人にとってのメリットが期待できます。しかしながら、これらのスペースを新たに活用するためには、共用部分の変更や所有者を誰にするか、固定資産税などの負担、住戸等の新設と管理人室機能の更新など、法的、技術的に様々な課題があります。  この課題を、法律上の問題、登記上の問題、税金の問題、建築・設備上の問題の4回に分けて解説していきます。
1.法律上の問題
2.登記上の問題
3.税金の問題
4.建築・設備上の問題

分別されずに出されたごみから個人を特定して、 その個人に対して注意しても構わないか。

Q
分別ごみ回収が開始され半年が経過した今も分別せずにごみを出す人がいます。管理組合では、ごみを分別して出すように文書を配付したり、張り紙をするなど色々と周知活動を続けていますが、まだ分別されずに出されるごみがあります。
  分別されずに出されたごみは回収されないため、管理組合役員がごみ袋を開けて分別しています。ごみ袋の中から個人を特定できる書類などが出てくる場合もあるのですが、ごみ袋を開けて個人を特定し、その個人に対して注意しても問題はないのでしょうか。
A
分別されずに出されたごみが回収されないという問題は、管理組合にとって大きな問題であり、管理組合役員の方々が仕方なくごみ袋を開けて分別しているご苦労は大変なものであると思われます。
 しかし、ごみ袋を開けたときに個人を特定できる書類などが出てきた場合、その個人に対して注意したくなるかもしれませんが、ごみ袋を開けて個人を特定するという行為はプライバシー権の侵害になる恐れがあります。
 ごみといえども捨てた人は中を見てもいいということで出しているわけではなく、普段は分別しているのに、たまたま分別し忘れて出してしまった場合も考えられます。よって、管理組合役員が回収されなかったごみ袋を開けて分別すること自体は問題ありませんが、個人を特定して注意をするのは問題となります。
 「分別されずに出されたごみ袋は回収されません。そのため、役員がそのごみ袋を開けて分別作業をしています。大変困っていますので、ごみは分別して出してください。」といった文書を配付したり、張り紙をして、ごみは分別して出すように注意喚起することも一つの方法でしょう。
  マンションライフを快適で楽しく過ごすためには、居住者同士が良好な関係にあることが最も大切です。管理組合としては、個人を特定するのではなく、分別して出してくれるように地道な周知活動に力を入れるべきでしょう。

理事会への同居親族の代理出席について

Q
管理組合理事の資格について、標準管理規約では現に居住する組合員(区分所有者)のうちから総会で選出するとされている。
理事会への同居親族の代理出席については可能だろうか。
A
理事は当該個人への信頼のもと総会で選任されていますから、理事の業務を代理人が行うことはできません。よって、同居親族が理事の代理人として理事会に出席することはできません。
しかし、実際上の問題として、同居親族の代理出席を認めなければ、理事会の開催すら困難な場合も考えられ、同居の配偶者や親子に限り、代理出席を認める旨を管理規約に定めることも必要であると思われます。その場合は必ず総会の特別決議で規約を改正してから行わなければなりません。
また、代理出席が日常化するような場合は、管理組合役員の資格の見直しを検討することも考えられます。

<用語の解説>
標準管理規約・・・標準管理規約は管理組合が各マンションの実態に応じて、管理規約を制定、変更する際の参考として国土交通省が作成したものです。
<関連する法・制度>
●標準管理規約30条(組合員の資格)、35条(役員)、51条(理事会)、 53条(理事会の会議及び議事)コメント

専門委員会の設立は理事会決議でできるのか?

Q
規約改正の専門委員会を設立したいが理事会決議でできるのか。
A
 標準管理規約 第55条では「理事会は、その責任と範囲内において、専門委員会を設置し、特定の課題を調査又は検討させることができる。」とありますので設立そのものは理事会決議で可能でしょう。しかし標準管理規約コメントに、「専門委員会の検討対象が理事会の責任と権限を越える事項である場合や、理事会活動に認められている経費以上の費用が専門委員会の検討に必要となる場合、運営細則の制定が必要な場合等は、専門委員会の設置に総会の決議が必要となる。」と定められています。
 結論的には、専門委員会のメンバーを集めたり、その後の専門委員会の活動を考えた場合、総会に諮って、皆さんの了解を得ておく方が望ましいと思われます。 

<用語の解説>
標準管理規約、標準管理規約コメント・・・標準管理規約、標準管理規約コメントは管理組合が各マンションの実態に応じて、管理規約を制定、変更する際の参考として国土交通省が作成したものです。
<関連する法・制度>
●標準管理規約55条(専門委員会の設置)、55条(専門委員会の設置)コメント

管理会社との関係は?

Q
管理会社の業務を確認する方法は?
A
まず、管理委託契約書の内容を確認します。管理委託契約書には、委託業務に関する詳細が書かれた「業務仕様書」が付記されているのが通常です。実際の業務がその「業務仕様書」どおりに行われているかどうかを管理組合できちんと確認するようにしましょう。

<解説>
●管理会社との委託内容に関する調整は、区分所有者個人ではなく管理組合が行います。そのためには、管理組合が委託 内容をしっかり把握し、根拠となる契約について十分に把握しておくことが必要です。もし区分所有者それぞれが個人的に 交渉すると、管理会社とのトラブルの原因にもなります。
●管理組合は、定期的割合で居住者の意識調査を行い、居住者がどのような管理業務を望んでいるか、それが適正に行われる契約内容になっているかを見直すことも大切です。

Q
管理会社と良好な関係を築くには?
A
 まず、マンションの維持・管理の主体は管理組合であるということを区分所有者全員がしっかりと認識し、管理会社との役割分担を明確にすることが大切です。
 管理会社との関係がうまくいかなくなるケースとしては、役割分担が不明確なために行き違いや誤解が生じ、最初は小さかった亀裂が広がる例が多いようです。

<解説>
●「管理は管理会社がやってくれるもの」という大きな勘違いのもと、何でもかんでも管理会社に頼んだり、管理会社のせいにしていたのでは、良好な信頼関係は築けません。
●管理会社は専門的な知識や技術を備えた管理の専門家集団で、いくつものマンションの管理を手がけているのが一般的です。それだけにたくさんの情報や問題解決のノウハウを蓄積しており、管理組合としては、管理会社を単なる委託機関としてではなく、良きパートナー、良きアドバイザーとして活用していくことが理想と言えます。

専用使用権とは?

マンションの敷地や建物には「専有」「専用」「共有」「共用」の区別がありますが、今回はその中の「専用使用権」についてお話します。

Q
専用使用権とはどのようなことでしょうか?
A
共有敷地・共用部分の一部を特定の区分所有者が独占的に使用できる権利が、「専用使用権」です。
 たとえば、
1.共用部分とされているバルコニーやルーフバルコニーを そこに接続する住戸の居住者が独占的に利用するケース
2.共有敷地の駐車場や一階住戸の庭などを利用するケースなどに発生します。
1や2についてはあくまでも共有部分であるため、その利用については制限がつくことになり、有料となるケースが多いようです。マンションの維持管理をスムーズに行うために、専用使用権を認めた箇所については、管理規約で明記しておくことが望ましいでしょう。

<解説>
●専用使用権そのものに問題があるわけではありませんが、共有敷地の駐車場にこの権利を設定して分譲しているマンションでは、さまざまなトラブルが生じています。そこで建設省(現国土交通省)は昭和54年、「分譲業者が共有敷地等に専用使用権を設定してその使用料を得る等の例は、現在少なくなっているが、取引の形態としては好ましくないので、原則として、このような方法は避けること。」という通達を出しました。
●平成9年に改正された標準管理規約でも、バルコニーなどについては専用使用権を明記する(規約14条1項)一方で、駐車場についてはこの表現自体を取りやめています。
バルコニー等の専用使用権について標準管理規約では、次の様に明記されています。
第14条
区分所有者は、別表第4に掲げるバルコニー、玄関扉、窓枠、窓ガラス、一階に面する庭及び屋上テラス(以下この条、第21条第1項及び別表第4において「バルコニー等」という)について、同表に掲げるとおり、専用使用権を有することを承諾する。
2
一階に面する庭について専用使用権を有している者は、別に定めるところにより、管理組合に専用使用料を納入しなければならない。
3
区分所有者から専有部分の貸与を受けた者は、その区分所有者が専用使用権を有しているバルコニー等を使用することができる。
別表第4


《コメント》
1
バルコニー等については、専有部分と一体として取扱うのが妥当であるため、専用使用権について定めたものである。
2
工作物設置の禁止、外観変更の禁止等は、使用細則で物件ごとに言及するものとする。
3
バルコニー及び屋上テラスがすべての住戸に付属しているのではない場合には、別途専用使用料の徴収について規定することもできる。

理事会の運営

理事会をスムーズに運営するためのポイントに、管理組合の書類の扱いや記録の取り方があります。今回はこの問題をクローズアップしました。

Q
管理組合の書類や記録は何をどう残して管理すればいいか?
A
管理組合の書類のなかには、後日の証拠や記録のために保存が必要なものがあります。役員が毎年交代している管理組合も、少なくありません。新しい役員や区分所有者が、管理組合の状況を正確に知ることができるよう、日頃から整理し、保管しておかなければなりません。基本的な要点は以下のようなことです。
1. 保管する書類の基準をつくる
2.永久保存が必要な書類かどうかを検討する
3.保管場所をどこにするか
4.議決記録・金銭収支記録は最重要書類

<解説>
1.保管する書類の基準をつくる
 保存が必要な書類とそうでない書類を分類するための基準をつくります。また、保存する書類については、内容によって何年間保存するかを判断できるような基準もつくります。
2.永久保存が必要な書類かどうかを検討する
 保存書類の中でも、大規模修繕工事などの建物の維持保全のための工事記録は、とても大切です。細かいものもできる限り保存しておくと、次回の修繕計画のときに役立ちます。
 理事会、各種委員会、説明会、総会などの記録も永久保存が望ましいでしょう。将来訴訟になった場合、証拠書類となるような記録文書は特に注意が必要です。
3.保管場所をどこにするか
 文書保管のためのロッカーなどを用意し、管理員室などの共用部分に保存しましょう。理事長などの個人の住戸
内に保管するのはあまり好ましくありません。保管スペースがない場合は、管理会社と相談してみましょう。
4.議決記録・金銭収支記録は最重要書類
 理事の任期交替などの場合、何をどう引き継ぐかはそれぞれの管理組合の事情によって異なりますが、議決に関する文書、お金に関する文書は、管理組合にとっての最 重要書類であり、きちんと時間をかけてしっかりと引き継ぐようにしましょう。また工事保証書は、保管するだけでなく保証期間についても必ず引き継ぎの時に確認すべきです。

Q
理事会の議事録も総会の議事録と同じように残しておくべきか?
A
まず管理規約を調べてみてください。一般的には、標準管理規約第51条に準じて、理事会議事録の作成を義務づけているケースが多いはずです。そして、「議長(理事長)、書記、他の一名で記名押印し、組合員を限定して閲覧することができる」と定められているのが通常です。
総会議事録と違って、理事会議事録は法的に作成を義務づけられているものではありませんが、仮に管理規約に記載がなくても、大事な問題を話し合う理事会の内容は記録し、残しておくのが常識と言えるでしょう。

<解説>
●保管場所については、「建物内の見やすい場所に掲示しなければならない」と管理規約で規定しているマンションが多いようです。
●保存期間については、内容によって、たとえば区分所有 者を無期限に拘束することの根拠になる議事録なら永久保存扱いしなければいけないでしょうし、相当期間保存した後で廃棄してよいものもあるでしょう。
●組合員が理事会の議事録を見せて欲しいというのは当然 の権利。区分所有法で規定していないので保存していなくてもいいようなものですが、「議事録は残していない」となれば、理事会が本当に開かれているのか、真面目な 話し合いが行われているかなど、組合員が理事会への不信を募らせ、組合運営がぎくしゃくする可能性もあります。

<実例>
●しっかりとした管理組合では、「理事会だより」などを発行し、理事会で話し合われたことを組合員に報告しています。こうすることで理事会の意志が組合員に伝わりやすくなり、合意形成がしやすくなります。

総会の運営について〈上〉

総会運営のポイントをご紹介します。

Q
総会の招集はどのようにすればいいですか?
A
 管理組合の総会は、少なくても毎年1回開く管理者(一般的には理事長)が区分所有者全員に呼びかけて開催しますが、これは少なくとも集会日の1週間前に会議の主な事項を明示して通知しなければなりません。しかし昨今のように共働き家庭が増えたり、居住していない区分所有者がいる状況では、もっと早めに通知したほうが得策です。
 通知内容の主な事項としては、総会の日時・場所・議案の内容を明記します。この議案については、議案書の作成が必要ですが、同時に区分所有者全員から出欠の返事(欠席の場合は委任状)をもらい、返事が集まらないときは事前に督促をします。
 議案書の作成が間に合わない場合は、まず議題だけを前もって通知し、区分所有法(法35条)が定める1週間前までに議案書を提出してもいいでしょう。ただ、居住していない区分所有者らには、委任状を郵送してもらうことが多いので、開催の2週間前には議案書、委任状(代理人選任通知書)、議決権行使書、出欠確認書なども添えて通知しておくことです。
<ワンポイントアドバイス>
 総会を欠席する場合は、代理人を選び、その人に議決権を委任することになりますが、最初から委任状の代理人の欄に理事長や議長と記載されているケースが少なくありません。できればそのような書式は避け、代理人の資格を管理規約で定め、自由に選べるようにした方がいいでしょう。資格の例としては「家族ら組合員と同居する者」「他の組合員か、またはその同居人」「賃借人ら組合員の住戸を借り受けた者」などが考えられます。

Q
その“議決権”というのは、どういうものですか?
A
規約に別の定めがないかぎり、専有部分の床面積の割合による持ち分を「議決権」としています(法38条・14条)。区分所有法では、総会の決議はすべて区分所有者の数と議決権の両方の基準で行い、両方の基準で可決した場合のみ有効であるとしています(法39条1項)。それは、各戸の専有面積にかなりのばらつきがあったり、一人で複数住戸を所有していたり、逆に数人で一つの住戸を共有していたりで、区分所有者の数とそれぞれの共有持ち分の割合が一致していない場合、両方の基準で決議しないと公平性が保てないという考えに基づいているからです。

Q
ところで、総会の出席者が少ない場合はどのようにしたらいいですか?
A
 即効的な得策はありませんが、日常的に管理組合の業務や維持保全の現状について広報活動し、管理組合員としての意識を高めることです。また、自治会のような組織で居住者同士の親睦ができるような楽しい行事を管理組合活動と併せて行うといいでしょう。
 居住者間に親密なコミュニケーションがあると、会にも出席しやすくなるはずです。
(次回は総会議事録の作成や総会の設立要件および議事の決定方法などを取り上げます)

総会の運営について〈下〉

総会の議事の決定方法や議事録について紹介します。

Q
入居してずいぶん経つのに、まだ1回も総会が開かれないのですが・・・。
A
 区分所有法では、毎年1回以上管理組合の総会を招集しなければならない(区分所有法34条2項)〈以下「法」という〉とされており、1年以上も総会が開かれないとなれば違法になります。参考までに、標準管理規約第40条では「理事会は、通常総会を毎年1回、新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならない」となっています。それは、前年度の会計報告、業務報告を行い、新年度の予算案および業務計画案を決議しなければならないからです。
理事会に招集してもらうように呼びかけるか、区分所有者および議決権の各1/5以上の同意を集めれば、会議の目的を示して定例の総会以外に臨時総会の招集を請求することもできます(標準管理規約42条)。

Q
その招集は役員でなくてもできますか?
A
 原則として、区分所有者および議決権の各1/5以上の賛成があれば、管理者(一般的に理事長)に総会の招集を請求できます(法34条3項)。その請求から2週間以内に、管理者が4週間以内の開催予定日を指定して総会招集の通知を行わない場合、総会の招集を請求した区分所有者が総会を招集できます(法34条4項)。

Q
総会の成立要件および議事の決定方法は?
A
区分所有法では総会の成立要件については特に定められていませんが、標準管理規約45条では総議決権の半数を超える組合員の出席が総会成立の条件とされており、それに準じた内容が管理規約に盛り込まれているマンションが多いと思われます。なお、ここでいう総議決権の半数とは、書面や代理人による議決権の行使も出席とみなします。議事の決定方法は、基本的に区分所有者および議決権の各1/2以上の賛成で決定する「普通決議事項」と、区分所有者および議決権の各3/4以上の賛成が必要な「特別決議事項=下記参照=」があります。また、区分所有者全員の書面による合意は、総会の決議とみなされます(法45条)。

<特別決議事項とは>
● 区分所有者および議決権の各3/4以上の賛成による特別決議を必要とする重要事項
  • 共用部分の変更(改良を目的とし、かつ著しく多額な費用を要しないものを除く)
  • 区分所有者の共有に属する敷地または付属施設の変更
  • 規約の設定・変更・廃止
  • 管理組合の法人化とその解散
  • 義務違反者(建物の保存に有害な行為、区分所有者の共同の利益に反する行為をした者)に対する専有部分の使用禁止請求
  • 義務違反者に対する区分所有権と敷地利用権の競売請求
  • 義務違反者の占有者に対する使用差し止めまたは契約解除および引き渡し請求
  • 建物価格の1/2を超える部分が滅失した場合(大規模滅失)の共用部分の復旧工事
  • 団地内の区分所有建物について団地の規約を定めることについの各棟の承認
上記以外でも、必要があれば管理規約に定めることができます。
● 区分所有者および議決権の各3/4以上の賛成による特別決議を必要とする重要事項
  • 建て替え

Q
総会議事録はどのように作成したらいいのでしょう?
A
総会の議事については、議長が議事録を作成しなければなりません(法42条1項)。議事録には、議事の経過の要領(開会、議題、議案、討議内容、評決方法および閉会など)と、その結果(評決の結果)を記載します。そして、議長と総会に出席した組合員2名が、その記載内容に間違いや抜けがないかを確認し、署名押印を行います(法42条2項・規約48条2項)。もし議事録を作成しなかったり、記載すべき事項を記載していなかったり、また虚偽の記載を行っていた場合は、理事長や議長、理事などが10万円以下の罰金に処せられます(法69条3号)。ちなみに議長は、区分所有法41条で「集会においては、規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除いて、管理者又は集会を招集した区分所有者の一人が議長になる」と定めています。

”滞納”管理費・修繕積立金の督促・回収方法は?

Q
管理費や修繕積立金を滞納している方への督促手順を教えてください。
A
まずは管理委託契約にしたがって、管理会社が口頭やハガキなどによる督促を行います。それでも滞納金を支払わない場合は、管理組合役員が滞納者に滞納理由や支払い意思の確認を行います。支払う意思はあるが支払えない場合は、分割払いなどを協議する。支払い意思がない場合は、一般的に以下の手順で督促・回収を行うことになります。

1.管理組合の名前で内容証明郵便を発送する
 これは「管理費等を支払いなさい」という催告を意味するもの。文書の作成は、管理会社に依頼してもいいでしょう。切手代は、1,000円強ぐらい。理事長の名前はあえて出す必要はありません。

2.代理人の弁護士名で内容証明郵便を発送する
 1でダメなら、弁護士に依頼することになります。この段階で回収が可能になるケースはかなり多いようです。弁護士に依頼した場合の内容証明郵便1通の発送手数料は、報酬基準では5万円が基本です。(実際は、請求する額に応じて増減されます。)ただし滞納者が支払いに応じず、弁護士との間で交渉が始まると、追加費用が発生します。この費用については、あらかじめ管理組合として、よく話し合っておくことが大切です。

3.簡易裁判所に支払い督促の申し立てをする
 申し立ては、滞納者の重処置を管轄する簡易裁判所で行います。このメリットは、裁判所に納める印紙代が低額(3,000円くらい)であることと、書類も弁護士に依頼しなくても、窓口の指示に従えば簡単に作成することができることです。一方デメリットは、債務者からも簡単に異義が出せること。異義が出されれば、その簡易裁判所に訴訟を提起しなければ、それ以上事態は進展しません。

4.簡易裁判所で少額訴訟を起こす
 60万円以下の金額であれば、簡易裁判所で即日判決の手続きが取れるこの方法の方が3より有効とも言えます。諸状は、簡易裁判所の窓口にある定型用紙に書き込むだけで簡単に作成できます。その後、審理の期日に理事長と、証人となる管理会社の担当者か会計担当の理事が出頭すると、原則として判決が即日言い渡されます。ただし、滞納者が最初の期日において弁論をするまでに、通常の訴訟に移ることを求めた場合は、通常の訴訟に移ることになります。

5.通常の訴訟を起こす
 少額訴訟が適用されないときは、通常の訴訟の手続きに入ります。これに関しては、弁護士に依頼するほうがよいでしょう。
●請求訴訟を起こすには、管理組合の総会で相手方を特定した議案を事前にはかって、区分所有者および議決権の各1/2以上の賛成による決議をとっておきましょう。特に管理規約に理事会による訴訟提起の手続きを規定していない場合は、この手順を踏まえていないと後々のトラブルにもなりかねません。
●同じマンションに住む者同士でもあり、滞納の督促はしづらいものですが、回収を先送りし、既成事実化させないことが何よりも大切です。滞納額がかさんでくると回収がますますむずかしくなるし、もともとの支払い時期から5年が経つと、滞納管理費は時効となるのが一般的だからです。(民法167条)

NO.23 北区・ローレルハイツ北天満管理組合

管理組合の熱意と自治会との連携で
快適・安全なマンションライフを実現

 「ローレルハイツ北天満」は地下鉄扇町駅及び天神橋筋六丁目駅・JR天満駅から徒歩5 分のところに建つ、今年3月で築33 年を迎える総戸数1,342 戸の大型分譲マンションです。
 今回は大規模マンションならではの様々な困難を乗越えて快適で活気ある居住環境を実現されている同管理組合を訪れ、管理運営の様々な工夫やノウハウをお聞きしました。

● 充実した歴史を物語る、清潔なたたずまい

 賑やかな天神橋筋界隈の中でもひときわ活気にあふれた商店街を抜けると、目の前に「ローレルハイツ北天満」のランドマークであるノウゼンカズラをあしらった正面のアーチがお出迎え。アーチをくぐり抜け、さっそくマンション内の一室で管理組合の井上憲夫理事長と奥村憲嘉自治会長にお話を伺いました。
 マンションに入って最初に気がつくのは、エントランスや階段部分などの共用部分がきれいに清掃されていることです。そのためか、築年数の割に古さを感じさせず、建物全体が清潔で落ち着いたたたずまいを保っているのです。理事長によれば、「そうでしょう。清掃がきちんと行き届いているのが、うちの自慢です。
 今の管理会社はマンション管理の経歴は十分でなかったのですが、管理組合の要望を聞いて業務を行うことを条件に、組合で育てていこうということで決めました」とのこと。日常の徹底的な清掃業務もその条件の一つだったそうで、階段やエレベーターホールの隅々にまで丁寧にワックスがかけられ、ガラスもきれいに磨かれているのは、そういうわけだったのかと納得。このマンションを見ると、マンションの資産価値には" 美観の維持" という要素が大きな役割を果たしていることが実感できます。

● 理事には、本気で取り組んでくれる人を!

 最近はどのマンションでも積極的に組合に関わろうという人が少なく、理事のなり手不足に頭を痛めているのが実状です。そんな中で、ローレルハイツ北天満では、よくある輪番制などではなく、現在も立候補・推薦制で理事を選出しています。その理由や選出方法について伺うと、「理事には、仕方なくでなく、熱心に取り組んでくれる人になってほしいですから、普段から、総会や委員会などでよく質問や発言をされる人やお正月の餅つき大会などの行事で積極的に動いてくれる人に目配りをしておいて、あの人ならやってくれそうだと思ったら、役員選出のための選挙管理委員会からそういう方にお願いするわけです。特に要望をよく出される方には、中に入って意見を通してもらうよう説得したりします。
今までは、こうしたやり方で大抵うまくいっていましたね。大規模マンションだけに、意見がまとまりにくいという難点もありますが、専門的な知識をもつ職業に携わる優秀な人材も多いですから」と理事長。それでも住民の高齢化と共に、理事のなり手も減少しつつあるようで、今後はそのあたりの対策も必要になってくるのではと危惧されています。

● 自治会と連携してコミュニティ活動を展開

 ローレルハイツ北天満には、集まる管理費等も多いという大規模マンションならではのメリットを活かし、フットサルが楽しめるサッカー場、ロータリードラムを3 台備えた集塵機室、3 ヵ所の集会所といった他ではあまりお目にかかれない立派な施設があります。集会所を有効利用したカラオケ、茶・華道、囲碁・将棋、ストレッチ、パソコンなど趣味・特技を活かしたサークル活動も盛んです。また、自治会とも協力して、天神祭りへ参加したり、ハイキング、カーニバル、日帰りバスツアー、もちつき大会、子供クリスマス会など多彩なイベントを開催しています。「各担当の部会や委員会のメンバーは準備が大変ですが、当日は多くの住民にボランティアとして協力してもらうなど無理なくみんなが楽しめるように色々工夫しています」と自治会長。ローレルハイツ北天満の場合、こうしたコミュニティ活動に自治会が積極的に関わっているのが大きな特長です。
 管理組合は共有財産の維持のため、自治会は主に居住者相互の親睦のためと、目的は違いますが、主に管理組合はハード面、自治会はソフト面を担当しつつ連携して活気あるコミュニティづくりをめざす相互協力のあり方は、他の管理組合の皆さんにも大いに参考になるのではないでしょうか。

● ローレルハイツ北天満を心のふるさとに!

築30 年目に当たる一昨年には2 回目の大規模修繕を実施し、引き続き昨年秋には腐蝕の進んだ台所流し排水竪管を新しい耐火性硬質ポリ塩化ビニル管に取り替えるなど、修繕計画にも抜かりはありません。また、住民の40%が65歳以上という現状に配慮して、各棟出入口にスロープ、階段・エレベーターに手すりを設置。その他、一人暮らしの高齢者や高齢者夫婦を対象に毎日定時にインターホンで通話することで安否確認を行う「ふれあいネットワーク」や、65 歳以上の方を対象に食事会やウォーキングなどを実施する「いきゆうクラブ」の活動もすべて住民の有志によるボランティアによって運営されています。さらに災害対策として専用の備蓄倉庫に全1,342 戸3 日分(1 家族平均3 名換算)の飲料水と米・乾パンなどの食料のほか、様々な防災用品を備蓄。年2 回行う防災訓練には毎回100 名ほどが参加し、訓練終了後は、賞味期限間近のアルファ米での炊き出し訓練と試食をかねて懇親会を開催するなど、訓練にも楽しさを加えるようにしています。最近では、親子二代にわたって住む居住者も増え、地域最大のイベントである夏の天神祭りには、幼少時をここで過ごし今は遠くで生活している若い人たちが里帰りして家族や昔の仲間と一緒にお祭りを楽しむといったうれしい話もよく聞かれるようになり、長い歴史を持つマンションならではの良さが見直されています。マンション管理への関心はもとより、自分たちのマンションをより良いものにしていきたいというモチベーションの高い居住者の方々にとって、「ローレルハイツ北天満」はこれからも大切な" 心のふるさと" となっていくでしょう。
マンション概要 所在地:大阪市北区池田町1番
建築年 1979年
(築33年)
構造・規模 SRC造・14階建
(1号棟・2号棟)
棟数・戸数 2棟・1342戸
戸当り専有面積 78m2/戸
駐車場台数 219台(来客用17台)
駐輪場台数 1320台(来客用30台)
役員体制
役員任期 1年
役員数  13人
選出方法 立候補・推薦制
理事会 1回/月
総会 1回/年

NO.22 城東区・タイムズ・ピース・スクエア管理組合

専門家の力を上手に利用して、
住民間のコミュニティ形成

必要だと分かっていても、難しいのがマンション内でのコミュニケーション形成です。 タイムズ・ピース・スクエア管理組合は、その大切な課題に入居した段階から取り組 み、夏祭りなど多数のイベントを通じて見事に成功しています。

● 1000戸の大規模マンションが出現

地下鉄長堀鶴見緑地線・今里筋線の蒲生四丁目駅から徒歩5分、京阪本線野江駅から徒歩7分のところにあるタイムズ・ピース・スクエアは、甲子園球場の約2倍の広大な敷地に建つ3棟・総戸数1000戸の大規模マンションです。
2年前の2007年にA棟の367戸、1年前にB棟の427戸、今年3月にC棟の206戸が完成。敷地内には、体育館のあるスポーツアリーナ、コミュニティハウス、保育園、たんぼ、花壇、キッチンパーティルーム、ゲストルーム、900台分の自走式駐車場、サイクルポートなどが揃っており、かなりの充実ぶり。ちなみに入居者の中心は、小学生以下のお子さんがおられる30歳代のファミリー層です

● 4つの倶楽部と9つのサークル活動

▲紙芝居に子どもたちも嬉しそう このマンションのユニークな点は、管理組合の下部組織として「TPSクラブ」というコミュニティ活動を目的とした組織が入居時からあることで、こうした例は極めて稀です。TPSクラブの中には、キッズ&シニア倶楽部、グリーン美化倶楽部、たんぼ倶楽部、イベント倶楽部の4つがあり、それぞれ活発な活動を行っています。
TPSクラブは全戸加入で、1住戸について月500円を負担してもらい、クラブの運営費用に当てています。さらに外部の専門業者の方が、街コーディネーターとして常駐。クラブの運営面のサポートや、コミュニティ形成のきっかけづくりを行っています。この他にも、バレーボール、太極拳、空手、キッズダンスなど9つのサークル活動がすでに誕生しています。

コミュニティ活動をしたいけど、どうしていいか分からない管理組合が多い中で、イベント運営の専門家を最初から組み込み、うまく活用しているケースと言えるかもしれません。

● 田植えや、地域を巻き込んだ夏祭り

多彩なイベントの中で、2つピックアップしてみましょう。
一つは、たんぼクラブです。マンションの敷地内にたんぼがあるのは、日本でもたぶんここだけ。土づくりから始め、6月7日に行われた田植えには、多くの方が参加し ました。収穫の後は、1000個のおにぎりを作る予定です。「たんぼがあると和みますね」と近所の人も嬉しそうです。稲の生長を通じて、子どもたちは多くのことを学ぶ こともできます。



もう一つは、イベントクラブが中心になって行う夏祭りです。住民ばかりでなく、近隣地域のみなさんも祭りに参加・協力。今年は3000人近くの人で盛り上がりました。「夏祭りを通じて地域の人ともコミュニケーションでき、地域の活性化にも役立つことができした」と入居時からTPSクラブ委員長を続けている亀井達哉さんは満足そうです。夏祭りのボランティアを募集したところ、昨年は30名ほどでしたが、今年は100名以上集まりました。「徐々にですが、確実にコミュニティが広がりつつあることを実感しています」。

● 揃いのTシャツで、一体感が生まれます

▲紙芝居に子どもたちも嬉しそう 「私がTPSクラブの委員長を引き受けたのは、クラブを通じて人と人をつなぐことができれば、という思いがあったからです。活動を初めて3年目に入り、住民同士が仲良く立ち話をしている姿を見かけるようになりました。子どもはすぐに仲良くなれる、お母さんも子どもを介してつながりができる。でも、お父さんのつながりはなかなかできませんが、イベントを通してつながりができます。イベントのボランティアで揃いのTシャツを着ることだけでも、一体感が生まれますからね。住民同士が知り合いになると、知らない人がいれば分かりますので、防犯上でもメリットがあると思います」と亀井さん。

団地管理組合理事長の加藤彰彦さんも、「若い人はイベントに無関心だと思われがちですが、声をかけると案外参加してくれますね。うちのマンションでは、シニア層は多くありませんが、今後は高齢の方のまきこみ方を考えていくつもりです」とコミュニティ形成にさらに力を入れていく考えです。

4つの倶楽部と主な活動
倶楽部 主な活動
キッズ&シニア倶楽部 紙芝居と昔遊びを実施。お手玉、めんこ、あやとりなどを 年配の方から、教えてもらい子どもとの交流の機会をつくる。
グリーン美化倶楽部 ガーデニング愛好家の人の集まり。居住者専用花壇の 植え替えの内容も自分たちで決めていく。
たんぼ倶楽部 専門家のアドバイスで、田植えから、草取り、稲刈、稲干、脱穀まで農業体験。
イベント倶楽部 年2回の大きなイベント(夏祭り、クリスマス)の 企画・運営。実行委員会を立ち上げてイベントを実施。
マンション概要所在地:大阪市城東区今福西
建築年 2007~2009年
(築年数0~2年)
構造・規模 RC造・15階建、19階建
棟数・戸数 3棟・1000戸 戸当り専有面積 70~100m2/戸
駐車場台数 900台 駐輪場台数 2000台
付属施設 集会室、管理員室、
体育館、ゲストルーム、
キッチンルーム、
シアタールーム
付属設備 オートロック、
監視カメラ、
インターネット
役員体制
役員任期 1年 役員数 12人
選出方法 輪番制 理事会 1回/月
総会 1回/年 各種委員会の設置 自転車問題委員会

NO.21 平野区・長吉コーポ管理組合

多彩なコミュニケーション活動を通じて
老朽化と住民の高齢化にも対応

地下鉄谷町線・長吉駅から徒歩7分。住宅地にある長吉コーポは、1980年に建てられたマンション。2度目の大規模修繕工事を終えたばかりの管理組合は、イベント開催などを通して住民同士のコミュニケーションを深めています。

● 毎年盛り上がる納涼祭

長吉コーポは、5階建て(一部4階建て)の2棟・121戸。
2棟の間を進むと駐車場があり、その奥にあるプレイロットにはベンチが置かれ、桜が咲き始めていました。集会室と管理人室がすぐ横にあり、このプレイロットと集会室が、長吉コーポ管理組合活動と住民同士のコミュニケーションの場だとわかります。
 昨年は大規模修繕工事のため中止になりましたが、毎年6月に草取り、8月に納涼祭を開催しています。とくに納涼祭は、色の付いた電球をぶら下げ、くじ引きやビンゴゲームを楽しんだり、子ども向けにはヨーヨー釣りなどが大人気だとか。「家族ぐるみで、住民の70%くらいが参加しますね」と吉岡理事長。

● お互いの顔を見て安全を確認しよう!

 築29年目の昨年、2回目の大規模修繕工事を実施。 外壁塗装の他、廊下、階段、ベランダに塩ビシートを敷きました。築年数が進むと、建物の老朽化の他に、住民の高年齢化の問題も起きてきます。長吉コーポでも、帯主の60%は60歳以上。さらに、一人暮らしの高齢者も増えています。 階段の手すりは15年ほど前に設置。「回覧板も、ドアポストに挟んでおしまいではなく、必ずインターホンを押して、お互いの顔を見て安全を確認し合いましょうと、広報誌でも呼びかけています」(吉岡理事長)

● コミュニケーションを深めるために

実は、同管理組合の強みは、ほとんどの住民が顔なじみであること、そしてイベント出席率が高いこと。大規模修繕工事でサツキやツツジが傷んだため、100本の苗を用意して、補植作業の手伝いを呼びかけたところ、若い人も含めて20人ほど集まり、2日かかると思っていたら、わずか1時間で終わってしまい、人海戦術の威力を実感したそうです。また、世代間コミュニケーションを深める意味でも有意義だったそうで、今後このコミュニケーションを更に深めていきたいと考えているそうです。
 「今後は、高齢者向けに、茶話会やパソコン教室の開催を考えています。パソコン教室では、お孫さんの写真を取りこんだり、アルバムをつくったりできればいいかなと‥」。この他にも、集会室の有効利用をもっと考えていきたいと、吉岡理事長は様々なイベントを計画中です。
マンション概要所在地:大阪市平野区長吉出戸
建築年 1980年
(築年数12年)
構造・規模 RC造・5階建(一部4階建)
棟数・戸数 2棟・121戸 戸当り専有面積 67.92~95.98m2/戸
駐車場台数 47台 駐輪場台数 220台
付属施設 集会室、管理員室 付属設備 プレイロット
役員体制
役員任期 2年 役員数 14人
選出方法 輪番制 理事会 1回/月
総会 1回/年 各種委員会の設置 無(昨年度は、大改修検討委員会)

NO.20 阿倍野区・アルス帝塚山管理組合

徹底したガラス張りの運営により
大規模修繕工事をスムーズに進める

閑静な住宅街にあるアルス帝塚山。前身は昭和42年に入居が始まった大阪市住宅供給公社の分譲マンションですが、平成8年に建替えを行い、住戸戸数は68戸から90戸に増えました。そして平成20年3月から大規模修繕工事を開始(同年6月工事完了予定)。建替え経験のある アルス帝塚山管理組合のスムーズな運営ぶりをご紹介します。

● 水漏れ事故が、工事への決断を早める

 平成20年3月から大規模修繕工事を開始したアルス帝塚山管理組合ですが、工事に至るまでの手順は以下の通りです。3年前に修繕準備委員会を立ち上げ、住民アンケート等を実施。そして2年前に正式に修繕委員会を立ち上げてコンサルタントを選定。昨年5月の総会でコンサルタントを承認してから本格的に活動開始。設計仕様書をつくり、施工業者を選び、大規模修繕工事に着工しました。
「13年ぐらい持つのではないか」という意見もあった中で、10年目に工事を行うことに踏み切ったのは、屋上防水工事の10年保証が切れる直前に水漏れ事故が発生したのがきっかけでした。「水漏れの原因を追及するだけでも半年くらいかかりました。今後、保証が切れてから屋上等から水漏れがあると大きな出費になります。水漏れの件があって、早急に大規模修繕を実施すべし!との意見が多数を占めました」と白澤理事長は経緯を説明します。また、建替え前は大規模修繕をほとんど行わなかったことが、結果的に建替えを早める結果になったという、当時の反省も理由の1つだそうです。

● 公開プレゼンテーションを実施

 工事を漏れなくスムーズに進め、同時に施工費用を下することを決定。「住まい情報センターで入手した近畿圏のコンサルタントの情報をもとに、何社かに電話をして来ていただき、お話を伺った上で選ばせていただきました。おかげでとても助かりました」。
 そして肝心の施工業者は、業者との癒着等の疑いを少しでも持たれることがないように、推薦などではなく、公募で選びました。応募してきた10社から施工実績や規模等の公募基準をクリアしている5社に絞って見積書を出してもらい、その内3社に集会室で公開のプレゼンテーションをしてもらいました。現在の施工業者を選んだ決め手は、見積金額の安さと熱意でした。「1社1時間の持ち時間で説明してもらいましたが、スライドも使った詳しい説明で、決定権のある部長クラスの人も来られました。また、交通量調査を含めた事前調査もされるなど、その熱心さに心動かされました」。げるためにも必要だとの考えからコンサルタントを導入

● 改修をしながらグレードアップ

 工事内容は、共用部分の外壁、廊下、階段、バルコニー等の防水工事、塗装工事、改修工事、そして東側入口ドアを自動ドアに取り替える工事などです。改修をしながらグレードアップも図っています。工事の進捗状況は、施工業者が掲示板で知らせるほか、「洗濯物を干せない日」とか「バルコニーの片づけのお願い」など、居住者への案内は、掲示板と同時に案内チラシの戸別配布も行っています。「工事がスタートして今のところ大きな問題は起こっていません。おかげでスムーズにいっているように思います」。
 修繕委員会からタイル貼りマンションの方へのアドバイスを頂きました。「タイルの剥離状況をすべて確認するのは足場を組んでからでないと分かりません。でもタイルを焼くのに最短でも2 ヵ月くらいかかります。だから見込みで多めに発注しておくことをお勧めします。余ったタイルはストックしておけばいいので、無駄にはなりませんから」。

● 昔も今も、ガラス張りの運営を!

 修繕委員会の人たちが一番気をつけてきたのは、ガラス張りの運営です。施工業者の公開プレゼンもそのために他なりません。「みんなの大切なお金でやるわけですから。できるだけオープンにして、みんなに情報公開し、みんなの意見を聞きながら進めました」。
 今回の修繕委員会のメンバーは、建替え後に入居された方たちばかりなので、大規模修繕の委員として活動するのは初めてです。建替え時に委員会のメンバーだった津田さんは、「私たちも建替えのときに一番大事にしたのが、ガラス張りの運営でした。全てオープンにする方針が引き継がれていることを知って嬉しかったですね。それがここの管理組合の良さかもしれませんね」と話してくれました。
マンション概要所在地:大阪市阿倍野区帝塚山1-14-26
建築年 1996年
(築年数12年)
構造・規模 RC造・5階建
棟数・戸数 1棟・90戸 戸当り専有面積 56.28〜98.28m2/戸
駐車場台数 54台 駐輪場台数 123台
付属施設 集会室、管理員室 付属設備 オートロック、監視カメラ
役員体制
役員任期 2年 役員数 10人(半数改選)
選出方法 輪番制 理事会 1回/月
総会 1回/年 各種委員会の設置 有(修繕委員会)